2017年08月06日

1943年米海軍 ONI 発行 『U.S.S.R. Navy』


標記の公文書ですが、以前こちらでご紹介して暫く本家サイトの空きエリアに置いておりました。

03_Soviet_Navy_1943_cover_s.JPG

「第2次大戦中のソ連海軍について」 :
    http://navgunschl.sblo.jp/article/26365448.html

本家サイトに『現代戦講堂』を設置しましたので、この度サイトの今週の更新として、改めてそちらの『資料展示室』コーナーで公開するものです。

「資料展示室」 リスト :
    http://navgunschl2.sakura.ne.jp/Modern_Warfare/Shiryo/tenji_main.html
「U.S.S.R. Navy」 :

本文書は2000年代になってから米海軍の公式サイトでも公開されたのですが、何故かネット上で広まることはなく、私の探し方が下手なのか、現在では Web 版になったものが1個所あるだけで、元々のPDF版のものは米軍サイトも含めて見つかりませんでした。 (Scribd にはある?)

1943年段階で米海軍が把握していたソ連海軍に関する情報を纏めたもので、今でもこの方面に関心のある研究家の方々にとっては貴重な公文書の原典であると思います。

本来なら 『史料展示室』 でも良いのですが、追々戦後のソ連海軍関係も公開していくつもりですので、これもあって 『現代戦講堂』 としております。

どうぞお楽しみください。

posted by 桜と錨 at 09:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2017年05月14日

「現代戦講堂」 新設!


懸案であった私の本来の専門である現代戦についてのコンテンツですが、取り敢えず本家サイト 『桜と錨の海軍砲術学校』 中に 「砲術講堂」 「水雷術講堂」 と並ぶ3つ目の講堂コーナーとして新設しました。

HP_navgunschl_top_01_s.jpg



当面は当ブログでの過去記事を纏め直したものなどを中心としますが、コンテンツがそれなりに増えてきたところで改めて運営形態について見直す予定にしております。

もちろん、内容的にはいわゆる “研究家” “評論家” と言われる人達のものとは異なり、実務の世界からの視点のものがメインとなります。

過日先行して単独で公開しました米海軍大学のテキスト 『潜水艦戦』 も改めてこちらに掲載しております。

01_Sub_Warfare_1959_cover_s.jpg

これまでの第2次大戦までの 「砲術」 や 「水雷術」 などとはちょっと違った分野をお楽しみいただければと思います。

posted by 桜と錨 at 18:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2017年04月30日

4月27日付 『朝雲新聞』


私が昨年から担当させていただいている同紙での 『世界の新兵器』 コーナーの艦艇編の第3回目です。

 『 沿岸域戦闘艦 「フリーダム」 級 』

Asagumo_h290427_s.jpg

同コーナーは月1回で、陸・海・空・技術の4つを持ち回りですので、掲載は4ヶ月に1回になります。

そして1回が千字程度の紙幅ですので、如何に簡単・簡潔に紹介するかが最大の課題で、毎回頭を悩ますところです。

ご存じのとおり、現在米海軍が建造を進めている新艦種のLCSは2つのクラスの同時並行ですので、今回はロッキード・マーチン社の LCS-1 級で、もう一つの LCS-2 級は次の回になります。

このLCS、構想は面白く、実際の2クラスとも大変にユニークですので、私達元船乗りとしても興味の尽きないところがありますが、その反面現実的には様々な問題点を抱えていることも事実ですので、米海軍における今後の艦艇建造計画としてはまだまだ先が見えないところがあります。

こういうところも合わせて、次回でお話しする予定です。

『朝雲新聞』 といいますのはその筋ではよく知られているものですが、普通の一般紙とは少し性格が異なりますので、一般の方々が目にされることはなかなか無いかと思いますが、機会がありましたら是非ご一読を。

posted by 桜と錨 at 16:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2017年04月29日

米国による斬首作戦


またまた北朝鮮は性懲りもなく弾道ミサイルの実験を行ったが ・・・・

緊張を高める北朝鮮情勢について、ネット上でも米国による金正恩を狙った斬首作戦の実施が語られているところである。

先にも、米国の国益保護及びそれに影響を及ぼすことについては、米国はそれが例え他国の領土上であっても、必要があると判断した時は軍事力を行使することには躊躇しないことを書いた。

これには他国の権力者の殺害も含まれることは申し上げるまでもない。

この米国による斬首作戦は過去にも色々あるが、その最も代表的な例が1986年に 「リビアの暴れん坊」 と呼ばれた独裁者カダフィ大佐を狙った 「エルドラド・キャニオン作戦」 (Operation El Dorado Canyon)であろう。

既に30年も前のことであり、覚えておられない方も多いと思われるので、少しご紹介してみたい。


作戦実施に至る経緯については省略するが、85年に客船ハイジャック事件や空港における爆破事件2件などのテロに引き続き、西ベルリンでのディスコ爆破事件により米国市民に死者が出たことが直接の引金とされている。

この作戦は、1986年4月14日英国 Lakenheath 空軍基地駐留の第48戦術戦闘航空団のF-111F 24機と、Upper Heyford 基地駐留の第42電子戦航空隊の EF-111A 5機が飛び立ったことに始まる。

Tripoli_1986_01_s.jpg

リビアまでの飛行ルートはフランス上空を通過するのが早く、片道約1300マイルであったが、同国の承諾が得られなかったために大西洋をグルリと周り、ジブラルタル海峡を通って地中海に入る洋上ルートとなり、片道の飛行距離は約2500マイル、飛行時間13〜14時間となった。

このため事前に米本土から英国 Mildenhaii に進出した KC-10 19機及び Fairfor 駐留の KC-135 空中給油機9機の合計28機により、往路4回及び復路2回の計6回の給油を受けた。 この給油回数は、往路は低高度、復路はより高々度の巡航高度であったこともある。

なお、F-111F 24機の内6機は長距離作戦のための予備機であり、本隊と一緒に飛び立ったものの、第1回の空中給油の後英国の基地に引き返しており、実際の空襲を実施したのは18機であった。

目標はトリポリ周辺の次の3個所である。

  Al Azziziyah 駐屯地 : 海外テロ司令部があり、かつカダフィ大佐の居住地
  Sidi Bilal 港湾施設 : 海上テロ要員の訓練施設
  Tripori 空港 : 軍用輸送機基地としても使用

そしてリビア沖のシドラ湾には第6艦隊の空母 「アメリカ」 と 「コーラル・シー」 が展開し、空軍の空襲部隊に対する次の支援作戦を実施した。

  E-2C : 作戦空域の早期警戒と航空管制
  F-14 : 作戦空域のCAP
  EA-6B : EF-111A と共に電子戦支援、特にSAM砲台に対する電子妨害

加えて、空軍部隊のトリポリ空襲と同時並行して F/A-18 6機、A-6E 14機及び A-7E 6機により Benghazi 周辺の Al Jumahiriyah 駐屯地及び Benina 空軍基地、防空施設への空襲を実施した。

Tripoli_1986_02_s.jpg

この作戦において使用された主な攻撃兵器は、空軍の F-111F が 2,000lb 及び 500lb の Paveway 2 レーザー誘導爆弾であり、海軍の A-6E は 1,000lb の Mk82 Mod1 Snakeye 爆弾及び Mk20 Rocheye クラスター爆弾、A-7E は AGM-45 Shrike 及び AGM-88A HARM (High-speed Anti-Radiation Missile)、F/A-18 が HARM であったとされている。


この作戦の計画立案開始は4月7日とされており、これだけの規模の海空軍の共同作戦を僅か1週間で実行に移していることには注目していただきたい。 これが米軍の実力である。

しかも、英国はもちろん、フランス、ロシア、イタリアなどの関係各国政府には事前通報などが行われたが、関係者以外の世界各国がまさに寝耳に水、青天の霹靂の作戦であった。

そして作戦は完璧な奇襲であり、カダフィ大佐は運良く難を逃れたものの、養女を亡くしており(これは後日誤りであったとされた)、またトリポリ及びベンガジ周辺の目標地区の被害も甚大であった。

米側は F-111F 1機が未帰還となり、後に搭乗員2名の内の1名の遺体がリビア側から米国に引き渡されたとされている。

この空襲の後もリビアのテロ行為などはある程度続いたものの、この米国による斬首作戦により、「リビアの暴れん坊」 「狂犬」 と呼ばれたカダフィ大佐が次第に大人しくなり、かつ西側寄りになっていった直接の切っ掛けとなったことは事実である。


この様なまだ交戦下にない他国に対する米国による軍事力の行使は、その後の湾岸戦争劈頭のバクダッドに対して、そしてつい先日のシリアに対する大量巡航ミサイル攻撃の実施などをみてもその考え方がよく判るであろう。


そこで、最後に北朝鮮情勢である。

米国はその気になればこのリビア空襲程度の作戦はいとも簡単にやってのける実績を示しているのであり、しかもこのリビア空襲に比べれば、地理的かつ米側兵力の状況などははるかに容易であり有利である。

そして秘密保全は作戦の成否の鍵となるものであり、その事前の動静・徴候などがマスコミや評論家と称する人達に流れることはあり得ないことである。

まさに、ごく限られた関係者以外にとっては “ある日突然として” 実行されるのである。

もちろん政権中枢や主要軍事基地に対する空襲は、米国による軍事作戦上の一つの選択肢に過ぎないが、北朝鮮もその指導部の思考が “まとも” であるならば、このことは十分に理解しているであろうと考えるが ・・・・ ?

( 画像は当時の 「Aviation Week & Space Technology」 誌より引用 )
posted by 桜と錨 at 23:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2017年04月18日

核兵器の効果


最近とみに北朝鮮情勢に関連して 「日本に弾道ミサイルを打ち込まれたら」 とか 「核弾頭が東京に落ちたら」 とか騒がれており、これに対して核弾頭についての記事がネット上でもあれこれ見られるようになりました。

そこで良い機会ですので、核兵器の効果について現在でも最も権威があり、かつこの分野について語る時の根拠文書となる資料をご紹介します。

それが、原爆を開発したことで有名な米国ニュー・メキシコ州にあるロス・アラモス科学研究所が1950年に出版した 『The Effects of Atomic Weapons』 です。

ENW_1950_cover_s.jpg
( 1950年版 )

そしてその後水爆が開発されると共に、両者を合わせた形に内容が全面改訂されて1957年に国防省から Samuel Glasstone が中心となって纏めた 『The Effects of Neclear Weapons』 として出版されました。

これは1962年に第2版となりましたが、64年に小改正が加えられて改めて第2版として出版され、更に77年には第3版となりました。

ENW_1957_cover_s.jpg  ENW_1964_cover_s.jpg
( 1957年版 )              ( 1964年版 )

ENW_1977_cover_s.jpg
( 1977年版 )

これらはいずれも現在ではネット上で公開されておりますので、この方面に興味のある方は是非入手してみて下さい。

とは言っても英文ですので私などはどうしても日本語になったものが欲しくなります。  ではこの資料の邦訳版はないのでしょうか?

実はちゃんとあるんです。 1977年の第3版の全文を邦訳したものです。

ENW_1977_cover_J_s.jpg
( 1977年版の邦訳版 )

ただし、これがどこで出されたものかは表記がありませんので不明です。 そして例によって今日となってはどこにどれだけ保管されているのか判りません。

これも興味のある方は探してみるとよろしいでしょう。 そしてこれと第3版の原本と比較しながら読まれると便利かと。


・・・・ で、これだけで終わってしまっては私のブログらしくありません (^_^)

もう少し具体的な核兵器の戦術的な使い方に関するものはないのか、というと、

これについては米陸軍及び海兵隊の共通マニュアルとして 『Nuclear Weapons Employment Doctrine and Procesures』 (FM 10103101、FMFM 11-4) というのが1977年に出ています。

FM101-31-1_cover_1977_s.jpg

これは本体が秘密事項を含まない普通文書として、そして秘密部分だけを纏めた補足文書の2つに別れたものです。 当然ながら後者は日本には渡っていないわけですが (^_^;

しかしながら、本体の普通文書のものの内容だけでも、使う側の視点に立った大変に興味のあるもので、日本人としてはちょっとギョッとしますし、また 「被害推定法」 「核兵器の効果」 「核兵器の効果に対する対応」 などの項目は前述の国防省編の 『核兵器の効果』 と合わせて読んでみるとそれぞれが良く理解できると思います。

ただし、こちらの方は残念ながら40年前の普通文書であるにも関わらず、何故かいまだにネット上では米軍サイトでも公開されていないようです。

そして私が見た原本も自衛隊が保有していたものではありませんので、今となっては残っているのかどうか ・・・・ ?

posted by 桜と錨 at 17:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2017年03月22日

護衛艦 「くらま」 除籍


本日護衛艦 「かが」 の就役と入れ替わりで 「くらま」 が除籍となりました。 まあしかたがないとはいえ、私としては 「かが」 の就役ばかりが注目されてこちらに目が向かないのは少し淋しい気がします。

「はるな」 型に引き続いて建造された 「しらね」 型ですが、ある意味 「はるな」 型よりはこちらの方が何かに付け表に出てきましたので知名度は高かったように思います。 まさに海上自衛隊の一時代を画した艦と言えるでしょう。

折角ですので、こういうものをご紹介。 「くらま」 の艦内配置図の2枚です。 除籍になりましたので機会を見て残りも合わせた一揃いを公開したいと考えていますが、さてどのような方法が良いのか ・・・・ ?

Kurama_draw_01_s.jpg
( 左クリックで拡大表示 )

Kurama_draw_03_s.jpg
( 左クリックで拡大表示 )

posted by 桜と錨 at 20:33| Comment(8) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2016年12月26日

朝雲新聞 (2)


朝雲新聞の12月22日号が届きました。

「世界の新兵器」 コーナーでは私が担当する艦艇編の2回目として、今回はアルジェリア海軍の MEKO A-200AN 「エルラディ」 級を採り上げました。

Asagumo_Shinbun_h281222.jpg

( 文字が小さくて内容は読めないかもしれませんが ・・・・ 自衛隊及びミリタリー関係に興味のある方は是非定期購読を )

お馴染みドイツの MEKO シリーズの最新型で、満載排水量 3,700トンの船体に斬新なアイデアと多彩な兵器を盛り込んだ大変有力なフリゲートで、しかも建造費約500億円というものです。

日本の護衛艦の調達・建造形態からみると驚くべきものですね。


さて、次回は何にしましょうか。

posted by 桜と錨 at 16:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2016年12月05日

シースパロー用射撃指揮装置 Mk91


ネットネタからです。 次の様なことが話題になっていました。

シースパロー艦対空ミサイル用のMk95イルミネーターには、2基のアンテナが横並びに配置されていまが、これを用いる目的は?

これですね。

Dir_Mk95_NSSMS_photo_02_s.jpg
( 注 : 左 (向かって右) が送信用、右 (向かって左) が受信用のアンテナ )

Dir_Mk95_NSSMS_sche_01_s.jpg

NSSMS (Nato Sea Sparrow Missile System) の射撃指揮装置 (MFCS、Missile Fire Control System) Mk91には、Mk95というミサイル用方位盤 (Missile Director) が用いられています。

通常のセミ・アクティブ方式のミサイル・システムでは目標追尾用のレーダーと、ミサイルを目標に誘導するための誘導波 (イルミネーター) との2種を使用しています。

発射されたミサイルはこの誘導波の目標からの反射波を受信してその方向に向かうようになっており、通常は連続波 (CW、Continuous Wave) が使われます。 シースパロー・ミサイルの元の空対空用のスパローも同じです。

このスパローを艦載用にしたのがシースパローですが、射程そのものが短い近接防御用ですので、その射撃指揮装置もターターやテリアなどのように大がかりなものにすることはできません。

このためこの誘導用のものを目標の追尾にも使うことにしました。 これが BPDSMS (Basic Point Defense Missile System) の射撃指揮装置Mk−116で、その方位盤がMk76です。

Dir_Mk76_BPDMS_01_2.jpg

このMk76の架台は元々が40ミリ機銃や3インチ砲用の射撃指揮装置であったMk63のものを流用しています。

そしてこれに送信用 (左) と受信用 (右) のアンテナを、そしてその中間上部に光学照準器を装備しました。 これにより元のMK63と同じように人力操作で目標を捜索し追尾するようになっています。

このMk76を自動操縦にしたものが NSSMS の米海軍バージョンのMk95です。

送信・受信用アンテナの中間上部にあるのはMk76の光学照準器に換わる LLLTV (Low Light Level TV)、つまり高感度テレビカメラで、FCS操作員がコンソールでこれの映像を見ながら目標の捜索・確認と追尾補助に使うことができます。


では、このCW波でどうやって目標の位置、特に距離を測るのでしょうか?

通常のパルス・レーダーでは、パルスを発信してから目標に反射して戻ってくるまでの時間を計測して距離を算出します。

そして1つのアンテナを使い、パルスを送信する時以外は受信モードにすることによりこれを行っています。

したがって電波が出っぱなしになるCWレーダーの場合は、必然的に送信アンテナとは別に受信アンテナの2つが必要になります。

また、当然ながら連続波では発信から受信までの時間差が測れませんので、これで目標の追尾を行うためにパルスに換わって連続波にFM変調をかけることにより、この周波数が変わるところを測って距離を出すのです。


実はこのMK95を使用した 米海軍の NSSMSですが、TAS Mk23と組み合わせた IPDMS (Improved PDMS)として、大変に素晴らしい近接防禦システムを構築しています。

もう40年近く前にそのプロトタイプを見る機会がありましたが、その時既にNTDSや三次元レーダーMK48C (受信データをディジタル化して目標の自動探知自動追尾機能を付加したもの) と組み合わせた改良型とすることが決まっておりました。

NSSMS_Report_Cover_s.jpg
(後に後輩への啓蒙活動のために纏めたもの)


ハッキリ申し上げて、ハードウェアはともかくとしてソフトウエアにおいて、そのプロトタイプ当時でも現在の海自の短SAMシステムより思想的に進んでいると思います。
posted by 桜と錨 at 00:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2016年09月25日

艦内電話装置配置図


本家サイトの50万名ご来訪感謝記念企画の第4弾のコンテンツを作らなければならないところですが、ちょっと変なものに捕まってしまいまして延期させていただきます。

その変なものとは 「あさかぜ」 就役時の 『艦内電話装置配置図』 です。

Asakaze_Intcomm_cover_01_s.jpg

昔コピーしておいたものをディジタル化しようとしたのですが、コピーの写りが大変に悪いため、ゴミ取りなどの加工とよく見えないところを何とかと作業を始めましたが、これが大変に手間暇を要することがわかりました。

下図は艦橋構造物の第02甲板 (3層目) で、航海艦橋やCICがあるところですが、この図面だけでもやっとここまでです。

Asakaze_Intcomm_02deck_s.jpg

船体内の各甲板になるとちょっと完成は何時になることやら ・・・・ (^_^;

Asakaze_Intcomm_1deck_01_s.jpg
( 第2甲板 まだ未加工です )

この 『艦内電話装置配置図』 というのは、艤装工事の時に各種の艦内通信装置について “ここにこういうものを取り付けますよ” というもので、一般艤装図の上にこれを書き加えたものです。

Asakaze_Intcomm_02deck_01_s.jpg
( 上の第02甲板図の一部 航海艦橋艦長席付近 )

確か当時でも10部程度しか作られなかったと記憶していますので、その意味でも大変にめずらしく、一般の方々がご覧になったことはまず無いと思います。

この図を元に工事がなされますが、艤装員の艤装要望などにより変更されることもあります。 このため就役時の最終的なものはこの図を修正した縮小版と各通信系統ごとの一覧表が一緒になって完成図書の中に綴じられることになります。

既に退役した古い艦のものですが、艦艇の艤装時の図面の中にはこういうものも含まれていますという、取り敢えずご参考までにご紹介を。
posted by 桜と錨 at 15:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2016年07月24日

米海軍テキスト 『潜水艦戦』


月刊誌 『世界の艦船』 の8月号から、私の朋友の一人、同期の小林正男氏の手になる 『現代の潜水艦』 と題する連載が始まりました。

cover_SoW_No842.jpg


小林氏は潜水艦隊司令官まで務めあげた潜水艦のプロですので、まさに打って付けのテーマと言えます。

私も早速8月号の記事を拝見しましたが、大変に面白く、続きが楽しみな内容となっています。


・・・・ そこで、今回のこの連載と勝手にコラボしてこんな資料を公開することにしました (^_^)

cover_Sub-Warfare_usnwc_s.jpg


1959年の米海軍大学校の通信教育用テキストを邦訳したものです。 もちろん、米海軍らしく本資料には秘密に関わるものは全く含まれておりませんで、それらはまた別になっておりますので、この邦訳版も秘密文書でも何でもありません。

60年頃というと、米海軍でもまだ改良が施された 「ガピー」 級などの在来型が現役として艦隊に残っており、丁度在来型から原潜への移行期でした。

したがって、現在のような潜水艦の運用法などは確立しておらず、ある意味まだまだ原潜についての試行錯誤の段階でもあったと言えます。

現代の潜水艦については小林氏がこれから詳しく解説してくれると思いますし、その一方で大戦中の在来型潜水艦については戦史など色々なものが出ておりますので、本資料は丁度その中間を解説するものになります。 小林氏の連載の 「前章」 として お読みいただければと思います。

また、巻末に付録として 潜水艦についての基礎的な用語解説集 が掲載されており、これなどは初心者の方々には便利なものでしょう。

ただ、本資料の第5章 「気象と海象の影響」 の本文2頁が欠落、というか白紙になっております。 私のコピーでは頁は連続しておりますので、おそらくこの邦訳版の製本ミスではないかと思います。

ちょっと残念ですが、今となってはこの邦訳版もどこにどれだけ残っているものかと ・・・・ ?


で、取り敢えず本資料だけを単独で公開しますが、これに関連して現在新しいコーナーを考えているところです。

私の本来の専門である 『現代戦』 についてですが ・・・・ 本家サイトの中の一つとして作るか、別室的に分けるか、あるいは全く新しいサイトとするか、などなどでちょっと悩んでおりまして、まだ決めかねています。

もちろん、この新しいコーナーでは、こういう資料などの公開も順次行っていきたいですね。
posted by 桜と錨 at 14:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2016年06月12日

艦内配置図2つ


今週の本家サイトの更新はお休みですが、数日前にご来訪49万名を越えましたのでこれでは少し淋しいので、その代わりと言ってはなんですがかつて海自唯一の給油艦だった 「はまな」 と既に退役したミサイル艇 「1号」 の艦内配置図を公開いたします。

画像をクリックしていただければ、PDF版で大きなものを表示いたします。

AO-411_Inner_01.jpg

PG-821_Inner_01.jpg

艦内配置図は一般艤装図などとは使用目的が違いますので形状そのものはそれほど精確なものではありませんが、艦内がどのような区画に別れているのかがお判りいただけると思います。

別に秘密のものではありませんがやはりそれはそこ、現役艦では艦内保全上のこともありますので、退役艦については他のものも機会を見つけて公開していきたいと思います。


なお本家サイトは次の50万名で大台に乗りますので、その時のご来訪感謝企画は少し大きなものをと考えております。

posted by 桜と錨 at 17:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2016年05月25日

戦後艦艇の戦闘システム


先日 『世界の艦船』 6月号特集の 『現代の艦隊防空』 記事の所感で “各ハードウェーアの内容について少々物足りない” と書きました。

もちろん、特集そのものが非常に広汎なものであり、かつ月刊誌として他の記事との関係も併せると、紙幅的にこの要求には無理があることは承知の上です。

それはそれで致し方ないことであり、また当該誌で採り上げられたそれぞれの記事も限られた紙幅の中で良く纏められたものであると思います。

しかしながら、これらのハードウェーアの詳細について書かれたものはあまり見当たらないのもまた事実です。

本誌についても、例えば艦載対空ミサイルについてはかつて岩狭源晴氏が24回にわたり連載 (通刊47号〜98号) された 『艦載用対空誘導弾について』 などは一般読者向けとして秀逸の記事であったと思っていますが、その後の続きの話しについては、残念ながらこの連載に匹敵するものは他の執筆者からもいまだに出てきていないといって過言ではないでしょう。

また、本誌の性格からしてあくまでも 「艦船」 が主体であって、例え連載の形を採ったとしても、搭載武器などについて多くの紙幅を割くことには色々な制約があるかもしれません。


で、ではそれならば、と言うことで、本ブログとしてこの戦後艦艇の戦闘システムについてもう少しその詳細を紹介していくのも一つのテーマになるかと。

当然ながら、個々のハードウェーアといっても、それに関係する他のシステムやその運用法、そして戦術思想などの変遷も含めなければ、個々及び全体の意味・意義は見えてこないでしょう。

いつ、どれだけのものを紹介できることになるのか判りませんが、それこそ “気ままに” UPしていければと。

・・・・ こういう ↓ 古い資料をディジタル化しながら、ふと考えた今日この頃 (^_^)

DDG-2_JPTDS_ss.jpg


因みにこのブロック・ダイアグラムにある DDG−TDS (JPTDS) ってご存じでしょうか?

かつて米海軍が初めてミサイル駆逐艦として建造した 「DDG-2 Charls F. Adams」 型のシステムが古くなってきた時、その近代化の一つとしてそれまでのミサイル指揮システム 「WDS」 の換装用として新たに開発したものです。

実はこれ、海上自衛隊が 「あまつかぜ」 の後継艦として建造した 「たちかぜ」 型に 「WES」 という初のディジタル・コンピューターを使った武器指揮システムを導入しましたが、逆に米海軍がこのアイデアを元にして、これにNTDSの機能も含めた形に纏め上げたものなんです。

対空ミサイルについても、それだけでは意味はないのであって、個艦として、部隊としてこういうシステムと組み合わされて初めてその機能・能力が十分かつ有効に発揮できることになります。

こういう話しも含めて紹介していければと思っていますが ・・・・

posted by 桜と錨 at 13:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2016年05月09日

弾道弾の飛翔技術の基礎 (10・終)


弾道の誤差 (承前)

(3) 速力誤差

ここでいう 「速力」 とは speed、つまり単に早さのことで、方向の要素を含んだ速度 vector のことではありませんのでご注意を。

推進ロケット燃焼終了時における弾道弾の速力の誤差もまた弾着の誤差になることはお判りでしょう。

この速力誤差が生ずると、その後の真空中における楕円軌道が変わり、下図に示すように意図した軌道から長軸を誤差による Δθだけ回転させた新しい楕円軌道になり、その結果弾着には2Δθの誤差を生じることになります。

BM_Error_07a.jpg

このことは弾道の “高い” “低い” ということと同じ意味になり、これは次の (4) で説明する仰角誤差よりも更に重要な問題となります。


(4) 仰角誤差

推進ロケット燃焼終了時における弾道の仰角の誤差も弾着時の距離誤差となります。

これも上記の(3)と同じく、意図した軌道から長軸を誤差による Δθ だけ回転させた新しい楕円軌道になり、その結果弾着には 2Δθ の誤差を生じることになります。

BM_Error_07b.jpg

ただし、当初の意図した弾道は所要の射程まで飛翔するに要する最少のエネルギーによるものですから、この仰角誤差は結果的に常に射程の減少となって現れることになります。


弾道誤差の要約

これまでに説明してきた弾道弾の弾道誤差について、一言で言うと、第一段階の推力飛翔において誘導システムはこれらの誤差を補正する、あるいは最小限に抑えるように機能しなければならない、と言うことに尽きます。

つまり、弾道弾が所要の目標範囲内に弾着するためには、推進ロケット燃焼終了時の速度ベクトルを極めて精密にコントロールして、所望の弾道軌跡での飛翔を達成できる必要があると言うことです。

一般的な弾道弾において要求される推進ロケット燃焼終了時の各要素の精度は下表のとおりであり、これを達成し得て初めて99.9%の有効性が発揮可能とされています。

誤差要素要求精度
位置誤差 1/2マイル以下
方位誤差 ±1分以下
速力誤差 1〜2フィート/秒以下
仰角誤差 ±1分以下



地球自転の影響

さて、弾道弾の飛翔技術の基礎について説明してきましたが、最後にもう一つ重要な事項が残っています。

そうです、地球自転の影響の問題です。 射程が長く、飛行秒時も長いので、この問題への対応は弾道弾の飛翔技術としては必須のことです。

しかしながら、この地球自転の影響の問題は既に艦砲射撃の場合について本家サイトの『砲術の話題あれこれ 第7話』として採り上げております。


射表などの細かいことを除けば、基本的な理論については同じですのでそちらをご参照いただくとして、本項では省略することといたしますのでご了承下さい。


終わりに

さる2月に北朝鮮が行った弾道弾発射実験についての報道を機にこの項を進めてきましたが、ここにきて北朝鮮はSLBMやムスダンなど立て続けに打ち上げ実験を行い、そしてそのほぼ全てで失敗しております。

弾道のことや弾頭の再突入のこと以前に、技術的にはまだまだ打ち上げの初期段階さえ満足に完成していない状態であることが判明しました。

米国本土どころか、日本にとっても真の脅威となるような本当の弾道弾の完成はまだ当分先のように思われます。

もちろん連載冒頭に書きましたように、どこに飛んでいくのかわからない、本当に核弾頭の小型化に成功しているのかも判らない、という状況での単なる政治的なプロパガンダやブラフとしては別の話ですが ・・・・

(この項終わり)

-------------------------------------------------------------

前 : 弾道弾の飛翔技術の基礎 (9)

posted by 桜と錨 at 13:58| Comment(1) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2016年05月08日

弾道弾の飛翔技術の基礎 (9)


弾道の誤差 (承前)

(2) 位置誤差

もし燃焼終了時の速度ベクトルの誤差が位置だけの誤差であるならば、下図に示すように軌道上の全てのポイントを同じ量だけずらしたものと考えることが出来ます。

BM_Error_04.jpg

したがって、燃焼終了時の位置がΔθだけずれたとするならば、弾着点も又Δθと同じ量だけずれることになります。 このことは先の (1) の方位誤差の現れ方とは異なりますので注意が必要です。

この燃焼終了時の位置誤差は、次の要素の誤差に起因します。

   目標位置データ
   打ち上げ位置
   誘導

もし目標位置データに誤差があるならば、下図のようにその誤差の距離にほぼ等しい弾着誤差となって現れます。

BM_Error_05a.jpg

したがって、目標の正確な地理的位置を知ることが必要であることは論を待たないところでしょう。

例えば強固なICBM発射サイトを破壊するには、ほとんど直撃するに足る精密な位置情報が必要になってきます。

またもし移動式発射台を使用する場合、実際の打ち上げ位置が計算位置から1マイルずれているならば、例え弾道が正確に計算されていたとしても、その弾着点は1マイルずれます。

BM_Error_05b.jpg

これは、艦船、航空機、あるいは潜水艦から弾道弾を発射するためには、精密な航法機器を装備する必要があることを意味します。

更に、誘導システムが適正な位置で推進ロケットの燃焼を終了させることができなければ、これも正確な弾着を得ることができません。

特に垂直位置の誤差はこの誘導装置の不正確さに起因します。

即ち、例え燃焼終了時に意図した速度 V* 及び仰角 φ* を得たとしも、下図のように燃焼終了位置が高すぎた場合、あるいは低すぎた場合には、弾着位置に誤差を生じることになります。

BM_Error_06a.jpg

BM_Error_06b.jpg

この燃焼終了時の高度誤差は、それによる弾着誤差の決定が他の要素のように1対1的に単純に表されるものではなく、より複雑な方法が必要になります。

例えば、意図した弾道で打ち上げたものの推進ロケットの燃焼終了時が早すぎた場合、本来の燃焼終了位置に達した時点での速度が遅くなることになります。

これによって本来の燃焼終了地点以降の弾道は意図したものより短くなり、これが弾着誤差となります。

したがって、目標位置に弾着させるためには、誘導システムによる燃焼終了位置の極めて正確なコントロールが必要であることをお判りいただけるでしょう。

-------------------------------------------------------------

前 : 弾道弾の飛翔技術の基礎 (8)

次 : 弾道弾の飛翔技術の基礎 (10・終)

posted by 桜と錨 at 09:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2016年05月07日

弾道弾の飛翔技術の基礎 (8)


弾道の誤差

しばらく時間が開いてしまいましたが、今回はいよいよ弾道弾の飛翔の誤差、即ち弾道誤差の問題です。 この弾道の誤差はそのまま弾着の誤差に直結することは申し上げるまでもありません。

そして弾道弾が正確に所望の弾道を飛翔するかどうかは、ひとえにその誘導システムの良否にかかってきます。

飛翔第一段階のロケット推進の間に、誘導システムは推進ロケットの燃焼終了時点において弾道弾の速力と方向が所望の速度ベクトルとなるようにコントロールします。

この時に誘導システムが正しく機能しなければ、以後の飛翔において弾道弾の速度ベクトルに次の一つ、あるいはそれ以上の要素の不良を生じることになります。

   方位誤差
   位置誤差
   速力誤差
   仰角誤差

当然のことながら、第二段階の自由飛翔においてはこの燃焼終了時点での速度ベクトルの誤差の全てを引き継ぐことになりますが、この段階中に新たな誤差を生じることはありません、

最後の第三段階の大気圏再突入においては、弾道弾は大気の風及び空気密度の変化によって誤差を生じますが、基本的に (GPS等による誘導機能を有しない限り) これらの再突入時の誤差を修正することはできません。

そして風及び空気密度の変化による弾着誤差は一般的に約1マイル程度以内であるとされています。


(1)方位誤差

方位誤差は、燃焼終了時の速度ベクトル V が意図する弾道軌道面上から外れることにより生じる誤差です。

この誤差は、結果として下図に示すように予期弾着点に対して横方向の距離誤差となって現れることになります。

BM_Error_01.jpg

もちろん地球は平面ではありませんから問題はもう少しややこしく、球面三角法によってこの誤差の方程式を求めると次のようになります。

 a = A x sin 2θ

  a : 横方向距離誤差 (Cross Range Error) (単位 : マイル)
  A : 方位誤差 (単位 : 分)
  θ : 燃焼終了時の本来の弾道方位 (単位:度)

次の図は、この方程式により計算された弾着誤差の一例です。

BM_Error_02.jpg

この方程式によりいくつかの方位誤差について作図すると下図のようになります。

BM_Error_03.jpg

ここで注意していただきたいのは、射程5500マイルのICBMの場合、1度の方位誤差では60マイルの弾着誤差を生じますが、10800マイル (地球周回の約半分) の射程の場合は弾着誤差は0 (ゼロ) になることです。

これは本来の弾道弾の軌跡と誤差による軌跡は共に地球中心を含む垂直面内にあり、地球の大圏の円を横切ることになるためです。

( これは、例えば1/4や1/8などで切り売りされているスイカなどの皮の表面の形を考えていただければこの理屈がお判りになると思います。)

そしてこの図から、弾着時の誤差を1マイル程度とするためには、誘導システムは燃焼終了時の速度ベクトルにおいて方位誤差を ±1分の精度でコントロールする必要があることが判ります。

-------------------------------------------------------------

前 : 弾道弾の飛翔技術の基礎 (7)

次 : 弾道弾の飛翔技術の基礎 (9)

posted by 桜と錨 at 12:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2016年04月13日

弾道弾の飛翔技術の基礎 (7)


高熱対策 − 再突入体設計上の重要事項

再突入体は大気圏に突入して地球表面に落下するまでの間に、空気抵抗によって再突入時の速度を大きく減少し、その運動エネルギーのほとんどを失います。

その結果として運動エネルギーは空気抵抗による摩擦熱に変わるわけですが、再突入の速度が極めて高い、即ち運動エネルギーが非常に大きいため、発生する熱エネルギーも極めて大きく、既にお話ししたように一般的に華氏約1万度 (摂氏約5600度) 近くまでになります。

したがって、再突入体に何らかの耐熱措置を施して、この発生した高温の影響をどのようにして最小限に留めるかが重要な問題となります。


大気中を超音速で飛翔する物体は、下図のように衝撃波層 (shock Envelope) の内側には弾体頭部に押されて音速以下の空気の流域が生じますので、衝撃波面 (shock wave front) は超音速の流れとこの音速以下の領域との境界に生じることになります。

Supersonic_01.jpg

そしてこの衝撃波面において、大気分子の相対的な速度の減少によって非常な高温が発生し、これが音速以下の空気の流れを経由して再突入体の表面に伝わることになるのです。

(つまり超音速の飛翔体の場合、一般的に空気抵抗による“摩擦熱”と言われるものには、この境界層における空気の分子同士の衝突によりその運動エネルギーが熱に変わることも含まれます。)

この音速以下の流れがカバーする領域は、頭部の淀み点 (stagnation point) に関係してきます。

もし再突入体の頭部が尖鋭な形状であった場合には、それによって形成された衝撃波により弾体表面の空気の流れは極めて高温となり、その弾体表面に極度な熱伝達をもたらすことになります。

この影響は弾体の頭部で顕著であり、特に尖鋭な先端部分は急速に溶けるか、あるいは気化するおそれが出てきます。

しかしながら、頭部先端を尖鋭でなく鈍い (blunt) 形状とした場合は、少し異なった現象となります。

つまり先端が鈍い形状では、衝撃波は弾体表面からより離れた位置となりますので、そこでは依然として高温であるものの、単位面積当たりの熱吸収能力はより効率的となり、尖鋭形状よりは過熱を減少させる傾向があります。

これにより、鈍い頭部形状の再突入体は、運動エネルギーにより発生した熱の99%までを空気内に吸収するようにすることができると言われています。

頭部前端の淀み点における熱伝達率は、次の式で表されます。

BM_heat_form_01.jpg

ここで、

     g : 熱伝達の時間比率
     K : 比例定数
     ρ : 衝撃波前面の乱れのない空気の密度
     V : 再突入体の速度
     R : 再突入体の淀み点の半径

この式から、g の値を小さくするには、K、ρ、V を小さくするか、または R を大きくすれば良いことが判ります。

を大きくするということは即ち、先端部の形状をより鈍くして面積を拡げれば良いということです。 また、これにより高再突入速度による大きな運動エネルギーを散逸させることができます。

もちろん総体的な摩擦熱の点からは、再突入の際の速度を出来る限り遅くし、かつ降下角度を大きくすることが望ましいといえますが、これについては、弾道弾の打ち上げの際にその弾道の頂点における運動エネルギーが小さくなるような軌跡を選択することにより実現可能です。

しかしながら、長距離弾道弾において如何に鈍い形の再突入体の形状を採用しようとも、大量の熱を弾体そのもので受けなければならないことには変わりはありません。 したがって、再突入体には何らかの耐熱対策 (保護策) を施すことが必要になります。

現在までのところ、この耐熱対策の方法として次の7つが知られています。

  1.固形熱容器(Solid Heat Sinks)
    再突入体に被せる金属製の容器で、その熱容量を利用して再突入体への
    熱の伝導を吸収するとともに、周囲の空気へ放熱する方法

Heat_Sink_01.jpg

  2.除去冷却 (Ablation Cooling)
    弾体の表面物質を気化させることにより、熱エネルギーを再突入体から
    引き離す方法
  3.機構的冷却 (Mechanical Cooling)
    液体の冷却剤を循環させることにより、再突入体の内側の弾体表面から
    吸収する方法
  4.発散冷却 (Transpiration Cooling)
    弾体表面からガス又は液体を放出して熱を運び去る方法
  5.絶縁 (Insulation)
    加熱効果を減少させて、再突入体の構造物及びペイロードを遮蔽する方法
  6.放熱システム (Radiative System)
    再突入体の表面から熱を放射することにより、熱の伝達を拡散させる方法
  7.磁界 (Magnetic Fields)
    再突入体の周囲のイオン化されたガスにより熱を弾く方法

これらのうち、3の機構的冷却、4の発散冷却及び7の磁界の3つの方法は、簡単かつ信頼性の高いものとする点で一般的にその要求からは外れます。

6の放熱システムの方法は、適切な絶縁を確保する点であまり実用的ではありません。

1の固形熱容器による方法は、その熱容量、使用する金属の熱伝導率、及び融点によって限界が出てきます。 つまり熱発生率のピークが高くなるにつれ、容器の外側表面の熱を制御し、かつそれを金属容器全体に分散することが次第に困難となってくるからです。

このため、最大の熱発生の可能性によっては、それを十分に早く放熱することが不可能となって、容器自体が溶けるおそれが出てきます。

したがって、この熱容器方式は中距離の弾道弾まででは上手く機能しますが、射程が長くなる(=速度が速くなる)につれて、この方式の適用は限定されたものとなります。

2の除去冷却は、容器又はシールドを用いて、その固形熱容量によって熱を吸収するだけでなく、それ自体の溶融及び気化によってシールドの素材をガス状に変化させることにより、大量の熱を再突入体から持ち去る方法として有効です。

それに加えて、気化した素材は境界層において再突入体の絶縁シールドとしても機能すると言う利点もあります。

固形熱容器方式に対して、適切な素材を用いることにより低い熱伝導率とより良い絶縁体となります。 特にセラミック、耐火性の酸化物、及びプラスチックなどが大量の熱を取り扱うものとして有効な素材です。

例えば、酸化ベリリウム (Beryllia、BeO) は耐火性の酸化物としての一例であり、1ポンドあたり10,600 BTU (約1120万ジュール、2670kcal)の熱を吸収することができます。 したがって、酸化ベリリウムの薄く軽量な層を再突入体の先端部分に用いることは有効な耐熱方法となります。

このような軽量の耐熱システムを用いることによって、ペイロードを熱から保護すると同時に、再突入体の重量をよりペイロードに割くことを可能とします。

下図をご覧いただければ、除去冷却の方法が固形熱容器方式よりもより効率的であり、また再突入体の全重量に対する達成可能な W/CA はかなり増加することがお判りいただけると思います。

Heat_protection_01.jpg

ここで、
     Wp : 有効ペイロード重量
     W : 再突入体の全重量
     C : 再突入体の空気抵抗係数
     A : 再突入体の有効前面面積

この W/CA は再突入体の 「弾道パラメーター」 (ballistic parameter) とも呼ばれ、その形状にも関係してきます。

つまり、高い重量対空気抵抗比で、かつ高い W/CA とすることにより、再突入体はより流線型となり、同じ再突入体の重量であれば、低い W/CA のものより再突入から弾着までの所要秒時はより短いものとなります。

そして図の曲線からは、除去シールドの大きな利点が判ります。 即ち、再突入体の重量が同一であるならば、より大きな W/CA の値は再突入体の飛翔のブレが少なく、したがって武器としての有効性が高くなると言うことです。

このため、有効な熱除去防護システム方式は、その開発と生産が大変難しいものの、弾道弾の武器としての全体的な有効性において相当な改善を与えるものと言えます。

特に最近では、スペースシャトルなどのように、この耐熱の対策としてセラミックを主とする耐熱タイルの技術が用いられていることはご承知のとおりです。


先日北朝鮮が行った再突入模擬実験と称するものがニュースに流れましたが、映像を見る限りではこの耐熱試験だけであったようです。 しかし果たして、地上実験だけで本当に上手く行ったのでしょうか?


さて次は、弾道弾の飛翔誤差の問題についての予定です。

-------------------------------------------------------------

前 : 弾道弾の飛翔技術の基礎 (6)

次 : 弾道弾の飛翔技術の基礎 (8)

posted by 桜と錨 at 13:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2016年04月04日

弾道弾の飛翔技術の基礎 (6)


(2) 再突入弾道の決定 (続)

次ぎに、再突入段階における弾着までの速度の変化との飛翔秒時についてです。

当然ながら空気密度が高くなるにつれて再突入体の速度は空気抵抗のために低下していきますが、再突入第2段階の減速段階途中の高度10万フィート (3万m) まではまだそれ程急激に低下するわけではありません。

再突入からこの高度10万フィートまでは、平均で 再突入速度 (V) の 95% であると見なして大差がないことが実証されています。

しかしながら、この高度10万フィート以下になりますと、再突入体の形状や有効面積などによって大変複雑な関数となります。

とはいっても、一般的に用いられる弾道弾の形状において、再突入速度が 10000 〜 25000 フィート/秒の範囲である場合には、その平均速度は 60 X √V フィート/秒 としてそれ程大きな誤差とならないことも知られています。

もちろんより正確な値を求めようとすると、だんだん複雑な計算式になりますが ・・・・

BM_re-entry_flight_04.jpg

これにより、再突入高度(h)から高度1万フィートまでの水平飛翔距離は

BM_re-entry_form_06a.jpg

となり、その間に要する飛翔秒時は平均速度95%を用いて、

BM_re-entry_form_06b.jpg

となります。

そして、高度1万フィートから弾着点までの飛翔秒時の計算には、水平飛翔距離として

BM_re-entry_form_07a.jpg

を使用します。 もちろん前述のようにこれでは大きな誤差となりますが、秒時誤差としてはそれ程大きなものとはならないことに注意して下さい。

この水平飛翔距離を用いての飛行秒時は

BM_re-entry_form_07b.jpg

となります。

したがって、再突入から弾着までの飛翔秒時は次の式で得られることになります。

BM_re-entry_form_08.jpg


なお、実際の代表的な弾道弾におけるものとして、射程500マイル (約900km) の SRBM の場合の例と、射程5500マイル (約10200km) の ICBM の場合の例を示しますと、次のようになります。

BM_re-entry_flight_05.jpg

BM_re-entry_flight_06jpg

この程度のデータでも、刊行物やネットなどにはまず見当たりませんので、十分ご参考になるものと思います。

-------------------------------------------------------------

前 : 弾道弾の飛翔技術の基礎 (5)

次 : 弾道弾の飛翔技術の基礎 (7)

posted by 桜と錨 at 11:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2016年04月02日

弾道弾の飛翔技術の基礎 (5)


2.大気圏再突入段階 (Re-entry Phase)(続)

(2)再突入弾道の決定

本連載では説明を平易にするため数式などは極力使わない方針ですが、この項だけは少し。 ただし簡単なものですし、読み流していただいても構いません。

といいますのも、既にお話ししたように再突入によって急激な空気抵抗を受けますので弾道の軌跡がどのようになるかを求めなければ、この段階において弾道弾がどれくらいの距離を飛翔するのかが分かりません。

これは即ち、肝心な弾道弾の発射から弾着までの射程が正確に決められないということになります。

このため再突入体の運動についての方程式を求めることが必要になります。 とは言っても弾道弾の具体的な実際の例を挙げての詳細な説明では頭が痛くなるでしょうから、ここでは一般論としてごく簡単に。


再突入体はその頭部を文字通り頭にして飛翔し、かつピッチ (縦動揺) 及びロール (横動揺) を無視できるような形状に設計します。

これにより、再突入体は弾道に対して小さな迎角を維持するものと仮定することができますから、高速の再突入体に働く外力は重力と空気抵抗がその大部分となります。

ここで、とりあえずは地球は自転していないものと仮定し、そして弾道軌跡の完全な解析には含まれるべき副次的な要素は全て無視して考えることにします。

すると、容積 m、速力 V の再突入体について、弾道軌跡方向の運動方程式は次のように表されます。

BM_re-entry_form_01.jpg

ここで、

    ψ : 再突入体の弾軸(縦)方向と水平面とのなす角
    ρ : 空気密度
    A : 再突入体の有効弾面積
    C : 再突入体の抵抗係数

そして、弾道軌跡に対して直角方向の運動方程式は、次のようになります。

BM_re-entry_form_02.jpg

ここで、

    C : 再突入体の揚力係数

再突入の最初の姿勢再変換の段階では弾体の速度はまだ空気密度は小さく、かつ弾体は極めて高速ですので、この段階での飛翔軌跡は直線と見なすことができます。

また、次の減速段階でも再突入体の迎角 (ψ) は小さいので、上の方程式中の右辺の揚力の項はゼロに近くなりますので、この方程式は次のように表すことが可能です。

BM_re-entry_form_03.jpg

これらのことから、再突入の3段階のうち、初めの2つの間、再突入体の飛翔軌跡は直線と見なしても差し支えないものとされ、実際の検証においてもそれ程大きな誤差は生じないことが明らかとなっています。

なお、この再突入第2段階終期の高度 5万フィート (1.5万m) にける弾体の速度はまだ 約1万フィート/秒 (約3000m/秒) であることに注意して下さい。

そして、最後の高度5万フィート以下の終末段階においては、弾体の軌跡は再突入の速度にはほとんど関係しません。

したがって、もしこの終末段階においてもその前の第1及び第2段階と同様に直進である見なした場合との差は、打ち上げ時の燃焼終了点 (Burnout Point) と同高度における再突入角 (φ) だけに関係することになります。

このことから、通常の弾道弾の速度の範囲においては、 21000フィート/tan φ (あるいは 3.5マイル/tan φ) として実際の値とほとんど誤差がないことが知られています。

つまり、再突入段階におい飛翔軌跡の全体が直進であるとすると、その水平距離は次の式となります。

BM_re-entry_form_04.jpg

そしてこれに終末段階における弾道軌跡の上記の差を加味すると、

BM_re-entry_form_05.jpg

で表されることになります。

BM_re-entry_flight_03.jpg


-------------------------------------------------------------

前 : 弾道弾の飛翔技術の基礎 (4)

次 : 弾道弾の飛翔技術の基礎 (6)

posted by 桜と錨 at 22:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2016年03月23日

弾道弾の飛翔技術の基礎 (4)


2.大気圏再突入段階 (Re-entry Phase)

中間の第2段階である大気圏外における自由飛翔についての説明は省略して、第3段階の大気圏再突入に移ります。

この再突入の段階も、更に次の3つの段階に細分されます。

     姿勢再変換段階 (Reorientation Phase)
     減速段階 (Deceleration Phase)
     終末段階 (Terminal Phase)

BM_re-entry_flight_01.jpg
( 図 : re-entry path phases )


(1) 各段階の概要

姿勢再変換段階 (Reorientation Phase)

第2段階の大気圏外での飛翔においては、誘導弾に作用する外力は地球の重力だけですから弾道弾の姿勢は変わらず、したがって第3段階の大気圏再突入時は第1段階最後の燃焼終了時とほぼ同じ姿勢を維持しており、また自由落下の速力 (speed) は燃焼終了時とほぼ同じです。

そして大気圏に再突入し始めると次第に空気抵抗の影響が強くなりますので、この第3段階の最初はこの空気抵抗による弾道弾の姿勢の変換となります。

つまり、空気密度が濃くなるに従ってその抵抗により弾体は徐々に迎え角がゼロ、即ち弾軸が速度 (verocity) 方向に一致するごとく回転します。

しかしながら、このままでは弾道軌跡に対して多少の誤差が生じてくることはまぬがれませんので、最近では小さなガス噴射装置又はロケット噴射装置を装備して、これにより第1段階で打ち上げロケット最終段の分離直前に弾体を回転させて、姿勢を再突入時の最適姿勢に修正するやり方が一般的です。

また、古くは打ち上げの最終段のまま再突入する弾道弾もありましたが、最近では単弾頭といえどもロケット燃焼終了段階から再突入までの何れかの時に弾頭を放出する機構になっているものも多く、この場合一般的には放出時に弾頭の姿勢変換を行います。

もちろんこのためにはより複雑な機構と高度な制御技術が必要となることは言うまでもありません。

北朝鮮のテポドンなどの場合も、ロケット燃焼終了段階の直後に弾頭部を放出するようになっているようですが、この辺の詳細は不明で (秘密事項ですので (^_^; )、どれ程の精度で制御できているのかは判りません。

( ただし、この弾頭部放出により、当然ながらその最終段の弾体なども引き続き弾道軌跡に沿って飛翔することになります。 これらは 「デブリス」 (debris) と呼ばれ、弾道弾迎撃の際に弾頭部との識別が必要になってきます。)


減速段階 (Deceleration Phase)

続く再突入第2段階は、高度20万フィート (6.1万m) から5万フィート (1.5万m) までの間です。

この領域では次第に空気密度が濃くなるため、再突入体は空気抵抗により急激に減速することとなり、このため極めて大きな荷重がかかることになります。 この減速加重は、ICBMの場合では −40g を越えるのが普通とされています。

また同時に、空気の摩擦により非常な高温に晒されます。 一般的に再突入体の表面は華氏約1万度 (摂氏約5600度) 近くになるいう過酷な状況であるとされています。

つい先日 (3月15日)、北朝鮮が弾道弾の再突入模擬実験を行ったとする報道がなされていましたが、その実験はどうもこの耐熱試験だけであったようです。


終末段階 (Terminal Phase)

再突入の第3段階は、最後の高度5万フィート (1.5万m) から弾着までで、再突入体は重力加速度と釣り合う程度にまで減速した後、最終的にはほぼ垂直に降下します。

この段階まで来ると再突入体の表面温度は下がってきますので、この終末段階での主たる関心事は、音速領域での安定性と、弾頭の安全解除及び起爆になります。

-------------------------------------------------------------

前 : 弾道弾の飛翔技術の基礎 (3)

次 : 弾道弾の飛翔技術の基礎 (5)

posted by 桜と錨 at 19:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2016年03月19日

弾道弾の飛翔技術の基礎 (3)


1.ロケット推力による飛翔段階 (続)

(2) 無揚力飛翔 (Zero-Lift Flight)

前回の (1) で説明したように、中距離弾道弾以上は垂直に打ち上げられることになりますが、とは言っても限られた搭載燃料を有効に使うには出来るだけ早い時期に所要の速度まで加速して本来の弾道軌跡に乗せるようにすることが好ましいことには変わりはありません。

そこで、まだ大気圏内ではありますが、空気密度がそれなりに薄くなったところまで上昇したところで、“徐々に徐々に” 弾道弾を旋回させていくことになります。

徐々にといいますのは、これも (1) で説明したように、弾体の構造は横からの荷重に対しては強くできていませんので、薄くなったとはいえ空力的に生じる旋回荷重の影響を出来るだけ小さくしなければならないからです。

このため、ロケットの推力の方向を少し変えては元の弾軸 (縦) 方向に戻し、また少し変えては戻すということを幾度か繰り返すという方法をとります。

推力のバランスをとりながら弾道弾の重心をゆっくり移動させて、少量かつ一時的な旋回モーメントとなるようにして、弾体に出来るだけ横荷重がかからないように制御システムによって慎重にコントロールしていくのです。

この旋回のことを 「無揚力旋回」 (zero-lift turn) あるいは 「重力旋回」 (gravity turn) と言います。


(3) 定姿勢飛翔 (Constant Attitude Flight)

ほぼ大気圏を抜けだし、かつ無揚力旋回を終えて射角 (φ) となったならば、今度は直進して所要の弾道を描くに必要な速度 (V) まで加速することになります。

この時、空気抵抗はほぼ無視できるようになりますので、下図のように弾道弾は重力に応じた分だけの上向き姿勢で直進します。

BM_constant_01.jpg
( 図 : constant attitude flight outside earth's atmosphere )

弾道弾は飛翔経路に対して一定の上向き姿勢を維持して飛翔しますので、この段階を 「定姿勢飛翔」 と言います。

この時の射角 (φ) は、所要の弾道軌跡となるための最終的なロケット燃焼終了時の仰角 (burnout angle) (φ) とほぼ同じとなります。

両者の差はその大部分が僅かとはいえ空気抵抗に対する修正ですが、これによる弾体に対する横荷重は既に無視できる程度のものとなっています。


ロケットの燃焼終了時に近くなると、誘導システムよって推力の向きを僅かに変えて、最終的に弾道弾が正確な速度方向となるように微修正します。

そして所要の速度で所要の弾道軌跡に乗ったところで、誘導システムによりロケットの燃焼を停止します。

第1段階における最終的な燃焼終了高度 (burnout altitude) (h) と飛翔水平距離 (R) は、個々の弾道弾に関する具体的なデータがあれば計算、あるいは作図が可能です。

一般的なIRBMの場合を例にとると、下図に示すようになります。

BM_powered_flight_02.jpg
( 図 : typical powered trajectory for an IRBM )

大体において、燃焼終了高度 (h) は約40万フィート (約12.2km) 前後、飛翔水平距離 (R) は約70マイル (約130km) 程度です。

これがICBMになりますと、ロケット推進の時間はより長くなり、射角は小さくなります。

一般的なICBMの場合、h は大凡100万フィート (約30km)、R は100〜125マイル (約185〜232km) 程度です。


この定姿勢飛翔から先は、弾道弾は真空中における弾道軌跡を描く、第2段階の 「自由飛翔」 (Free Flight) になります。

この自由飛翔段階については、中学や高校の物理で習われた放物線のことと同じですので、説明は不要でしょう。


次回は第3段階の大気圏への再突入の問題です。

-------------------------------------------------------------

前 : 弾道弾の飛翔技術の基礎 (2)

次 : 弾道弾の飛翔技術の基礎 (4)

posted by 桜と錨 at 23:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと