2014年09月25日

『世界の艦船』 11月号

『世界の艦船』 11月号 (通刊806号) の特集は 「現代の艦砲」 です。

SoW_No806_cover_s.jpg

その特集記事について次の項目を受け持たせていただきました。

  「155ミリAGS 脅威のメカニズム

ご存じのとおり、本砲は来年就役予定で現在艤装が進められている 「DDG-1000 Zumwalt」 に2基搭載されるものです。

AGS (Advanced Gun System) と呼ばれているとおり、従来の艦載砲とはかなりその趣を異にするもので、米海軍・海兵隊の新しい作戦構想にしたがった、陸上射撃能力向上を狙いとするものです。

ただ、本砲はまだ開発の途中にあり、「Zumwalt」 による実艦装備の海上試験が終わるまでは最終的な形態 (性能要目など) がどの様なものになるのかは不確定なところがあります。

このため、記事の内容は執筆時点で公表されている内容によって纏めたものです。

もっとも不確定なところの一つが、LRLAP (Long Range Land Attack Projectile) と呼ばれ、最終的に最大射程100マイルを目標とする誘導砲弾です。

これの信管には現在までの試験弾では着発信管が付いているようですが、近接信管や最終誘導などについては確たる情報がありません。

確かにメーカーなどから以前公表されていたイラストでは弾頭にHOB 「Height of Burst Sensor」 と呼ばれるものが描かれているものがあります。 あるいは構想として、SAL (Semi Active Laser) やIRなどが挙げられているものもあります。

しかしながら、現在までところどのようなものになるのかの具体的なことは公表されておりませんし、これまでの陸上試験での情報にもありません。

したがって、記事ではこれらの信管は “現在までのところではない” としています。 もちろんこのままでは砲弾の能力は不充分ですので、今後何某かの近接信管などが装着されるであろうことは間違いないでしょうが ・・・・

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2014年07月05日

『世界の艦船』 8月号


既に発売になっておりますので、ご覧になられた方もおられると思います。

SoW_201408_cover_s.jpg

『世界の艦船』 8月号は海自DDGの特集で 「ミサイル護衛艦50年史」 です。 「あまつかぜ」 に始まって最新のイージス護衛艦までのDDGの歴史ですが、編集部からご依頼がありましたので私も一文を書かせていただきました。

題して 『 DDG “きりしま” 艦長時代の思い出 』

特集記事として純粋なハードウェアとしてのDDG各艦やミサイル・システムについてはもちろんですが、中にこういう肩の凝らない気軽な読み物が一つあっても良いかとお引き受けしたものです 。

折角の機会ですので、一般にはいままで知られていないエピソードも入れてみました。 是非手にとってご一読いただけると嬉しいです。

posted by 桜と錨 at 15:39| Comment(5) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2013年10月19日

米海兵隊の運用法 (13)

海兵遠征軍 MEF

さて、MEU 、MEB に続いて MAGTF 編成の最大のものが海兵遠征軍 MEF (Marine Expeditionary Force) です。

これは、次のとおり、フル装備の1個海兵師団や1個海兵航空団などを主体とする極めて大規模なもので、標準編成でも約4万6千名となります。

USAmphib_Ops_37_s.jpg

USAmphib_Ops_38_s.jpg

USAmphib_Ops_39_s.jpg

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MAGTF の編成としてはこれが最大ですが、当然のこととしてその状況・事態に合わせてその兵力は最少で2万名規模から最大で9万名規模まで変化します。 これが “scalability” と言われるものです。

そしてもしこの兵力でも不足するような大規模な事態が生起した場合には、2個あるいは3個の MEF の投入、あるいは VI MEF の予備役部隊を動員しての増強ということになります。

実際のところ、先のイラク戦争では I MEF に VI MEF を含む他の MEF からの増強を加えた約6万名規模 (これに英軍の第1機甲師団2万名が参加) をもって戦ったとされています。

陸軍の兵力が約5万5千名と言われていますので、極めて強力な戦力であったわけです。

( 実際のところ、テレビで実況中継されて世界中が信じてしまったような、あたかも西側のハイウェイを突き進む陸軍部隊が主力だったのではなく、本当は東側の河川・湿地帯を進撃した海兵隊が主力・主軸であったわけですが。)

そしてこれを支援するため、海上輸送に MSC をフル活用したほか、現地での戦闘支援に2個両用戦部隊 ATF (Amphibious Task Force) 及び3個両用即応群 ARG が集められ、加えて5個空母戦闘群 CVBG (Aircraft Carrier Battle Group) が加わっています。

Iraq_War_NavyMarine_01.jpg


以上、米海軍・海兵隊の危機対応態勢を見るにつけ、ARG / MEU がいつでもどこでもの “火消し役”、MEB + MPSRON が本格的な危機対応の “いい気になるな、いい加減にしろ”、そして MEF は海軍・海兵隊の全力をあげての “国を潰すつもりならやってやるぞ” と言えるでしょう。

こういう段階・状況に応じた態勢が整っているからこそ、軍事力としての真価が発揮できるのであって、今の陸自さんの構想では後がないことを見透かされるだけですね。


さて、流石に MEF ともなると規模が規模ですから、その遠征には兵員のみならず膨大な装備・機材・物資の輸送と戦闘支援のために、巨大な組織と兵力が必要になります。

そこで次は、先の MPSRON の説明で出てきました、その海上輸送を支える軍事海上輸送軍団 MSC (Military Sealift Command) についてです。
(この項続く)

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前 : 「その12 海上事前配備船隊 MPSRON」

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2013年10月10日

米海兵隊の運用法 (12)

海上事前配備船隊 MPSRON

前回お話しした MEB は標準編成で総計約18000名にもなり、しかもその装備、機材、補給物資なども膨大なものになります。

したがって、MEU の様にこれらの全てを洋上即応態勢とすることは、いくら米軍といえども不可能なことですし、例えその様なことをしても不経済です。

とはいっても、危機発生の場合には可能な限り速やかに所要兵力を米本土又は沖縄から目的地へ展開しなければなりません。 この迅速さが軍事においては最も重要なことの一つだからです。

このため、米海軍・海兵隊が採っている方策が海上事前配備船隊 MPSRON (Maritime Prepositioning Ships Squadron) と言うものです。

これは、民間の大型輸送船の各種タイプのものを傭入して、4〜6隻で1個船隊を組み、これに1個 MEB の装備 (個人装備を除く)、機材及び30日分の弾薬・補給物資を搭載して、予想される地域近くの洋上で即応待機させるものです。

そして、何かあれば所要の地近くの港湾に急行し、その地で海上又は航空輸送された MEB の兵員に搭載物件を引き渡すわけです。

もちろん、MPSRON は迅速な陸揚げのために設備の整った港湾に入ることが求められますが、その任務の性格上、ある程度自力での揚陸が可能な能力を考慮した船舶が選定されていることは申し上げるまでもありません。

この MPSRON は 軍事海上輸送軍団 MSC (Military Sealift Command) の下に3個船隊で構成されており、MPSRON 1 は 2 MEB (II MEF) 用として地中海・大西洋に、MPSRON 2 は 1 MEB (II MEF) 用としてディエゴ・ガルシア近傍に、 そして MPSRON 3 は 31 MEB (III MEF) 用としてグァム・テニアン近傍の洋上で即応待機の態勢を採って “いました”。

しかしながら、現在では大西洋及び地中海方面での危機発生の可能性は極めて低くなったと見積もられることから、米軍の Transformation と軍事費削減もあって、昨年の2012年9月に MPSRON 1 は解隊されてしまいました。

下の図は従来のものですが、各 MPSRON が7日及び14日で対応可能な範囲が示されています。

MPF_response_zone_s.jpg

これを見ると、MPSRON 1 は中東方面に対する MPSRON 2 の後詰めとしてもその価値は非常に高いことが判ります。 (実際、先のイラク戦争ではそれが遺憾なく発揮されたわけですが。)

残念ながら米海軍・海兵隊といえども流石に昨今の軍事費削減には堪えられないものと言えます。 そして現在再編中の MPF (Maritime Prepositioning Force) 及び MSC 全体の今後が注目されるところでもあります。

現在の MPSRON 2 は6隻、MPSRON 3 は4隻の編成ですが、所属船舶は固定されたものではなく、前者が12隻、後者が8隻の中から順次配属され、残りは修理や他の任務に就きながら定期的にローテーションします。

USNS_Charlton_s.jpg   USNS_kocak_s.jpg

USNS_martin2_s.jpg   USNS_stockham6_s.jpg
( MPSRON を構成する船舶の例  元画像 : 米海軍公式サイトより )

MPSRON の船舶は、その乗組員と共に海軍に傭入されており (もちろん傭入に伴いヘリコプター甲板の設置など所要の改造がなされています)、各船の運航は船長以下元々の船会社からの乗組員により行われていますが、船隊司令 (通常は海軍大佐) 及びその司令部要員だけは海軍軍人です。 (最近は少数ですが海軍軍人が乗員として乗り組んでいる船もあるようです。)

つまり、船隊及びその所属各船の運航・運用は船隊司令の指揮の下に行われており、また軍事的な情報などは全て司令部のみが取り扱います。

そして各船隊は洋上待機が基本で、止むを得ず近くの港湾に入る場合、あるいは錨泊する場合は、指示があってから24時間以内に全船が出港できることが条件となっています。 もちろん、各船の船長といえども自分の船を勝手に運航することはできませんで、全て船隊司令の指示と許可に基づきます。

また、各船の船長以下乗組員の交代についてはその傭船元の船会社によりますが、司令部の海軍軍人は1勤務1年間とされています。

因みに、2003年のイラク戦争の時には、ディエゴ・ガルシアの MPSRON 2 がカルフォルニアの 1 MEB と共に、I MEF FWD としていち早くクウェートに駆けつけたことは記憶に新しいところです。
(この項続く)

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前 : 「その11 海兵遠征旅団 MEB」

次 : 「その13 海兵遠征軍 MEF」

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2013年10月01日

米海兵隊の運用法 (11)

海兵遠征旅団 MEB

これまでお話しした ARG 及びそれに搭載する MEU は、常時即応展開を目指すものですから、1個 ARG だけで単独の作戦行動が可能です。 特に最近の ESG としての運用はその特性を強く打ち出しています。

しかしそれ以上の兵力が必要となるとそうもいきません。 そして更なる兵力投入の備えが無ければ、折角の軍事力行使の価値が低くなってしまいます。

その備えがあるからこそ危機拡大の抑止力にもなるわけですし、1個 ARG / MEU 投入が無駄にならず、有効に機能し得ると言えます。

そこで米海軍・海兵隊がその次の段階として用意しているのが海兵遠征旅団 MEB (Marine Expeditionary Brigade) です。

USAmphib_Ops_28_s.jpg

上はその MEB の標準構成の一例を示すもので、ここでは海兵隊員約17000名、海軍軍人約850名の合計約18000名となりますが、もちろんこれはその時の情勢・状況により変わってくることは言うまでもありません。

MEB は I 〜 III MEF に1個ずつが編成されていますが、常設は司令部のみで、それ以外は必要に応じて管理編成部隊から指定されます。

MEB_prepo_06_s.jpg

とは言っても、出動命令が出たならば6時間で編成を完結し、目的地への移動を開始しなければなりません。

したがって、如何に “必要に応じて” とは言いながらも、常日頃からのその即応態勢の維持に大変な努力が払われていることはお判りいただけるでしょう。 またそれだけに、常設司令部の役割は極めて大きいと言えます。

この MEB は、更に大規模な紛争が生起して MEF 全部が出動するような事態になった場合には、現地での受け入れ及び作戦準備のための先遣隊として機能するようになっています。

この先遣部隊として使われる場合には、この MEB を基準に MEF 司令部の一部が加わった海兵遠征軍先遣部隊 MEF FWD (Foward) となります。
(この項続く)

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前 : 「その10 ARG / MEU の限界と制約」

次 : 「その12 海上事前配備船隊 MPSRON」

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2013年09月24日

米海兵隊の運用法 (10)

ARG / MEU の限界と制約

これまでご説明してきました米国としての軍事力使用の一番手、即ち “何でも屋” “火消し屋” と呼ばれる ARG / MEU ではあっても、当然ながらその編成・装備からして自ずからその能力・機能には限界と制約があります。

USAmphib_Ops_55_s.jpg
(注) MTT : Mobile Training Team

第1の限界・制約は、申し上げるまでもなく1個 ARG には1個 MEU の人員・装備・機材及びこれの戦闘任務に要する15日分の補給物資しか搭載していないことです。

したがって、上陸した MEU には ARG 各艦艇保有の糧食・真水などはある程度は補給可能ですが、それ以外のもの、特に戦闘消耗した人員・装備については、後続の部隊又は輸送艦艇による支援が無い限り補充出来ません。

また、直接的な非戦闘行動以外での友好国支援についても、ARG / MEU の編成及び規模からして限界と制約があります。

そして何と言っても、上陸した MEU は ARG の支援下から離れて単独に行動する場合、その行動能力には大きな限界と制約が生じます。 特に C4I と航空支援の面ではそれが顕著であることは明らかでしょう。

USAmphib_Ops_56_s.jpg

そして、MEU の戦闘能力自体にも次の2つの弱点があります。

  1.開豁地での重装備装甲・機動部隊に対する防禦能力
  2.継続する航空攻撃に対する防禦能力

とはいっても、ARG 艦艇に支援され、各種航空機及び舟艇による迅速な揚陸能力を有する2千名強のフル装備の海兵部隊の能力は、そうそう侮れるものではないことはお判りいただけると思います。

特に先にお話しした、最近のこの ARG / MEU を独立作戦可能とする ESG としての運用においては。
(この項続く)

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前 : 「その9 ARG / MEU の用途 (続)」

次 : 「その11 海兵遠征旅団 MEB」

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2013年09月11日

米海兵隊の運用法 (9)

ARG / MEU の用途 (続)

ARG / MEU の2つ目の任務である直接対応行動 Direct Action Operation は、その内容はそれこそまさに多種多様です。

USAmphib_Ops_52_s.jpg

この直接対応 DA (Direct Action) という用語については、次の様に定義されています。

Short-duration strikes and other small-scale offensive actions conducted as a special operation in hostile, denied, or diplomatically sensitive environments and which employ specialized military capabilities to seize, destroy, capture, exploit, recover, or damage designated targets.

つまり一般的に言う “特殊作戦 (Special Operations)” です。 ただし、だからと言って必ずしも専門の特殊部隊を使用するわけではありません。

ARG / MEU の任務としての直接対応行動 DAO は、その能力をフルに活かした範囲のものであって、米軍の統一軍 (Unified Command) の一つである特殊作戦軍 USSOC (US Special Operations Command) が実施する作戦とは別の範疇・系列です。

しかも、この DAO は1つ目の本来用途である Amphibious Operations の能力があるから故のものと言えます。

単なる航空機などをもってする兵力投入だけでは、これだけ広汎多彩な任務をこなすことは不可能なことで、まさに海軍・海兵隊の持つ特性と能力が活用できる分野と言えるでしょう。

そして、現今の世界情勢からはこの特殊作戦の必要性が高くなってきていますので、最近は従来の MEU からこの特殊作戦能力を高めた “MEU (SOC)” (MEU Special Operations Capable) へと移行しています。

( 本連載では特に必要の無い限り文中では全て単に MEU と表記しています。)

これに加えて、軍という組織的活動能力を活かした活動、即ち大規模戦闘以外の軍事作戦 MOOTW (Military Operations Other Than War) というものが次第に脚光を浴びてきています。

( “WAR” は普通に訳すと “戦争” ですが、米国の国家としての正式な戦争となるとここではちょっと意味が異なりますので “大規模戦闘” としています。)

そしてこれに伴って、ここ10年来米軍が進めている再編成 Transformation の重点が単なる従来の大規模戦闘能力の強化という面ではなく、「軍事行動の範囲の拡大にどのように対応していくか」 にあると言えます。

つまりこれが米軍が模索しつつある軍事行動範囲 ROMO (Range Of Military Operations)です。

US_JCS_ROMO_01_s.jpg
( 米統合教範より )

もちろん実際にはこのような簡単な分類のものではなく、各事態対応で詳細に検討されていることは言うまでもありません。

US_JCS_ROMO_02_s.jpg
( 米軍部内検討資料より )

( MOOTW 及び ROMO については長くなりますので、機会があればまた別にご説明したいと思いますので、取り敢えずここでは省略します。)

冷戦終結後の一昔前に低列度紛争 LIC (Low Intencity Conflict) という考え方が流行ったことがありますが、現在では更に軍の本来任務である戦闘行動以外の面での作戦が強調されてきました。

このため、MEU の用途の3番目にこの MOOTW 行動が掲げられるようになりました。

USAmphib_Ops_50_mod1_s.jpg

とは言っても、この MOOTW 対応に常時洋上即応待機の ARG / MEU をいちいち使っていたのでは、本来対応すべき軍事的危機への対応にタイミングを失するおそれがありますし、言い方は悪いですが早い話し “もったいない” ということになります。

このため、米海軍・海兵隊も、戦闘行為を前提とした軍事力の投入用としてではなく、MOOTW にもその能力を活かして適切に対応すべく、従来の MAGFT の考え方を更に拡張し、MEF - MEB - MEU という段階に加えて、特殊目的の MAGFT、Special Purpose MAGFT というものも導入しました。

USAmphib_Ops_59_s.jpg

この SPMAGTF は自衛以外の戦闘行為は前提としない用途のものですので、実際に使われる場合には、必ずしも本来のフル装備の部隊であるとは限りません。

例えば大災害救援や難民救援では戦車などは必要ありませんから、事態・状況に応じて必要な装備及び兵力で構成され、所要の地に派遣されます。 

この SPMAGFT はバングラディッシュの大洪水や、ハイチの震災を始め、近くは一昨年の東日本大震災への SPMAGTF Tomodachi など、昨今世界中の極めて多数の事態にその都度その都度の規模・編成・装備で出動しています。


なお、ARG / MEU は以上の3つの主要用途に加え、必要に応じて (要請に応じて) その能力を活用して、他の組織、軍、部隊に対する支援作戦 Supporting Operations を実施します。

USAmphib_Ops_54_s.jpg

上の図はその一例を列挙したものですが、ご覧いただけばどの様なものかはご想像がつくと思いますので、それぞれの細目についてのご説明は省略します。
(この項続く)

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前 : 「その8 ARG / MEU の用途」

次 : 「その10 ARG / MEU の限界と制約」

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2013年08月27日

米海兵隊の運用法 (8)

ARG / MEU の用途

それでは、現在の ESG の母体である ARG / MEU について、米海軍・海兵隊はどの様な用途・使い方を考えているのでしょうか?

これについては、今の日本ではちょっと考えられないくらい広汎・多彩なものです。

まず ARG / MEU の任務です。

USAmphib_Ops_49_s.jpg
(注): Wx = Weather

ここに揚げた文は米海兵隊の公式ブリーフィング資料からのものです。 強いて日本語に意訳すると次の様になるでしょうか。

◎ 昼夜を問わず、悪天候下でも、水平線の遥か向こうの海上から、 (電波などの) 輻射管制下に (= 相手に悟られることなく、の意) 、舟艇や航空機などを使って、通常の両用作戦及び海上からする特定の特殊作戦を、予令受領から6時間以内に行動に移すことが可能な、前方展開による迅速な危機対応能力を戦域軍指揮官に提供する。


◎ 多種多様な不測事態に対する (軍事的) 要求に応じるため、後に続く海兵空地任務部隊又は統合/共同部隊の先陣として機能する。


これを要するに、米国に対する危機発生時に軍事的対応として真っ先に使用し得る “何でも屋” であるということです。

そしてこのために ARG / MEU が有する能力の用途は、大きく分けると次の3つです。

USAmphib_Ops_50_s.jpg

もちろん一番目の両用作戦 Amphibious Operations と一言で言っても、簡単ではありません。 この両用作戦は次の4種類に区分されます。

USAmphib_Ops_51_s.jpg

撤収 Withdrawal については感覚的に、何となくこんなものか、はお判りいただけると思いますが、他の3つについてはあまり馴染みのない用語と思います。

これらは米軍の統合教範の一つである 『JP 3-02 Amphibious Operations』 で次の様に定義されています。

ただし、これらの用語については何れも米軍として他に異なった意味の定義がありますが、ここではあくまでも “両用作戦においては” ということでご理解下さい。

強襲 Assault :

The principal type of amphibious operation that involves establishing a force on a hostile or potentially hostile shore.

急襲 Raid :

A type of amphibious operation involving swift incursion into or temporary occupation of an objective followed by a planned withdrawal.

強襲と急襲の大きな違いは、前者は海岸に橋頭堡を築くものであるのに対して、後者は一時的に上陸して目的 (建物・物件の破壊、人員の救出など) を達成すれば直ちに撤収するものであることです。

示威 Demonstrations :

A type of amphibious operation involving the extraction of forces by sea in ships or craft from a hostile or potentially hostile shore.

示威は、相手側の眼に見える形で両用戦による兵力投入の可能性を示すことであり、実際の交戦は伴いません。 この示威は本当の意図を隠すための “陽動作戦” として用いられる場合もあります。

撤収 Withdrawal :

A type of amphibious operation involving the extraction of forces by sea in ships or craft from a hostile or potentially hostile shore.

(この項続く)

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前 : 「その7 遠征打撃群 ESG 」

次 : 「その9 ARG / MEU の用途 (続)」

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2013年08月24日

米海兵隊の運用法 (7)

遠征打撃群 ESG

さて、前回までに海兵遠征隊 MEU と両用即応群 ARG についてお話ししてきました。

ところが、先にお話ししましたように、ARG 自体にはそれを防護する護衛部隊は附属しておりません。 必要に応じて派出される形、あるいは ARG が空母機動部隊 CVBG に組み込まれて強力な遠征部隊を構成する形をとっておりました。

最近は主として次の理由などにより、このやり方に変化が生じております。

1.冷戦後の近年、世界中で発生する危機の状況は必ずしも強力な護衛部隊や航空兵力を必要とぜす、それよりも迅速な対処を要する場合が多くなってきた。


2.昨今の軍事費削減から海軍と言えども十分な数の空母機動部隊を確保するのが困難になりつつある。


3.米軍全体の “Transformation” の中で、米海軍・海兵隊においてもより効率的・効果的な兵力運用の体制を再構築する必要が出てきた。


とは言っても、MEU とそれを搭載する ARG の基本的な考え方、やり方は現在においても依然としてその有効さには少しも変わりはありません。

そこで米海軍・海兵隊が考え出したのは、ARG の基本はそのままとし、これを完全な一つの独立作戦部隊として使おうということです。

これが 遠征打撃群 ESG (Expeditionary Strike Group) です。

ESG_config_01_s.jpg

要するに、LHD 又は LHA での V/STOL 機の運用能力を考慮すると、それなりの航空兵力を有しているわけで、これにイージス艦、SSN 及び MPA などの護衛兵力を付加することにより、部隊として次の様な能力を有することになります。

ESG_power_02_s.jpg

( これらの図及び数値などはいずれも2004年段階でのものですので、戦闘艦艇は少々古いですが、基本的な考え方は現在でも同じで、アーレイバーク級のイージス艦が増えたことにより、より強力になっている訳です。)

そして、従来の空母機動部隊 CVBG を空母打撃群 CSG (Carrier Strike Group) と改称し、必要に応じてこの両者を組み合わせて遠征打撃軍 ESF (Expeditionary Strike Force) という極めて強力な作戦部隊を構成することができます。

ESF_Comp_01_s.jpg

もちろんこの場合、CSG 及び ESG は一つずつとは限らず、情勢に応じて複数ずつの組合せも柔軟に実施可能です。

これが現在の米海軍・海兵隊が採っている平時における危機対応の即応態勢の基本です。

何度も申し上げますが、機動性、即応性をフルに活かした兵力構成及び運用の柔軟性がキーであることです。 今日の危機対応は時間との勝負であることを考えるならば、このことは極めて緊要なことであることはお判りいただけるかと。

そして、これはとてもではありませんが空軍や陸軍で真似の出来るところではありません。 海軍と海兵隊、即ち “海軍部隊 Naval Forces” の持つ大きな特性です。
(この項続く)

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前 : 「その6 両用即応群 ARG (続)」

次 : 「その8 ARG / MEU の用途」

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2013年08月22日

UAVの導入 (続)

先のお話しの中で、わざと触れなかったことがあります。 それはご来訪の皆さんにも考えていただきたかったからです。

そうです、UAV の航空機としての性能 (スペック) についてです。

確かにグローバル・ホークは偵察・情報収集などに用いる UAV としては、他のものに比べて格段に高い性能を有しています。

特に、航続距離、航続時間、飛行速度及び飛行高度については、他の追従を許さないところで、単純に見るなら、このハイ・スペックは魅力的でしょう。

ただし、管制装置なども含めた全体のコストも、現実に米軍でさえ戸惑うほど極めて高額です。

では、このハイ・スペックを何に使い、どの様に活かすのでしょうか? 先に挙がった使用例で見てみますと、


1.大規模災害時の情報収集

確かに、グローバル・ホークは先の福島の時に原発付近上空からの情報収集で活躍しました。

しかしながら、大規模災害時の情報収集において、このようなハイ・スペックのものが必要なのでしょうか? この性能が無ければ役に立たないのでしょうか?

しかも、飛行するエリアは国内なのです。


2.弾道ミサイル発射に対する情報収集

「北朝鮮のミサイル発射など」 と言っていますが、どこで、どの様にして、どの様な情報を収集するのでしょうか?

まさか、米軍の U-2 のように対象国上空を飛行するわけではないですよね。

では、領海外の上空から発射の徴候を監視するためでしょうか? 確かにこの目的のためのフライトとしては、このハイ・スペックは有効かもしれません。

しかしたったこのためだけに必要なのでしょうか? そしてそれは極めて高価なこの UAV でしか出来ないことなのでしょうか? RC-135 や E-8 の代わりになり得るのでしょうか?

もしそうでなければ、極めて勿体ない贅沢な使い方と言えるでしょう。


3.南西諸島周辺の情報収集

例えば、魚釣島周辺で何の情報を収集しようとしているのでしょう。 偵察? 哨戒・監視? 単なる情報収集? 対象は島そのもの? あるいは周辺海域?

周辺海域の船舶航行状況の哨戒・監視であるとすると、それならば対象船舶が見つかるまでは、海保の巡視船艇や海自艦艇は港で待機することが出来るようになるのでしょうか?

離島に上がられた時の偵察と情報収集? ならば、その情報をどの様に使うのでしょうか? 情報が得られてから考える、ですか?

しかも何故わざわざ遠い那覇などから飛ばすと考える必要があるのでしょうか?


これを要するに、偵察や情報収集というのは、単にそれだけでは何の役にも立たないのです。 どこで、どの様にして、どの様な情報を集めるのか、が明確になっていなければなりません。

そして最も肝心なことは、その収集した情報をどの様に使うのか。 つまり、情報収集の結果による、その後の “判断・処置と一体となっていなければならない” と言うことです。

これらを全て総合した上で、使用目的及びコスト・パフォーマンスの両面から、最も効果的・効率的な機種を選択するべきでしょう。


これを認識するならば、今回のグローバル・ホーク導入では、これらのことが何一つ明確になっていないと言うことであり、この様なハイ・スペックなものの必要性が何一つ説明されていないと言わざるを得ません。

単純な “大は小を兼ねる” でもなければ “ハイはローを兼ねる” でもありません。

単に “ハイ・スペックだから” では何の理由にもなっていないのです。 しかも極めて高価であることは脇に置いておいて。

Global_Hawk_3_S.jpg

このことは本日の読売新聞での報道内容でも全く明らかになっておりません。


艦船や航空機の動きを捉える。中国機の接近に対する空自の緊急発進が急増しており、無人偵察機での抑止力向上が必要と判断した。

上記の3項に加え、更に“艦船も航空機も”ですか。 一体どの様な能力を持った UAV を何機、どの様に飛ばしたらこれらのことが可能になると考えているのでしょうか? たった3機のグローバル・ホークの能力がでこれら全てが可能?

米軍三沢基地(青森県)を軸に配備場所を調整し、航空自衛隊と米空軍の共同運用で警戒監視活動の拡充を進める。

三沢に? 米空軍との共同運用の便という理屈以外に、地理的に何のメリットがあってわざわざ?

私に言わせて貰えれば、ますます防衛省・空自が何を考えているのか判らなくなりますね。 所詮は “陸軍本土防空隊” と言われているとおりの思考の範囲から出ていないような・・・・?


特に南西諸島周辺のことを考えるならば、私がなぜ先のお話しで Time-Sencitive Targetting を持ち出したのか。

考えても見て下さい。 もし魚釣島などが上陸・占領されたとして、夜な夜な MQ-1 Predator などのような武装可能タイプの UAV を上空に滞在させて偵察・情報収集にあたるとともに、上空から見つけ次第その場で直ちに直接攻撃するとしたら。 しかもわざわざ那覇などから飛ばす必要はないのですから。

Predator_02_s.jpg

もちろん、上陸したての勢力にこれに対処する装備があることは考えられませんし、海保・海自によって海上封鎖されていれば、補給も増強もできません。

そしてこのことは、南西諸島に上陸・占領しようとする企図に二の足を踏ませる、絶大な抑止効果に成り得ます。

なぜ、グローバル・ホークなのでしょう?

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前 : 「UAVの導入」

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2013年08月20日

米海兵隊の運用法 (6)

両用即応群 ARG (続)

太平洋には前回ご説明した ARG A に加えて、第7艦隊所属の佐世保を母港とする PHIBRON 11 に沖縄の III MEF 隷下の 31 MEU を搭載した ARG B と呼ばれるものがあります。

USAmphib_Ops_24_s.jpg
(PHIBRON 11 の構成は現在のもの)

この ARG B は前回ご説明した ARG A とはちょと異なり、次の3つを主任務とします。

USAmphib_Ops_25_s.jpg

これは、沖縄に前方展開する III MEF が極東における抑止力として機能するためには、その MEU は常時洋上待機とするよりは、必要に応じて展開する方が効果的と考えられてるためです。

( つまり、III MEF は、ベトナム戦争などの大規模紛争時を除くと、純粋に極東の抑えであり、逆に言うと米海軍の兵力運用の振り回しからすると極東の人質という足枷になっているわけです。)

加えて、即応待機している ARG A をアジア諸国との共同演習など (これが年間相当な数に上ります) に使うわけにはいかないためでもあります。

USAmphib_Ops_26_s.jpg

ところが、最近の国際情勢からは、中東及びインド洋での必要性が高まり、即応待機の2個の ARG では不足するためにそうも言っておられず、これに加えて昨今の国防費・国防兵力削減が追い打ちをかけ、この ARG B (MEU 31) も忙しくなってきました。


なお ARG そのものには護衛艦艇は含まれませんが、当然ながらこれが作戦を行う時には別に護衛部隊が指定されますし、状況によっては ARG が空母機動部隊 CVBG (Aircraft Carrier Battle Group) に組み込まれて作戦部隊を編成することもあります。

( 最近この ARG を中核として更に強化した態勢がとられるようになりましたが、この米海軍の危機対応のやり方及び従来方式からの変化については次回で。)


ところで、ここで注意しなければならないことは、当然ながらこれら ARG は単に約2000名強の規模の1個 MEU の全兵員、装備・機材、物資を搭載していればよいという訳ではありません。

どこでどのような形で勃発するか判らない危機に対し、MEU をいつでも最適に運用して任務を完遂できる態勢を整えていなければなりません。

このため、ARG にはARG 指揮官とその司令部に加え、更に支援部隊として次のものが配属されて乗り組んでいます。

  艦隊外科医療班 Fleet Surgical Team (FTS)
  海軍海岸主導分遣隊 Naval Beach Group Detachment (NBG det.)
  捜索救難分遣隊 Search and Rescue Det. (HC SAR det.)
  水中処分分遣隊 Explosive Ordnance Disposal Det. (EOD det.)
  戦術航空管制分遣隊 Tactical Air Control Squadron Det.(TACRON det.)
  艦隊情報戦センター分遣隊 Fleet Information Warfare Center Det. (FIWC det.)
  海軍特殊戦任務隊 Naval Special Warfare Task Unit (NSWTU)

これらの将兵は、本来の部隊から単にその時に ARG に割り当てられて乗艦している、いわゆる “お客さん” や “便乗者” ではありません。

当然ながら、各自の専門に加えて両用戦及び外地での作戦について、そしてARG や MEU の作戦行動内容について、十分な知識と技量、経験をもったスペシャリスト達です。

そして、MEU と同じく、これら全てが展開予定の ARG として事前準備・事前訓練を行い (通常6ヶ月間)、最終的な展開前検閲を受けます。

もちろんこの検閲に合格しなければ最悪 ARG 指揮官が即座に更迭されるか、少なくとも不合格となった部隊の指揮官更迭、部隊再編成の上で、改めて ARG 展開準備のやり直しとなります。

したがって、現実に即応展開している ARG には、両用艦艇の固有乗員と搭載する1個 MEU に加え、これらの要員を含めた数千名 (総計はその時その時で異なってきます) の人員が、高練度の一体となった運用態勢を整えているのです。

このことをとっても、単に海自輸送艦艇に上陸戦用の陸自部隊を搭載し、所要の地で陸揚げすれば、などという話しのレベルではないというはお判りいただけるでしょう。
(この項続く)

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前 : 「その5 両用即応群 ARG 」

次 : 「その7 遠征打撃群 ESG 」

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2013年08月18日

UAV の導入

防衛省が来年度からの防衛予算で UAV 3機の導入を決めたと毎日新聞が伝えています。


これは今年度予算での調査費100万円を使った上での結論なのでしょうか?

今回導入を目指すのは既に実績のある 「グローバル・ホーク」 (RQ-4 Global Hawk) だとしています。

Global_Hawk_01_s.jpg

Global_Hawk_02_s.jpg

その導入目的は

中国軍の動きが活発化している南西諸島周辺や、北朝鮮のミサイル発射など、24時間体制の警戒・監視が必要な場面で活用する。

としていますが、この機種選定の理由がどうも当初から

機能は偵察に限られ、攻撃能力は持たない。

に絞ってしまっているようです。

まず最初の3機はこれで、というのならまあ判らないではありませんが ・・・・

使用目的に 「南西諸島周辺」 が入っているならば、なぜこちら ↓ にしないのでしょうか?

Predator_01_s.jpg
( MQ-1 Predator / MQ-9 Reaper )

しかも何故初めからその様なことに言及するのでしょうか? しかも、わざわざマスコミを通じて今から公表する必要もないことを。

現在のところグローバル・ホークの発展型には武装可能タイプは無いと聞いています。 となると、当然ながらその目的には別の機種が必要となり、したがってこのための管制設備などはまた余分に必要となります。

限られた防衛予算の中で、効率と効果を追求するならば、初めから武装可能な能力を備えていることは必要であると考えます。 もちろんこちらも既に十分な実績があることは申し上げるまでもありません。

UAV の長時間滞在、高機能の偵察・監視能力に加え、この ↓ 能力を活かした武装可能タイプは 「離島防衛」 に極めて有効であるからです。

GlobalHawk_wildfires_photo_01_s.jpg
( グローバル・ホークが撮影したカルフォルニアの山火事の赤外線写真 )

この写真は一般公開用のもので、軍事用のものではありませんが、それでも私が何を考えているかの一端は十分ご理解いただけるでしょう。

実際に使う場面が出る出ないに係わらず、この武装可能タイプの導入により相手に対する十分な “意思表示” としての抑止効果を期待できます。

そして更に言うならば、「離島防衛」 にはこういった ↓ 能力を備えることも重要なのです。 米軍は既に10年も前から認識して実践しています。

HNDBK_JTST Cover_02_s.jpg

陸自の AAV7 導入といい、このグローバル・ホーク導入といい、何か中途半端な構想であり、私からすれば “本当にそれでいいの?” と思わされます。

今、ミリタリーの世界は既に C4ISR から更に進んで

C4ISRT

です。
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次 : 「UAVの導入 (続)」

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2013年08月16日

米海兵隊の運用法 (5)

両用即応群 ARG

前回、MEU が世界中で突発する米国としての危機に第一義的に即応するために、6ヶ月交代をしながら常時前方展開する (している) とご説明しました。

しかしながら流石に海兵隊といえども、冗談にも米本土から海を泳いで海外に展開する訳にはいきません (^_^;

ではどのようになっているのでしょうか?

これが今回ご説明する米海軍の両用即応群 ARG (Amphibious Ready Group) (通称 “アーグ” と呼びます) と言われるものです。

ARG は、指定された管理編成の両用戦隊 PHIBRON (Amphibious Squadron) の中から各種タイプの両用戦艦艇3〜4隻で構成されるもので、これに先の1個 MEU を搭載し、指定された ARG 指揮官 (通常は両用戦隊司令 COMPHIBRON) とその司令部が運用します。

USAmphib_Ops_23_s.jpg

ARG の指揮官は MEU の指揮官がなるのではないことには注意して下さい。 両用戦 (上陸作戦) は海軍が行うものだからです。 つまり ARG は単なる輸送部隊ではない、ということです。

USAmphib_Ops_18a_s.jpg

1個 ARG には1個 MEU の人員と、その装備、機材及び15日分の弾薬・補給物資を搭載し、世界中の海洋に接する如何なる場所における危機にも直ちに対応できるように常時洋上待機します。

つまり、1個 ARG のみで、所要の地に到着後に直ちに搭載するヘリコプターや LCAC、AAV7などにより自力で上陸作戦を行い、15日間の1個 MEU のフル戦闘行動を支援することが可能です。

最近までは、この MEU を搭載した ARG は、太平洋と地中海に1隊ずつ MEU の展開サイクルと同じ6ヶ月交代で恒常的に展開し、状況に応じて大西洋、カリブ海やインド洋などにも配備する態勢をとってきました。

ただしこの ARG、実際の任務編成上では太平洋には2つあります。 それぞれ通常は ARG A (アーグ・アルファ) と ARG B (アーグ・ブラボー) と呼ばれ、以前は第7艦隊両用任務部隊指揮官 CTF76 の下に TG76.3 及び TG76.4 の番号が割り当てられていました。

( 任務編成ですので当然のことながら TG 番号はその時々の情勢・状況により変わってきます。)

( CTF76 である COMPHIBGRU 1 は、2006年にそれまでの両用戦艦艇に加え対機雷戦部隊や特殊作戦部隊などを統合した COMAMPHIBFOR7THFLT (Commander Amphibious Force, 7th Fleet) に改編されました。)

この内、ARG A が米戦域軍 (統合軍) たる米太平洋軍 (US Pacific Command) における危機対応の第一義的な即応部隊となっています。

USAmphib_Ops_22_s.jpg

太平洋艦隊水上部隊 NAVSURFORPAC (Naval Surface Force, Pacific Fleet) に属する4個の両用戦隊 PHIBRON (Amphibious Squadron) と I MEF の3個の MEU との何れかとの組合せにより、6ヶ月交代で米西海岸から展開し、常時洋上待機します。

( 太平洋艦隊における各 PHIBRON は、以前は第3両用戦群 PIHIBGRU 3 (Amphibious Group Three) の下に編成されていましたが、現在ではこの PHIBGRU 3 はなくなり、直接 COMNAVSURFORPAC (Commander Naval Surface Force, US Pacific Fleet) の下に置かれています。)

この “常時洋上待機” というのは、余程のことが発生しない限り、6ヶ月間どこにも帰港しないということです。

しかも、この6ヶ月の間常にその部隊・個人の練度・技量を維持しなければなりません。 艦上の海兵隊員のことを考えただけでも、これが如何に凄いことかをご想像ください。

もちろん、突発的な事情により止むを得ず特定の艦を港に入れることも全く無いわけではありませんが、その場合でも48時間以内に出港することが絶対条件です。
(この項続く)

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前 : 「その4 海兵遠征隊 MEU」

次 : 「その6 両用即応群 ARG (続)」

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2013年08月10日

米海兵隊の運用法 (4)

では、米海軍・海兵隊は、世界中の何処かで勃発するかもしれない危機に対して、どの様な態勢でどの様に対処しようとしているのか、に入ります。


海兵遠征隊 MEU

沿岸域の陸上に対する投入戦力としては、空母艦載機によるものを除くと、海兵遠征隊 MEU (Marine Expeditionary Unit) が、米国による世界中に勃発する危機対応の第一義的なものとなります。

その兵力構成の標準は次のとおりです。

USAmphib_Ops_15_s.jpg

ただしこれはあくまでも標準というより一つの目安であって、実際の編成はその時その時で異なってくることに注意して下さい。 事態・状況に対応して柔軟な編成を採るのがこの MAGTF の特徴だからです。

したがって、実際のところ米軍の公式資料によってもそれぞれ装備や人員数がその時その時で多少異なっているものがありますが、どれもが正しいと言えます。

そして注意していただきたいのは、この MEU 編成において各エレメントの中の各部門に合計で約100名もの海軍将兵が含まれていることです。 約100名の海軍の部隊1つが組み込まれているということではありません。

ということはつまり、平時における人事・装備と教育訓練などの全ての面において、海兵隊と海軍とが一体となってその体制を作っていなければいなければできない話しです。


MEU の指揮官は大佐クラス (O-6) であり、それを補佐する司令部 (CE) のメンバーは常設です。 そしてこの司令部の下に、管理編成の部隊から準備の整った兵力が割り当てられて、実動の編成がなされます。

この MEU は、I MEF に 11、13、15 MEU、II MEF に 22、24、26 MEU、そして III MEF には 31 MEF があります。

MEU_Position_01_s.jpg

しかしながら、この中で平時において実際に全兵力が配置された上で、即応態勢におかれて前方展開する (している) MEU は I MEF 及び II MEF からそれぞれ各1個 MEU のみです。

III MEF の 31 MEU だけはちょっと特別で、III MEF 自体が沖縄に前方展開していることから、この 31 MEU は太平洋・インド洋各国との共同訓練・演習などで出動する以外は、通常沖縄待機が基本とされています。

とは言いながら、昨今の情勢・状況からそうも言っておれず、最近では実作戦行動に駆り出されることも多くなりました。

この I MEF 及び II MEF から派出される MEU の即応前方展開は、6ヶ月毎にそれぞれの3個ずつの MEU の中から輪番で交代しつつ、常に1個ずつの MEU が継続して実施することになります。

例えば、最近のある時点での MEU の状況は、次のとおりであったとされています。

MEU_Deploy_01_s.jpg
( 米海兵隊の公式資料から )

ただし当然ながら、この半年の即応展開期間中に実際に危機対応した場合には、順番や交代時期などが変わってくることは申し上げるまでもありません。

また、最近はこの MEU の出番というか必要性が大きくなりまして、なかなか振り回しに苦労しているのが実情のようです。 このため上にも書きましたように、III MEF の一つしかない 31 MEU まで実任務に駆り出されるケースが増えてきました。
(この項続く)

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前 : 「その3 海兵空地任務部隊 MAGTF」

次 : 「その5 両用即応群 ARG」

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2013年08月06日

米海兵隊の運用法 (3)

海兵空地任務部隊 MAGTF

では、米海兵隊の主作戦兵力である艦隊海兵隊 FMF がどのように使われるのか、ということですが、その運用の基本が海兵空地任務部隊 MAGTF (Marine Air-Ground Task Force) (通称 “マグタフ” と呼びます) と言われるものです。

MAGTF は余程特殊な任務用、例えば、平和維持活動、災害派遣、医療支援、及び在外自国民避難など、主としていわゆる MOOTW (Military Operation Other than War) でない限り、必ず司令部 (Command Element、CE)、陸上戦闘部隊 (Ground Combat Elemant、GCE)、航空戦闘部隊 (Aviation Combat Element、ACE)、戦闘役務支援部隊 (Combat Service Support Element、CSSE)というの4つの要素で構成される任務 (統合) 部隊が作戦・運用単位となります。

USAmphib_Ops_08_s.jpg

即ち、米海兵隊は陸軍のような大隊とか師団などと言った管理編成がそのまま戦闘・作戦単位として使われることはありません。 必ずこの兵種混合の一体かつバランスのとれた部隊として運用されます。

そして MAGTF は、作戦規模と作戦目的によって、次のように MEF (Marine Expeditionary Force)、MEB (Marine Expeditionary Brigade) (通称 “メブ” )、MEU (Marine Expeditionary Unit) (通称 “メウ” ) という3段階の部隊編成の何れかがとられます。

MAGTF_01_s.jpg

その他、Special Purpose MAGTF というものもありますが、これは上記の特殊な任務用のもので、軍本来からすればいわば片手間的なものと言えます。 とは言え、昨今の国際情勢からはこれの活用場面が増えていることも確かですが (^_^;

(米軍における MOOTW や ROMO (Range of Military Operations)の考え方については、これはこれで一つの項目になりますので、機会があればまた別に。)

海兵隊の実戦部隊は MEF が最大でこれ以上の編成はありません。 というより、標準の MEF 以上の規模が求められる場合には、この MEF 編成がどんどん大きくなるだけのことです。

つまり、MEF、MEB、MEU というのは、単にその兵力規模の大小の違いというだけではなく、次のように基本的な運用の方法が夫々で異なるのです。

USAmphib_Ops_13_s.jpg

実際にどの様に異なるのかは本項のメインにもなりますので、この後順次詳細にご説明します。


さて、現在の米海兵隊の FMF は4個 MEF で構成されており、Force Provider 、即ち準備・態勢の完了した海兵隊部隊を艦隊に提供するための (実際の作戦指揮の権限は持たない) Marine Force Pacific (MARFORPAC)、同 Atlantic (MARFORLANT) 及び同 Reserve (MARFORRES) の下に次の様に配備されています。

USAmphib_Ops_03_s.jpg

常設の実動部隊は I 〜 III の3個 MEF で、IV MEF は即応予備です。 ただし IV MEF は予備とは言ってもその大部分は即応予備役 (Individual Ready Reserve、IRR) と特定予備役 (Selected Marine Corps Reserve、SMCR) の海兵隊員で構成されており、定められた定期的な召集訓練を繰り返し、必要に応じ即時に動員されて実戦配備に就く態勢が維持されています。

( もちろん同じ “即応予備” とはいっても、陸自のものとは規模も、内容も、レベルも、全く違いますが。)

これらはの MEF は、管理編成としてはいずれも1個海兵師団 (Marine Division)、1個海兵航空団 (Marine Aircraft Wing)、1個後方支援群 (Marine Logistic Group)、及びその他の部隊で構成されます。

“その他の部隊” と簡単に言ってしまいましたが、大変に沢山の部隊、兵種があります。 詳細については米海兵隊の公式サイトをご参照いただくとして、ここではひとまず省略します。

そして、これらの管理編成上の部隊から、それぞれその時その時の作戦上の要求に応じて必要な規模、内容、装備の兵力が実動編成の MEF、MEB、MEU に割り当てられます。

例えば、カルフォルニアに本拠を置く I MEF には MEF 自体の他に I MEB 及び 11、13、15 MEU という作戦部隊がありますが、これらは恒常的に存在するのは司令部のみで、兵力は必要に応じて管理編成の各部隊の中から訓練及び作戦準備が出来ている戦闘単位が割り当てられます。

というより、平時においては MEB 及び MEU は即応態勢維持のために、次はお前の部隊の番だ、一緒に組み合わされる他兵種部隊はこれこれだ、と言うように予め指定されたものである場合が多いのですが。

したがって通常はこの運用サイクルと予期される任務を見越して、人事・装備などを整え、それを以って部隊としての必要な教育訓練を行って、最終的な検閲に合格した上で実戦配備に就くことになります。

( この検閲に不合格となった場合には、指揮官は直ちに更迭、配属部隊は必要に応じて入れ替えられた後に新指揮官の下で改めて練成し直します。 このため交代時期がずれることもあり得ます。)

もちろん MEF というような大規模な兵力が必要になった場合には、その割り当てられている管理編成部隊の作戦可能な全兵力で対応することは申し上げるまでもありませんし、状況によっては即応予備の IV MEF などからの増強を受けることもあります。

とはいっても、危機対応でその MEF 全体がいきなり出ることはまずありませんで、それより先に、他の MEF からのものも含めた、即応態勢にある MEU や MEB が動いている可能性が高いですし、MEF の先遣部隊として MEB 規模レベルの MEF FWD (Foward) が出る場合がありますが、これについてはこのあと順に詳しくお話しして行きます。

要は、海兵隊の運用は、事態に応じた即応性と MAGTF 編成の柔軟性が特徴であり、カギであると言うことで、これは決して陸軍 (そして空軍も) には真似の出来ないところです。

しかもそれを可能とするのは、海軍と一体となったものであるからこそ、ということを頭に置いていただき、次に進みましょう。
(この項続く)

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前 : 「その2 米海兵隊とは何か」

次 : 「その4 海兵遠征隊 MEU」

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2013年08月04日

米海兵隊の運用法 (2)

米海兵隊とは

以前ネット上のさる掲示板でもこの “米海兵隊とは何か?” ということについて議論が交わされていたことがありました。 もちろん私は ROM の傍観でしたが、基本的には 「米4軍中の1軍種」 ということの認識では一致していたと記憶しています。

確かに行政組織として、また海兵隊の処遇・栄誉上の問題からすれば 「Four Armed Forces」 の一つというのは正しいでしょう。

そして海兵隊トップの海兵隊総監 (Commandant of the Marine Corps) は、大統領及び国防長官に対する米軍全体の統合運用に関する補佐機関たる統合幕僚本部 (Joint Chief of Staff、JCS) において、陸海空3軍のトップと並んでそのメンバーの一人でもあります。

( 実際には JCS は議長・副議長の元に、上記に州兵局長 (chief of national gurd bureaue) を加えたメンバーの他、多数の下部部局などで構成されています。 もちろん、大統領や国防長官には専門事項は判りませんので、実質的には JCS が統合部隊のみならず全米軍の運用・作戦を握っているのですが。)

しかしながら、海兵隊の作戦部隊 (Operational Force) としての役割、位置付けの実際・実態はどうなのでしょう? 本当に 「米4軍中の1軍種」 なのでしょうか?

そして当の陸上自衛隊でさえ、米海兵隊を陸軍と並ぶ自分のカウンターパートとして見ています。 要するに、単なる上陸作戦が得意な陸上戦闘兵力であると。

実はこれでは全く米海兵隊 (U.S. Marine Corps) の本質について言い表していないと言えます。

そこでまず、米国の法律ではどのように定められているか、から見てみましょう。

米海兵隊については、合衆国法典の第5063 (a) 項 (U.S. Code 5063, Chapter 507, Part 1, Substitle C, Title 10) で次の様に定められています。

USC : Title 10 - ARMED FORCES
Subtitle C - Navy and Marine Corps
Part I - ORGANIZATION
Chapter 507 - COMPOSITION OF THE DEPARTMENT OF THE NAVY

§ 5063 - United States Marine Corps: composition; functions

(a) The Marine Corps, within the Department of the Navy, shall be so organized as to include not less than three combat divisions and three air wings, and such other land combat, aviation, and other services as may be organic therein. The Marine Corps shall be organized, trained, and equipped to provide fleet marine forces of combined arms, together with supporting air components, for service with the fleet in the seizure or defense of advanced naval bases and for the conduct of such land operations as may be essential to the prosecution of a naval campaign. In addition, the Marine Corps shall provide detachments and organizations for service on armed vessels of the Navy, shall provide security detachments for the protection of naval property at naval stations and bases, and shall perform such other duties as the President may direct. However, these additional duties may not detract from or interfere with the operations for which the Marine Corps is primarily organized.
( 赤色は管理人が付加 )

これを要するに、米海兵隊の大きな役割は次の2つといえます。

  1.艦隊海兵隊 (Fleet Marine Forces、FMF) を艦隊へ提供する
  2.保全隊 (Security Detachments) を艦隊・基地・在外公館などへ提供する

2.については、例えば虎ノ門の在日米大使館の警備任務に海兵隊員が就いているのをご覧になったことがある方もおられると思います。

これも米海兵隊にとっては正規の任務の一つではありますが、メインではありませんし、本題から離れますので省略し、以後本項で取り上げるのは1.の FMF についてです。


では、FMF とは米軍全体の組織編成の中でどこに位置し、どこに所属するのでしょうか?

次の図は、米海軍の公式サイトで米海軍の組織図として掲げられているものです。


赤丸で示したところに注意して下さい。 そうです、FMF とは米海軍の太平洋艦隊 (Pacific Fleet) 及び大西洋艦隊 (Atlantic Fleet) の一部なのです。

これを更に横須賀を母港とする米第7艦隊の任務編成の例で見てみましょう。 これも第7艦隊の公式サイトに掲げられているものです。


(この任務編成は年代によって多少変わってきていますが、TF−70、72、74、76、79の基本は変わりません。 7艦隊のメインの部隊ですから。)

そこで、右下に TF-79 (Landing Force, 7th Fleet) とありますが、これは何でしょう?

実はこれが沖縄の米第3海兵師団 (3rd Marine Division) や岩国の米第1海兵航空団 (1st Marine Aircraft Wing) を主体とする第3海兵遠征軍、即ち III MEF (3rd Marine Expeditionary Force) (通常 “スリー・メフ” と呼びます) のことであり、上記 FMF の一部なのです。

つまり、FMF が米海兵隊全体の主要部を占めるものでることを考えれば、実質・実態的に “米海兵隊は米海軍の一部” なのです。

これが米海兵隊についての基本中の基本であって、この認識なしには米海兵隊は語れませんし、その実態は見えてこないのです。

このため、

USAmphib_Ops_02_s.jpg

公式文書や論文などで 「Naval Forces」 あるいは 「Naval Services」 と言った場合には米海軍及び米海兵隊を併せた (場合によっては沿岸警備隊も含む) ものを意味します。

また単に 「Navy」 と言った場合には、米海軍と米海兵隊を併せたもの意味する場合と、米海軍そのものを意味する場合とがあり、このどちらであるかはその文書の主題や前後の文脈の中で判断することになります。

もちろん 「US Navy」 と言えば通常は狭義の米海軍のことになりますが、現実としては米海軍と米海兵隊は一体となっていますので、厳密に両者を区別することは不可能と言えます。

( 例えば、横須賀の在日米海軍司令部には海兵隊士官の作戦部幕僚が配置されていますが、彼は別に海兵隊に関する専門事項を所掌しているわけではなく、一般幕僚として作戦部の業務を遂行しています。)

これを考えれば、行政組織としても、何故今日に至るも米海兵隊は陸海空軍3省と並ぶ独立した米海兵隊省ではなく、米海軍省 (The Department of the Navy、DON) に含まれ、何故海軍長官(The Secretary of the Navy)の下に置かれるのかがお判りいただけるとと思います。

また海兵隊士官の養成機関として、何故 「海兵隊士官学校」 (US Marine Corps Academy) と言うものが存在せず、通称 「アナポリス」 と呼ばれる 「海軍兵学校」 (US Naval Academy) で海軍士官養成と一緒になっているかの理由もお判りいただけるでしょう。

( 最近ではウェストポイント、即ち陸軍士官学校 (US Military Academy) からも海兵隊へ進む道が出来ているようですが、あくまでも少数の例外的存在です。)
(この項続く)

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前 : 「その1 はじめに」

次 : 「その3 海兵空地任務部隊 MAGTF」

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2013年07月31日

米海兵隊の運用法 (1)

はじめに

7月26日防衛省は 「防衛力の在り方検討のための委員会」 が纏めた 『防衛力の在り方検討に関する中間報告』 を公表しました。

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( 同中間報告書表紙より )


これについてはマスコミによっても広く報道されていますので、ご来訪の皆さんもよくご存じのここと思います。

その中で、「島嶼部に対する攻撃への対応」 として次のことが盛り込まれています。

事態の推移に応じ、部隊を迅速に展開するため、機動展開能力や水陸両用機能 (海兵隊的機能) を確保することが重要となる。 具体的には ・・・・ (中略) ・・・・ 事態への迅速な対応に資する機動展開能力や水陸両用機能 (海兵隊的機能) の着実な整備のため、部隊・装備の配備、統合輸送の充実・強化や民間輸送力の活用、補給拠点の整備、水陸両用部隊の充実・強化等 について検討する。
赤字 及び 太字表示 は管理人による )

「海兵隊的機能」 という言葉が2回出てきます。 これが 「水陸両用機能」 を指すのか、それとも 「機動展開能力や水陸両用機能」 を指すのかが不明瞭なところがありますが ・・・・

何れにしても、その後に出てくる 「水陸両用部隊の充実・強化」 という表現と併せて見ると、この報告書を纏めた委員会の人達も、また防衛省自身も、本当に 「海兵隊的機能」 という言葉の 「海兵隊」 というものの本質・実態が判っているのか? と疑問に思わされます。

そもそも、自衛隊には 「水陸両用部隊」 など存在さえしないのですから。 (海自に 「おおすみ」 型輸送艦やその搭載 LCAC があるではないか、などという冗談は言わないで下さい。)

もっとも危惧するのは、旧陸軍のような単に “陸兵を海岸に揚陸できればそれでよし” 程度の認識ではないのかということです。

もし、長崎の相浦に駐屯する陸自の西方普通科連隊などに AAV-7 を配備してこれで訓練をし、海自の輸送艦で運んで統合運用すれば “海兵隊もどき” になる、などと考えているとしたらとんでもない話しです。

そして、例えば現代における世界最強の海兵隊を自他共に認める米海兵隊の実際・実態をどこまで理解できているのか? という疑問です。

そこで、私がかつて防大教授の時に学生に講義したものをもとに、これに最近の動向を加味した米海兵隊、そして米海軍両用戦部隊の実態・実際について、何回かに分けてお話しをしてみたいと思います。

USAmphib_Ops_01_s.jpg
( 同講義資料PPトップより )

(この項続く)

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次 : 「その2 米海兵隊とは何か」

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2012年12月24日

拙稿もう1本 『丸』 2月号別冊

実は2月号ではもう一本書かせて貰いました。

この2月号には別冊付録として 『海自護衛艦ハンドブック』 というのが付いています。

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その巻頭として私の持論を書かせて貰いました。

『現代の海自護衛艦論』

基本は、これからの護衛艦はどうあるべきか、なのですが、創設期から今日までの流れを無視するわけにはいきませんので、今までの経緯と現状を概観し、最後に今後の護衛艦のあり方について述べております。

もちろん紙幅の関係がありますので、詳しく論ずる訳にはいきませんでホンのさわりですが、皆さん方がこのテーマについてお考えになる時の何某かの参考としていただければと思います。

そして私らしく少し辛口の論評も加えて (^_^;

こちらも、書店で見かけた時には是非一度手にとってご笑覧下さい。

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2010年11月23日

電子戦のこと (4)

 電子戦関連の書籍や資料についてご紹介したついでに、ちょっと補足しておきましょう。

 前回の (3) でも記注しましたが、これまで電子戦 (Electronic Warfare) については大きく次の3つに分類されてきました。

   ESM  : Electronic Warfare Support Measure、電子戦支援対策
   ECM  : Electronic Counter Measure、電子対策
   ECCM : Electronic Counter-counter Measure、対電子対策

 この3つの用語については、皆さんもよく耳にされておられると思います。 これらが現在では次の様に変わりました。

   ESM  → ES (Electronic Warfare Support、電子戦支援)
   ECM  → EA (Electronic Attack、電子攻撃)
   ECCM → EP (Electronic Protection、電子防護)

 もちろん、単に名称が変わっただけではなく、その内容も若干変わってきました。 電子戦におけるこれらの位置付けについては、例えば次の図をご覧ください。

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( 後述の 「JP 3-13.1」 より )

 これは、戦闘様相の変化に伴い、C2W (Command and Control Warfare)、IW (Information Warfare)、NCW (Network Centric Warfare) などの概念が次々と出てきたことによります。

 現在の米軍における情報戦 (IW) の中での位置付けについては、次のとおりとされています。

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( 後述の 「AFD 2-5.1」 より )

 当然ながらこれらの概念は、米軍が変わればそのまま自衛隊もほぼ自動的に変わるわけで (^_^;

 そこで、現在の米軍における電子戦の概念やドクトリンについてですが、次のものが公表されています。 これらのものは、言わば “考え方” の話しですから秘密でも何でもありません。

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( 統合軍 『JP 3-13.1 Electronic Warfare』 )

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( 陸軍 『FM 34-1 Intelligence and Electronic Warfare Operations』 )

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( 空軍 『AFD 2-5.1 Electronic Warfare』 )

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( 海兵隊 『MCWP 3-40.5 Electronic Warfare』 )

 では、米海軍は何故この種のドクトリンが無いのか?

 まず一つはわざわざ文書にして出す必要性がないことと、二つ目のは陸軍や空軍とは少し考え方が違うということがあります。 それは米海軍のドクトリン全般の現状をご覧いただければご理解いただけるでしょう。

 米海軍にしてみれば、海の上でのことに “統合” など余計なお世話、陸・空軍が海軍に合わせればそれで充分と考えているのでしょう。

 その代わり、戦術・テクニックなども含めた電子戦関係のマニュアルや資料類には多くのものがあります。 もちろんこれらは少なくとも 「極秘」 以上で、部外に出てくることは全くと言ってよいくらいありません。

 では電子戦の実際面ではどこが最も進んでいるのか?

 これはもちろん当然のこととして米海軍が圧倒的です。 米空軍では? と思っている方もおられるかも知れませんが、一般にも出回っている内容を垣間見るだけでもそれはお判りいただけるかと。

 これは我国の海自と空自を比較しても同じことです。 もちろん我が空自などはちょっとお粗末に過ぎるのですが (^_^;
posted by 桜と錨 at 14:25| Comment(2) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2010年11月19日

電子戦のこと (3)

 続いて電子戦の基礎というか、入門用のものですが ・・・・ これが市販のものではなかなかこれというのが無いですね。

 特に日本語のものとなると非常に難しいです。 例えば、アマゾンでも 「電子戦」 「電子兵器」 で検索してみると、次のものが出てきます。

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 『電子兵器 −見えない火花を散らす頭脳戦』 (立花正照、潮文社) ですが、これ1982年初版のものが未だに新刊で売られています。

 この本、流石に立花氏の著作だけあって読み物として大変良く纏まっていますし、電子戦の基礎に関する記述もあちこちに散らばって解説されています。

 まあ電子戦に関する最初の1冊としては手頃な読み物ですが、残念ながら電子戦そのものについてキチンと系統的に網羅した解説書ではありません。

 その一方で、この本以外にはまともなものは1冊も出てきません。 売れないといればそうなのかもしれませんが、この辺が日本の軍事知識に関する底辺の浅さを如実に現していると言えるでしょう。

 といっても、洋書でもお薦めできるのは非常に少ないのが現状です。 電子戦は軍事の中でも他の分野に比べると1段も2段も秘密程度が高いものの一つですから、仕方ないと言えばそうなのかもしれません。

 その数少ないものから、皆さんにご推薦できるものには次のものがあります。


◎ 『 Introduction to Electronic Warfare 』 (Curtis Scheher, Artech House Radar Library)

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 1986年に初版が出たものですが、電子戦の基礎を解説した出版物としては未だにこれが一番でしょう。 アマゾンでも新品で1万4千円くらいするようですが、この方面に関心がある方は持っていても損のない1冊かと。

 この本の著者が同じところから1999年に次のものを出しました。

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 こちらは新しい情報を網羅したものですが、これになるとちょっと「入門書」とは言い難く、完全な専門書ですね。 興味がある方は購入されるもの宜しいかと思いますが、1万8千円では ・・・・。


◎ 『 Applied ECM 』 (Leroy B. Van Brunt, EW Engineering )

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 1980年に2巻組として出版されたもので、1985年に第3巻が追加されたようです (これは私も未入手) が、既に絶版となっており、古本でしか手に入りません。 しかしながら、ECM (現在のEA、Electronic Attack) の各種テクニックについて網羅したものとしては未だに他の追従を許さない大作です。

 電子戦の解説書というよりデータブックですが、この方面に関心のある方でしたら、初心者の方でも手元にあると大変に便利です。


◎ 『 Electronic Warfare and Radar Systems Engineering Handbook 』 (NAVWCWPNS TP8347)

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 米海軍の Naval Air Systems Command の Weapons Division がかつてそのWebサイトで公開していたもので、電子戦の入門書としても手頃なものであり、かつ各項目とも流石に実務者の手になるだけにユニークな内容です。 しかも、全約300頁にも関わらず、用語集及び略語集もそれぞれ25頁ずつあり大変に充実しております。 

 この本は、元々はHTML型式で公開されていたのですが、次第に各項目ごとPDF型式に置き換えられ、最終的にPDF版で1冊になったものです。

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( HTML型式でWeb公開されていた当時のトップ画面 )

 残念ながら現在では当該サイトからは削除されておりますが、替わりにネットのあちこちにUPされていますので、入手しておいて決して損のないものです。

 なお、次のものなども出版されていますが、内容は初心者向けの入門書とは言い難い (これらを教科書にして講義を聴くなら面白いでしょうが) ので、購入の際にはその旨ご注意ください。

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( 『 EW101 : A First Course in Electronic Warfare 』 )

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( 『 Fundamentals of Electronic Warfare 』 )

 さて、これで終わってしまっては、“桜と錨の気ままなブログ” にはなりませんので、もう少しご紹介を。


◎ 『電子戦参考資料』

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 昭和51年に米海軍の Naval Postgraduate School の David B. Hoislngton 教授が防衛大学校で講演した内容を纏めたものです。 内容的に既に最新技術のものとは言い難いですが、逆に電子戦の基礎が約70頁に実に要領よく纏められていると言えます。

 この資料、当初は 「注意」 に指定されたものだったのですが、これは講演者に講演内容を文書にすることの了解を得るのを忘れたための処置でした (^_^;

 今となっては現物が残っているところがあるのかどうか ・・・・? 一般の方々にとっても恰好の入門書となり得るだけに、ちょっと勿体ない気がします。


◎ 『電子戦の基礎』

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 米空軍士官学校の 『 Fundamentals of Electronic Warfare 』 (上でご紹介した同名の書籍とは全くの別物です) を昭和48年に海自が翻訳して部内配布したものです。 元々が士官候補生用の教科書であるだけに、電子戦の初歩から始まって非常に豊富な内容が判りやすく解説されています。

 これも電子戦の基礎を学ぶには最高なんですが、実務に直接関係するものでないだけに今となっては海自そのものにこれが残っているかどうか判りません。

 これもちょっと勿体ないですね。


◎ 『参考資料 電子戦』 (全2巻)

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 上でご紹介した 『Applied ECM』 全2巻を空自が昭和61年に翻訳して部内配布したものです。 空自はこの原書を大量に購入して各部隊に配布しましたが、英文のためにほとんど読まれることがなく、そのため仕方なしにわざわざ邦訳版を作ったものです。

 2巻合わせて1600頁を越える大作で、訳もなかなか良いものです。 しかしながら、これも既に四半世紀も前のものであり、どれだけ残っているものか ・・・・ ?


◎ 『電子戦の原理と応用』 (全2巻)

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 これも電子戦の入門書としては恰好のものです。 昭和62年に海自で作成し幹部教育における参考資料として使用したものですが、恐らく上でご紹介した 『 Introduction to Electronic Warfare 』 が主たるネタ本となっているものと考えられます。

 第1巻がECM (現在のEA)、第2巻がECCM (現在のEP、Electronic Protection) で、2巻合わせて約630頁あります。 解説書として内容も豊富でかつ非常によく纏められており、用語集も充実しています。

 これも多分もう残っていないでしょうねぇ。 勿体ない。


 えっ、最近の部内資料の紹介はないのか、ですか?

 残念ながら、例の 「孫崎事件」 などが続いた結果として、教科書類はもちろんのこと、こういった秘密ではない教育参考資料までも、一切部外に出ることはなくなってしまいました。 したがって、どの様なものがあるかさえご紹介することができません。 残念なことですね。
posted by 桜と錨 at 18:52| Comment(2) | TrackBack(0) | 現代戦のこと