2017年12月03日

本家サイトの今週の更新


本家サイトの今週の更新として、先ほど 『現代戦講堂』 の 『資料展示室』 コーナー中の 『幹部候補生学校SG集 (昭和48年度)』 にファイルを追加しました。

と言っても、今回追加したのは20〜30ページ程のものばかりですが (^_^;

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何しろ当時の質の悪い藁半紙にガリ版刷りですので、成形とゴミ取りに手間がかかりますので、ページ数の多いものにはなかなか取りかかれません。

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「機関 (蒸気 上)」 と 「同 下」 でも合わせて200ページ以上ありますし、「乗艦実習必携」 などは400ページを超えますので。

今後とも手の空いた時に少しずつ増やしていく予定です。

なお、SGファイルの追加に伴い、この1年間の課程での座学内容を掴んでいただくために、トップページをリニューアルしました。


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2017年10月02日

北朝鮮問題と米国の国益 (2)


前回の(1)でお尋ねした日本国憲法第9条の文言ですが、多くの方がご承知の通り、「国権の発動たる戦争」 と 「国の交戦権」 の両者ともその定義はなされておりません。 もちろん 「武力行使」 とは何かについてもありません。

そんなことは言わなくとも国際法に照らして常識のことだろう、とか、憲法学者の解釈では、とか色々言われる方もおられるかもしれませんが、そのようなことはこの憲法に基づく様々な法令・法規では何の役にも立ちません。

もちろん憲法学者の解釈はあくまでもその人の解釈であって、一つの学説には成り得るかもしれませんが、根拠にはなりません。

つまり、マスコミや評論家、護憲活動家と称する人々を始めとして、言っていることはその時その時の“感情論”“感覚論”に過ぎず、それどころか国会での議論でも結局は単なる“神学論争”の域を出るものではありません。

例えば、尖閣諸島を巡る問題について、仮に中国側と日本の巡視船側との間で万一銃撃戦にでもなった場合、これを憲法上どのように解釈するのでしょうか?

巡視船といえども日本国の公船ですのでこれを 「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段として」 でないと、誰が何を以て保証するのでしょう?

憲法9条の文言は実に曖昧な表現のものであり、そしてそれがどういうものであるかの定義は日本のどのような法令・法律にも定義がなされていないのです。


そしてもう一つの米国の場合です。

これもこの問題に詳しい方はご存じでしょうが、実は米国は第2次大戦以降国家として1度も戦争をしていないのです。

朝鮮戦争、ベトナム戦争、近くはアフガニスタンへの武力行使、湾岸戦争、イラク戦争などなど、これらは一般的にその大規模な紛争の形態から “戦争” と呼ばれていますが、米国にとっては単なる武力行使、武力介入であって国家としての戦争行為ではありません。


では米国における国家としての戦争とはどのようなものを言うのでしょうか?

米国が戦争と呼ぶのは2つの条件を満たす場合です。 即ち、

 1.対外的に行う宣戦布告 (declaration of war)
 2.国内的に行う戦時体制下の宣告 (time of war by declaration)

米国大統領は対外的な武力の行使についても非常に大きな権限を持っておりました (今でも大きいですが)。

このため米国として上記の2つを満たさなくとも、つまり米国として戦争をしなくても、例えばベトナム紛争の時のように50万を超える米軍を派遣し、北ベトナムに対して空母や爆撃機による空爆を実施しても、これは米国にとっては単なる武力行使、武力介入であって他国との戦争ではなかったのです。

このベトナム紛争を契機にして、大統領がその権限をもってこのような事を起こさないように (ムチャをしないよう) 1973年の戦争権限法 (The War power act of 1972, Public Law 93-148) をもって大幅な制限をかけたのです。

これにより大統領が対外的に武力行使を行う場合には、事前にその状況や前提、条件、武力行使の限度などについて議会の承認が必要となり、かつ適切な報告がなされるべき事が定められました。

例えば、2002年のイラクに対する武力行使の場合の議会の承認は次のようなものでした。

「Authorization for Use of Military Force against Iraq Resolution 2002」
(Public Law 107-243, Oct 16 2002)

Auth Act Use Mil Power IRAQ Oct2002_cover_s.jpg
( 左クリックでPDF版を別ウィンドウ表示 )

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2017年09月29日

北朝鮮問題と米国の国益 (1)


本論について入る前に、まずご来訪の皆さんにお尋ねいたします。

我国の憲法では

「第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」

と規定されています。

ではこの第9条でいう 「国権の発動たる戦争」 や 「国の交戦権」 の定義は何でしょうか?

ついでにもう一つ。

第2次大戦以降今日まで、米国は国家として一体何回 「戦争」 をしてきたのでしょうか?

マスコミ、政治家、評論家、それに9条信奉者と言われる人達は、本来ならこんな基本的かつ重要なことさえキチンと理解せずに、単なるその場その場の “感情” “感覚” でものを言っているに過ぎないとしか見えないのですが ・・・・

posted by 桜と錨 at 19:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2017年09月18日

1日遅れの本家サイトの更新


既にお知らせしたとおり、大風邪を引いてしまい、昨日予定していた本家サイトの定期更新ができませんでしたので、一日遅れで準備済みのものをUPしました。

『現代戦講堂』 の 『資料展示室』 コーナー中で、昭和48年度の海上自衛隊幹部候補生学校第1課程 (防大卒) 用スタディガイド集に 「潜水艦概説」 「航空機一般」 「機雷掃海」 の3つを追加公開しました。

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いずれも秘密文書でもなく、秘密事項も全く含まれておりません。 それに45年も前のものですので、内容的には少々古いですが、それでもそれぞれの基礎的事項を知る上では面白いものがあるかと。

当時の幹部候補生はこんなことを習っていたんだと思っていただければ幸いです。 それに所々今まで一般に出たことのないデータもありますので。

本当はもう一つ、北朝鮮関係で別な文書を準備中だったのですが、上記の都合で間に合いませんでしたので、これは後日といたします。

posted by 桜と錨 at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2017年09月11日

『核兵器の効果』 コンテンツ追加


昨日本家サイトで今話題の電磁パルス (EMP) ついてのところを中心に 米国防省の1977年版 『核兵器の効果』 の第10章と第11章を公開 したところです。

ついでですので、本日既に出来上がっている 目次、第1章及び第2章、巻末の用語解説などを追加 しました。


特に邦訳版の第2章の写真画像については全て原典のものと入れ替えましたので、原紙にあるものよりは格段に見栄えが良くなっていると思います。

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残りの分もまだまだありますが、ちょっと手間暇がかかりますのでいつになるか ・・・・ 気長にお待ち下さい m(_ _)m


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2017年09月10日

米国防省 『核兵器の効果』 1977年版


本家サイトの今週の更新として、昨今話題になっております北朝鮮の核兵器問題に関連して、 『現代戦講堂』 コーナーの 『資料展示室』 にて、米国防省が1977年に出した 『核兵器の効果』 (The Effects of Nuclear Weapons) の原典版と邦訳版の公開を始めました。

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とはいっても、前者で約650頁、後者は約740頁もありますので、ゴミ取りと整形、そして邦訳版は写真の原典版からの入れ替えなどでとても一度にはできません。

今回は取り敢えず、電磁パルス(EMP)を中心として、第10章と第11章をUPしました。

一部マスコミではどこから持ってきたのか判らないような孫引き、曾孫引きのようなものもあり、中には電離によるブラックアウトとEMPさえごちゃ混ぜにしたものも見られる始末です。

ちょっと古い資料ですが、こういうキチンとした文献で基礎的なことの理論武装をしていただきたいと思う次第です。

なお、この第10章と第11章には写真はありませんが、グラフとイラストについては原典版の方が格段に綺麗ですし、日英の専門用語をチェックするためにも両者の対比をしながらお読みいただけると宜しいかと。


posted by 桜と錨 at 20:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2017年08月06日

1943年米海軍 ONI 発行 『U.S.S.R. Navy』


標記の公文書ですが、以前こちらでご紹介して暫く本家サイトの空きエリアに置いておりました。

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「第2次大戦中のソ連海軍について」 :
    http://navgunschl.sblo.jp/article/26365448.html

本家サイトに『現代戦講堂』を設置しましたので、この度サイトの今週の更新として、改めてそちらの『資料展示室』コーナーで公開するものです。

「資料展示室」 リスト :
    http://navgunschl2.sakura.ne.jp/Modern_Warfare/Shiryo/tenji_main.html
「U.S.S.R. Navy」 :

本文書は2000年代になってから米海軍の公式サイトでも公開されたのですが、何故かネット上で広まることはなく、私の探し方が下手なのか、現在では Web 版になったものが1個所あるだけで、元々のPDF版のものは米軍サイトも含めて見つかりませんでした。 (Scribd にはある?)

1943年段階で米海軍が把握していたソ連海軍に関する情報を纏めたもので、今でもこの方面に関心のある研究家の方々にとっては貴重な公文書の原典であると思います。

本来なら 『史料展示室』 でも良いのですが、追々戦後のソ連海軍関係も公開していくつもりですので、これもあって 『現代戦講堂』 としております。

どうぞお楽しみください。

posted by 桜と錨 at 09:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2017年05月14日

「現代戦講堂」 新設!


懸案であった私の本来の専門である現代戦についてのコンテンツですが、取り敢えず本家サイト 『桜と錨の海軍砲術学校』 中に 「砲術講堂」 「水雷術講堂」 と並ぶ3つ目の講堂コーナーとして新設しました。

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当面は当ブログでの過去記事を纏め直したものなどを中心としますが、コンテンツがそれなりに増えてきたところで改めて運営形態について見直す予定にしております。

もちろん、内容的にはいわゆる “研究家” “評論家” と言われる人達のものとは異なり、実務の世界からの視点のものがメインとなります。

過日先行して単独で公開しました米海軍大学のテキスト 『潜水艦戦』 も改めてこちらに掲載しております。

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これまでの第2次大戦までの 「砲術」 や 「水雷術」 などとはちょっと違った分野をお楽しみいただければと思います。

posted by 桜と錨 at 18:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2017年04月30日

4月27日付 『朝雲新聞』


私が昨年から担当させていただいている同紙での 『世界の新兵器』 コーナーの艦艇編の第3回目です。

 『 沿岸域戦闘艦 「フリーダム」 級 』

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同コーナーは月1回で、陸・海・空・技術の4つを持ち回りですので、掲載は4ヶ月に1回になります。

そして1回が千字程度の紙幅ですので、如何に簡単・簡潔に紹介するかが最大の課題で、毎回頭を悩ますところです。

ご存じのとおり、現在米海軍が建造を進めている新艦種のLCSは2つのクラスの同時並行ですので、今回はロッキード・マーチン社の LCS-1 級で、もう一つの LCS-2 級は次の回になります。

このLCS、構想は面白く、実際の2クラスとも大変にユニークですので、私達元船乗りとしても興味の尽きないところがありますが、その反面現実的には様々な問題点を抱えていることも事実ですので、米海軍における今後の艦艇建造計画としてはまだまだ先が見えないところがあります。

こういうところも合わせて、次回でお話しする予定です。

『朝雲新聞』 といいますのはその筋ではよく知られているものですが、普通の一般紙とは少し性格が異なりますので、一般の方々が目にされることはなかなか無いかと思いますが、機会がありましたら是非ご一読を。

posted by 桜と錨 at 16:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2017年04月29日

米国による斬首作戦


またまた北朝鮮は性懲りもなく弾道ミサイルの実験を行ったが ・・・・

緊張を高める北朝鮮情勢について、ネット上でも米国による金正恩を狙った斬首作戦の実施が語られているところである。

先にも、米国の国益保護及びそれに影響を及ぼすことについては、米国はそれが例え他国の領土上であっても、必要があると判断した時は軍事力を行使することには躊躇しないことを書いた。

これには他国の権力者の殺害も含まれることは申し上げるまでもない。

この米国による斬首作戦は過去にも色々あるが、その最も代表的な例が1986年に 「リビアの暴れん坊」 と呼ばれた独裁者カダフィ大佐を狙った 「エルドラド・キャニオン作戦」 (Operation El Dorado Canyon)であろう。

既に30年も前のことであり、覚えておられない方も多いと思われるので、少しご紹介してみたい。


作戦実施に至る経緯については省略するが、85年に客船ハイジャック事件や空港における爆破事件2件などのテロに引き続き、西ベルリンでのディスコ爆破事件により米国市民に死者が出たことが直接の引金とされている。

この作戦は、1986年4月14日英国 Lakenheath 空軍基地駐留の第48戦術戦闘航空団のF-111F 24機と、Upper Heyford 基地駐留の第42電子戦航空隊の EF-111A 5機が飛び立ったことに始まる。

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リビアまでの飛行ルートはフランス上空を通過するのが早く、片道約1300マイルであったが、同国の承諾が得られなかったために大西洋をグルリと周り、ジブラルタル海峡を通って地中海に入る洋上ルートとなり、片道の飛行距離は約2500マイル、飛行時間13〜14時間となった。

このため事前に米本土から英国 Mildenhaii に進出した KC-10 19機及び Fairfor 駐留の KC-135 空中給油機9機の合計28機により、往路4回及び復路2回の計6回の給油を受けた。 この給油回数は、往路は低高度、復路はより高々度の巡航高度であったこともある。

なお、F-111F 24機の内6機は長距離作戦のための予備機であり、本隊と一緒に飛び立ったものの、第1回の空中給油の後英国の基地に引き返しており、実際の空襲を実施したのは18機であった。

目標はトリポリ周辺の次の3個所である。

  Al Azziziyah 駐屯地 : 海外テロ司令部があり、かつカダフィ大佐の居住地
  Sidi Bilal 港湾施設 : 海上テロ要員の訓練施設
  Tripori 空港 : 軍用輸送機基地としても使用

そしてリビア沖のシドラ湾には第6艦隊の空母 「アメリカ」 と 「コーラル・シー」 が展開し、空軍の空襲部隊に対する次の支援作戦を実施した。

  E-2C : 作戦空域の早期警戒と航空管制
  F-14 : 作戦空域のCAP
  EA-6B : EF-111A と共に電子戦支援、特にSAM砲台に対する電子妨害

加えて、空軍部隊のトリポリ空襲と同時並行して F/A-18 6機、A-6E 14機及び A-7E 6機により Benghazi 周辺の Al Jumahiriyah 駐屯地及び Benina 空軍基地、防空施設への空襲を実施した。

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この作戦において使用された主な攻撃兵器は、空軍の F-111F が 2,000lb 及び 500lb の Paveway 2 レーザー誘導爆弾であり、海軍の A-6E は 1,000lb の Mk82 Mod1 Snakeye 爆弾及び Mk20 Rocheye クラスター爆弾、A-7E は AGM-45 Shrike 及び AGM-88A HARM (High-speed Anti-Radiation Missile)、F/A-18 が HARM であったとされている。


この作戦の計画立案開始は4月7日とされており、これだけの規模の海空軍の共同作戦を僅か1週間で実行に移していることには注目していただきたい。 これが米軍の実力である。

しかも、英国はもちろん、フランス、ロシア、イタリアなどの関係各国政府には事前通報などが行われたが、関係者以外の世界各国がまさに寝耳に水、青天の霹靂の作戦であった。

そして作戦は完璧な奇襲であり、カダフィ大佐は運良く難を逃れたものの、養女を亡くしており(これは後日誤りであったとされた)、またトリポリ及びベンガジ周辺の目標地区の被害も甚大であった。

米側は F-111F 1機が未帰還となり、後に搭乗員2名の内の1名の遺体がリビア側から米国に引き渡されたとされている。

この空襲の後もリビアのテロ行為などはある程度続いたものの、この米国による斬首作戦により、「リビアの暴れん坊」 「狂犬」 と呼ばれたカダフィ大佐が次第に大人しくなり、かつ西側寄りになっていった直接の切っ掛けとなったことは事実である。


この様なまだ交戦下にない他国に対する米国による軍事力の行使は、その後の湾岸戦争劈頭のバクダッドに対して、そしてつい先日のシリアに対する大量巡航ミサイル攻撃の実施などをみてもその考え方がよく判るであろう。


そこで、最後に北朝鮮情勢である。

米国はその気になればこのリビア空襲程度の作戦はいとも簡単にやってのける実績を示しているのであり、しかもこのリビア空襲に比べれば、地理的かつ米側兵力の状況などははるかに容易であり有利である。

そして秘密保全は作戦の成否の鍵となるものであり、その事前の動静・徴候などがマスコミや評論家と称する人達に流れることはあり得ないことである。

まさに、ごく限られた関係者以外にとっては “ある日突然として” 実行されるのである。

もちろん政権中枢や主要軍事基地に対する空襲は、米国による軍事作戦上の一つの選択肢に過ぎないが、北朝鮮もその指導部の思考が “まとも” であるならば、このことは十分に理解しているであろうと考えるが ・・・・ ?

( 画像は当時の 「Aviation Week & Space Technology」 誌より引用 )
posted by 桜と錨 at 23:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2017年04月18日

核兵器の効果


最近とみに北朝鮮情勢に関連して 「日本に弾道ミサイルを打ち込まれたら」 とか 「核弾頭が東京に落ちたら」 とか騒がれており、これに対して核弾頭についての記事がネット上でもあれこれ見られるようになりました。

そこで良い機会ですので、核兵器の効果について現在でも最も権威があり、かつこの分野について語る時の根拠文書となる資料をご紹介します。

それが、原爆を開発したことで有名な米国ニュー・メキシコ州にあるロス・アラモス科学研究所が1950年に出版した 『The Effects of Atomic Weapons』 です。

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( 1950年版 )

そしてその後水爆が開発されると共に、両者を合わせた形に内容が全面改訂されて1957年に国防省から Samuel Glasstone が中心となって纏めた 『The Effects of Neclear Weapons』 として出版されました。

これは1962年に第2版となりましたが、64年に小改正が加えられて改めて第2版として出版され、更に77年には第3版となりました。

ENW_1957_cover_s.jpg  ENW_1964_cover_s.jpg
( 1957年版 )              ( 1964年版 )

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( 1977年版 )

これらはいずれも現在ではネット上で公開されておりますので、この方面に興味のある方は是非入手してみて下さい。

とは言っても英文ですので私などはどうしても日本語になったものが欲しくなります。  ではこの資料の邦訳版はないのでしょうか?

実はちゃんとあるんです。 1977年の第3版の全文を邦訳したものです。

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( 1977年版の邦訳版 )

ただし、これがどこで出されたものかは表記がありませんので不明です。 そして例によって今日となってはどこにどれだけ保管されているのか判りません。

これも興味のある方は探してみるとよろしいでしょう。 そしてこれと第3版の原本と比較しながら読まれると便利かと。


・・・・ で、これだけで終わってしまっては私のブログらしくありません (^_^)

もう少し具体的な核兵器の戦術的な使い方に関するものはないのか、というと、

これについては米陸軍及び海兵隊の共通マニュアルとして 『Nuclear Weapons Employment Doctrine and Procesures』 (FM 10103101、FMFM 11-4) というのが1977年に出ています。

FM101-31-1_cover_1977_s.jpg

これは本体が秘密事項を含まない普通文書として、そして秘密部分だけを纏めた補足文書の2つに別れたものです。 当然ながら後者は日本には渡っていないわけですが (^_^;

しかしながら、本体の普通文書のものの内容だけでも、使う側の視点に立った大変に興味のあるもので、日本人としてはちょっとギョッとしますし、また 「被害推定法」 「核兵器の効果」 「核兵器の効果に対する対応」 などの項目は前述の国防省編の 『核兵器の効果』 と合わせて読んでみるとそれぞれが良く理解できると思います。

ただし、こちらの方は残念ながら40年前の普通文書であるにも関わらず、何故かいまだにネット上では米軍サイトでも公開されていないようです。

そして私が見た原本も自衛隊が保有していたものではありませんので、今となっては残っているのかどうか ・・・・ ?

posted by 桜と錨 at 17:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2017年03月22日

護衛艦 「くらま」 除籍


本日護衛艦 「かが」 の就役と入れ替わりで 「くらま」 が除籍となりました。 まあしかたがないとはいえ、私としては 「かが」 の就役ばかりが注目されてこちらに目が向かないのは少し淋しい気がします。

「はるな」 型に引き続いて建造された 「しらね」 型ですが、ある意味 「はるな」 型よりはこちらの方が何かに付け表に出てきましたので知名度は高かったように思います。 まさに海上自衛隊の一時代を画した艦と言えるでしょう。

折角ですので、こういうものをご紹介。 「くらま」 の艦内配置図の2枚です。 除籍になりましたので機会を見て残りも合わせた一揃いを公開したいと考えていますが、さてどのような方法が良いのか ・・・・ ?

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( 左クリックで拡大表示 )

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( 左クリックで拡大表示 )

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2016年12月26日

朝雲新聞 (2)


朝雲新聞の12月22日号が届きました。

「世界の新兵器」 コーナーでは私が担当する艦艇編の2回目として、今回はアルジェリア海軍の MEKO A-200AN 「エルラディ」 級を採り上げました。

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( 文字が小さくて内容は読めないかもしれませんが ・・・・ 自衛隊及びミリタリー関係に興味のある方は是非定期購読を )

お馴染みドイツの MEKO シリーズの最新型で、満載排水量 3,700トンの船体に斬新なアイデアと多彩な兵器を盛り込んだ大変有力なフリゲートで、しかも建造費約500億円というものです。

日本の護衛艦の調達・建造形態からみると驚くべきものですね。


さて、次回は何にしましょうか。

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2016年12月05日

シースパロー用射撃指揮装置 Mk91


ネットネタからです。 次の様なことが話題になっていました。

シースパロー艦対空ミサイル用のMk95イルミネーターには、2基のアンテナが横並びに配置されていまが、これを用いる目的は?

これですね。

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( 注 : 左 (向かって右) が送信用、右 (向かって左) が受信用のアンテナ )

Dir_Mk95_NSSMS_sche_01_s.jpg

NSSMS (Nato Sea Sparrow Missile System) の射撃指揮装置 (MFCS、Missile Fire Control System) Mk91には、Mk95というミサイル用方位盤 (Missile Director) が用いられています。

通常のセミ・アクティブ方式のミサイル・システムでは目標追尾用のレーダーと、ミサイルを目標に誘導するための誘導波 (イルミネーター) との2種を使用しています。

発射されたミサイルはこの誘導波の目標からの反射波を受信してその方向に向かうようになっており、通常は連続波 (CW、Continuous Wave) が使われます。 シースパロー・ミサイルの元の空対空用のスパローも同じです。

このスパローを艦載用にしたのがシースパローですが、射程そのものが短い近接防御用ですので、その射撃指揮装置もターターやテリアなどのように大がかりなものにすることはできません。

このためこの誘導用のものを目標の追尾にも使うことにしました。 これが BPDSMS (Basic Point Defense Missile System) の射撃指揮装置Mk−116で、その方位盤がMk76です。

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このMk76の架台は元々が40ミリ機銃や3インチ砲用の射撃指揮装置であったMk63のものを流用しています。

そしてこれに送信用 (左) と受信用 (右) のアンテナを、そしてその中間上部に光学照準器を装備しました。 これにより元のMK63と同じように人力操作で目標を捜索し追尾するようになっています。

このMk76を自動操縦にしたものが NSSMS の米海軍バージョンのMk95です。

送信・受信用アンテナの中間上部にあるのはMk76の光学照準器に換わる LLLTV (Low Light Level TV)、つまり高感度テレビカメラで、FCS操作員がコンソールでこれの映像を見ながら目標の捜索・確認と追尾補助に使うことができます。


では、このCW波でどうやって目標の位置、特に距離を測るのでしょうか?

通常のパルス・レーダーでは、パルスを発信してから目標に反射して戻ってくるまでの時間を計測して距離を算出します。

そして1つのアンテナを使い、パルスを送信する時以外は受信モードにすることによりこれを行っています。

したがって電波が出っぱなしになるCWレーダーの場合は、必然的に送信アンテナとは別に受信アンテナの2つが必要になります。

また、当然ながら連続波では発信から受信までの時間差が測れませんので、これで目標の追尾を行うためにパルスに換わって連続波にFM変調をかけることにより、この周波数が変わるところを測って距離を出すのです。


実はこのMK95を使用した 米海軍の NSSMSですが、TAS Mk23と組み合わせた IPDMS (Improved PDMS)として、大変に素晴らしい近接防禦システムを構築しています。

もう40年近く前にそのプロトタイプを見る機会がありましたが、その時既にNTDSや三次元レーダーMK48C (受信データをディジタル化して目標の自動探知自動追尾機能を付加したもの) と組み合わせた改良型とすることが決まっておりました。

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(後に後輩への啓蒙活動のために纏めたもの)


ハッキリ申し上げて、ハードウェアはともかくとしてソフトウエアにおいて、そのプロトタイプ当時でも現在の海自の短SAMシステムより思想的に進んでいると思います。
posted by 桜と錨 at 00:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2016年09月25日

艦内電話装置配置図


本家サイトの50万名ご来訪感謝記念企画の第4弾のコンテンツを作らなければならないところですが、ちょっと変なものに捕まってしまいまして延期させていただきます。

その変なものとは 「あさかぜ」 就役時の 『艦内電話装置配置図』 です。

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昔コピーしておいたものをディジタル化しようとしたのですが、コピーの写りが大変に悪いため、ゴミ取りなどの加工とよく見えないところを何とかと作業を始めましたが、これが大変に手間暇を要することがわかりました。

下図は艦橋構造物の第02甲板 (3層目) で、航海艦橋やCICがあるところですが、この図面だけでもやっとここまでです。

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船体内の各甲板になるとちょっと完成は何時になることやら ・・・・ (^_^;

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( 第2甲板 まだ未加工です )

この 『艦内電話装置配置図』 というのは、艤装工事の時に各種の艦内通信装置について “ここにこういうものを取り付けますよ” というもので、一般艤装図の上にこれを書き加えたものです。

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( 上の第02甲板図の一部 航海艦橋艦長席付近 )

確か当時でも10部程度しか作られなかったと記憶していますので、その意味でも大変にめずらしく、一般の方々がご覧になったことはまず無いと思います。

この図を元に工事がなされますが、艤装員の艤装要望などにより変更されることもあります。 このため就役時の最終的なものはこの図を修正した縮小版と各通信系統ごとの一覧表が一緒になって完成図書の中に綴じられることになります。

既に退役した古い艦のものですが、艦艇の艤装時の図面の中にはこういうものも含まれていますという、取り敢えずご参考までにご紹介を。
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2016年07月24日

米海軍テキスト 『潜水艦戦』


月刊誌 『世界の艦船』 の8月号から、私の朋友の一人、同期の小林正男氏の手になる 『現代の潜水艦』 と題する連載が始まりました。

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小林氏は潜水艦隊司令官まで務めあげた潜水艦のプロですので、まさに打って付けのテーマと言えます。

私も早速8月号の記事を拝見しましたが、大変に面白く、続きが楽しみな内容となっています。


・・・・ そこで、今回のこの連載と勝手にコラボしてこんな資料を公開することにしました (^_^)

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1959年の米海軍大学校の通信教育用テキストを邦訳したものです。 もちろん、米海軍らしく本資料には秘密に関わるものは全く含まれておりませんで、それらはまた別になっておりますので、この邦訳版も秘密文書でも何でもありません。

60年頃というと、米海軍でもまだ改良が施された 「ガピー」 級などの在来型が現役として艦隊に残っており、丁度在来型から原潜への移行期でした。

したがって、現在のような潜水艦の運用法などは確立しておらず、ある意味まだまだ原潜についての試行錯誤の段階でもあったと言えます。

現代の潜水艦については小林氏がこれから詳しく解説してくれると思いますし、その一方で大戦中の在来型潜水艦については戦史など色々なものが出ておりますので、本資料は丁度その中間を解説するものになります。 小林氏の連載の 「前章」 として お読みいただければと思います。

また、巻末に付録として 潜水艦についての基礎的な用語解説集 が掲載されており、これなどは初心者の方々には便利なものでしょう。

ただ、本資料の第5章 「気象と海象の影響」 の本文2頁が欠落、というか白紙になっております。 私のコピーでは頁は連続しておりますので、おそらくこの邦訳版の製本ミスではないかと思います。

ちょっと残念ですが、今となってはこの邦訳版もどこにどれだけ残っているものかと ・・・・ ?


で、取り敢えず本資料だけを単独で公開しますが、これに関連して現在新しいコーナーを考えているところです。

私の本来の専門である 『現代戦』 についてですが ・・・・ 本家サイトの中の一つとして作るか、別室的に分けるか、あるいは全く新しいサイトとするか、などなどでちょっと悩んでおりまして、まだ決めかねています。

もちろん、この新しいコーナーでは、こういう資料などの公開も順次行っていきたいですね。
posted by 桜と錨 at 14:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2016年06月12日

艦内配置図2つ


今週の本家サイトの更新はお休みですが、数日前にご来訪49万名を越えましたのでこれでは少し淋しいので、その代わりと言ってはなんですがかつて海自唯一の給油艦だった 「はまな」 と既に退役したミサイル艇 「1号」 の艦内配置図を公開いたします。

画像をクリックしていただければ、PDF版で大きなものを表示いたします。

AO-411_Inner_01.jpg

PG-821_Inner_01.jpg

艦内配置図は一般艤装図などとは使用目的が違いますので形状そのものはそれほど精確なものではありませんが、艦内がどのような区画に別れているのかがお判りいただけると思います。

別に秘密のものではありませんがやはりそれはそこ、現役艦では艦内保全上のこともありますので、退役艦については他のものも機会を見つけて公開していきたいと思います。


なお本家サイトは次の50万名で大台に乗りますので、その時のご来訪感謝企画は少し大きなものをと考えております。

posted by 桜と錨 at 17:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2016年05月25日

戦後艦艇の戦闘システム


先日 『世界の艦船』 6月号特集の 『現代の艦隊防空』 記事の所感で “各ハードウェーアの内容について少々物足りない” と書きました。

もちろん、特集そのものが非常に広汎なものであり、かつ月刊誌として他の記事との関係も併せると、紙幅的にこの要求には無理があることは承知の上です。

それはそれで致し方ないことであり、また当該誌で採り上げられたそれぞれの記事も限られた紙幅の中で良く纏められたものであると思います。

しかしながら、これらのハードウェーアの詳細について書かれたものはあまり見当たらないのもまた事実です。

本誌についても、例えば艦載対空ミサイルについてはかつて岩狭源晴氏が24回にわたり連載 (通刊47号〜98号) された 『艦載用対空誘導弾について』 などは一般読者向けとして秀逸の記事であったと思っていますが、その後の続きの話しについては、残念ながらこの連載に匹敵するものは他の執筆者からもいまだに出てきていないといって過言ではないでしょう。

また、本誌の性格からしてあくまでも 「艦船」 が主体であって、例え連載の形を採ったとしても、搭載武器などについて多くの紙幅を割くことには色々な制約があるかもしれません。


で、ではそれならば、と言うことで、本ブログとしてこの戦後艦艇の戦闘システムについてもう少しその詳細を紹介していくのも一つのテーマになるかと。

当然ながら、個々のハードウェーアといっても、それに関係する他のシステムやその運用法、そして戦術思想などの変遷も含めなければ、個々及び全体の意味・意義は見えてこないでしょう。

いつ、どれだけのものを紹介できることになるのか判りませんが、それこそ “気ままに” UPしていければと。

・・・・ こういう ↓ 古い資料をディジタル化しながら、ふと考えた今日この頃 (^_^)

DDG-2_JPTDS_ss.jpg


因みにこのブロック・ダイアグラムにある DDG−TDS (JPTDS) ってご存じでしょうか?

かつて米海軍が初めてミサイル駆逐艦として建造した 「DDG-2 Charls F. Adams」 型のシステムが古くなってきた時、その近代化の一つとしてそれまでのミサイル指揮システム 「WDS」 の換装用として新たに開発したものです。

実はこれ、海上自衛隊が 「あまつかぜ」 の後継艦として建造した 「たちかぜ」 型に 「WES」 という初のディジタル・コンピューターを使った武器指揮システムを導入しましたが、逆に米海軍がこのアイデアを元にして、これにNTDSの機能も含めた形に纏め上げたものなんです。

対空ミサイルについても、それだけでは意味はないのであって、個艦として、部隊としてこういうシステムと組み合わされて初めてその機能・能力が十分かつ有効に発揮できることになります。

こういう話しも含めて紹介していければと思っていますが ・・・・

posted by 桜と錨 at 13:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2016年05月09日

弾道弾の飛翔技術の基礎 (10・終)


弾道の誤差 (承前)

(3) 速力誤差

ここでいう 「速力」 とは speed、つまり単に早さのことで、方向の要素を含んだ速度 vector のことではありませんのでご注意を。

推進ロケット燃焼終了時における弾道弾の速力の誤差もまた弾着の誤差になることはお判りでしょう。

この速力誤差が生ずると、その後の真空中における楕円軌道が変わり、下図に示すように意図した軌道から長軸を誤差による Δθだけ回転させた新しい楕円軌道になり、その結果弾着には2Δθの誤差を生じることになります。

BM_Error_07a.jpg

このことは弾道の “高い” “低い” ということと同じ意味になり、これは次の (4) で説明する仰角誤差よりも更に重要な問題となります。


(4) 仰角誤差

推進ロケット燃焼終了時における弾道の仰角の誤差も弾着時の距離誤差となります。

これも上記の(3)と同じく、意図した軌道から長軸を誤差による Δθ だけ回転させた新しい楕円軌道になり、その結果弾着には 2Δθ の誤差を生じることになります。

BM_Error_07b.jpg

ただし、当初の意図した弾道は所要の射程まで飛翔するに要する最少のエネルギーによるものですから、この仰角誤差は結果的に常に射程の減少となって現れることになります。


弾道誤差の要約

これまでに説明してきた弾道弾の弾道誤差について、一言で言うと、第一段階の推力飛翔において誘導システムはこれらの誤差を補正する、あるいは最小限に抑えるように機能しなければならない、と言うことに尽きます。

つまり、弾道弾が所要の目標範囲内に弾着するためには、推進ロケット燃焼終了時の速度ベクトルを極めて精密にコントロールして、所望の弾道軌跡での飛翔を達成できる必要があると言うことです。

一般的な弾道弾において要求される推進ロケット燃焼終了時の各要素の精度は下表のとおりであり、これを達成し得て初めて99.9%の有効性が発揮可能とされています。

誤差要素要求精度
位置誤差 1/2マイル以下
方位誤差 ±1分以下
速力誤差 1〜2フィート/秒以下
仰角誤差 ±1分以下



地球自転の影響

さて、弾道弾の飛翔技術の基礎について説明してきましたが、最後にもう一つ重要な事項が残っています。

そうです、地球自転の影響の問題です。 射程が長く、飛行秒時も長いので、この問題への対応は弾道弾の飛翔技術としては必須のことです。

しかしながら、この地球自転の影響の問題は既に艦砲射撃の場合について本家サイトの『砲術の話題あれこれ 第7話』として採り上げております。


射表などの細かいことを除けば、基本的な理論については同じですのでそちらをご参照いただくとして、本項では省略することといたしますのでご了承下さい。


終わりに

さる2月に北朝鮮が行った弾道弾発射実験についての報道を機にこの項を進めてきましたが、ここにきて北朝鮮はSLBMやムスダンなど立て続けに打ち上げ実験を行い、そしてそのほぼ全てで失敗しております。

弾道のことや弾頭の再突入のこと以前に、技術的にはまだまだ打ち上げの初期段階さえ満足に完成していない状態であることが判明しました。

米国本土どころか、日本にとっても真の脅威となるような本当の弾道弾の完成はまだ当分先のように思われます。

もちろん連載冒頭に書きましたように、どこに飛んでいくのかわからない、本当に核弾頭の小型化に成功しているのかも判らない、という状況での単なる政治的なプロパガンダやブラフとしては別の話ですが ・・・・

(この項終わり)

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前 : 弾道弾の飛翔技術の基礎 (9)

posted by 桜と錨 at 13:58| Comment(1) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2016年05月08日

弾道弾の飛翔技術の基礎 (9)


弾道の誤差 (承前)

(2) 位置誤差

もし燃焼終了時の速度ベクトルの誤差が位置だけの誤差であるならば、下図に示すように軌道上の全てのポイントを同じ量だけずらしたものと考えることが出来ます。

BM_Error_04.jpg

したがって、燃焼終了時の位置がΔθだけずれたとするならば、弾着点も又Δθと同じ量だけずれることになります。 このことは先の (1) の方位誤差の現れ方とは異なりますので注意が必要です。

この燃焼終了時の位置誤差は、次の要素の誤差に起因します。

   目標位置データ
   打ち上げ位置
   誘導

もし目標位置データに誤差があるならば、下図のようにその誤差の距離にほぼ等しい弾着誤差となって現れます。

BM_Error_05a.jpg

したがって、目標の正確な地理的位置を知ることが必要であることは論を待たないところでしょう。

例えば強固なICBM発射サイトを破壊するには、ほとんど直撃するに足る精密な位置情報が必要になってきます。

またもし移動式発射台を使用する場合、実際の打ち上げ位置が計算位置から1マイルずれているならば、例え弾道が正確に計算されていたとしても、その弾着点は1マイルずれます。

BM_Error_05b.jpg

これは、艦船、航空機、あるいは潜水艦から弾道弾を発射するためには、精密な航法機器を装備する必要があることを意味します。

更に、誘導システムが適正な位置で推進ロケットの燃焼を終了させることができなければ、これも正確な弾着を得ることができません。

特に垂直位置の誤差はこの誘導装置の不正確さに起因します。

即ち、例え燃焼終了時に意図した速度 V* 及び仰角 φ* を得たとしも、下図のように燃焼終了位置が高すぎた場合、あるいは低すぎた場合には、弾着位置に誤差を生じることになります。

BM_Error_06a.jpg

BM_Error_06b.jpg

この燃焼終了時の高度誤差は、それによる弾着誤差の決定が他の要素のように1対1的に単純に表されるものではなく、より複雑な方法が必要になります。

例えば、意図した弾道で打ち上げたものの推進ロケットの燃焼終了時が早すぎた場合、本来の燃焼終了位置に達した時点での速度が遅くなることになります。

これによって本来の燃焼終了地点以降の弾道は意図したものより短くなり、これが弾着誤差となります。

したがって、目標位置に弾着させるためには、誘導システムによる燃焼終了位置の極めて正確なコントロールが必要であることをお判りいただけるでしょう。

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posted by 桜と錨 at 09:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと