最近自称 “料理人” と言う人が電車に包丁を持ち込んでこれが騒ぎになる事件が報じられ話題になっていました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d0b285e3e88a8ac6d5caa7a9c3a527ae6d8c8663
これに直接関連することと言うことではありませんが、ついでに調理について海上自衛隊での昔のことを思い出しましたので、そのいくつかを。
もう何十年も前にさる護衛艦に乗っていた時のこと。 調理員の中にベテランの海士長がおりました。
因みに、一般的には 「調理」 と言っておりますが、制式には 「給養」 で、旧海軍からの伝統として 「烹炊」 とも言います。
彼は本当に調理が大好きで、艦に備え付けの官品の包丁では満足できず、自費で高級なものを何本か揃えるほどでした。
もちろん艦内の居住区の個人ロッカーには置けませんので、調理員長預かりとなり、調理室の鍵のかかる保管庫に官品のものと一緒に管理。
その彼が停泊当直の時に出てくる夜食は、いつも大変に美味しいもので、しかも予め決められている艦の献立表に載っているものとはたびたび違うものでした。
そこである時彼に聞いたら、“夜食の決まった食材以外に夕食で余ったものがある特には、これらで自分なりのものを考えて作っています” と。
調理員長は員長で “彼は調理の腕は確かですし、艦の余計な保有食材を使うわけではなく本来なら捨てるはずのものを有効活用しているわけで、しかも艦の乗員達にも美味しいと評判も良いようですから、彼に任せています” とのこと。
まさに、この調理員にしてこの調理員長あり、でした。 私はまだ独身で下宿をとらずに艦内居住でしたので、当直勤務で無くとも彼の当直日の夜食が楽しみに。
ところが、です。 その彼がどうしても年1回ある3曹昇任試験に通りません。
そこで、他の分隊の人事に口を出すのもと思いつつ、総監部の人事課に顔を出すたびに担当者に “筆記試験の多少の点数くらいは艦の勤務評定が優秀ならどうにでもなるでしょう。 勤務は真面目で調理の腕は良いし、本人も今の仕事を気に入って一生懸命やっているのですから” と。
しかしながら私が転勤したあとも結局昇任試験に合格できず、確か5期目の継続任用の時(入隊9年後)に民間の就職先を斡旋することで首を切られたと聞きました。 上層部から “昇任試験に合格しない者はダメ” との指示が出て、人事担当者レベルではどうにもならなかったようです。
勿体無い話しですねえ。 調理の良し悪しというのは才能とやる気であって、筆記試験の点数では無いんですが。 彼を3曹にし、その後の昇任はともかくとして本人の希望通りに定年まで勤務させたほうが、どれほど海自の役に立ったことか。
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