海上自衛隊の古い史料から、“かつては、こんなものもあったよ” という16回目です。
今回は
「射撃要務」 についてです。
射撃要務といいますのは、射撃を計画・実施する上での事務的な事項を包括的に言います。
しかしながら、旧海軍においてはこの射撃要務全体を1つの事として取扱ったり教えたりすることはありませんでした。
例えば、弾火薬の管理や取扱いに関する様々な規則類は弾火薬についての項目の中に含めておりました。
ただし、
砲術学校の普通科測的術練習生課程 では、練習生が艦の砲術科に配属された時に、射撃全般についてどの様な事があり、測的に関する配置でどの様な事について上級者の手伝いをしていけば良いのかの基礎的事項を教えるためのものとして
「砲術要務」 と言うのがありました。
戦後の警備隊・海上自衛隊では、全てをまずは米海軍に範をとることとしたため、砲術に限らず全てについて日常の業務は米海軍流の書類による処理が重要になってきました。
そして、防衛庁・海上自衛隊という行政組織、即ちお役所になりますと、これに拍車をかける如く、ありとあらゆることが規則類として次々に定められてくることになります。
このため、この事務的なことを分かりやすく整理することを狙いとして、
昭和44年に 『艦砲射撃要務教範草案』 を作り、関係部隊からの意見・所見を得て制式化しようとし、2次案まで作成されました。
その
目的とするところは 「艦砲射撃教範、艦砲操法教範及び艦砲訓練教範に示された事項以外の射撃に関する艦上諸要務を効果的に処理するために必要な原則を示す」 もの とされています。
しかしながら、2次案まで行ったところで立ち消えてしまいました。 おそらく、規則類が次から次へと増えてくる状況に鑑み、「教範」 とすることは相応しく無く、かつあまり意味が無いと判断されたためと考えられます。
その後の経緯については不詳ですが、
昭和56・57年頃には第1術科学校の各種課程において「射撃要務」として 教えられていました。
その
目的とするところは「砲術科の任務を完全円滑に遂行するために必要な諸業務の処理をいい、主として教育訓練以外の様々な要務をいう」もの とされていました。
とは言っても、実際にはこの要務を含む射撃全般についてどの様に教育訓練するかは切り離せないところであり、そのための規則類に基づくことも細かく定められています。
要するにこの教育訓練も含めた射撃全般についての事務的な手続き、書類作成などのことが全て含まれることになります。
ところが、この時のSG (スタディ・ガイド) ではその全体を網羅しきれていませんで、特に関係規則類は大変に数が多く、かつ複雑に絡み合っておりましたので、私は中級学生の時にその関係規則類に漏れがないようにと調べて、各項目別に区分した一覧表に纏めてみました。
例えば教育訓練関係全体の規則類について、一覧表を更に体系図として作ったものをご紹介すれば次のようなものです。
画像が小さいために細部がお判り難いかと思いますが、大変に複雑なものであったことはご理解いただけると思います。
これらの一覧表一式はクラスメート達からも “俺にもコピーを” と大変に好評でした。 お役所たる海上自衛隊の、射撃の現場にいる者達にとっては、実務以外の問題としてそれほど面倒なものであったということです。
現在ではどのように教えているのかは存じませんが(私が申し上げる立場にありませんが)、少なくとも規則類の数が減るとは考えられませんし、ましてや艦砲とミサイルとの両方を扱わなければならなくなりましたので、今の若い人達は大変だろうな〜、っと。
いずれにしても、この昭和56・57年頃のSGはもちろんとして、昭和44年の 『艦砲射撃要務準則草案』 などはまだ残されているのかどうか ・・・・
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