◎ 第51巻 「朝潮」シリーズ第51巻は、第36巻 「吹雪」 に次いで旧海軍駆逐艦の2つ目になる 「朝潮」 型1番艦の 「朝潮」 で、1942年の設定とされています。
( 何故か製品版では台座のネームプレートは 「朝潮型」 に換わってしまっているのですが (^_^; )
ただし、1番砲塔天蓋に日章旗が描かれていることから、ミッドウェー作戦時を意識したものと思われます。
例によってモデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価記事は次のURLのとおりです。
シリーズとして並であり、艦首の菊花紋章などいくつかミスを指摘され、全体的にはあまり高い評価ではないようです。
しかしながら、元モデルアドバイザーの一人として、更にもう少し厳しい評価が必要ではないかと思われます。
全体的な形状の見栄えとしては、確かに本シリーズの一つとして並べて飾っておくにはそれなりの出来ではありますが ・・・・
問題はいつもどおり考証とモデル・デザインです。
まずは考証について主要なものから。
1.塗装
戦前の日本海軍の駆逐艦の “顔” とも言える舷側の艦名表記ですが、開戦にあたりこれは消されることとなり、少なくとも昭和17年の春には全ての駆逐艦でなくなっているはずです。
特に5月のミッドウェー作戦時には無かったと判断されます。
むしろ逆に艦首の隊番号がありません。 百歩譲って、モデルの見栄えのために意図して舷側の艦名を残したのであれば、この隊番号も一緒に無いのは “誤り” といえます。 と言うより、むしろ艦名は無くしても、この隊番号を残す方が妥当だったと言えるでしょう。
そして何よりも、艦首の菊花紋章などは、本シリーズ第1巻 「大和」 でクレーン上に艦載機が載っていたのと同じような信じられないポカ・ミスで ・・・・
2.船体形状
(1) 船体前部
まず、艦首楼甲板の側面形状であるシーア・ラインが全く違います。
実艦では船首楼後端から1番砲塔までは水平で、そこから前が反り上がる形になっていますが、モデルでは船首楼後端から既に徐々に反り上がる形になってしまっています。
艦首のステムが厚すぎて “ボテッ” としており、また朝顔型に開いたフレアは特型に比べると小さいとはいえこれが十分に表現されていません。 したがってこのため、船首楼後端の舷側形状が垂直にスパッと切れたようになっていません。
これらによって、高速艦のスマートさが全く出ておらず、全体の見かけを大きく損なっており、明らかに基本的なところでの考証ミスと言えます。
(2) 船体中部
ビルジ・キールの形状が違います。
(3) 船体後部
艦尾の形状が異なります。 モデルのものは 「朝潮」 の新造時の形状で、就役後に改造されています。 (解説冊子p5の図も間違っていますが (^_^; )

( 元図 : 光人社 「日本の駆逐艦」 より 上が新造時、下が改造後 )
この改造は旋回径不良の対策として採られたものですが、併せて舵の形状も少々違います。
これを要するに、デザイナーは船体の基本的な部分についてキチンと確認をしていないと言えるでしょう。
3.各種装備品など
1/1100スケールですから、デフォルメ表現上のことを考慮すると、主砲塔形状を始めとしてその他の上構及び各種装備品・艤装品はまあまあ許容範囲といえるでしょう。
ただし、4連装魚雷発射管、特にその楯の形状は全く違います。
また、1番煙突両脇の内火艇のサイズが違います。 これは全長7.5mですが、その前にある艦橋両脇のカッターが7mのものですので、明らかに誤であることはお判りいただけるでしょう。
次がデザイン面についてです。
(1) 本シリーズ共通の特徴、というか欠点である、ダイキャスト製船体とプラスティックの上甲板との接合面に大きな段差や隙間があることですが、本モデルにおいてもそれが顕著です。
特にサイズが小さいだけに、余計にこれが目立ち、見かけを大きく損なっています。
この基本的な原因は、モデル・デザイン時の部品分割において、不必要と思われる大きな隙間 (余裕) を採っていることにあると考えられます。 これについては、本シリーズの当初からイーグルモス社さんには指摘してきたところですが、いまだに改善されていないようです。
私の手元にあるサンプルは、組立不良もあるのでしょうが、この問題によって船体前部では上甲板が船体舷側より凹み、かつ隙間が生じており、反対に船体後部では上甲板が船体舷側より大きく浮き上がってしまっています。
(2) 中部上甲板の舷側に意味不明なギザギサ状のモールドがあります。 これは何でしょう? それともデザイン・ミスではなく、部品製造上の不良? あるいは組立時に生じたもの?
(3) 羅針艦橋甲板で部品分割されています。 例によってこの部品の整合が悪いために大きな隙間と段差が生じており、このため 「朝潮」 型艦橋の特徴ある形状が上手く表現されていません。
いつもどおり、細かいところを採り上げ出すとキリがありませんので、他のところは全て省略しますが ・・・・
前にも書きましたように、モデルのサイズが小さいだけに、戦艦や空母、巡洋艦などと同じ価格では非常に割高感が強いのですが、それだけに何故こういった考証やデザインに力を入れないのでしょうか?
これでは購読者の方々に納得して貰うにはちょっと無理があるかと。
それにしても、本シリーズでの日本駆逐艦は、この後 「磯風」 と 「秋月」 の2つが予定されています。 これと第39巻の 「吹雪」 を考えると、なぜここで 「朝潮」 なのかと思わざるを得ません。
しかも、わざわざ参考となる史料や写真がほとんど無い1942年の設定で。
元モデル・アドバイザーの一人としては、もっと他に適当な選択肢が幾つもあるのに、と思います。
上記の考証やデザインの問題と併せ、今回のこの選択についてもちょっと疑問であり、残念に思います。
最後に一つ。 私はモデル・アドバイザーの一人であった時も 「ブック」 と呼ばれる解説冊子には全くノータッチでしたので、本連載でもほとんど触れませんでしたが、如何に本シリーズが艦船初心者を対象にするとは言え、内容的に “ちょっとこれは” と思う内容が毎号幾つもあることは残念です。
例えば、今回のものでは、
“ 3級前の吹雪型と比べて発射管が1門少ないものの、朝潮の4連装発射管は旋回できるので全門片舷斉射が可能だ ”
あるいは浮世絵の説明で

( 解説冊子の2頁より )
“ 舵取りが船尾の中央に取り付けた舵柄を操っている ”
などに至っては、思わず吹き出してしまいました。 おい、おい (^_^;
しかも掃海具と防雷具の区別さえされていないし ・・・・ (違いが判っていない?)