2016年04月02日

弾道弾の飛翔技術の基礎 (5)


2.大気圏再突入段階 (Re-entry Phase)(続)

(2)再突入弾道の決定

本連載では説明を平易にするため数式などは極力使わない方針ですが、この項だけは少し。 ただし簡単なものですし、読み流していただいても構いません。

といいますのも、既にお話ししたように再突入によって急激な空気抵抗を受けますので弾道の軌跡がどのようになるかを求めなければ、この段階において弾道弾がどれくらいの距離を飛翔するのかが分かりません。

これは即ち、肝心な弾道弾の発射から弾着までの射程が正確に決められないということになります。

このため再突入体の運動についての方程式を求めることが必要になります。 とは言っても弾道弾の具体的な実際の例を挙げての詳細な説明では頭が痛くなるでしょうから、ここでは一般論としてごく簡単に。


再突入体はその頭部を文字通り頭にして飛翔し、かつピッチ (縦動揺) 及びロール (横動揺) を無視できるような形状に設計します。

これにより、再突入体は弾道に対して小さな迎角を維持するものと仮定することができますから、高速の再突入体に働く外力は重力と空気抵抗がその大部分となります。

ここで、とりあえずは地球は自転していないものと仮定し、そして弾道軌跡の完全な解析には含まれるべき副次的な要素は全て無視して考えることにします。

すると、容積 m、速力 V の再突入体について、弾道軌跡方向の運動方程式は次のように表されます。

BM_re-entry_form_01.jpg

ここで、

    ψ : 再突入体の弾軸(縦)方向と水平面とのなす角
    ρ : 空気密度
    A : 再突入体の有効弾面積
    C : 再突入体の抵抗係数

そして、弾道軌跡に対して直角方向の運動方程式は、次のようになります。

BM_re-entry_form_02.jpg

ここで、

    C : 再突入体の揚力係数

再突入の最初の姿勢再変換の段階では弾体の速度はまだ空気密度は小さく、かつ弾体は極めて高速ですので、この段階での飛翔軌跡は直線と見なすことができます。

また、次の減速段階でも再突入体の迎角 (ψ) は小さいので、上の方程式中の右辺の揚力の項はゼロに近くなりますので、この方程式は次のように表すことが可能です。

BM_re-entry_form_03.jpg

これらのことから、再突入の3段階のうち、初めの2つの間、再突入体の飛翔軌跡は直線と見なしても差し支えないものとされ、実際の検証においてもそれ程大きな誤差は生じないことが明らかとなっています。

なお、この再突入第2段階終期の高度 5万フィート (1.5万m) にける弾体の速度はまだ 約1万フィート/秒 (約3000m/秒) であることに注意して下さい。

そして、最後の高度5万フィート以下の終末段階においては、弾体の軌跡は再突入の速度にはほとんど関係しません。

したがって、もしこの終末段階においてもその前の第1及び第2段階と同様に直進である見なした場合との差は、打ち上げ時の燃焼終了点 (Burnout Point) と同高度における再突入角 (φ) だけに関係することになります。

このことから、通常の弾道弾の速度の範囲においては、 21000フィート/tan φ (あるいは 3.5マイル/tan φ) として実際の値とほとんど誤差がないことが知られています。

つまり、再突入段階におい飛翔軌跡の全体が直進であるとすると、その水平距離は次の式となります。

BM_re-entry_form_04.jpg

そしてこれに終末段階における弾道軌跡の上記の差を加味すると、

BM_re-entry_form_05.jpg

で表されることになります。

BM_re-entry_flight_03.jpg


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2016年03月23日

弾道弾の飛翔技術の基礎 (4)


2.大気圏再突入段階 (Re-entry Phase)

中間の第2段階である大気圏外における自由飛翔についての説明は省略して、第3段階の大気圏再突入に移ります。

この再突入の段階も、更に次の3つの段階に細分されます。

     姿勢再変換段階 (Reorientation Phase)
     減速段階 (Deceleration Phase)
     終末段階 (Terminal Phase)

BM_re-entry_flight_01.jpg
( 図 : re-entry path phases )


(1) 各段階の概要

姿勢再変換段階 (Reorientation Phase)

第2段階の大気圏外での飛翔においては、誘導弾に作用する外力は地球の重力だけですから弾道弾の姿勢は変わらず、したがって第3段階の大気圏再突入時は第1段階最後の燃焼終了時とほぼ同じ姿勢を維持しており、また自由落下の速力 (speed) は燃焼終了時とほぼ同じです。

そして大気圏に再突入し始めると次第に空気抵抗の影響が強くなりますので、この第3段階の最初はこの空気抵抗による弾道弾の姿勢の変換となります。

つまり、空気密度が濃くなるに従ってその抵抗により弾体は徐々に迎え角がゼロ、即ち弾軸が速度 (verocity) 方向に一致するごとく回転します。

しかしながら、このままでは弾道軌跡に対して多少の誤差が生じてくることはまぬがれませんので、最近では小さなガス噴射装置又はロケット噴射装置を装備して、これにより第1段階で打ち上げロケット最終段の分離直前に弾体を回転させて、姿勢を再突入時の最適姿勢に修正するやり方が一般的です。

また、古くは打ち上げの最終段のまま再突入する弾道弾もありましたが、最近では単弾頭といえどもロケット燃焼終了段階から再突入までの何れかの時に弾頭を放出する機構になっているものも多く、この場合一般的には放出時に弾頭の姿勢変換を行います。

もちろんこのためにはより複雑な機構と高度な制御技術が必要となることは言うまでもありません。

北朝鮮のテポドンなどの場合も、ロケット燃焼終了段階の直後に弾頭部を放出するようになっているようですが、この辺の詳細は不明で (秘密事項ですので (^_^; )、どれ程の精度で制御できているのかは判りません。

( ただし、この弾頭部放出により、当然ながらその最終段の弾体なども引き続き弾道軌跡に沿って飛翔することになります。 これらは 「デブリス」 (debris) と呼ばれ、弾道弾迎撃の際に弾頭部との識別が必要になってきます。)


減速段階 (Deceleration Phase)

続く再突入第2段階は、高度20万フィート (6.1万m) から5万フィート (1.5万m) までの間です。

この領域では次第に空気密度が濃くなるため、再突入体は空気抵抗により急激に減速することとなり、このため極めて大きな荷重がかかることになります。 この減速加重は、ICBMの場合では −40g を越えるのが普通とされています。

また同時に、空気の摩擦により非常な高温に晒されます。 一般的に再突入体の表面は華氏約1万度 (摂氏約5600度) 近くになるいう過酷な状況であるとされています。

つい先日 (3月15日)、北朝鮮が弾道弾の再突入模擬実験を行ったとする報道がなされていましたが、その実験はどうもこの耐熱試験だけであったようです。


終末段階 (Terminal Phase)

再突入の第3段階は、最後の高度5万フィート (1.5万m) から弾着までで、再突入体は重力加速度と釣り合う程度にまで減速した後、最終的にはほぼ垂直に降下します。

この段階まで来ると再突入体の表面温度は下がってきますので、この終末段階での主たる関心事は、音速領域での安定性と、弾頭の安全解除及び起爆になります。

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2016年03月19日

弾道弾の飛翔技術の基礎 (3)


1.ロケット推力による飛翔段階 (続)

(2) 無揚力飛翔 (Zero-Lift Flight)

前回の (1) で説明したように、中距離弾道弾以上は垂直に打ち上げられることになりますが、とは言っても限られた搭載燃料を有効に使うには出来るだけ早い時期に所要の速度まで加速して本来の弾道軌跡に乗せるようにすることが好ましいことには変わりはありません。

そこで、まだ大気圏内ではありますが、空気密度がそれなりに薄くなったところまで上昇したところで、“徐々に徐々に” 弾道弾を旋回させていくことになります。

徐々にといいますのは、これも (1) で説明したように、弾体の構造は横からの荷重に対しては強くできていませんので、薄くなったとはいえ空力的に生じる旋回荷重の影響を出来るだけ小さくしなければならないからです。

このため、ロケットの推力の方向を少し変えては元の弾軸 (縦) 方向に戻し、また少し変えては戻すということを幾度か繰り返すという方法をとります。

推力のバランスをとりながら弾道弾の重心をゆっくり移動させて、少量かつ一時的な旋回モーメントとなるようにして、弾体に出来るだけ横荷重がかからないように制御システムによって慎重にコントロールしていくのです。

この旋回のことを 「無揚力旋回」 (zero-lift turn) あるいは 「重力旋回」 (gravity turn) と言います。


(3) 定姿勢飛翔 (Constant Attitude Flight)

ほぼ大気圏を抜けだし、かつ無揚力旋回を終えて射角 (φ) となったならば、今度は直進して所要の弾道を描くに必要な速度 (V) まで加速することになります。

この時、空気抵抗はほぼ無視できるようになりますので、下図のように弾道弾は重力に応じた分だけの上向き姿勢で直進します。

BM_constant_01.jpg
( 図 : constant attitude flight outside earth's atmosphere )

弾道弾は飛翔経路に対して一定の上向き姿勢を維持して飛翔しますので、この段階を 「定姿勢飛翔」 と言います。

この時の射角 (φ) は、所要の弾道軌跡となるための最終的なロケット燃焼終了時の仰角 (burnout angle) (φ) とほぼ同じとなります。

両者の差はその大部分が僅かとはいえ空気抵抗に対する修正ですが、これによる弾体に対する横荷重は既に無視できる程度のものとなっています。


ロケットの燃焼終了時に近くなると、誘導システムよって推力の向きを僅かに変えて、最終的に弾道弾が正確な速度方向となるように微修正します。

そして所要の速度で所要の弾道軌跡に乗ったところで、誘導システムによりロケットの燃焼を停止します。

第1段階における最終的な燃焼終了高度 (burnout altitude) (h) と飛翔水平距離 (R) は、個々の弾道弾に関する具体的なデータがあれば計算、あるいは作図が可能です。

一般的なIRBMの場合を例にとると、下図に示すようになります。

BM_powered_flight_02.jpg
( 図 : typical powered trajectory for an IRBM )

大体において、燃焼終了高度 (h) は約40万フィート (約12.2km) 前後、飛翔水平距離 (R) は約70マイル (約130km) 程度です。

これがICBMになりますと、ロケット推進の時間はより長くなり、射角は小さくなります。

一般的なICBMの場合、h は大凡100万フィート (約30km)、R は100〜125マイル (約185〜232km) 程度です。


この定姿勢飛翔から先は、弾道弾は真空中における弾道軌跡を描く、第2段階の 「自由飛翔」 (Free Flight) になります。

この自由飛翔段階については、中学や高校の物理で習われた放物線のことと同じですので、説明は不要でしょう。


次回は第3段階の大気圏への再突入の問題です。

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2016年03月16日

弾道弾の飛翔技術の基礎 (2)


1.ロケット推力による飛翔段階 (Powered Flight Phase)

弾道弾打ち上げの第1段階は、地上の発射機からロケット推進により大気圏外まで打上げて、所定の速度で所定の弾道軌道に乗せる (= ロケット・エンジンの燃焼終了) までの期間です。

この第1段階は、更に次の3つの段階に細分されます。

     発射と垂直飛翔 (Launch and Vertical Flight)
     無揚力飛翔 (Zero-Lift Flight)
     定姿勢飛翔 (Constant Attitude Flight)

BM_powered_flight_01.jpg
( 図 : Typical powered trajectory for IRBM )

(1) 発射と垂直飛翔 (Launch and Vertical Flight)

飛翔距離が短くその大部分が大気圏内であるSRBMを除くと、基本的にIRBM以上の弾道弾は地上の発射台から垂直に発射され、引き続き短期間そのまま垂直に上昇します。

そこで前回お尋ねしたこの “何故垂直に打ち上げるのか” ということです。

これについては多くの場合、大気圏を早く抜けて空気抵抗を受けることのない真空弾道 (放物線) 軌跡に乗せるためため、という説明が見受けられることをご存じの方もおられると思います。

確かにこれも正解の一つではあります。 しかしながら、本当の理由は次の3つの方がより重要なのです。


まず一つ目が、空気抵抗と燃料の関係です。

ロケットに搭載すべき必要な燃料の量は、速度と飛翔距離、そして弾道弾の打ち上げ重量に比例します。 そしてこのいずれにも大きく影響するのが空気抵抗です。

このため、空気密度が濃い、即ち空気抵抗が大きい地表近くを可能な限り早く抜けるために垂直に打ち上げることが求められます。

これによって燃料の量を少なくて済むようにし、かつ打ち上げ重量を減らすことができます。 そして空気による摩擦熱の影響を最少にすることができます。

逆に、もし打ち上げ重量を同一とするならば、燃料の必要量を減らせればその分より大きな搭載物 (payload) を積むことが可能になることを意味します。


二つ目が弾体の構造の問題です。

可能な限りペイロードを大きくし、かつ打ち上げ重量をできるだけ小さくするためには、弾道弾の弾体構造そのものを可能な限り軽くする必要があります。

このため、弾体の弾軸 (縦) 方向の強度は高く、横方向の強度は比較的低くして限定的な耐加重の範囲で設計されることになります。

そして、これを垂直に打ち上げることによって、荷重や空気抵抗、重力を弾軸方向で受けることでこれに対処することが可能になります。


そして三つ目が発射機の問題です。

弾道弾が大きくなればなるほど、発射機の構造が複雑となり重量が増えます。 これを最少に押さえるためには、弾道弾を垂直に保持してこの状態から打ち上げることです。

言われればすぐに納得できることばかりですが、これらの理由をキチンと整理して説明しているものは少ないですね。


この垂直発射方式ですが、発射機に垂直に置かれるが故に弾道弾の全重量は下の発射台 (Launch Pad) で支えられ、かつロケット・エンジンに点火後、推力が十分なレベルに上昇するまでの間、発射台により弾道弾の下部を拘束するようになっています。

そしてこの垂直発射において最も重要な点は、ロケット・エンジンに点火直後の速度がまだゼロに近い最初の数秒間、弾道弾の姿勢を垂直に保たなければならないことです。

これは、発射時の弾体の横方向に加わる外力、例えば突風による偏位や傾きなどに対して、エンジン後部に取り付けた偏向板 (deflecter vanes) を操作してロケット噴射の流れの向きを変化させ、あるいはロケット・エンジンそのものを垂直に保つ機構にすることにより、弾体の縦軸に対する推力方向を変えて弾体の姿勢のバランスを取ることで制御します。

弾道弾によっては、これに加えて小さな補助ロケットを装備して、これにより一時的なサイド・スラスターとして使うものもあります。

これらによる姿勢保持は弾道弾の制御システムによって自動的に行われますが、打ち上げ重量が大きくなればなるほど高度な技術を要することはお判りいただけると思います。

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2016年03月14日

弾道弾の飛翔技術の基礎 (1)


始めに

今回は現代戦のことについての話題を少しお話しすることにします。 旧海軍の艦砲射撃は私のライフワークの一つですが、“気ままなブログ” ですので元々の本来の専門に関連するものもたまには (^_^;


先月の2月7日に北朝鮮が打上げたロケット (北朝鮮名 「 銀河 (ウンハ、Unha)」 については、1993年以降これまで8回の打ち上げ実験を行った時と同様に、当の北鮮は衛星打上げだといい、諸外国は弾道弾 (Ballistic Missile) の実験と主張しています。

NK_unha_photo_01_s.jpg
( 元画像 : 朝鮮中央テレビ放映の画像から )

そして今回のロケット技術としては、搭載物 (それが本当の衛星であるかどうかは別として) を大気圏外へ運び、そこでこれを切り離すところまで行ったことは確かなようです。 もちろんそれが意図した速度で意図した軌道に乗ったのかどうかは判りませんが。

ではこれを諸外国が言う弾道弾の実験として見た場合はどうなんでしょう。

確かにロケットとしての基礎的な技術には両者で同一のところ、似たところがかなりありますが、しかしながら異なるところも多いのです。

その際たるものが弾頭の放出と大気圏への再突入でしょう。 これが上手く行かなければ弾道弾としての意味はありません。

そしてもう一つが飛翔経路です。 衛星ならば最終的にその所要の衛星軌道に乗せるための高度と方向となるように打ち上げますが、弾道弾なら大気圏外において弾頭が目的地に到達するための放物線を画く軌道に乗るように打ち上げます。

これらの違いについて、きちんと踏まえた上での論評・報道かどうかを判断する必要があるでしょう。

実際のところは大気圏外まで物を運ぶロケットとして十把一絡げにして、これらを曖昧なままにしたニュース・メディアなどが多いのですが ・・・・


弾道弾の飛翔については、打ち上げから弾頭の弾着まで大きくは次の3つの段階に別かれます。

     ロケット推力による飛翔 (Powered Flight)
     大気圏外における自由飛翔 (Free Flight)
     大気圏再突入 (Re-entry)

BM_total_traj_01.jpg
( 図 : 米海軍資料より Total Ballistic Missile Trajectory )

北朝鮮の今回の打ち上げが例え弾道弾の実験であったとしても、実はこの3段階について第2段階の始めまでしか実証し得ておりません。 ハッキリいえば、まだまだ弾道弾としての実用化にはほど遠い段階と言えます。

今回の成功 (?) によって、何がしかの搭載物 (ペイロード、Payload) を大気圏外まで運び、それを切り離して軌道 (それが意図したものかどうかは別として) に乗せるまでの技術があることを証明しましたが、それでもまだまだここまでです。

したがって、弾道弾として肝心なその後のことは不明です。 まだ一度も実証したことがないのですから。

確かに、例えどこへ飛んでいくか (弾着するか) 解らない、そしてもしかすると小型化に成功した核弾頭を搭載しているかもしれない、というものであっても、政治的なプロパガンダとして、あるいはブラフとしてはそれなりに有効かもしれませんが、実際の実用兵器として見るならば中途半端なもです。


そこで、弾道弾として要求される飛翔の基礎的な理論・技術については、案外一般出版物にも、またネット上でもあまり見られないものですので、この機会に私なりにお話しをしてみたいと思います。

もっとも、現在の米ロの近代的な大陸間弾道弾 (ICBM、Inter-continental Ballistic Missile) では多弾頭 (MIRV、Multiple Independently-targetable Re-entry Vehicle) 化されているが普通です。 この複数の弾頭をそれぞれの標的に正確に命中させるためにこれを順次放出していくのは、これまた高度な技術を要します。

Peacekeeper_Re-entry_photo_s.jpg
( LGM-180 Peacekeeper 多弾頭の再突入写真 米陸軍SMDCの公式サイトより )

この話しも大変に面白いものですが、今回はこのことはひとまず横に置いておいて、取り敢えず北朝鮮がその開発を目指しているであろう単弾頭の場合に絞らせていただきます。

もちろん私のブログですから、一般文献からの引用などではなく、ご来訪の皆さんに興味を持っていただくために米軍の資料を根拠としますが、具体的なデータなどになりますと秘密事項に関わりますので、海軍兵学校やNROTCなどでも教えている一般的な説明の範囲とします。 しかしながら一般の方々にはこれでも十分なレベルの内容と思います。


それでは本論に入りますが、その前に、

弾道弾の打上げの時に (衛星などの打ち上げでも同じですが)、短距離弾道弾 (SRBM、Short Range BM) の場合は地上の発射機から射距離に応じた弾道軌跡の射角をもって発射されるのが多いですが、中距離弾道弾 (IRBM、Intermediate Range BM) 以上の場合は発射台から垂直に打上げられます。

SRBM_Launch_01.jpg  ICBM_launch_01.jpg

これは何故なのかその理由をご存じでしょうか?

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2014年09月25日

『世界の艦船』 11月号

『世界の艦船』 11月号 (通刊806号) の特集は 「現代の艦砲」 です。

SoW_No806_cover_s.jpg

その特集記事について次の項目を受け持たせていただきました。

  「155ミリAGS 脅威のメカニズム

ご存じのとおり、本砲は来年就役予定で現在艤装が進められている 「DDG-1000 Zumwalt」 に2基搭載されるものです。

AGS (Advanced Gun System) と呼ばれているとおり、従来の艦載砲とはかなりその趣を異にするもので、米海軍・海兵隊の新しい作戦構想にしたがった、陸上射撃能力向上を狙いとするものです。

ただ、本砲はまだ開発の途中にあり、「Zumwalt」 による実艦装備の海上試験が終わるまでは最終的な形態 (性能要目など) がどの様なものになるのかは不確定なところがあります。

このため、記事の内容は執筆時点で公表されている内容によって纏めたものです。

もっとも不確定なところの一つが、LRLAP (Long Range Land Attack Projectile) と呼ばれ、最終的に最大射程100マイルを目標とする誘導砲弾です。

これの信管には現在までの試験弾では着発信管が付いているようですが、近接信管や最終誘導などについては確たる情報がありません。

確かにメーカーなどから以前公表されていたイラストでは弾頭にHOB 「Height of Burst Sensor」 と呼ばれるものが描かれているものがあります。 あるいは構想として、SAL (Semi Active Laser) やIRなどが挙げられているものもあります。

しかしながら、現在までところどのようなものになるのかの具体的なことは公表されておりませんし、これまでの陸上試験での情報にもありません。

したがって、記事ではこれらの信管は “現在までのところではない” としています。 もちろんこのままでは砲弾の能力は不充分ですので、今後何某かの近接信管などが装着されるであろうことは間違いないでしょうが ・・・・

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2014年07月05日

『世界の艦船』 8月号


既に発売になっておりますので、ご覧になられた方もおられると思います。

SoW_201408_cover_s.jpg

『世界の艦船』 8月号は海自DDGの特集で 「ミサイル護衛艦50年史」 です。 「あまつかぜ」 に始まって最新のイージス護衛艦までのDDGの歴史ですが、編集部からご依頼がありましたので私も一文を書かせていただきました。

題して 『 DDG “きりしま” 艦長時代の思い出 』

特集記事として純粋なハードウェアとしてのDDG各艦やミサイル・システムについてはもちろんですが、中にこういう肩の凝らない気軽な読み物が一つあっても良いかとお引き受けしたものです 。

折角の機会ですので、一般にはいままで知られていないエピソードも入れてみました。 是非手にとってご一読いただけると嬉しいです。

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2013年10月19日

米海兵隊の運用法 (13)

海兵遠征軍 MEF

さて、MEU 、MEB に続いて MAGTF 編成の最大のものが海兵遠征軍 MEF (Marine Expeditionary Force) です。

これは、次のとおり、フル装備の1個海兵師団や1個海兵航空団などを主体とする極めて大規模なもので、標準編成でも約4万6千名となります。

USAmphib_Ops_37_s.jpg

USAmphib_Ops_38_s.jpg

USAmphib_Ops_39_s.jpg

USAmphib_Ops_40_s.jpg

MAGTF の編成としてはこれが最大ですが、当然のこととしてその状況・事態に合わせてその兵力は最少で2万名規模から最大で9万名規模まで変化します。 これが “scalability” と言われるものです。

そしてもしこの兵力でも不足するような大規模な事態が生起した場合には、2個あるいは3個の MEF の投入、あるいは VI MEF の予備役部隊を動員しての増強ということになります。

実際のところ、先のイラク戦争では I MEF に VI MEF を含む他の MEF からの増強を加えた約6万名規模 (これに英軍の第1機甲師団2万名が参加) をもって戦ったとされています。

陸軍の兵力が約5万5千名と言われていますので、極めて強力な戦力であったわけです。

( 実際のところ、テレビで実況中継されて世界中が信じてしまったような、あたかも西側のハイウェイを突き進む陸軍部隊が主力だったのではなく、本当は東側の河川・湿地帯を進撃した海兵隊が主力・主軸であったわけですが。)

そしてこれを支援するため、海上輸送に MSC をフル活用したほか、現地での戦闘支援に2個両用戦部隊 ATF (Amphibious Task Force) 及び3個両用即応群 ARG が集められ、加えて5個空母戦闘群 CVBG (Aircraft Carrier Battle Group) が加わっています。

Iraq_War_NavyMarine_01.jpg


以上、米海軍・海兵隊の危機対応態勢を見るにつけ、ARG / MEU がいつでもどこでもの “火消し役”、MEB + MPSRON が本格的な危機対応の “いい気になるな、いい加減にしろ”、そして MEF は海軍・海兵隊の全力をあげての “国を潰すつもりならやってやるぞ” と言えるでしょう。

こういう段階・状況に応じた態勢が整っているからこそ、軍事力としての真価が発揮できるのであって、今の陸自さんの構想では後がないことを見透かされるだけですね。


さて、流石に MEF ともなると規模が規模ですから、その遠征には兵員のみならず膨大な装備・機材・物資の輸送と戦闘支援のために、巨大な組織と兵力が必要になります。

そこで次は、先の MPSRON の説明で出てきました、その海上輸送を支える軍事海上輸送軍団 MSC (Military Sealift Command) についてです。
(この項続く)

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前 : 「その12 海上事前配備船隊 MPSRON」

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2013年10月10日

米海兵隊の運用法 (12)

海上事前配備船隊 MPSRON

前回お話しした MEB は標準編成で総計約18000名にもなり、しかもその装備、機材、補給物資なども膨大なものになります。

したがって、MEU の様にこれらの全てを洋上即応態勢とすることは、いくら米軍といえども不可能なことですし、例えその様なことをしても不経済です。

とはいっても、危機発生の場合には可能な限り速やかに所要兵力を米本土又は沖縄から目的地へ展開しなければなりません。 この迅速さが軍事においては最も重要なことの一つだからです。

このため、米海軍・海兵隊が採っている方策が海上事前配備船隊 MPSRON (Maritime Prepositioning Ships Squadron) と言うものです。

これは、民間の大型輸送船の各種タイプのものを傭入して、4〜6隻で1個船隊を組み、これに1個 MEB の装備 (個人装備を除く)、機材及び30日分の弾薬・補給物資を搭載して、予想される地域近くの洋上で即応待機させるものです。

そして、何かあれば所要の地近くの港湾に急行し、その地で海上又は航空輸送された MEB の兵員に搭載物件を引き渡すわけです。

もちろん、MPSRON は迅速な陸揚げのために設備の整った港湾に入ることが求められますが、その任務の性格上、ある程度自力での揚陸が可能な能力を考慮した船舶が選定されていることは申し上げるまでもありません。

この MPSRON は 軍事海上輸送軍団 MSC (Military Sealift Command) の下に3個船隊で構成されており、MPSRON 1 は 2 MEB (II MEF) 用として地中海・大西洋に、MPSRON 2 は 1 MEB (II MEF) 用としてディエゴ・ガルシア近傍に、 そして MPSRON 3 は 31 MEB (III MEF) 用としてグァム・テニアン近傍の洋上で即応待機の態勢を採って “いました”。

しかしながら、現在では大西洋及び地中海方面での危機発生の可能性は極めて低くなったと見積もられることから、米軍の Transformation と軍事費削減もあって、昨年の2012年9月に MPSRON 1 は解隊されてしまいました。

下の図は従来のものですが、各 MPSRON が7日及び14日で対応可能な範囲が示されています。

MPF_response_zone_s.jpg

これを見ると、MPSRON 1 は中東方面に対する MPSRON 2 の後詰めとしてもその価値は非常に高いことが判ります。 (実際、先のイラク戦争ではそれが遺憾なく発揮されたわけですが。)

残念ながら米海軍・海兵隊といえども流石に昨今の軍事費削減には堪えられないものと言えます。 そして現在再編中の MPF (Maritime Prepositioning Force) 及び MSC 全体の今後が注目されるところでもあります。

現在の MPSRON 2 は6隻、MPSRON 3 は4隻の編成ですが、所属船舶は固定されたものではなく、前者が12隻、後者が8隻の中から順次配属され、残りは修理や他の任務に就きながら定期的にローテーションします。

USNS_Charlton_s.jpg   USNS_kocak_s.jpg

USNS_martin2_s.jpg   USNS_stockham6_s.jpg
( MPSRON を構成する船舶の例  元画像 : 米海軍公式サイトより )

MPSRON の船舶は、その乗組員と共に海軍に傭入されており (もちろん傭入に伴いヘリコプター甲板の設置など所要の改造がなされています)、各船の運航は船長以下元々の船会社からの乗組員により行われていますが、船隊司令 (通常は海軍大佐) 及びその司令部要員だけは海軍軍人です。 (最近は少数ですが海軍軍人が乗員として乗り組んでいる船もあるようです。)

つまり、船隊及びその所属各船の運航・運用は船隊司令の指揮の下に行われており、また軍事的な情報などは全て司令部のみが取り扱います。

そして各船隊は洋上待機が基本で、止むを得ず近くの港湾に入る場合、あるいは錨泊する場合は、指示があってから24時間以内に全船が出港できることが条件となっています。 もちろん、各船の船長といえども自分の船を勝手に運航することはできませんで、全て船隊司令の指示と許可に基づきます。

また、各船の船長以下乗組員の交代についてはその傭船元の船会社によりますが、司令部の海軍軍人は1勤務1年間とされています。

因みに、2003年のイラク戦争の時には、ディエゴ・ガルシアの MPSRON 2 がカルフォルニアの 1 MEB と共に、I MEF FWD としていち早くクウェートに駆けつけたことは記憶に新しいところです。
(この項続く)

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2013年10月01日

米海兵隊の運用法 (11)

海兵遠征旅団 MEB

これまでお話しした ARG 及びそれに搭載する MEU は、常時即応展開を目指すものですから、1個 ARG だけで単独の作戦行動が可能です。 特に最近の ESG としての運用はその特性を強く打ち出しています。

しかしそれ以上の兵力が必要となるとそうもいきません。 そして更なる兵力投入の備えが無ければ、折角の軍事力行使の価値が低くなってしまいます。

その備えがあるからこそ危機拡大の抑止力にもなるわけですし、1個 ARG / MEU 投入が無駄にならず、有効に機能し得ると言えます。

そこで米海軍・海兵隊がその次の段階として用意しているのが海兵遠征旅団 MEB (Marine Expeditionary Brigade) です。

USAmphib_Ops_28_s.jpg

上はその MEB の標準構成の一例を示すもので、ここでは海兵隊員約17000名、海軍軍人約850名の合計約18000名となりますが、もちろんこれはその時の情勢・状況により変わってくることは言うまでもありません。

MEB は I 〜 III MEF に1個ずつが編成されていますが、常設は司令部のみで、それ以外は必要に応じて管理編成部隊から指定されます。

MEB_prepo_06_s.jpg

とは言っても、出動命令が出たならば6時間で編成を完結し、目的地への移動を開始しなければなりません。

したがって、如何に “必要に応じて” とは言いながらも、常日頃からのその即応態勢の維持に大変な努力が払われていることはお判りいただけるでしょう。 またそれだけに、常設司令部の役割は極めて大きいと言えます。

この MEB は、更に大規模な紛争が生起して MEF 全部が出動するような事態になった場合には、現地での受け入れ及び作戦準備のための先遣隊として機能するようになっています。

この先遣部隊として使われる場合には、この MEB を基準に MEF 司令部の一部が加わった海兵遠征軍先遣部隊 MEF FWD (Foward) となります。
(この項続く)

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2013年09月24日

米海兵隊の運用法 (10)

ARG / MEU の限界と制約

これまでご説明してきました米国としての軍事力使用の一番手、即ち “何でも屋” “火消し屋” と呼ばれる ARG / MEU ではあっても、当然ながらその編成・装備からして自ずからその能力・機能には限界と制約があります。

USAmphib_Ops_55_s.jpg
(注) MTT : Mobile Training Team

第1の限界・制約は、申し上げるまでもなく1個 ARG には1個 MEU の人員・装備・機材及びこれの戦闘任務に要する15日分の補給物資しか搭載していないことです。

したがって、上陸した MEU には ARG 各艦艇保有の糧食・真水などはある程度は補給可能ですが、それ以外のもの、特に戦闘消耗した人員・装備については、後続の部隊又は輸送艦艇による支援が無い限り補充出来ません。

また、直接的な非戦闘行動以外での友好国支援についても、ARG / MEU の編成及び規模からして限界と制約があります。

そして何と言っても、上陸した MEU は ARG の支援下から離れて単独に行動する場合、その行動能力には大きな限界と制約が生じます。 特に C4I と航空支援の面ではそれが顕著であることは明らかでしょう。

USAmphib_Ops_56_s.jpg

そして、MEU の戦闘能力自体にも次の2つの弱点があります。

  1.開豁地での重装備装甲・機動部隊に対する防禦能力
  2.継続する航空攻撃に対する防禦能力

とはいっても、ARG 艦艇に支援され、各種航空機及び舟艇による迅速な揚陸能力を有する2千名強のフル装備の海兵部隊の能力は、そうそう侮れるものではないことはお判りいただけると思います。

特に先にお話しした、最近のこの ARG / MEU を独立作戦可能とする ESG としての運用においては。
(この項続く)

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2013年09月11日

米海兵隊の運用法 (9)

ARG / MEU の用途 (続)

ARG / MEU の2つ目の任務である直接対応行動 Direct Action Operation は、その内容はそれこそまさに多種多様です。

USAmphib_Ops_52_s.jpg

この直接対応 DA (Direct Action) という用語については、次の様に定義されています。

Short-duration strikes and other small-scale offensive actions conducted as a special operation in hostile, denied, or diplomatically sensitive environments and which employ specialized military capabilities to seize, destroy, capture, exploit, recover, or damage designated targets.

つまり一般的に言う “特殊作戦 (Special Operations)” です。 ただし、だからと言って必ずしも専門の特殊部隊を使用するわけではありません。

ARG / MEU の任務としての直接対応行動 DAO は、その能力をフルに活かした範囲のものであって、米軍の統一軍 (Unified Command) の一つである特殊作戦軍 USSOC (US Special Operations Command) が実施する作戦とは別の範疇・系列です。

しかも、この DAO は1つ目の本来用途である Amphibious Operations の能力があるから故のものと言えます。

単なる航空機などをもってする兵力投入だけでは、これだけ広汎多彩な任務をこなすことは不可能なことで、まさに海軍・海兵隊の持つ特性と能力が活用できる分野と言えるでしょう。

そして、現今の世界情勢からはこの特殊作戦の必要性が高くなってきていますので、最近は従来の MEU からこの特殊作戦能力を高めた “MEU (SOC)” (MEU Special Operations Capable) へと移行しています。

( 本連載では特に必要の無い限り文中では全て単に MEU と表記しています。)

これに加えて、軍という組織的活動能力を活かした活動、即ち大規模戦闘以外の軍事作戦 MOOTW (Military Operations Other Than War) というものが次第に脚光を浴びてきています。

( “WAR” は普通に訳すと “戦争” ですが、米国の国家としての正式な戦争となるとここではちょっと意味が異なりますので “大規模戦闘” としています。)

そしてこれに伴って、ここ10年来米軍が進めている再編成 Transformation の重点が単なる従来の大規模戦闘能力の強化という面ではなく、「軍事行動の範囲の拡大にどのように対応していくか」 にあると言えます。

つまりこれが米軍が模索しつつある軍事行動範囲 ROMO (Range Of Military Operations)です。

US_JCS_ROMO_01_s.jpg
( 米統合教範より )

もちろん実際にはこのような簡単な分類のものではなく、各事態対応で詳細に検討されていることは言うまでもありません。

US_JCS_ROMO_02_s.jpg
( 米軍部内検討資料より )

( MOOTW 及び ROMO については長くなりますので、機会があればまた別にご説明したいと思いますので、取り敢えずここでは省略します。)

冷戦終結後の一昔前に低列度紛争 LIC (Low Intencity Conflict) という考え方が流行ったことがありますが、現在では更に軍の本来任務である戦闘行動以外の面での作戦が強調されてきました。

このため、MEU の用途の3番目にこの MOOTW 行動が掲げられるようになりました。

USAmphib_Ops_50_mod1_s.jpg

とは言っても、この MOOTW 対応に常時洋上即応待機の ARG / MEU をいちいち使っていたのでは、本来対応すべき軍事的危機への対応にタイミングを失するおそれがありますし、言い方は悪いですが早い話し “もったいない” ということになります。

このため、米海軍・海兵隊も、戦闘行為を前提とした軍事力の投入用としてではなく、MOOTW にもその能力を活かして適切に対応すべく、従来の MAGFT の考え方を更に拡張し、MEF - MEB - MEU という段階に加えて、特殊目的の MAGFT、Special Purpose MAGFT というものも導入しました。

USAmphib_Ops_59_s.jpg

この SPMAGTF は自衛以外の戦闘行為は前提としない用途のものですので、実際に使われる場合には、必ずしも本来のフル装備の部隊であるとは限りません。

例えば大災害救援や難民救援では戦車などは必要ありませんから、事態・状況に応じて必要な装備及び兵力で構成され、所要の地に派遣されます。 

この SPMAGFT はバングラディッシュの大洪水や、ハイチの震災を始め、近くは一昨年の東日本大震災への SPMAGTF Tomodachi など、昨今世界中の極めて多数の事態にその都度その都度の規模・編成・装備で出動しています。


なお、ARG / MEU は以上の3つの主要用途に加え、必要に応じて (要請に応じて) その能力を活用して、他の組織、軍、部隊に対する支援作戦 Supporting Operations を実施します。

USAmphib_Ops_54_s.jpg

上の図はその一例を列挙したものですが、ご覧いただけばどの様なものかはご想像がつくと思いますので、それぞれの細目についてのご説明は省略します。
(この項続く)

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2013年08月27日

米海兵隊の運用法 (8)

ARG / MEU の用途

それでは、現在の ESG の母体である ARG / MEU について、米海軍・海兵隊はどの様な用途・使い方を考えているのでしょうか?

これについては、今の日本ではちょっと考えられないくらい広汎・多彩なものです。

まず ARG / MEU の任務です。

USAmphib_Ops_49_s.jpg
(注): Wx = Weather

ここに揚げた文は米海兵隊の公式ブリーフィング資料からのものです。 強いて日本語に意訳すると次の様になるでしょうか。

◎ 昼夜を問わず、悪天候下でも、水平線の遥か向こうの海上から、 (電波などの) 輻射管制下に (= 相手に悟られることなく、の意) 、舟艇や航空機などを使って、通常の両用作戦及び海上からする特定の特殊作戦を、予令受領から6時間以内に行動に移すことが可能な、前方展開による迅速な危機対応能力を戦域軍指揮官に提供する。


◎ 多種多様な不測事態に対する (軍事的) 要求に応じるため、後に続く海兵空地任務部隊又は統合/共同部隊の先陣として機能する。


これを要するに、米国に対する危機発生時に軍事的対応として真っ先に使用し得る “何でも屋” であるということです。

そしてこのために ARG / MEU が有する能力の用途は、大きく分けると次の3つです。

USAmphib_Ops_50_s.jpg

もちろん一番目の両用作戦 Amphibious Operations と一言で言っても、簡単ではありません。 この両用作戦は次の4種類に区分されます。

USAmphib_Ops_51_s.jpg

撤収 Withdrawal については感覚的に、何となくこんなものか、はお判りいただけると思いますが、他の3つについてはあまり馴染みのない用語と思います。

これらは米軍の統合教範の一つである 『JP 3-02 Amphibious Operations』 で次の様に定義されています。

ただし、これらの用語については何れも米軍として他に異なった意味の定義がありますが、ここではあくまでも “両用作戦においては” ということでご理解下さい。

強襲 Assault :

The principal type of amphibious operation that involves establishing a force on a hostile or potentially hostile shore.

急襲 Raid :

A type of amphibious operation involving swift incursion into or temporary occupation of an objective followed by a planned withdrawal.

強襲と急襲の大きな違いは、前者は海岸に橋頭堡を築くものであるのに対して、後者は一時的に上陸して目的 (建物・物件の破壊、人員の救出など) を達成すれば直ちに撤収するものであることです。

示威 Demonstrations :

A type of amphibious operation involving the extraction of forces by sea in ships or craft from a hostile or potentially hostile shore.

示威は、相手側の眼に見える形で両用戦による兵力投入の可能性を示すことであり、実際の交戦は伴いません。 この示威は本当の意図を隠すための “陽動作戦” として用いられる場合もあります。

撤収 Withdrawal :

A type of amphibious operation involving the extraction of forces by sea in ships or craft from a hostile or potentially hostile shore.

(この項続く)

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2013年08月24日

米海兵隊の運用法 (7)

遠征打撃群 ESG

さて、前回までに海兵遠征隊 MEU と両用即応群 ARG についてお話ししてきました。

ところが、先にお話ししましたように、ARG 自体にはそれを防護する護衛部隊は附属しておりません。 必要に応じて派出される形、あるいは ARG が空母機動部隊 CVBG に組み込まれて強力な遠征部隊を構成する形をとっておりました。

最近は主として次の理由などにより、このやり方に変化が生じております。

1.冷戦後の近年、世界中で発生する危機の状況は必ずしも強力な護衛部隊や航空兵力を必要とぜす、それよりも迅速な対処を要する場合が多くなってきた。


2.昨今の軍事費削減から海軍と言えども十分な数の空母機動部隊を確保するのが困難になりつつある。


3.米軍全体の “Transformation” の中で、米海軍・海兵隊においてもより効率的・効果的な兵力運用の体制を再構築する必要が出てきた。


とは言っても、MEU とそれを搭載する ARG の基本的な考え方、やり方は現在においても依然としてその有効さには少しも変わりはありません。

そこで米海軍・海兵隊が考え出したのは、ARG の基本はそのままとし、これを完全な一つの独立作戦部隊として使おうということです。

これが 遠征打撃群 ESG (Expeditionary Strike Group) です。

ESG_config_01_s.jpg

要するに、LHD 又は LHA での V/STOL 機の運用能力を考慮すると、それなりの航空兵力を有しているわけで、これにイージス艦、SSN 及び MPA などの護衛兵力を付加することにより、部隊として次の様な能力を有することになります。

ESG_power_02_s.jpg

( これらの図及び数値などはいずれも2004年段階でのものですので、戦闘艦艇は少々古いですが、基本的な考え方は現在でも同じで、アーレイバーク級のイージス艦が増えたことにより、より強力になっている訳です。)

そして、従来の空母機動部隊 CVBG を空母打撃群 CSG (Carrier Strike Group) と改称し、必要に応じてこの両者を組み合わせて遠征打撃軍 ESF (Expeditionary Strike Force) という極めて強力な作戦部隊を構成することができます。

ESF_Comp_01_s.jpg

もちろんこの場合、CSG 及び ESG は一つずつとは限らず、情勢に応じて複数ずつの組合せも柔軟に実施可能です。

これが現在の米海軍・海兵隊が採っている平時における危機対応の即応態勢の基本です。

何度も申し上げますが、機動性、即応性をフルに活かした兵力構成及び運用の柔軟性がキーであることです。 今日の危機対応は時間との勝負であることを考えるならば、このことは極めて緊要なことであることはお判りいただけるかと。

そして、これはとてもではありませんが空軍や陸軍で真似の出来るところではありません。 海軍と海兵隊、即ち “海軍部隊 Naval Forces” の持つ大きな特性です。
(この項続く)

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2013年08月22日

UAVの導入 (続)

先のお話しの中で、わざと触れなかったことがあります。 それはご来訪の皆さんにも考えていただきたかったからです。

そうです、UAV の航空機としての性能 (スペック) についてです。

確かにグローバル・ホークは偵察・情報収集などに用いる UAV としては、他のものに比べて格段に高い性能を有しています。

特に、航続距離、航続時間、飛行速度及び飛行高度については、他の追従を許さないところで、単純に見るなら、このハイ・スペックは魅力的でしょう。

ただし、管制装置なども含めた全体のコストも、現実に米軍でさえ戸惑うほど極めて高額です。

では、このハイ・スペックを何に使い、どの様に活かすのでしょうか? 先に挙がった使用例で見てみますと、


1.大規模災害時の情報収集

確かに、グローバル・ホークは先の福島の時に原発付近上空からの情報収集で活躍しました。

しかしながら、大規模災害時の情報収集において、このようなハイ・スペックのものが必要なのでしょうか? この性能が無ければ役に立たないのでしょうか?

しかも、飛行するエリアは国内なのです。


2.弾道ミサイル発射に対する情報収集

「北朝鮮のミサイル発射など」 と言っていますが、どこで、どの様にして、どの様な情報を収集するのでしょうか?

まさか、米軍の U-2 のように対象国上空を飛行するわけではないですよね。

では、領海外の上空から発射の徴候を監視するためでしょうか? 確かにこの目的のためのフライトとしては、このハイ・スペックは有効かもしれません。

しかしたったこのためだけに必要なのでしょうか? そしてそれは極めて高価なこの UAV でしか出来ないことなのでしょうか? RC-135 や E-8 の代わりになり得るのでしょうか?

もしそうでなければ、極めて勿体ない贅沢な使い方と言えるでしょう。


3.南西諸島周辺の情報収集

例えば、魚釣島周辺で何の情報を収集しようとしているのでしょう。 偵察? 哨戒・監視? 単なる情報収集? 対象は島そのもの? あるいは周辺海域?

周辺海域の船舶航行状況の哨戒・監視であるとすると、それならば対象船舶が見つかるまでは、海保の巡視船艇や海自艦艇は港で待機することが出来るようになるのでしょうか?

離島に上がられた時の偵察と情報収集? ならば、その情報をどの様に使うのでしょうか? 情報が得られてから考える、ですか?

しかも何故わざわざ遠い那覇などから飛ばすと考える必要があるのでしょうか?


これを要するに、偵察や情報収集というのは、単にそれだけでは何の役にも立たないのです。 どこで、どの様にして、どの様な情報を集めるのか、が明確になっていなければなりません。

そして最も肝心なことは、その収集した情報をどの様に使うのか。 つまり、情報収集の結果による、その後の “判断・処置と一体となっていなければならない” と言うことです。

これらを全て総合した上で、使用目的及びコスト・パフォーマンスの両面から、最も効果的・効率的な機種を選択するべきでしょう。


これを認識するならば、今回のグローバル・ホーク導入では、これらのことが何一つ明確になっていないと言うことであり、この様なハイ・スペックなものの必要性が何一つ説明されていないと言わざるを得ません。

単純な “大は小を兼ねる” でもなければ “ハイはローを兼ねる” でもありません。

単に “ハイ・スペックだから” では何の理由にもなっていないのです。 しかも極めて高価であることは脇に置いておいて。

Global_Hawk_3_S.jpg

このことは本日の読売新聞での報道内容でも全く明らかになっておりません。


艦船や航空機の動きを捉える。中国機の接近に対する空自の緊急発進が急増しており、無人偵察機での抑止力向上が必要と判断した。

上記の3項に加え、更に“艦船も航空機も”ですか。 一体どの様な能力を持った UAV を何機、どの様に飛ばしたらこれらのことが可能になると考えているのでしょうか? たった3機のグローバル・ホークの能力がでこれら全てが可能?

米軍三沢基地(青森県)を軸に配備場所を調整し、航空自衛隊と米空軍の共同運用で警戒監視活動の拡充を進める。

三沢に? 米空軍との共同運用の便という理屈以外に、地理的に何のメリットがあってわざわざ?

私に言わせて貰えれば、ますます防衛省・空自が何を考えているのか判らなくなりますね。 所詮は “陸軍本土防空隊” と言われているとおりの思考の範囲から出ていないような・・・・?


特に南西諸島周辺のことを考えるならば、私がなぜ先のお話しで Time-Sencitive Targetting を持ち出したのか。

考えても見て下さい。 もし魚釣島などが上陸・占領されたとして、夜な夜な MQ-1 Predator などのような武装可能タイプの UAV を上空に滞在させて偵察・情報収集にあたるとともに、上空から見つけ次第その場で直ちに直接攻撃するとしたら。 しかもわざわざ那覇などから飛ばす必要はないのですから。

Predator_02_s.jpg

もちろん、上陸したての勢力にこれに対処する装備があることは考えられませんし、海保・海自によって海上封鎖されていれば、補給も増強もできません。

そしてこのことは、南西諸島に上陸・占領しようとする企図に二の足を踏ませる、絶大な抑止効果に成り得ます。

なぜ、グローバル・ホークなのでしょう?

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2013年08月20日

米海兵隊の運用法 (6)

両用即応群 ARG (続)

太平洋には前回ご説明した ARG A に加えて、第7艦隊所属の佐世保を母港とする PHIBRON 11 に沖縄の III MEF 隷下の 31 MEU を搭載した ARG B と呼ばれるものがあります。

USAmphib_Ops_24_s.jpg
(PHIBRON 11 の構成は現在のもの)

この ARG B は前回ご説明した ARG A とはちょと異なり、次の3つを主任務とします。

USAmphib_Ops_25_s.jpg

これは、沖縄に前方展開する III MEF が極東における抑止力として機能するためには、その MEU は常時洋上待機とするよりは、必要に応じて展開する方が効果的と考えられてるためです。

( つまり、III MEF は、ベトナム戦争などの大規模紛争時を除くと、純粋に極東の抑えであり、逆に言うと米海軍の兵力運用の振り回しからすると極東の人質という足枷になっているわけです。)

加えて、即応待機している ARG A をアジア諸国との共同演習など (これが年間相当な数に上ります) に使うわけにはいかないためでもあります。

USAmphib_Ops_26_s.jpg

ところが、最近の国際情勢からは、中東及びインド洋での必要性が高まり、即応待機の2個の ARG では不足するためにそうも言っておられず、これに加えて昨今の国防費・国防兵力削減が追い打ちをかけ、この ARG B (MEU 31) も忙しくなってきました。


なお ARG そのものには護衛艦艇は含まれませんが、当然ながらこれが作戦を行う時には別に護衛部隊が指定されますし、状況によっては ARG が空母機動部隊 CVBG (Aircraft Carrier Battle Group) に組み込まれて作戦部隊を編成することもあります。

( 最近この ARG を中核として更に強化した態勢がとられるようになりましたが、この米海軍の危機対応のやり方及び従来方式からの変化については次回で。)


ところで、ここで注意しなければならないことは、当然ながらこれら ARG は単に約2000名強の規模の1個 MEU の全兵員、装備・機材、物資を搭載していればよいという訳ではありません。

どこでどのような形で勃発するか判らない危機に対し、MEU をいつでも最適に運用して任務を完遂できる態勢を整えていなければなりません。

このため、ARG にはARG 指揮官とその司令部に加え、更に支援部隊として次のものが配属されて乗り組んでいます。

  艦隊外科医療班 Fleet Surgical Team (FTS)
  海軍海岸主導分遣隊 Naval Beach Group Detachment (NBG det.)
  捜索救難分遣隊 Search and Rescue Det. (HC SAR det.)
  水中処分分遣隊 Explosive Ordnance Disposal Det. (EOD det.)
  戦術航空管制分遣隊 Tactical Air Control Squadron Det.(TACRON det.)
  艦隊情報戦センター分遣隊 Fleet Information Warfare Center Det. (FIWC det.)
  海軍特殊戦任務隊 Naval Special Warfare Task Unit (NSWTU)

これらの将兵は、本来の部隊から単にその時に ARG に割り当てられて乗艦している、いわゆる “お客さん” や “便乗者” ではありません。

当然ながら、各自の専門に加えて両用戦及び外地での作戦について、そしてARG や MEU の作戦行動内容について、十分な知識と技量、経験をもったスペシャリスト達です。

そして、MEU と同じく、これら全てが展開予定の ARG として事前準備・事前訓練を行い (通常6ヶ月間)、最終的な展開前検閲を受けます。

もちろんこの検閲に合格しなければ最悪 ARG 指揮官が即座に更迭されるか、少なくとも不合格となった部隊の指揮官更迭、部隊再編成の上で、改めて ARG 展開準備のやり直しとなります。

したがって、現実に即応展開している ARG には、両用艦艇の固有乗員と搭載する1個 MEU に加え、これらの要員を含めた数千名 (総計はその時その時で異なってきます) の人員が、高練度の一体となった運用態勢を整えているのです。

このことをとっても、単に海自輸送艦艇に上陸戦用の陸自部隊を搭載し、所要の地で陸揚げすれば、などという話しのレベルではないというはお判りいただけるでしょう。
(この項続く)

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2013年08月18日

UAV の導入

防衛省が来年度からの防衛予算で UAV 3機の導入を決めたと毎日新聞が伝えています。


これは今年度予算での調査費100万円を使った上での結論なのでしょうか?

今回導入を目指すのは既に実績のある 「グローバル・ホーク」 (RQ-4 Global Hawk) だとしています。

Global_Hawk_01_s.jpg

Global_Hawk_02_s.jpg

その導入目的は

中国軍の動きが活発化している南西諸島周辺や、北朝鮮のミサイル発射など、24時間体制の警戒・監視が必要な場面で活用する。

としていますが、この機種選定の理由がどうも当初から

機能は偵察に限られ、攻撃能力は持たない。

に絞ってしまっているようです。

まず最初の3機はこれで、というのならまあ判らないではありませんが ・・・・

使用目的に 「南西諸島周辺」 が入っているならば、なぜこちら ↓ にしないのでしょうか?

Predator_01_s.jpg
( MQ-1 Predator / MQ-9 Reaper )

しかも何故初めからその様なことに言及するのでしょうか? しかも、わざわざマスコミを通じて今から公表する必要もないことを。

現在のところグローバル・ホークの発展型には武装可能タイプは無いと聞いています。 となると、当然ながらその目的には別の機種が必要となり、したがってこのための管制設備などはまた余分に必要となります。

限られた防衛予算の中で、効率と効果を追求するならば、初めから武装可能な能力を備えていることは必要であると考えます。 もちろんこちらも既に十分な実績があることは申し上げるまでもありません。

UAV の長時間滞在、高機能の偵察・監視能力に加え、この ↓ 能力を活かした武装可能タイプは 「離島防衛」 に極めて有効であるからです。

GlobalHawk_wildfires_photo_01_s.jpg
( グローバル・ホークが撮影したカルフォルニアの山火事の赤外線写真 )

この写真は一般公開用のもので、軍事用のものではありませんが、それでも私が何を考えているかの一端は十分ご理解いただけるでしょう。

実際に使う場面が出る出ないに係わらず、この武装可能タイプの導入により相手に対する十分な “意思表示” としての抑止効果を期待できます。

そして更に言うならば、「離島防衛」 にはこういった ↓ 能力を備えることも重要なのです。 米軍は既に10年も前から認識して実践しています。

HNDBK_JTST Cover_02_s.jpg

陸自の AAV7 導入といい、このグローバル・ホーク導入といい、何か中途半端な構想であり、私からすれば “本当にそれでいいの?” と思わされます。

今、ミリタリーの世界は既に C4ISR から更に進んで

C4ISRT

です。
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次 : 「UAVの導入 (続)」

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2013年08月16日

米海兵隊の運用法 (5)

両用即応群 ARG

前回、MEU が世界中で突発する米国としての危機に第一義的に即応するために、6ヶ月交代をしながら常時前方展開する (している) とご説明しました。

しかしながら流石に海兵隊といえども、冗談にも米本土から海を泳いで海外に展開する訳にはいきません (^_^;

ではどのようになっているのでしょうか?

これが今回ご説明する米海軍の両用即応群 ARG (Amphibious Ready Group) (通称 “アーグ” と呼びます) と言われるものです。

ARG は、指定された管理編成の両用戦隊 PHIBRON (Amphibious Squadron) の中から各種タイプの両用戦艦艇3〜4隻で構成されるもので、これに先の1個 MEU を搭載し、指定された ARG 指揮官 (通常は両用戦隊司令 COMPHIBRON) とその司令部が運用します。

USAmphib_Ops_23_s.jpg

ARG の指揮官は MEU の指揮官がなるのではないことには注意して下さい。 両用戦 (上陸作戦) は海軍が行うものだからです。 つまり ARG は単なる輸送部隊ではない、ということです。

USAmphib_Ops_18a_s.jpg

1個 ARG には1個 MEU の人員と、その装備、機材及び15日分の弾薬・補給物資を搭載し、世界中の海洋に接する如何なる場所における危機にも直ちに対応できるように常時洋上待機します。

つまり、1個 ARG のみで、所要の地に到着後に直ちに搭載するヘリコプターや LCAC、AAV7などにより自力で上陸作戦を行い、15日間の1個 MEU のフル戦闘行動を支援することが可能です。

最近までは、この MEU を搭載した ARG は、太平洋と地中海に1隊ずつ MEU の展開サイクルと同じ6ヶ月交代で恒常的に展開し、状況に応じて大西洋、カリブ海やインド洋などにも配備する態勢をとってきました。

ただしこの ARG、実際の任務編成上では太平洋には2つあります。 それぞれ通常は ARG A (アーグ・アルファ) と ARG B (アーグ・ブラボー) と呼ばれ、以前は第7艦隊両用任務部隊指揮官 CTF76 の下に TG76.3 及び TG76.4 の番号が割り当てられていました。

( 任務編成ですので当然のことながら TG 番号はその時々の情勢・状況により変わってきます。)

( CTF76 である COMPHIBGRU 1 は、2006年にそれまでの両用戦艦艇に加え対機雷戦部隊や特殊作戦部隊などを統合した COMAMPHIBFOR7THFLT (Commander Amphibious Force, 7th Fleet) に改編されました。)

この内、ARG A が米戦域軍 (統合軍) たる米太平洋軍 (US Pacific Command) における危機対応の第一義的な即応部隊となっています。

USAmphib_Ops_22_s.jpg

太平洋艦隊水上部隊 NAVSURFORPAC (Naval Surface Force, Pacific Fleet) に属する4個の両用戦隊 PHIBRON (Amphibious Squadron) と I MEF の3個の MEU との何れかとの組合せにより、6ヶ月交代で米西海岸から展開し、常時洋上待機します。

( 太平洋艦隊における各 PHIBRON は、以前は第3両用戦群 PIHIBGRU 3 (Amphibious Group Three) の下に編成されていましたが、現在ではこの PHIBGRU 3 はなくなり、直接 COMNAVSURFORPAC (Commander Naval Surface Force, US Pacific Fleet) の下に置かれています。)

この “常時洋上待機” というのは、余程のことが発生しない限り、6ヶ月間どこにも帰港しないということです。

しかも、この6ヶ月の間常にその部隊・個人の練度・技量を維持しなければなりません。 艦上の海兵隊員のことを考えただけでも、これが如何に凄いことかをご想像ください。

もちろん、突発的な事情により止むを得ず特定の艦を港に入れることも全く無いわけではありませんが、その場合でも48時間以内に出港することが絶対条件です。
(この項続く)

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2013年08月10日

米海兵隊の運用法 (4)

では、米海軍・海兵隊は、世界中の何処かで勃発するかもしれない危機に対して、どの様な態勢でどの様に対処しようとしているのか、に入ります。


海兵遠征隊 MEU

沿岸域の陸上に対する投入戦力としては、空母艦載機によるものを除くと、海兵遠征隊 MEU (Marine Expeditionary Unit) が、米国による世界中に勃発する危機対応の第一義的なものとなります。

その兵力構成の標準は次のとおりです。

USAmphib_Ops_15_s.jpg

ただしこれはあくまでも標準というより一つの目安であって、実際の編成はその時その時で異なってくることに注意して下さい。 事態・状況に対応して柔軟な編成を採るのがこの MAGTF の特徴だからです。

したがって、実際のところ米軍の公式資料によってもそれぞれ装備や人員数がその時その時で多少異なっているものがありますが、どれもが正しいと言えます。

そして注意していただきたいのは、この MEU 編成において各エレメントの中の各部門に合計で約100名もの海軍将兵が含まれていることです。 約100名の海軍の部隊1つが組み込まれているということではありません。

ということはつまり、平時における人事・装備と教育訓練などの全ての面において、海兵隊と海軍とが一体となってその体制を作っていなければいなければできない話しです。


MEU の指揮官は大佐クラス (O-6) であり、それを補佐する司令部 (CE) のメンバーは常設です。 そしてこの司令部の下に、管理編成の部隊から準備の整った兵力が割り当てられて、実動の編成がなされます。

この MEU は、I MEF に 11、13、15 MEU、II MEF に 22、24、26 MEU、そして III MEF には 31 MEF があります。

MEU_Position_01_s.jpg

しかしながら、この中で平時において実際に全兵力が配置された上で、即応態勢におかれて前方展開する (している) MEU は I MEF 及び II MEF からそれぞれ各1個 MEU のみです。

III MEF の 31 MEU だけはちょっと特別で、III MEF 自体が沖縄に前方展開していることから、この 31 MEU は太平洋・インド洋各国との共同訓練・演習などで出動する以外は、通常沖縄待機が基本とされています。

とは言いながら、昨今の情勢・状況からそうも言っておれず、最近では実作戦行動に駆り出されることも多くなりました。

この I MEF 及び II MEF から派出される MEU の即応前方展開は、6ヶ月毎にそれぞれの3個ずつの MEU の中から輪番で交代しつつ、常に1個ずつの MEU が継続して実施することになります。

例えば、最近のある時点での MEU の状況は、次のとおりであったとされています。

MEU_Deploy_01_s.jpg
( 米海兵隊の公式資料から )

ただし当然ながら、この半年の即応展開期間中に実際に危機対応した場合には、順番や交代時期などが変わってくることは申し上げるまでもありません。

また、最近はこの MEU の出番というか必要性が大きくなりまして、なかなか振り回しに苦労しているのが実情のようです。 このため上にも書きましたように、III MEF の一つしかない 31 MEU まで実任務に駆り出されるケースが増えてきました。
(この項続く)

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前 : 「その3 海兵空地任務部隊 MAGTF」

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2013年08月06日

米海兵隊の運用法 (3)

海兵空地任務部隊 MAGTF

では、米海兵隊の主作戦兵力である艦隊海兵隊 FMF がどのように使われるのか、ということですが、その運用の基本が海兵空地任務部隊 MAGTF (Marine Air-Ground Task Force) (通称 “マグタフ” と呼びます) と言われるものです。

MAGTF は余程特殊な任務用、例えば、平和維持活動、災害派遣、医療支援、及び在外自国民避難など、主としていわゆる MOOTW (Military Operation Other than War) でない限り、必ず司令部 (Command Element、CE)、陸上戦闘部隊 (Ground Combat Elemant、GCE)、航空戦闘部隊 (Aviation Combat Element、ACE)、戦闘役務支援部隊 (Combat Service Support Element、CSSE)というの4つの要素で構成される任務 (統合) 部隊が作戦・運用単位となります。

USAmphib_Ops_08_s.jpg

即ち、米海兵隊は陸軍のような大隊とか師団などと言った管理編成がそのまま戦闘・作戦単位として使われることはありません。 必ずこの兵種混合の一体かつバランスのとれた部隊として運用されます。

そして MAGTF は、作戦規模と作戦目的によって、次のように MEF (Marine Expeditionary Force)、MEB (Marine Expeditionary Brigade) (通称 “メブ” )、MEU (Marine Expeditionary Unit) (通称 “メウ” ) という3段階の部隊編成の何れかがとられます。

MAGTF_01_s.jpg

その他、Special Purpose MAGTF というものもありますが、これは上記の特殊な任務用のもので、軍本来からすればいわば片手間的なものと言えます。 とは言え、昨今の国際情勢からはこれの活用場面が増えていることも確かですが (^_^;

(米軍における MOOTW や ROMO (Range of Military Operations)の考え方については、これはこれで一つの項目になりますので、機会があればまた別に。)

海兵隊の実戦部隊は MEF が最大でこれ以上の編成はありません。 というより、標準の MEF 以上の規模が求められる場合には、この MEF 編成がどんどん大きくなるだけのことです。

つまり、MEF、MEB、MEU というのは、単にその兵力規模の大小の違いというだけではなく、次のように基本的な運用の方法が夫々で異なるのです。

USAmphib_Ops_13_s.jpg

実際にどの様に異なるのかは本項のメインにもなりますので、この後順次詳細にご説明します。


さて、現在の米海兵隊の FMF は4個 MEF で構成されており、Force Provider 、即ち準備・態勢の完了した海兵隊部隊を艦隊に提供するための (実際の作戦指揮の権限は持たない) Marine Force Pacific (MARFORPAC)、同 Atlantic (MARFORLANT) 及び同 Reserve (MARFORRES) の下に次の様に配備されています。

USAmphib_Ops_03_s.jpg

常設の実動部隊は I 〜 III の3個 MEF で、IV MEF は即応予備です。 ただし IV MEF は予備とは言ってもその大部分は即応予備役 (Individual Ready Reserve、IRR) と特定予備役 (Selected Marine Corps Reserve、SMCR) の海兵隊員で構成されており、定められた定期的な召集訓練を繰り返し、必要に応じ即時に動員されて実戦配備に就く態勢が維持されています。

( もちろん同じ “即応予備” とはいっても、陸自のものとは規模も、内容も、レベルも、全く違いますが。)

これらはの MEF は、管理編成としてはいずれも1個海兵師団 (Marine Division)、1個海兵航空団 (Marine Aircraft Wing)、1個後方支援群 (Marine Logistic Group)、及びその他の部隊で構成されます。

“その他の部隊” と簡単に言ってしまいましたが、大変に沢山の部隊、兵種があります。 詳細については米海兵隊の公式サイトをご参照いただくとして、ここではひとまず省略します。

そして、これらの管理編成上の部隊から、それぞれその時その時の作戦上の要求に応じて必要な規模、内容、装備の兵力が実動編成の MEF、MEB、MEU に割り当てられます。

例えば、カルフォルニアに本拠を置く I MEF には MEF 自体の他に I MEB 及び 11、13、15 MEU という作戦部隊がありますが、これらは恒常的に存在するのは司令部のみで、兵力は必要に応じて管理編成の各部隊の中から訓練及び作戦準備が出来ている戦闘単位が割り当てられます。

というより、平時においては MEB 及び MEU は即応態勢維持のために、次はお前の部隊の番だ、一緒に組み合わされる他兵種部隊はこれこれだ、と言うように予め指定されたものである場合が多いのですが。

したがって通常はこの運用サイクルと予期される任務を見越して、人事・装備などを整え、それを以って部隊としての必要な教育訓練を行って、最終的な検閲に合格した上で実戦配備に就くことになります。

( この検閲に不合格となった場合には、指揮官は直ちに更迭、配属部隊は必要に応じて入れ替えられた後に新指揮官の下で改めて練成し直します。 このため交代時期がずれることもあり得ます。)

もちろん MEF というような大規模な兵力が必要になった場合には、その割り当てられている管理編成部隊の作戦可能な全兵力で対応することは申し上げるまでもありませんし、状況によっては即応予備の IV MEF などからの増強を受けることもあります。

とはいっても、危機対応でその MEF 全体がいきなり出ることはまずありませんで、それより先に、他の MEF からのものも含めた、即応態勢にある MEU や MEB が動いている可能性が高いですし、MEF の先遣部隊として MEB 規模レベルの MEF FWD (Foward) が出る場合がありますが、これについてはこのあと順に詳しくお話しして行きます。

要は、海兵隊の運用は、事態に応じた即応性と MAGTF 編成の柔軟性が特徴であり、カギであると言うことで、これは決して陸軍 (そして空軍も) には真似の出来ないところです。

しかもそれを可能とするのは、海軍と一体となったものであるからこそ、ということを頭に置いていただき、次に進みましょう。
(この項続く)

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