2019年04月04日

海自のシステム艦第1号 (5/終)


とは言っても、その結果として海自はこの 53DDG 「さわかぜ」 に至って始めて、と言うかやっと、本来の “艦艇戦闘指揮システムらしいシステム” を持つことになりました。 全くの他力本願ではありますが。

この 「さわかぜ」 に搭載した OYQ-4 システムは、メインのコンピューターに UYK-7 1台、コンソール OJ-194 9台 + OJ-197 OSC 1台、SPS-52C による目標の自動探知・自動追尾機能、BVP によるIFF Mode-II 信号を利用した自動味方識別、Link-11 機能、そしてソフトウェア (オペレーション・プログラム) は米海軍提案のものに加え、更に海自側から NTDS 最新の Model 4 というプログラムの内容や CGN-38 「バージニア」 級で採り入れられたアルゴリズムなどと同じものの追加を逆提案してその多くのものが採り入れられました。

( この逆提案の内容は、それを聞いた米海軍の担当者が “えっ、何でそんなことを知ってるの?” と驚いていたことがありました。 何でかなあ〜 (^_^) )

これによって目出度し、目出度し ・・・・ だったはずなんですが ・・・・ 結局 WES (OYQ-1/2)や 50・51DDH の 「しらね」 「くらま」 の TDPS (OYQ-3) より大きく進歩したこの新しいシステムが導入されたにもかかわらず、この システムの本来のあり方、考え方が活かされることはありませんでした。

既に建造が始まってしまった 「はつゆき」 とこれに搭載する国産の OYQ-5 に続く、汎用護衛艦とそのシステムには、結局元のまま、海幕担当者達の鉛筆舐め舐めの紙の上での予算説明上の都合・理屈に振り回されることには変わりはなかったのです。

つまり、当初から役に立たないことがハッキリしていた 「はつゆき」 とその OYQ-5 を “失敗作” “安物買いの銭失い” と言われないために、“使用実績と技術の進歩、戦術環境の変化に対応するための改善” を謳い文句にして、それこそ小出しにするが如く次々と手を入れることによってそれを誤魔化し続けてきました。 システムだけを見ても、

OYQ-5、-5-1、-5B-1、-5B-2、-5C-1、-5C-2、OYQ-6、-6-1、-6-2、-6C、OYQ-7、-7B、-7B-1、-7B-2 ・・・・

その結果、ソフトウェア (オペレーション・プログラム) の中身はともかくとして、ようやく DD タイプのシステムでも、見かけだけは まあ何とか CDS らしいといえるもの が装備されたのは、実に 「むらさめ」 の OYQ-9 になってと言えるでしょう。

USS_Blueridge_BPDMS_1974_01_s.jpg

( クリックで拡大表示します)

即ち、内局の役人に対して予算獲得のための (= 自己の業績作りのための) 屁理屈を並べてきた海幕担当者達が、それが嘘であったとは言えないために更なる屁理屈を重ねるだけのために、実に14年、15隻 ( 「たかつき」 「きくづき」 や 「かしま」、それに途中更新艦を合わせると23隻) を無駄にしてきたのです。

“DD はハイ・ロー・ミックスのロー・コンセプト艦だから” というのはいかにも聞こえはいいですが、これの実態は “低性能であっても、低価格で数を多く” ということに過ぎません。

そのために既にお話ししたとおり、本来必要とされる “あるべき能力” の検討がまず先になされなければならないにも関わらず、それを抜きにして予算獲得のための 艦型が先に決まってしまい、後からその性能・能力の屁理屈をこじつける ことになりました。

そして “艦艇戦闘指揮システム” とは言いながら単なる “武器管制装置でしかないもの” を搭載した国産護衛艦をも延々 “システム艦” という美名で呼んできたのです。


最後に今回の纏めとして、

海上自衛隊における “システム艦” は、

デジタル・コンピューターを用いたシステムの導入により 米海軍の NTDS に関する考え方 (フィロソフィー)、システム開発手法、ソフトウェアのアルゴリズムなどをもたらした、という点を評価するなら 「たちかぜ」 型が 第1号艦

同様にシステムそのものはともかくとして、データ・リンク Link-11 を導入した という点を評価すれば 「しらね」 型が 第2号艦

次いで 「さわかぜ」 が 第3号艦

ということになります。

そして、実態として 少なくとも “艦艇戦闘情報処理システム” (CDS、Combat Direction System) といえるものを搭載したことを採るなら 「さわかぜ」 が 第1号艦 ということになります。

(この項 終わり)
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前 : 海自のシステム艦第1号 (4)
posted by 桜と錨 at 11:07| Comment(6) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2019年04月30日

海自 砕氷艦の運用から撤退検討


つい最近の産経新聞ニュースで、海自が人手不足を理由に砕氷艦 「しらせ」 の運用から撤退することを検討していることが報じられました。


う〜ん、私に言わせれば、これは単に人手不足というよりは、海上自衛隊という “制服を着た能吏” 達が取り仕切る組織の体制 ・体質そのものに問題があるのであって、その能吏たる高級幹部達がそのことを全く自覚もしていないし、ましてや本腰を入れて改善しようとする意図が無かったということに尽きるでしょう。

これは人事全般について顕著で、特に新入隊員の募集と退職者の就職掩護は酷いものといえます。

つまり彼等にとって自己以外のことは所詮 “人事はヒトゴト (他人事)” としてきたという現れです。

その原因について、暫く前に本家サイトの掲示板で書いたことがありますので、ここで再掲いたします。

↓ ここから
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1佐以上の自衛官の昇任 ・補職の人事は内局に握られています。 そして海上自衛隊の業務は全て内局に出向いて部員と称する担当の役人が納得のいくように説明しなければ何もできません。

( その自己の業績を上げるためにこねた屁理屈を、部内に対しても平気で通す訳で。 私が関係した「おおすみ」 型の輸送艦や、これに搭載する LCAC などはその最たるものでした。)

したがって内局の不評を買うようなことを彼等がするわけがありません。 要するに内局の下請けと言える、ごく普通の二流・三流官庁たるお役所であり、制服を着た有能な能吏であることが求められるのです。

その様な高級幹部を日々見ている海幕勤務を出入りするような若手エリート幹部がどのように育つのかは言わずもがなでしょう。

操艦が上手い、大砲やミサイルに詳しい、海上での運用作業がスマートにできる ・・・・ などなどは人事評価には影響しません。

このため、艦艇部隊の指揮官以下はその勤務期間を “無事故で大過なく過ごす” ことが重要なのです。 いわゆる経歴を付ければ良いわけですので。

海軍の伝統と言われる 「スマートで、目先が利いて、几帳面、・・・・」 というのは今は昔の話しで、現在では艦艇勤務においては何らの意味もありません。

しかも中級幹部にとって、術科学校の幹部中級射撃課程や水雷課程など、そしてその後に幹部専攻科を出てその道のプロとなるより、幹部中級用兵課程、続いて幹部学校の指揮幕僚課程を経て、統合幕僚学校の一般課程を出ることが重要です。

こういう中級幹部以上がいる艦艇部隊において、初級幹部が船乗りとしてプロになろうとする土壌が育つわけがありません。

そしてこのような幹部達の姿を海曹士も実によく見ています。 “何だそうなのか、その程度でいいのか” “うちの今の艦長はエリートだから、事故などで傷を付けないようにだけ注意しておけばよい” となります。

それに、海曹で部内幹部の受験資格ができると毎年強制的に受けさせられます。 彼等にしてみれば幹部になれるわけですから、喜んで頑張る者も多いのです。

( もし受験しないと、“こいつは向上心がないのか” “指導が悪い” と分隊長や分隊士に人事課からお小言が入ります。)

このため専門技量に優れた腕のある海曹が現場からどんどんいなくなり、しかもその部内幹部になった者達は今度は本来の専門とは関係のない初給幹部としての業務に忙殺されることになります。

そして海曹士の昇任は、毎年の昇任試験 (筆記試験で、専門の技量とはほとんど無関係) の成績が重要、というよりほとんどこれで決まってきます。

加えて少し前から曹候補生制度により入試の筆記試験で合格して海士になった者達は、経験や技量に関係なく、所定の年数が経てばほぼ自動的に3曹になります。

さて、こういう状況で、真のプロとしての艦艇部隊が育つのでしょうか?

そして現在では今まで無かった様々な任務が増えてきて、それの準備や訓練も合わせると極めて多忙になってきています。

じっくり基礎的・基本的な専門技量を身につける暇がありません。 極端な話し、護衛艦でソーナーを担当する水測員の中には、1年間実際の潜水艦と訓練してその生の音を聞いたことが無い、という者まで出てきている始末と聞いています。

それでなくとも、諸外国海軍の常識では考えられない、艦艇 ・航空の用兵幹部 (Line Officer) でない者が海自幹部のトップである海幕長になる。

これでは艦艇部隊の士気が揚がるわけがありません。

何だ、きつい艦艇勤務を選ばなくとも、陸上でデスクワークしかしない職種でいいんだ、と。

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↑ ここまで

この様になってしまった海上自衛隊の現状は口コミでもどんどん広がっています。 これが若い人の募集に影響が出ないわけがありません。

船乗りを育ててこなかった海自、船乗りを大切にしてこなかった海自。

平成の30年間は特にそれが顕著であったと思います。 その大きなツケの一つが今 “人手不足”、と言うより入隊希望者の減少と艦艇勤務の敬遠、いえ忌避となって現れています。

( もちろん、艦艇乗員の充足率の悪さは今に始まったことではないのですが ・・・・ )

posted by 桜と錨 at 17:39| Comment(12) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2019年05月19日

幹部候補生学校スタディ・ガイド 追加公開


本家サイトの今週の更新として、同サイト中の 『現代戦講堂』 の 『資料展示室』 コーナーにて 『幹部候補生学校1課程 (防大卒) 用スタディ・ガイド』 に 「機関 (蒸汽) 上」、「同 下」、「ボイラ汽醸操法」 及び 「機関要務」 の4冊を追加公開しました。


海上自衛隊では既に 「しらね」 を最後に蒸汽機関を使用する艦艇は無くなってしまいましたし、それ以前から第2術科学校などでもボイラや蒸気タービンの教育を止めて久しいのですが、それだけに旧海軍と併せて考えるとこれらの資料は貴重なものであると思います。

舶用を含む一般的な蒸汽機関については、その原理・理論・構造などを解説した出版物もあることはありますが、こういう実際の艦艇機関についてのものは珍しいでしょう。

ただし、海上自衛隊では第2術科学校などに今でもこれらの資料が残されているのかどうかは私は知りません。

また、昔私達が防大の学生時代は、海上防衛学でもこの蒸汽機関を習いましたが、この時のテキストは内容も印刷も今回公開する海自幹部候補生学校のものよりも遙かに良いものでしたが、当時としては大変に高価なものでもあったため講義終了後に返却させられました。

先日防大に確認したところ、これを含む海上防衛学のテキスト類のほとんどは、陸海空の防衛学教室が “統合教育” という謳い文句によって防衛学教育学群に機構変更されて要員別の専門教育は廃止されたことにより、不要となったテキスト類や教育機材などは破棄処分されてしまい、既に存在しないそうです。

お役所仕事とはそう言うものですね (^_^;


なお、リストにある機関関係の他のスタディ・ガイドも一緒に公開したかったのですが、何しろ原紙そのものが紙質と印刷が悪く加工とゴミ取りに手間暇がかかりますので、今回はこの4冊としました。

OSC_SG_Steam_1_cover_s.JPGyajirushi_r_h360_01.gifOSC_SG_Steam_1_cover_mod_s.JPG


この後、機会と時間があれば、残りのものと、そして旧海軍の機関関係の教科書類なども公開していきたいと考えておりますが、いつになりますか ・・・・ ?

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( 機関術教科書の例 )

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( 個艦ごとの実例 )

posted by 桜と錨 at 16:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2019年05月26日

候校1課程用SG 「運用 (重量物取扱法)」


今週は時間が取れなくて、本家サイトの更新は先週に引き続き私の候補生時代のスタディ・ガイドの1つのみの追加公開です。

OSC_SG_Seaman_Derrick_S48_cover_s.JPG


たった14ページのものなのですが ・・・・ これ、ご覧になればお判りいただけるように、元々のSGの印刷が極めて悪く、かなりの部分で文字がかすれており、文字の周りのゴミ取りやコントラストの調整などの加工にいくら手間暇をかけても私の技量ではこれで限界です。

当時、教官に 「これでは読めないので、ちゃんとした印刷のものに換えてくれ」 と要求しました。

ところがその教官の返答は、「これしかないので、今後部隊で実施する機会があって必要になった時には 『運用作業教範』 などに詳しく書かれているので自分でそれらを読んで勉強してくれ。 今は講義を聴いているだけで良いから」 とのことでした。

既に3年前にその 『運用作業教範』 は新しいものに改正されていましたが、おそらくこの教官はそれに沿った新しいものを作るのが面倒くさいのか、一度印刷してしまったSGを棄てるのが勿体ないからだったのでしょう。 それに割り当ての教務時数も少ないし、頻繁に使うものでもないのでこれでいいや、と。

Manual_Seamanship_S45_cover_s.jpg  Manual_Seamanship_S45_p000-01_s.jpg

私には、こんな読めもせず、役にもたたないものを幹部候補生に配って講義をするというこの言い訳には納得できませんでした。

これから幹部になろうかという後輩の育成に対して、当時でもこのような誠意も熱意もない人が候補生学校に教官として配置されているのだと、少々ガッカリした記憶があります。

当の教官も、まさか45年以上も後になってこういうものを晒されるとは思ってもいなかったでしょうね (^_^;

教育というのは、本当に大事なことだと思います。

posted by 桜と錨 at 12:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと