そうです、やはりこれがないと私のブログにはなりません。 マルタ海軍についてです。
もっとも、海軍とはいってもマルタ共和国には 「マルタ海軍」 (Maltese Navy) というのはありませんで、正式名称は 「Maritime Squadron, Armed Forces of Malta」 です。 日本語に直すと 「マルタ国軍海上戦隊」 とでもすればいいでしょうか。

(マルタ海軍の海軍旗章です)
( まあ、それを言えば世界第7位の海上自衛隊だって 「日本海軍」 (Japanese Navy) ではないわけで・・・・ (^_^; )
1970年にマルタ陸軍中の一部門 (Maritime Troop of the Malta Land Force) として創設され、やっと国軍内の1つの組織として独立したのは2006年だそうです。
考えれば無理のない話で、現在でも国軍全部で約2千名の規模ですから。
( とは言え、マルタ国民41万人の0.5%、日本の自衛隊が国民1億2千万人に対して僅か0.002%ですから、考え方によっては相当なものです。)
この国軍2千名の内の何人が海軍に属するのかは不明ですが、ともかく組織編成上は次のものがあることになっています。
Squadron Headquarters (戦隊司令部)
Base Party (基地隊)
Division 1 - Medium/Offshore Craft (中型/外洋艦艇)
Division 2 - Inshore Patrol Craft (内海哨戒艦艇)
Division 3 - Training & Rapid Deployment Team (MSRDT)
(訓練・急速展開チーム)
Division 4 - Marine Engineering (船舶技術部)
Division 5 - Integrated Logistics (統合ロジスティックス部)
海軍基地は一ヶ所のみ。 現在ではバレッタ半島の付け根、官公庁が集中する 「フロリアーナ」 (Floriana) の 「ハイ・ワーフ」 (Hay Wharf) というところにあります。

( 元画像 : Google Earth より )

( 基地の全景 元画像 : Google Earth より )
軍艦大好きの仕事仲間とマルタ海軍の探索に出かけた時は残念ながら日曜日でしたので、基地のゲートは閉まっておりました。 まあ、わざわざ当直士官を呼び出して基地見学を申し入れることまでは・・・・

(基地の正門)

(基地の反対側にある裏門)
マルタ海軍には軍艦旗はありませんで、艦艇はマルタの国旗を掲揚します。
また、艦首旗は赤枠に白地で中心にジョージ・クロスを、四隅にマルタ十字を画いたものです。
さて、海軍艦艇ですが。 私がマルタに滞在した今年の5月現在で、就役しているものはたったの9隻でした。
地中海のど真ん中に位置する小さな島嶼国家で、現在、というより当分は他国との武力紛争が想定されるような情勢にありませんので、海軍とはいっても、その任務は本来の国土防衛のための海上戦闘と言うよりは、沿岸警備、水上警察、捜索救難、入国管理、税関、漁業取り締まりなどの平時官公庁職務が主体で、このため保有する艦艇もそれに応じたものとなっています。
特に最近は、アフリカからの密入国の取り締まりと、海上難民の保護が大きな部分を占めるようになったようです。
( 因みに現在のマルタは、一旦領海内に入ってしまったら密入国であれ何であれ総て受け入れる政策だそうです。 国内には大きな難民キャンプや定住促進センターなどがあり、また就労ビザは誰にでも発行するそうで、次第に国中にこれらのアフリカからの黒人が溢れてきており、社会問題になりつつあります。)
それでは私が撮影してきたマルタ海軍の全艦艇9隻+αを (^_^)
「P61」 : 2005年に就役した現在のところマルタ海軍最大の艦艇で、「Offshore Patrol Vessel」 (外洋哨戒艇) と呼ばれます。 姉妹艦はありません。 基準排水量395トン、満載排水量450トン、全長53.4m、最大速力23ノット、乗員25名。 へり甲板はありますが格納庫はありません。 兵装はオットー・ブレダの25ミリ機関砲x1基。 イタリア製で、同国の沿岸警備隊が使っている 「Diciotti」 型の改良型です。
「P51」 「P52」 : 「Coastal Patrol Boats」 (沿岸哨戒艇) と呼ばれ、米国製で同国の沿岸警備隊が使用している 「Protector」 型と同じですが、元々のデザインはオランダのものです。 2002年就役、満載排水量90トン、全長26.1m、速力25ノット、乗員11名、兵装は7.62機銃x1基。
「P32」 : 「Inshore Patrol Boat」 (内海哨戒艇) と呼ばれ、既に除籍となった姉妹艇 「P33」 と共に元々は旧東ドイツ海軍の哨戒艇だったもので、1992年にマルタに譲渡されました。 満載排水量42トン、全長22.6m、速力24ノット、乗員6名、兵装は12.7ミリ機銃x1基。
既に除籍された
「P33」 は無惨な姿を基地の岸壁で曝しています。 (確かこれは以前に火災事故を起こしたと聞いたことがあるのですが・・・・?)
「P23」 「P24」 : これも 「Inshore Patrol Boats」 (内海哨戒艇) に分類されており、元々は米沿岸警備隊の哨戒艇で、1971年にマルタに譲渡されたものです。
「Melita I」 「Melita II」 : 「Fast SAR (Search & Rescue) Launches」 (高速捜索救難艇) と呼ばれるもので、1998年にイタリアで建造されました。 その分類名のとおり、海上での捜索救難が主たる任務です。 全長12.6m、速力32ノットです。 元々がマルタの 「市民保護局」 (Civil Protection Department) 所属だったのですが、1999年に海軍に移管されました。
「P01」 : まあこんなものまで就役艦艇数に含めるのか、という感じのものですが、「Fast Interceptor Craft」 (高速臨検艇) と呼ばれ、2003年イタリア製のRIB (Rigid - Inflatable Boat) です。 全長10.43m、速力35ノット。
なお、私のマルタ滞在後の今年7月になって、全長21mの 「P21」 というオーストラリア製の新しい哨戒艇が就役したようです。 このクラスがあと3隻続いて就役するそうで、順次古い 「P32」 「P23」 「P24」 と交代してこれらは除籍されるようです。

( 元画像 : 「Times of Malta」 より )
そして、この海軍基地内にデ〜ンと置いてあるのがこれ 「Italian Military Mission」 (イタリア軍事顧問団) のヨットです。 う〜ん、贅沢なものです、羨ましい。
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オマケですが
日本出発前にマルタについて調べていた時に、Google Earth でこんなものを見つけてしまいました。

( 元画像:Google Earth より )
グランド・ハーバーの最奥にある造船所の一角です。 うん? 潜水艦? それもかなり古い形のような?
で、当然、滞在中に例の軍艦大好きの仕事仲間と一緒に捜索に出掛けてきました (^_^)
バスを乗り継いで、地図を片手に捜しまして・・・・ ありました、これです。 映画のロケで使った実物大の浮かぶUボートです。
残念ながら両脇が造船所と工場で、この位置の道路上からしか見ることができませんし、他の係留船が邪魔になって全景が撮れません。
しかし、どの映画のものかよく判りません。 考えられるのはウォルフガング・ペーターゼン監督の 「Uボート」 (1981年) か、ジョナサン・モストウ監督の 「U−571」 (2000年)です が、前者だと28年も前になりますから、後者なのか? それでも9年も前のものになります。 未だに何か使い道があるんでしょうかねぇ。
更にオマケですが、
1/1 Uボートの横に繋留されていた除籍されたマルタ海軍の旧 「P29」 「P30」 「P31」 の内の1隻です。 元々は旧東ドイツ海軍の掃海艇 「Kondor I」 型で、他の2隻とともにここで解体を待っているようです。
そして更にオマケです (^_^;
1/1 Uボートを見ての帰りに、道沿いの工場の敷地にこんなものがゴロンと置いてありました。 一体何に使ったものなのか?
小さな島国なのに、いや〜、色々楽しませてくれて実に面白いところですね、マルタは。