2019年03月04日

戦線は音威子府付近で膠着し


継戦能力や陸自の自前輸送艦のことが話題に出てきまして、昔のことを思い出しました。

もう30年ほど前のまだ冷戦期のこと。 米軍の情報部門が作成した 「もし現在の世界的な軍事情勢の中で、ソ連が日本に対して武力攻撃を行うとしたら」 という想定シナリオ集がありました。

( 今となってはもうこんなものがあったことを覚えている人はいないでしょうし、冷戦期の資料そのものも残されているかどうか ・・・・ ? )

約10本くらいの色々なシナリオが収録されていましたが、その中には当然ながら日本本土に対する陸上兵力による本格的な武力侵攻を想定したものも含まれていました。

当時の日米共同・協同演習や海上自衛隊演習などでお馴染みの

「・・・・ 戦線は音威子府付近で膠着し ・・・・」 という演習想定は、まさにこのシナリオに基づいたものです。

しかしながらこの本土侵攻のシナリオは、蓋然性が高い順に並んでいるこのシナリオ集の確か一番最後か、巻末の付録に収録されていたと記憶しています。

で、これを疑問に思っていた私は、ある時米軍の情報部門担当者の一人に聞いてみたんです。

なぜ、日本本土侵攻のシナリオが最後の付け足しみたいになっているの? これが極東では一番重要なのでは?

すると、若い女性の中尉さんが、半分呆れたような表情を隠さず、笑顔で答えてくれました。

えっ、知らなかったんですか?

このシナリオは元々は無いものだったのですが、日米共同訓練などで使うためにわざわざ作って入れたんですよ。

これがないと、演習で日本の陸上自衛隊さんの出番がないでしょ?

日本侵攻のためにはソ連は海を渡ってこなければならないでしょ? そこまでの労力とリスクをソ連が冒すと思います? 東京を占領できるわけでもないのに?

私達はその様な事態が生起するとは全く判断していませんよ。

ということでした。

そう、当たり前と言えば当たり前のことですが、日本本土侵攻のためには “海を渡って来なければならない” んです。

先頭の正面兵力にしても後続兵力にしても、そして継戦能力維持のための後方支援、何よりも補給のために。

やっぱりねえ (^_^)


皆さんは 「1990年危機説」 というのをご存じでしょうか?

1985年を過ぎた頃から、ソ連の経済・産業の状態は既に全くの不振に陥り、これ以上の軍拡にはとても堪えられない (特に米国が打ち出した 「スターワーズ計画」 には対抗できない) ことがハッキリし、いずれはソ連そのものが崩壊するであろう事も視野の中に入ってきました。

こういう状況にあって、もし1990年までにソ連軍が最後の一か八かの全面通常戦争に打って出たならば、米軍・ NATO を初めとするは西側は、欧州方面でも、太平洋方面でも勝てないかもしれない、と考えられていました。 これは米軍自身がそう思っていたのです。

そしてその1990年を乗り切れば、西側は決して負けることはないと。

実際のところ、私が知る限りでは1986〜1988年頃は米海軍の現場のスタッフ達もピリピリしていましたね。


その時のソ連軍をもってしてでさえ、米軍の情報部門はソ連の日本直接侵攻はあり得ないと判断していたのです。

私はこの時の美人 (お世辞抜きに) 中尉さんの話を聞いて以来、日本のあるべき防衛力についてのそれまでの自分の考えに確信を持つに到りました。

日本本土防衛のための抑止力としてなら、陸上自衛隊は兵力は半分 (当時の) で良い、装甲部隊、特に戦車などはごく少数でよい。

その予算と人員を海上阻止兵力たる海上自衛隊と本土防空隊である航空自衛隊の強化に回すべきである。

と。 これは今でも全く変わりませんし、変える必要があるとも感じていません。

それはそうでしょう。 離島防衛の話しにしろ何にしろ、相手は “海を渡って来なければならない” んですから。


そしてそれを逆に考えるならば、海兵隊、そして両用戦というものを全く判っていない “海兵隊もどき” の 「水陸機動団」 や、ましてや陸さんが自前の輸送艦を持つなど (^_^)

日本は島国であるにもかかわらず、多くの日本人に “海” というものを何も理解していない人達がいるということがよく判ります。


それにしても、陸上自衛隊さんというのは、帝国陸軍の昔から相変わらず “策士” が多いですなあ (^_^)
posted by 桜と錨 at 15:47| Comment(4) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2019年02月26日

ASMD : 米海軍と海自の違い


先に米海軍のブルー・リッジに関連して、

「はつゆき」 型などは就役時点で ASMD の “考え方” において既に米海軍に大きく水を開けられてしまっていました。

と書きましたが、実はこれ “水を開けられた” というよりは、正しくは米海軍は ASMD について全海軍を挙げて対策を考えてきたのに対して、海自はただひたすら予算獲得のための理屈を考える ことに集中し、実際の脅威評価に基づく戦闘様相の検討を行ってその結果を艦艇建造に反映させてきたのではない、と言うことなのです。

則ち、米海軍では1967年の 「エイラート」 事件を契機にして、 ASMD について既存装備の改善と新装備の開発を図るのみではなく、戦術はもちろんのこと、艦内編成・態勢、教育訓練と人事管理、艦隊での演習、などなど、ありとあらゆる全てのことについて海軍の全力を挙げて研究・開発・改善を行い、そしてその成果を艦隊に次々と反映してきました。

その中で装備面での研究の中心となったのが、カルフォルニア州チャイナ・レークにあった 「海軍武器センター」 (NWC、Naval Weapons Center) です。

NWC_ChinaLake_sat_h30_01_s.jpg

NWC はカルフォルニア州コロナにあった NOL (Naval Ordnance Labolatory) とカルフォルニア州チャイナ・レークにあった NOTC (Naval Ordnance Test Center) とが米海軍の組織改編により1976年に統合されたものです。

( なお、NWC は1992年に更なる組織改編・統合により閉鎖され、その機能は NAVSEA (Naval Sea Systems Command) 隷下の NSWC (Naval Surface Warfare Center) へと引き継がれ、当該地には新たに NAVAIR (Naval Air Systems Command) 隷下の NAWC (Naval Air Weapons Station) が置かれています。)

この統合前の2つの組織及びその後の NWC において、想定されるありとあらゆる対艦ミサイルの脅威とそれによる戦闘様相に対して、どの様な武器・システムならばどの程度まで対処可能なのか、現在及び近い将来の技術においてどこまで実現でき、どの程度までの対処で艦隊としての許容範囲なのかのシュミレーションを最新の情報に基づいて何度も行い、その都度研究結果に基づく提言を行ってきました。

NWC_ASMD_Updata_1974_cover_s.JPG

例えば CVBG (Aircraft-Carrier Battle Group、空母機動部隊、現在の CSG (Carrier Strike Group) に対して、敵の空・水・潜兵力による対艦ミサイル 32〜96発が60〜360度の範囲から1分〜4分/発の間隔で発射されて来襲する時に、我はどのような武器・システムでどのような態勢にあるならば、どのレベルまでの対処が可能であるか、などなどです。 もちろんこれには敵の電子妨害を伴う場合と伴わない場合とが含まれます。

そしてその結果が反映された初期のものが、BPDMS に代わる新しい NSSMS と NTDS とを連接した ASMD システムであり、そのコンピューターのオペレーション・プログラムなのです。

このシステムを装備した艦の代表例の一つが、ご存じ後の1998年に横須賀配備となる空母 「キティ・ホーク」 (CV-63 Kitty Hawk) で、1976〜77年の定期修理 (COH、Complex Overhaul) の際に元来のテリア・ミサイル・システム2基を撤去して、替わりに NSSMS (方位盤x2、8連装発射機x1) を2基 (計画3基) 装備し、これを NTDS と連接したシステムとなりました。

CV-63_NTDS_ASMD_Prog_cover_s.JPG

この時の NTDS の ASMD プログラムは、カルフォルニア州サン・ディエゴにある FCDSSA,Pac(Fleet Combat Direction System Support Activity, Pacific、艦隊戦闘指揮システム支援施設) で作られたもので、当時としては大変に優れた考え方に基づく素晴らしいアルゴリズムのものでした。

FCDSSA_PAC_sat_h31_01_s.jpg

そして米海軍は NWC での研究結果に基づき、 NSSMS による ASMD の次のステップとして、三次元レーダーの AN/SPS-48A をディジタル化しかつ目標の自動探知・自動追尾化した -48C への換装、更に TAS (Target Aquisition System) Mk-23 を加えたシステムへと進んだのです。

もちろんこの NWC の研究の中には、開発中であったイージス艦を加えた場合の艦隊防空のシミュレーションなども含まれており、この成果がイージス・システムのオペレーション・プログラムに反映されてきております。


その一方で海自はどうだったのか?

4個護衛隊群の8艦8機体制 (88艦隊構想) は打ち出したものの、そのワーク・ホースたるDDについては、まずは隻数を揃えるための予算獲得が最優先課題であり、そのためには実際のことはさておき、物事を紙の上でしか判らない事務方である内局の担当役人を納得させるための理屈のこじつけ書類が必要だったのです。

これが 「はつゆき」 型となった訳ですが、当然ながらこの予算獲得のための理屈付けには米海軍のような実戦における脅威評価や戦闘様相に即した ASMD システムの研究・検討がなされた訳ではありません。

「はつゆき」 型の建造に当たって作成された後付けの 『昭和52年度護衛艦 (52DD) の運用要求について』 に盛り込まれた ASMD 能力は、既に決まった艦型、システムならここまでできる、という説明に過ぎず、本来の “DDにはこういう ASMD 能力が必要” というものではありませんでした。

例えば、既に当時多額の開発費を注ぎ込んできた短SAM用射撃指揮装置 FCS-2-12 と砲用の FCS-2-21 を今更止めて、短SAM誘導用の CWI を組み込んだ方位盤 (最近になって FCS-2-31 として実現したような) を2基として短SAMによる2目標同時対処を可能とするなどはとても言い出せないどころか、検討さえされませんでした。

ましてや捜索用レーダーに自動探知・自動追尾機能を付加する RVP (Radar Video Processor、米海軍は当時既に実用化済み) や上述の TAS Mk23 を装備するなどによりどれだけの能力向上が図れるかなどの検討が行われた訳ではありません。

これらは初めから予算獲得のための理由には挙げられなかったのです。

したがって、国産初のシステム艦といわれる 「はつゆき」 型ですが、そのシステムである OYQ-5 などはとても米海軍で言う NTDS (Naval Tactical Data System、艦艇戦術情報システム) やその発展である CDS (Combat Direction System、艦艇戦闘指揮システム) の足下にも及ばない、単にアナログの武器管制装置 (WCS、Weapon Control System) をディジタル化した一種 であったに過ぎませんでした。

システムのコンピューターは米海軍ではサブ・システム (各武器・機器) 用にしか使われない小型の AN/UYK-20 がたった1台、しかもそのメモリーは僅かに64Kの最小限のタイプ。

加えてシステムのコンソール (操作卓) は NTDS 汎用の OJ-194 が全部でたったの4台 (当初案では僅か3台) であるに過ぎず、しかも捜索用レーダーによる目標の探知・追尾データは相変わらずコンソール上での手動入力、米海軍の NTDS では常識の Link-11 機能など初めから除外、というものだったのです。

当然、当時私達はこんな装備やシステムでは役に立たないと猛反対で、少し手を入れただけでももっとマシな性能・能力になるのだから、DDの計画を見直す必要があると声を大にしたのですが ・・・・ 既にお役所たる防衛庁 (当時)、そしてその下請けである海幕の施策として決まって (内局に説明してしまって) おり、残念ながら如何ともしがたいものでした。

これを要するに、「はつゆき」 型DDが建造された当時において、ASMD については米海軍に遅れをとったと言うより、初めから比較対象となる土俵にさえ上がっていなかった のです。

posted by 桜と錨 at 23:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2019年02月11日

USS Blue Ridge 艦令48年!


横須賀を母港とし、第7艦隊の旗艦を努める揚陸指揮艦 「ブルー・リッジ」 が冬の小樽に寄港したと報じられていました。

https://www.c7f.navy.mil/Media/News/Display/Article/1750788/seventh-fleet-command-ship-uss-blue-ridge-visits-otaru-japan/

考えてみればこの艦、すでに艦令48年を超えていますが、まだまだ元気です。 もちろん常に改修・改造を受けて機器・システムは最新のものを装備する世界最強の指揮・通信能力を保持しています。

そして船体・機関も定評のある横須賀のSRFで整備を受けていますので、まだ当分は現役に留まるのかな、と。

また、司令長官や参謀長、艦長などの居室・公室などは超一流の豪華ホテルも顔負けの広い立派な設備であり、かつドアの外では24時間海兵隊の衛兵が実弾を込めた銃を持って立哨しています。


ところで、ご存じの方もおられるかと思いますが、1967年の 「エイラート」 事件の時、この 「ブルー・リッジ」 は初期の個艦防御システムである BPDMS (Basic Point Defence Missile System) を装備しており、当該事件を受けて IPDMS (Improved PDMS、NSSMS)の開発・装備が始まるまでの間、当面出来る限りの改修が行われ、NTDS プログラムを始めとする ASMD (対艦ミサイル防御) の能力UPが図られました。

その1974年現在での 「Blue Ridge」 の BPDMS の装備状況を示すのが次の図です。


USS_Blueridge_BPDMS_1974_01_s.jpg

(左クリックで拡大表示します)

このシステムの構成、機能、性能と、その米海軍自身の手になる能力評価については、機会があればまた別に詳しくお話しすることとします。


海上自衛隊は当時この状況はもちろん次の NSSMS の情報を入手してこれらを比較検討し、PDMS における ASMD のあるべき姿を追求するべきでしたが、残念ながら全く関心がなく、このため 「はつゆき」 型などは就役時点で既に ASMD の “考え方” において米海軍に大きく水を開けられていました。


posted by 桜と錨 at 22:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2019年02月09日

1980年代の米海軍 PDMS の現状


今回の海自 P-1 に対する韓国駆逐艦 「クァンゲト・デワン」 によるFCレーダー照射事案について、防衛省からの公表内容やマスコミでの報道において全くと言って良いくらい出てこなかったのが当該駆逐艦が装備する NSSMS (NATO Sea Sparrow Missile System) とその指揮管制装置である STIR-180 についてでしょう。

NSSMS や STIR-180 がどの様なものであったのかが判らないと、今回の事案が P-1 にとってどれほど危険なものであったか、その実態が一般の人々にはなかなか理解できないのではないかと思います。

で、今回の事案に関連するこれらについてはまた別の機会 (と言うより先ずは一つ雑誌記事にしてもらうことになりましたが) とすることとしまして ・・・・


もう40年近くも前になりますが、標題の件について私的な文書を纏めて周りにいる若い海自幹部で興味がある人達を集めて話しをしたことがあります。

USN_PDMS_1980s_cover_s.JPG

もちろん、この文書を纏めることも、そして当該事項についても、当時の私の職務の範囲ではなく、また職務上知り得たものでもありませんで、全く私が個人的に勉強をしたものからです。

当然その内容は当時の職場は勿論、海上自衛隊そのものにも無いものでした。

今これを読み返してみると、少なくとも私が定年退職した時点においでさえ、海上自衛隊における PDMS や ASMD (Anti-Ship Missile Defence)に対する “考え方” は、この40年前の米海軍にはとても敵うものではなかったと思っています。

それ程米海軍はこの問題について徹底して研究・開発を行い、そしてその成果を着々と艦隊に反映して来たといえます。

残念ながら、私がこの話しを若い人達にした時も、彼等は目の前の業務に精一杯で、海上自衛隊の立ち後れの現状を真に理解し得たという人はあまりいなかったように思いました。

“米海軍は米海軍、海自は海自、それで何か問題が” という感覚・認識であったようです。

これは特に彼等若い幹部の上司達に顕著でしたので、その影響も強かったものと思います。


さて、私が定年退職してからもう10数年、ハード・ウェアについては新しいものが導入されてきたようですが、基本的な “考え方” についてはそれから少しは進んで来たのでしょうか ・・・・ ?

当該文書に含まれる内容については、米海軍では既に全て秘密指定が解除されておりますので、そろそろこれをベースにしたものを、ここか本家サイトでお話ししてもいいのではないかとも思ってるところです。

posted by 桜と錨 at 22:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2019年01月23日

SAR と ISAR


Facebook の方で今回の P−1 に対する韓国駆逐艦 「クァンゲト・デワン」 によるFCレーダー照射事件に関連して、一連の記事を8回にわたって連載いたしました。

その中でちょっと触れたのが ISAR についてですが、そう言えばここでも、そして本家サイトの方でも確かまだご説明したことが無かったと ・・・・ ?

折角の機会ですので、ここでも少しご紹介しておきます。


レーダーの発達により、偵察衛星などで用いられてきたものに SAR (Synthetic Aperture Radar、合成開口レーダー) があります。

これは衛星の早い飛翔速度を利用し、その経路を巨大な仮想のレーダー・アンテナに見立てて、それによるレーダー映像を合成することによって地表の起伏などの詳細が判るようにするものです。

SAR_1990s_02_s.JPG

ちょっと古い画像ですが、20年以上前の段階でここまで出来るようになっていました。

SAR_1990s_01_s.JPG

この SAR の原理を応用したものが ISAR (Inverse Synthetic Aperture Radar、逆合成開口レーダー) です。

原理についての詳細は省略しますが、両者の違いを簡単に示したものが次の図です。

ISAR_1990s_02_s.JPG

このように、ISAR は航空機のように衛星よりは遙かに飛翔速度が遅いものに用いられます。

このISAR 機能は30年以上も前に既に米海軍のP−3などのレーダーに装備されていた古い技術ですが、その後海上自衛隊でも P−3 や HS に装備され、今では一般的な機能となっています。

もしろん今回の事件の P−1 に装備する HPS-106 レーダーにもこの機能があることは申し上げるまでもありません。

これもちょっと古い画像でご紹介しますが (流石に最新のものは ・・・・ (^_^; )、もう20年以上前に既にここまで出来るようになっていました。

ISAR_1990s_01_s.JPG

これをご覧いただいてお判りのように、ISAR 機能を使うとレーダーの映像で水上艦船の大凡の形が得られます。

そして艦船の長さに対するマストや艦橋などの構造物の位置の比率を図ることによって、具体的な艦型を識別することができます。

データー・ベースを整えれば、それとの比較によって簡単にこれができるようになるものであることはご理解いただけるかと。


ただ一つ、この ISAR 機能が有効に働くには一つ重要な条件が必須になりますが、それは何かお判りでしょうか?


そうです、SAR は地表に固定された動かないものであることが前提ですが、ISAR の場合は逆に海面の動揺によって艦船が揺れ動く必要がある のです。

したがって、ISAR は水上目標に対しては極めて有効ですが、地表にあるものに対しては不向きなんです。

posted by 桜と錨 at 22:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2019年01月13日

『ソ連軍事基本用語集』 公開


本家サイトの先週の更新でご来訪60万名達成記念感謝企画の第1弾を公開したところですが、2つのはずが1つしか間に合いませんでしたので、もう1つの 『ソ連軍事基本用語集』 を今週の更新としてUPいたしました。

07_Soviet_Basic_Mil_Terms_J_cever_s.jpg

  http://navgunschl2.sakura.ne.jp/Modern_Warfare/Shiryo/tenji_main.html
  http://navgunschl2.sakura.ne.jp/Modern_Warfare/Shiryo/07_Soviet_Basic_Mil_Terms.html

以前、「連続作戦」 という用語の露語表記についてご紹介しましたが、その元資料になるものです。

  http://navgunschl.sblo.jp/article/184623323.html

これは旧ソ連軍が将校用として作成したものを1972年に米空軍がスポンサーとなって英訳した 『軍事基本用語辞典』 から航空自衛隊が抜粋邦訳 したものです。

欧米の軍事用語集というのは現在ではネットでも多数見られますが、ソ連/現ロシアのものはなかなかありません。

従いまして、少々古いものではありますが、基本的な用語としては今でも通じるものがありますので、ソ連/ロシアのこの方面に関心がある方々にはお役に立つのではと考えております。

ただし、元々の露語版及びその英訳版では 約1600語 が集録されていたのですが、この 抜粋邦訳版ではそのうちの 約500語だけ ですので、ソ連/ロシアの軍事専門用語集としては不十分です。

元の英訳版はそれ程難しい文章ではありませんので、これの方も一緒に公開する予定だったのですが ・・・・ 何せ元々の印刷が悪い上に、それを昔コピーしておいたものをディジタル化したものですので、ゴミ取りと整形に思っていた以上に手間暇がかかっています。

07_Soviet_Basic_Mil_Terms_E_cever_s.jpg

このため、英訳版の方は残念ながら更に後日公開と言うことにさせていただきますことをご了承ください m(_ _)m

なお、空自の抜粋邦訳版については、現今のネット事情から一人歩き防止のために印刷・加工が出来ないようにプロテクトをかけ、かつ上下にロゴを入れております。

もし印刷可能版が必要な方がおられましたらお申し出くだされば考慮いたします。 また空自に原本をお尋ねいただくのも1つの方法ですが、今日となっては当の空自に残っているかどうか・・・・

また、英訳版はネットにもありますので必要な方は探してみてください。 ただし本家サイトで準備中のものよりは格段に状態が良くありませんが (^_^;

posted by 桜と錨 at 15:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2019年01月06日

米国防省編 『ミサイル関連用語集』


本家サイトのご来訪60万名達成記念感謝企画の第1弾として、同サイトの 『現代戦講堂』 中の 『資料展示室』 コーナーにて 1949年の米国防省編 『ミサイル関連用語集』 をPDF版にて公開しました。

Glossary_of_GM_Terms_USDoD_1945_cover_s.jpg

http://navgunschl2.sakura.ne.jp/Modern_Warfare/Shiryo/06_Glossary_of_GM_Terms.html

これは当時ミサイル関係の研究・開発が進んできたことに伴い米軍内での用語の統一を図るために国防省が誘導弾委員会を設置して纏めたものです。

発刊としては少々古いですが、内容的にはミサイルそのものは勿論、関係するレーダーや電子機器などを網羅したもので、現在でも通用する基本的、基礎的な用語集ですし、もちろんこれはこの分野での根拠として使えるものであることは言うまでもありません。

現在では多くのものが他の教範類や出版物などでの用語集の中に含まれていますが、この関係で一つに纏まったものは良いものがありません。

この文書は、現在のネット上でも私が調べた限りでは1個所しか出てきませんで、それも1つのファイルにはなっていないようです。

これもあって、元々の原本の印刷が悪く、かつかなり前にそれをコピーしたものを今回ディジタル化しましたので多少見難いところがありますが、この分野に興味のある方々はお手元に置いておかれるとちょっとした時に便利ではと思います。


なお、もう一つ現代戦関係を準備中だったのですが、ゴミ取りと整形に思わぬ手間暇が掛かり間に合いませんでした。 これは用意ができ次第公開したいと思います。

また、第2弾としては戦前・戦中のものを考えています。


posted by 桜と錨 at 23:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2018年10月07日

旧ソ連の軍事用語 『連続作戦』


少し前になりますが、某所で旧ソ連軍の用語の一つである 『連続作戦』 についてそのロシア語表記の質問が出ていましたが、結局回答が出ないままになっているようですので、ここでご参考までに。

term_russo_Consec_ope_01_s.JPG


旧ソ連軍における教範類の一つとして 『将校双書』 というのが全17巻で出されており、その中の1冊に用語集があります。

これらは米軍でも英語に翻訳されており、そして更にその英語版の一部については資料集として航空自衛隊で邦訳されております。

ただし、航空関係以外の用語では流石に空自さんだけあって私達からするとちょっとピント外れなものも多いのですが ・・・・ (^_^;

posted by 桜と錨 at 18:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2018年09月11日

『J-ships』 10月号


イカロス出版から隔月で発刊されている 『J-ships』 10月号が発売となりました。 今月の特集は 「護衛艦進化論」 です。

Ikaros_Jships_h3010_cover_01_s.jpg

この中で私もミサイル護衛艦 (DDG) の項を担当させていただきました。 題して

『 ミサイル護衛艦 DDG の進化 』

海自の護衛艦の発達、特に 「たちかぜ」 型以降を語る場合には搭載する艦艇戦闘指揮システム (CDS) は外せないものの一つです。

そこで今回の私の記事もこの CDS の流れをメインに据えさせていただきましたが、何しろこれ、秘密程度が高く、古いものでもいまだにほとんどその中身については公表されておりません。

従いまして、DDG についてもそのサワリのところをちょっとだけ、ということで (^_^;

本当ならばもう少し掘り下げた詳しいものにしたいところですが、本誌そのものがビジュアル面を重視しておりますので、これについてはまた別の機会があればということにさせていただきました。

また CDS の流れについては、CIC のレイアウトを示しながらお話しするとよくお判りいただけるのでしょうが、取り敢えずということで既に退役して久しい 「たちかぜ」 型のものを一応用意したのですが ・・・・ これも紙面の関係で省かせていただきましたので、改めてここでご紹介を。

46-48DDG_CIC_Layout_01_m.jpg
( かつての 「たちかぜ」 型の CIC レイアウト )

そして艦型としては 「たちかぜ」 型の3番艦である 「さわかぜ」 ですが、1・2番艦とは CDS が大きく異なり次の 「はたかぜ」 型とほぼ同じものでこれはまだ現役艦ですし、またイージス艦などはとても元関係者の一人としては ・・・・ (^_^;


ただこの場でも強調しておきたいのは、海自が初めて CDS と言えるものを導入した 「たちかぜ」 型2隻の WES (後に OYQ-1 及び OYQ-2 と呼称) というシステムですが、出版物などの一部ではこれが米海軍のミサイル駆逐艦である 「C.F.アダムス」 級の近代化用に NTDS の簡易版として開発した JPTDS というものを参考にしたとされているものがあります。

本記事内でも書きましたように、実はこれは逆で、米海軍が海自用の WES の開発経験を参考にしたのが JPTDS なんです。

このことは WES が使用した米海軍の軍用コンピューターは当時米海軍でも広く使われていた CP-642B であるのに対して、JPTDS はその次の新しい UYK-7 となっていることでも明らかでしょう。

米海軍がいかに海自用とはいえ、そのソフトウェア開発にわざわざ古いシステムを持ち出すような面倒なことはしませんので。

ちょっとサイズが小さくて申し訳ありませんが、JPTDS のシステム・ブロックダイアグラムの公式図です。 私が根拠なく申し上げている訳ではないという一つの証拠 (まだ他にもあるのですが) ということで (^_^;

DDG-2_JPTDS_a_s.jpg

DDG-2_JPTDS_b_s.jpg


そしてもう一つ、私の記事中に挿入されている写真とその解説文については基本的に編集部さんにお任せしております。

記事の内容を補足していただけるような写真と解説を入れていただきましたが、ただ一つ、5インチ砲の Mk45 Mod4 については、これの導入について現場の用兵者としては異論がある (あった) という内容に変えていただきました (^_^)


本号の特集、他にも面白い記事が色々並んでおりますので、もし書店の店頭で見かけられましたら、是非手にとってご覧下さい。

posted by 桜と錨 at 18:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2018年06月29日

SO-2 と SO-3 (続)


前述のとおり、SO-2 と SO-3 は小型・軽量でかつ大変に実用性に富んでいたことから数多くの小型艦艇に搭載されました。

もちろん両者は全く別個のレーダーですので、アンテナをはじめ、送受信機も電源も全て異なることはもちろんです。

が実は、レーダーの管制機と指示機は共通なのです。

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SO2_3_Cont_Indicator_illust_01_m.jpg

このことは、製造上はもとより、これを使う艦艇乗員の整備及び操作、そしてそれらの教育訓練上、極めて有効であることは申し上げるまでもありません。

これを共通化できるところにも米国の工業力及び技術力の高さ、底力がある、と言えるでしょう。

しかも、この SO シリーズや SG シリーズのレーダーなどは、大戦中に既に開発、製造、装備が行われていたのです。

これだけでも、当時の日本の国力ではとても太刀打ちできるところではありません。 戦後、海上警備隊が出来てこれらのレーダーが貸与艦艇と共に入ってきた時、旧海軍出身者達がびっくりしたのも無理はないことでしょう。

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2018年06月27日

SO-2 と SO-3 レーダー


コメント欄で懐かしいものの話しが出ました。

海上警備隊創設時から海自の初期まで使われた SO-2 と SO-3 というレーダーです。

当時のものとしては PF にも搭載されていた対空用の LA と水上用の LS、あるいは DE 以上に装備された SG シリーズなどの方がご存じの方が多いと思いますが、それらよりも数的には多かったこの2つのレーダーについてはあまり知られていないのではないかと思います。

SO-2 は、海上警備隊では米海軍から貸与された50隻の警備船 LSSL に装備された中出力の水上用レーダーで、米海軍では哨戒艇、上陸用舟艇、及び補助艦艇など数多く装備されました。

このレーダー、ビーム幅が水平9度、垂直23度あり、このため高角23度までの対空用としても使えました。

尖頭出力 60KW、周波数 3,000MHz、波長 10cmで、アンテナ回転数は 10.5rpmというものでした。 (その他の詳細データはまた何かの機会があれば。)

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SO-2_draw_02_s.JPG

また SO-3 は、掃海船(当時)に装備されていましたが、米海軍では魚雷艇や哨戒艇、上陸用舟艇、その他の小艦艇など、これも極めて多数が装備されました。

尖頭出力 20KW、周波数 9,100MHz、波長 3cmで、ビーム幅は水平3度、垂直9度で、アンテナ回転数は9rpmです。 (同じくその他の詳細データはまた機会があれば。)

SO-3_draw_01_s.JPG

SO-3_draw_02_s.JPG


両者とも小型ながら実用性に優れ、まさに米国の工業力、技術力の成果と言えるものです。

海上警備隊では、全てについてまずは米海軍に学ぶという方針の下、これらのレーダーでも当初は英語のマニュアルを使っていましたが、日本人本来の気質なのか、どん欲までに米海軍からの知識を吸収し、すぐに新しく日本語のテキストを編纂するまでになりました。

私が所持するものは、昔これらの日本版からライフワーク資料として将来的に必要になると考えた部分をコピーしておいたものですが、この頃には既に元の米海軍のマニュアルはありませんでした。

そして現在となってはこれらの日本語版テキストも残されているのかどうか ・・・・ ?

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2018年02月27日

米海軍の遠征打撃部隊 (ESF)


『世界の艦船』 4月号の拙稿補足です。

同号の特集『現代の海戦』に掲載していただきました私の 『海戦の変容について 19世紀から今日まで』 で、紙幅の関係で省略せざるを得なかったものの一つが、米海軍の「遠征打撃部隊」(ESF、Expeditionary Strike Force) の考え方のイラストです。

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( 米海軍の公式資料から )

これは、従来の 「両用即応群」 (ARG、Amphibious Ready Group) を大幅に強化して 「遠征打撃群」(ESG、Expeditionary Strike Group) とし、これ単独でも、そして 「空母戦闘群」 (CVBG) の名称を改めた 「空母打撃群」 (CSG、Carrier Strike Group) と組み合わせた強力な遠征部隊としても、状況に合わせて柔軟に対応できるようにしたことを表すものです。

文章でご説明するよりこのイラストをご覧いただけば一目瞭然かと。

そしてこの ESF の運用法に切り替わった当時の ESG の標準的な戦力見積もりは次のとおりとされています。

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( 米海軍の公式資料から )

米海軍と海兵隊とは一つの Naval Forces あるいは単に Navy と呼ばれるものであるのは何故なのか、ということの本質の一旦である米海兵隊のモットーの一つ “Marine is Navy in sense” を端的に表していると言えるでしょう。


翻って、日本ではどうなのか。 間もなく陸上自衛隊に水陸機動団が編成されるようですが、単に陸兵に水陸両用車を与えて米海兵隊と一緒に訓練し、これを海自の輸送艦などで運べば海兵隊として運用できる、などと簡単に考えることは大きな誤りであることは理解していただかなければなりません。

あるいは大きな船体の 「いずも」 型護衛艦に F-35B を乗せるようにすれば空母代わりになる、なども同じことです。

そもそも “基本設計の段階で考慮されていた” などは本当でしょうか? 俄には信じられない話しです。

確かに 「いずも」 型は船体は大きくスペースだけは余裕がありますが、現状はヘリ空母としても強襲揚陸艦としても極めて中途半端な性能のものです。 災害派遣などの多目的用途の艦といえば聞こえは良いですが。

まさかこの現状での必要以上に大きなスペースのことを指しているわけではないですよね?

しかも、実際に格納庫を含めた艦内を見た限りでは、将来的な F-35B の搭載・運用に対する考慮は全く感じられませんでしたし、ましてや後からの改造・改修は莫大な費用がかかることを忘れてはならないでしょう。

「おおすみ」 型の二の舞、というか、とてつもないことになりそうですが ・・・・

( 当時 「おおすみ」 の基本設計審議の場であれほどしつこく声を大にして言ったにもかかわらず、防衛も技術も全く聞く耳を持ちませんでしたから )

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2018年01月21日

護衛艦 「きりしま」 の建造経歴書


先ほど本家サイトの今週の更新として、『現代戦講堂』 の 『資料展示室』 コーナーにて 「きりしま」 の 『建造経歴書』 を公開しました。

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これは 「きりしま」 を建造した三菱重工長崎造船所が、その契約に基づき作成して平成7年3月16日の竣工・引渡し時に納入した膨大な完成図の冒頭にある一つです。


ご存じのとおり 「完成図」 というのは建造図面を含む造船所が係わった総てのものを纏めたものです。 これと各装置・機器の 「取扱説明書」 などを始めとして、当該造船所以外で契約・製造に係わったところのものも総て集めたものが 「完成図書」 です。

そして建造所の 「完成図」 の内、個々の建造図面などは 「完成図書」 として作成・納入される時には縮小された上で製本されるのが通常です。

今回本家サイトでご紹介する 『建造経歴書』 はこの完成図の最初にある、いわば能書きですから、内容的には秘密に係わるものは全くありませんで、ほとんどが既に一般に知られている事項ばかりです。

とは言え、こういう公式なものが公開されることはほとんどありませんので、珍しいものと思います。


この 『建造経歴書』 を含む 「完成図」 を始めとする 「完成図書」 一式は、海上自衛隊創設以来建造されてきた艦船総てについて、同型艦といえども省略されることなく一隻一隻それぞれのものが作成され、当該艦船の就役に合わせて防衛省・海上自衛隊に納入されてきました。

したがって、これまでのものを総て合わせると膨大な数量になります。 現役艦ならともかく、除籍となった艦船についても本来なら保存・保管されていなければならないはずですが、今現在本当にこれら総てがキチンと揃っているのかどうか ・・・・ ?

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2017年12月03日

本家サイトの今週の更新


本家サイトの今週の更新として、先ほど 『現代戦講堂』 の 『資料展示室』 コーナー中の 『幹部候補生学校SG集 (昭和48年度)』 にファイルを追加しました。

と言っても、今回追加したのは20〜30ページ程のものばかりですが (^_^;

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何しろ当時の質の悪い藁半紙にガリ版刷りですので、成形とゴミ取りに手間がかかりますので、ページ数の多いものにはなかなか取りかかれません。

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「機関 (蒸気 上)」 と 「同 下」 でも合わせて200ページ以上ありますし、「乗艦実習必携」 などは400ページを超えますので。

今後とも手の空いた時に少しずつ増やしていく予定です。

なお、SGファイルの追加に伴い、この1年間の課程での座学内容を掴んでいただくために、トップページをリニューアルしました。


posted by 桜と錨 at 14:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2017年10月02日

北朝鮮問題と米国の国益 (2)


前回の(1)でお尋ねした日本国憲法第9条の文言ですが、多くの方がご承知の通り、「国権の発動たる戦争」 と 「国の交戦権」 の両者ともその定義はなされておりません。 もちろん 「武力行使」 とは何かについてもありません。

そんなことは言わなくとも国際法に照らして常識のことだろう、とか、憲法学者の解釈では、とか色々言われる方もおられるかもしれませんが、そのようなことはこの憲法に基づく様々な法令・法規では何の役にも立ちません。

もちろん憲法学者の解釈はあくまでもその人の解釈であって、一つの学説には成り得るかもしれませんが、根拠にはなりません。

つまり、マスコミや評論家、護憲活動家と称する人々を始めとして、言っていることはその時その時の“感情論”“感覚論”に過ぎず、それどころか国会での議論でも結局は単なる“神学論争”の域を出るものではありません。

例えば、尖閣諸島を巡る問題について、仮に中国側と日本の巡視船側との間で万一銃撃戦にでもなった場合、これを憲法上どのように解釈するのでしょうか?

巡視船といえども日本国の公船ですのでこれを 「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段として」 でないと、誰が何を以て保証するのでしょう?

憲法9条の文言は実に曖昧な表現のものであり、そしてそれがどういうものであるかの定義は日本のどのような法令・法律にも定義がなされていないのです。


そしてもう一つの米国の場合です。

これもこの問題に詳しい方はご存じでしょうが、実は米国は第2次大戦以降国家として1度も戦争をしていないのです。

朝鮮戦争、ベトナム戦争、近くはアフガニスタンへの武力行使、湾岸戦争、イラク戦争などなど、これらは一般的にその大規模な紛争の形態から “戦争” と呼ばれていますが、米国にとっては単なる武力行使、武力介入であって国家としての戦争行為ではありません。


では米国における国家としての戦争とはどのようなものを言うのでしょうか?

米国が戦争と呼ぶのは2つの条件を満たす場合です。 即ち、

 1.対外的に行う宣戦布告 (declaration of war)
 2.国内的に行う戦時体制下の宣告 (time of war by declaration)

米国大統領は対外的な武力の行使についても非常に大きな権限を持っておりました (今でも大きいですが)。

このため米国として上記の2つを満たさなくとも、つまり米国として戦争をしなくても、例えばベトナム紛争の時のように50万を超える米軍を派遣し、北ベトナムに対して空母や爆撃機による空爆を実施しても、これは米国にとっては単なる武力行使、武力介入であって他国との戦争ではなかったのです。

このベトナム紛争を契機にして、大統領がその権限をもってこのような事を起こさないように (ムチャをしないよう) 1973年の戦争権限法 (The War power act of 1972, Public Law 93-148) をもって大幅な制限をかけたのです。

これにより大統領が対外的に武力行使を行う場合には、事前にその状況や前提、条件、武力行使の限度などについて議会の承認が必要となり、かつ適切な報告がなされるべき事が定められました。

例えば、2002年のイラクに対する武力行使の場合の議会の承認は次のようなものでした。

「Authorization for Use of Military Force against Iraq Resolution 2002」
(Public Law 107-243, Oct 16 2002)

Auth Act Use Mil Power IRAQ Oct2002_cover_s.jpg
( 左クリックでPDF版を別ウィンドウ表示 )

posted by 桜と錨 at 23:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2017年09月29日

北朝鮮問題と米国の国益 (1)


本論について入る前に、まずご来訪の皆さんにお尋ねいたします。

我国の憲法では

「第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」

と規定されています。

ではこの第9条でいう 「国権の発動たる戦争」 や 「国の交戦権」 の定義は何でしょうか?

ついでにもう一つ。

第2次大戦以降今日まで、米国は国家として一体何回 「戦争」 をしてきたのでしょうか?

マスコミ、政治家、評論家、それに9条信奉者と言われる人達は、本来ならこんな基本的かつ重要なことさえキチンと理解せずに、単なるその場その場の “感情” “感覚” でものを言っているに過ぎないとしか見えないのですが ・・・・

posted by 桜と錨 at 19:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2017年09月18日

1日遅れの本家サイトの更新


既にお知らせしたとおり、大風邪を引いてしまい、昨日予定していた本家サイトの定期更新ができませんでしたので、一日遅れで準備済みのものをUPしました。

『現代戦講堂』 の 『資料展示室』 コーナー中で、昭和48年度の海上自衛隊幹部候補生学校第1課程 (防大卒) 用スタディガイド集に 「潜水艦概説」 「航空機一般」 「機雷掃海」 の3つを追加公開しました。

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いずれも秘密文書でもなく、秘密事項も全く含まれておりません。 それに45年も前のものですので、内容的には少々古いですが、それでもそれぞれの基礎的事項を知る上では面白いものがあるかと。

当時の幹部候補生はこんなことを習っていたんだと思っていただければ幸いです。 それに所々今まで一般に出たことのないデータもありますので。

本当はもう一つ、北朝鮮関係で別な文書を準備中だったのですが、上記の都合で間に合いませんでしたので、これは後日といたします。

posted by 桜と錨 at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2017年09月11日

『核兵器の効果』 コンテンツ追加


昨日本家サイトで今話題の電磁パルス (EMP) ついてのところを中心に 米国防省の1977年版 『核兵器の効果』 の第10章と第11章を公開 したところです。

ついでですので、本日既に出来上がっている 目次、第1章及び第2章、巻末の用語解説などを追加 しました。


特に邦訳版の第2章の写真画像については全て原典のものと入れ替えましたので、原紙にあるものよりは格段に見栄えが良くなっていると思います。

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残りの分もまだまだありますが、ちょっと手間暇がかかりますのでいつになるか ・・・・ 気長にお待ち下さい m(_ _)m


posted by 桜と錨 at 23:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2017年09月10日

米国防省 『核兵器の効果』 1977年版


本家サイトの今週の更新として、昨今話題になっております北朝鮮の核兵器問題に関連して、 『現代戦講堂』 コーナーの 『資料展示室』 にて、米国防省が1977年に出した 『核兵器の効果』 (The Effects of Nuclear Weapons) の原典版と邦訳版の公開を始めました。

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とはいっても、前者で約650頁、後者は約740頁もありますので、ゴミ取りと整形、そして邦訳版は写真の原典版からの入れ替えなどでとても一度にはできません。

今回は取り敢えず、電磁パルス(EMP)を中心として、第10章と第11章をUPしました。

一部マスコミではどこから持ってきたのか判らないような孫引き、曾孫引きのようなものもあり、中には電離によるブラックアウトとEMPさえごちゃ混ぜにしたものも見られる始末です。

ちょっと古い資料ですが、こういうキチンとした文献で基礎的なことの理論武装をしていただきたいと思う次第です。

なお、この第10章と第11章には写真はありませんが、グラフとイラストについては原典版の方が格段に綺麗ですし、日英の専門用語をチェックするためにも両者の対比をしながらお読みいただけると宜しいかと。


posted by 桜と錨 at 20:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2017年08月06日

1943年米海軍 ONI 発行 『U.S.S.R. Navy』


標記の公文書ですが、以前こちらでご紹介して暫く本家サイトの空きエリアに置いておりました。

03_Soviet_Navy_1943_cover_s.JPG

「第2次大戦中のソ連海軍について」 :
    http://navgunschl.sblo.jp/article/26365448.html

本家サイトに『現代戦講堂』を設置しましたので、この度サイトの今週の更新として、改めてそちらの『資料展示室』コーナーで公開するものです。

「資料展示室」 リスト :
    http://navgunschl2.sakura.ne.jp/Modern_Warfare/Shiryo/tenji_main.html
「U.S.S.R. Navy」 :

本文書は2000年代になってから米海軍の公式サイトでも公開されたのですが、何故かネット上で広まることはなく、私の探し方が下手なのか、現在では Web 版になったものが1個所あるだけで、元々のPDF版のものは米軍サイトも含めて見つかりませんでした。 (Scribd にはある?)

1943年段階で米海軍が把握していたソ連海軍に関する情報を纏めたもので、今でもこの方面に関心のある研究家の方々にとっては貴重な公文書の原典であると思います。

本来なら 『史料展示室』 でも良いのですが、追々戦後のソ連海軍関係も公開していくつもりですので、これもあって 『現代戦講堂』 としております。

どうぞお楽しみください。

posted by 桜と錨 at 09:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと