2014年01月27日

モデル・アドバイザーの独り言 (38)

◎ 第28巻 「ニュー・ジャージー」

本シリーズ第28巻はアメリカ戦艦 「アイオワ」 型2番艦の 「ニュー・ジャージー」で、1944年の姿とされています。

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言わずと知れた米海軍最後の戦艦4隻中の1隻で、第2次大戦後も度々現役復帰を繰り返しながら朝鮮動乱、ベトナム紛争、そしてレバノン紛争と参戦しました。

私も現役の戦艦で見たことのあるただ1隻がこの 「ニュー・ジャージー」 です。 う〜ん、これが戦艦か、と (^_^)

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( 当時の広報用パンフレット )

例によってモニターをされているHN 「おまみ」 氏による評価は、次のURLにUPされてます。


おまみ氏になにか呼ばれてしまったようですが ・・・・ (^_^;

私としても、この 「ニュー・ジャージー」 もモデル全体の出来は悪くないと思います。 おまみ氏の評価にあるように既刊の 「ビスマルク」 や 「フッド」 と肩を並べて遜色無いものでしょう。

もっとも、この 「ニュー・ジャージー」 にしても、公式図はもちろんのこと、資料や写真は豊富に揃っており、かつスケール・モデル用の図面も出回っておりますので、モデル・プラン及びモデル・デザイン担当としては楽な部類だったでしょうね (^_^)

ただ、このところ毎回書いてきておりますが、全体の出来はともかくとして細部は非常にあっさりしており、というより少々あっさりし過ぎで、これは本シリーズの最近の傾向になってきています。

本シリーズ後半は資料の少ない艦が多くラインナップされていますので、それを見越して今からこのあっさりした表現で ・・・・ ?


私は外国艦については一切関与しておりませんので、今回は第三者としての所見をいくつか。

1.まず申し上げなければならないのは船体の塗色でしょう。 ご存じのとおり 「ニュー・ジャージー」 は 「アイオワ」 型4隻の中でただ1隻この 「Measure 21」 というパターンで、迷彩そのものとしてもちょっと特異なものです。


   モデルとしての塗色の色としては色々考え方がありますが、実際の縦面の 「Navy Blue 5-N」 と横面 (甲板面、水平面) の 「Deck Blue 20-B」 に対してはかなりそれに近いもので、その点ではこれはこれでありでしょう。


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   しかしながら、いつも申し上げているとおり実艦でも規定のペイントの原色どおりに見えることは絶対にありませんし、ましてやスケールモデルですから、1/1100スケールという小さなサイズを考えるならば、この2色のコントラストの差はもう少しあった方が見栄えがしたのではないか、と個人的には思います。


   で、このモデル最大のミスになりますが、主砲塔側面だけは船体舷側と同じネイビー・ブルーですが、その他の上部構造物の側面全てが甲板面と同じデッキ・ブルーになってしまっています。


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   これでは実艦と異なり、またモデルの見栄えが全然違ってきますのでちょっと痛いところです。 なぜこのようになってしまったのでしょう? ちょっと首を傾げる次第です。


2.船の顔である艦橋の形状が間違っています。 1944年にはモデルのような当初のオープン・ブリッジ方式のままではなく、写真のような丸いクローズト・ブリッジに改装されています。 これもちょっと痛い。


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( 左 : 1944年の 「ニュー・ジャージー」  右 : 同形式の1945年の 「アイオワ」 )

   更に細かいことを言えば、司令塔の上部に Mk-3 FCレーダーのアンテナがありません。 これもちょっと目立つだけに残念。


3.上甲板 (メイン・デッキ) の一つ上、上部構造物の01甲板の高さが異常に低くなっています。 上の1.の写真をご覧いただくとよくお解りいただけるかと。 これも全体の印象を大きく左右するだけに痛いデザイン・ミスと言えます。 なぜこのようになってしまったのか?

 

4.艦首下のバルバス・バウは確かに先端形状はそれらしくなっていますが、その後ろの舷側形状が少々違います。 下の公式図に示すように、船体舷側の中間部 (水線付近) がもっとくびれていなければなりません。

 
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   モデルではこれによるバルバス・バウの膨らみが出ておらず、また上甲板舷側のシーアによる張り出しが弱くなっており、折角の 「アイオワ」 型艦首の特徴が上手く表現できていません。 これも大変残念。


5.後部 Mk-38 方位盤とその下部の支塔の形状が少々不良です。 折角前部の方位盤は Mk-8 FCレーダーも含めてそれらしく表現されているのに、これではもったいないです。


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6.全体が少々あっさりし過ぎのデフォルメで、特に戦艦としてのウリである主砲塔と中央部両側にズラリと並ぶ5インチ連装砲塔はもう少しディティールにこだわって欲しいところでした。


   特に、主砲塔のサイドには救命筏はモールドされているのに、なぜ照準器カバーが表現されていないのか? (ついでにこだわれば砲塔形状が少々違いますが)


   5インチ連装砲塔も照準器カバーの表現がありませんし、それよりも砲身が何故か少々下に付いており、このためこの砲塔形状の印象がかなり違ってしまっています。


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7.全体がブルー一色ですので、細かいところの塗装でもう少し頑張って欲しかったところです。 例えば、40ミリ機銃は全体がデッキ・ブルー、20ミリ機銃は銃身がデッキ・ブルーで銃尾側が黒色という変わったもの、5インチ連装砲塔は砲門部の隙間が黒色、等々であることです。


   また、艦首両舷にある艦番号がありません。 1/1100では少々オーバースケールになりますが、白色で目立ちますので良いアクセントになったと思います。


8.推進器はブレードが外舷側4枚、内舷側5枚で実艦どおり表現されています。 ただブレード形状が少々異なるのと、舵が 「ハ」 の字になっているのは愛嬌でしょうか (^_^;


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まあ細かいことを言い出すとキリがありませんので、それはそこ1/1100スケールと考えれば ・・・・


ところで、私はモデルに付属する (というより立前としては本来こちらがメイン) の 「ブック」 と呼ばれる解説書は日本艦も含めて全くのノータッチですので、これについてとやかく言う立場にはありません。

が、 それにしてもこの 「ニュー・ジャージー」 の解説書 “も”、全体の構成はともかくとして、文章の表現や用語、それに図などは、いくら初心者向けとは言ってもちょっと ・・・・

この辺のレベル・アップも本シリーズの大きな課題の一つと言えるでしょう。

2014年02月14日

モデル・アドバイザーの独り言 (39)


◎ 第29巻 「瑞鳳」

本シリーズ第29巻は日本空母 「瑞鳳」 で、1944年の姿とされ、日本艦初の迷彩塗装でのモデル化です。

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申し上げるまでもなく、この 「瑞鳳」 は、捷一号作戦におけるエンガノ岬沖海戦で米軍が撮影したこの迷彩塗装のすばらしい写真が残されております。

今回もこの迷彩塗装での出来を期待されていた購読者の方々も多いことでしょう。

ご存じのとおり、元々は第32巻で 「祥鳳」、最終の第80巻でこの 「瑞鳳」 が予定されていたものですが、モデルプランの段階で、迷彩塗装の派手さをウリにした 「瑞鳳」 を先とするようアドバイスして受け入れられたものです。

「祥鳳」 は入れ替わって今のところ第80巻になっていますが、この 「祥鳳」 「瑞鳳」はほぼ同じ艦型であり、塗装以外はこのスケールでは大きな差がでないことから、「祥鳳」 は取り止めて、元の潜水母艦 「剣埼」 とするか、あるいは他の艦を選択することを勧めているところです。 さてどうなりますか。


例によってモニターをされているHN 「おまみ」 氏による評価ですが、次のURLにUPされてます。

確かにモデルの迷彩塗装、特に飛行甲板についてはスケール・サイズを考えても良い出来であると言えるでしょう。

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先の 「ビスマルク」 や 「リットリオ」 など、このところこの迷彩塗装のモデルはかなり良い線を行っています。 「ニュー・ジャージー」 の迷彩はミスがあってちょっとでしたが ・・・・ (^_^;

もっとも、中央標示線が白色の実線になってしまっていたりと、細かなところはありますが、まあそれらは目をつぶっていただくことに。


ではモデル全体としての出来に手放しで高評価が与えられるかというと、残念ながら逆で、迷彩塗装以外の出来は最近での “平均以下” です。

これもあって、私のこのブログ記事は発売後になるようにしばらく遅らせたわけですが ・・・・

主要な問題点は次のとおりです。

1.舷側プラットホーム下部支柱

先の「龍驤」で問題となったのと同じデザイン・ミスをまた繰り返してしております。 なぜこのようになってしまったのかと首を傾げざるを得ません。 一目見ればおかしいと気付くものですので、モデル・デザイン以降、誰もチェックしていないのでしょうか?

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( 右舷側 )

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( 左舷側 )


2.噴進砲台の位置

左右両舷に増設された噴進砲台ですが、水平位置については 「瑞鳳戦闘詳報」 にある被害図に示されたものとほぼ一致しています。

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( 左 : 左舷噴進砲台   右 : 右舷噴進砲台、傾いていますが (^_^; )

しかしながら、左舷側は上下位置が明らかに間違っており、何故かかなり低い位置になっています。 先の写真からも、そして従来の考証からもここではなく、機銃座や整備員待機所などのレベルと同じでなければなりません。

また、右舷側は写真で艦尾近くの白煙が出ているところと考えられますが、残念ながらはっきりしません。 ただし、モデルの形状及び上下位置にはかなり疑問が残ります。 (モデル・プランの段階で考証したものとは異なってしまっています。)

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3.右舷煙突より後部の高角砲・機銃

ここは当初からシールド付きですので、図面や写真を見れば間違うはずは無いのですが ・・・・

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4.縦に並ぶ機銃

おまみ氏の指摘にもありますように、もうこれは何かの冗談かと思う様なことで (^_^;

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既に2回もやってしまったクレーン・アームの上に乗った艦載機と同じで、考証ミスとかどうかなどという以前の話しです。

モデル・プランの図には無かったことが (当然ですが) モデル・デザインでなぜこの様になり、そしてそれをなぜ発売までの間に誰も気が付かなかったのか。


5.舵の取り付け位置

モデルでは舵の下端が船体のキール線より下に出てしまっています。 この様なことは艦船としてあり得ないところです。 原因は舵の取り付け位置を間違って船体中央に寄せすぎてデザインしてしまったためです。

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6.デフォルメ表現

先にも申し上げましたが、モデル全体としての造形は、本シリーズの最近の傾向として高角砲など主要装備・艤装品以外は非常にシンプルです。

というより如何に1/1100スケールとはいえ、あっさりし過ぎです。 この 「瑞鳳」 においては、特に戦闘艦橋を始めとする両舷の各プラットホームにそれが言えるでしょう。

また、従来の日本艦では表現されていた13号電探がありません。 「瑞鳳」 ではこれが艦型のサイズ的にも装備位置的にも目立つだけに、なぜなんでしょう?

この 「瑞鳳」 は迷彩塗装の出来に目が行ってあまり文句は出ないのかもしれませんが、デフォルメの仕方はスケールとデザイナーの技法にもよるとは言っても、シリーズの今後、迷彩塗装でないモデルの場合は大いに心配となる点でしょう。

まあ、「零戦」 が小さすぎるとか、甲板上の並びが違うとかはありますが、どうもイーグルモス社としては艦載機にはあまり力を入れていない様で ・・・・ (^_^;


7.組み立て

個々のバラツキがあるのかもしれませんが、私の場合、マストや高角砲・機銃など様々な個所が傾いており、また飛行甲板の前半がうねってしまっています。

本シリーズ初期からの問題がいまだに十分改善されていない点の一つで、組み立て・検品の体制をしっかりしないと、折角の迷彩塗装の出来も台無しです。

これもイーグルモス社には更なる改善努力を傾注して貰いたいことの一つです。


上にしてきましたことの大部分は、明らかにイーグルモス社側の製品開発体制に問題があることが判ります。

既に何度も申し上げてきたことですが、私はモデル・アドバイザーの一人としてモデル・プランからモデル・デザインの初期までしか関わっておりません。 というより、関わらせて貰っていません。

後は、モデル・デザインにおいてのデフォルメはもちろん、考証結果の選択も、すべてモデル・デザイナーがやっているようです。

そして本シリーズのこれまでの状況を見る限り、モデル・デザイン以降製品版となるまで、その主要なステップ・ステップにおいて誰も艦船の知識のある人が責任を持ってチェックをしているようには見えません。

こういう製品の開発体制ではダメですよ、とイーグルモス社側にはこれまで口を酸っぱくして進言してきておりますが、いまだに改善されません。

その結果がこのモデルの出来によく現れていると思います。 塗装面では折角ここまで良くなって来たのに ・・・・

2014年03月06日

モデル・アドバイザーの独り言 (40)

◎ 第30巻 「敷島」

本シリーズ第30巻はシリーズ初期の第8巻 「三笠」 に続き、旧海軍の明治期を代表する戦艦 「敷島」 で、就役時の1900年 (明治33年) の設定とされています。

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シリーズとしての「敷島」の選択は、1/1100スケールになると 「三笠」 とはパッと見で煙突の本数以外は大きな違いは出てきませんので、全80巻としては別の他の艦の方がということも言えます。

その反面、この 「敷島」 のスケールモデルはほとんど無く、確か1/700のものがポーランドの 「モデルクラック」 というところからレジン製で出ている (出ていた?) のみと記憶していますので、その意味ではこの名艦が本シリーズにラインナップされる意義は小さくないでしょう。

・・・・ と思って、最近の本シリーズは初期のものよりかなり見栄えが向上してきましたので、私も期待していたのですが ・・・・

例によってモニターをされているHN 「おまみ」 氏による評価ですが、次のURLにUPされてます。


おまみ氏は “初期の 「三笠」 レベル” と指摘されていますが、私からすればはっきり言ってそれ以下です。

あまりにも実艦を無視したモデルであり、日本艦のモデル・アドバイザーの一人である私としては唖然としています。

こういう事になるから、各ステップ、ステップで艦船が解る者が確実にチェックをしなければダメだと、あれ程繰り返し口を酸っぱくして指摘してきたのですが ・・・・

本ブログでも明らかにしてきた問題点が、まるで本モデルに集約されてしまったかの様です。

やはり開発に少しでも関係した者の一人として、キチンとしたところを購読者の方々にお知らせしてしておく必要があるでしょう。 イーグルモス社に対しては大変に厳しい所見になります。

したがって、このブログもいつもより発売後十分な日にちが経ってからとせざるを得ませんでしたことをご了承下さい。


1.艦 型

モデル・プラン及びモデル・デザイン初期の段階ではちゃんとしたものになっており、それに基づいて私もアドバイスしたのですが ・・・・ 一体誰が、いつこんな艦型にしてしまったのか? そしてイーグルモス社側は製品になるまで誰もそれに気が付かなかったのでしょうか?

特に舷側の副砲、12ポンド補助砲の配置が全く違います。 時期が異なるとか、デフォルメの都合とか、その様な話しではありません。 これでは 「敷島」 のスケール・モデルとはとても言い難いものです。

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単純ミスではありませんので、シリーズとしてちょっと恥ずかしい出来になっています。


2.塗 装

就役時の1900年設定であるならば、塗装は全く間違っています。

1900年当時は、日清戦争中の1895年 (明治28年) の規定により全面一様に灰色とされています。

これは英国での就役前後、及び日本回航直後の神戸沖での写真でも明らかです。

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( 就役後日本回航直前の 「敷島」 )

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( 日本回航直後の00年5月神戸沖の 「敷島」 )

ただし、旧海軍の規定では灰色は 「亜鉛華に其の1400分の1の松煙を混合」 とされていますが、英国での就役時の塗装は、それよりもかなり明るく白に近い明灰色です。

また、写真からすると前後のマスト及び煙突は黄色に塗られている様ですが、これは他に史料がありませんのでハッキリしません。 (回航後の神戸沖の写真ではこれらは船体と同じ灰色になっているようです。)

そして船体が黒色となったのは1900年12月23日の規定によってですので、日付的に1900年内にこれに塗り替えられたとするには無理があります。 というよりそれを1900年の状態とは言いません。

ところが、本モデルの塗色はその黒色船体に変わった時のものとも全く違います。 一体どこからこんな塗色パターンが出てきたものか? そして一体いつ、誰がこんな塗色指定にしてしまったのか?

製造発注主であるイーグルモス社側は誰も何も言わなかったのでしょうか、ちょっと首を傾げざるを得ません。


3.部品造形・組立

非常にあっさりしたデフォルメ表現であることはこのところの他のモデルと同じですが、それに加えて、特に船体は非常に “だるい” モールドになっています。

この明治期の艦船は複雑なゴテゴテ感が特徴ですので、これでは全くその雰囲気が出ていません。


これだけ指摘すれば十分と思いますので、以下細部については省略します。

とはいっても、塗装の塗り分けや組立などは最近のモデル並みには出来ていますので、考証的に 「敷島」 ではないとしても、まあ好意的に考えて明治期の戦艦モデルとしてはそれなりに見られるものになっていると言えば、言えないこともありませんが ・・・・

私としては、一体何のためにアドバイスしてきたのか、と虚しさを感じずにはいられません。 ガックリ。

イーグルモス社には、シリーズの残りの50巻を続けるために、本モデルの失敗を真摯に受け止めていただけることを期待する次第です。

2014年03月15日

モデル・アドバイザーの独り言 (41)


◎ 第31巻 「ティルピッツ」

本シリーズ第31巻は、シリーズ第16巻の独戦艦 「ビスマルク」 に続き、その姉妹艦である戦艦 「ティルピッツ」 で、1944年の最終時の設定とされています。

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「ビスマルク」 はその迷彩塗装と併せ出来はシリーズトップクラスとの高評価を得ただけに、この 「ティルピッツ」 の出来も期待されたところです。

ただその反面、シリーズ全80巻のバラエティさを考えると、このクラスを2隻とする選択には異論のある方々もおられたと思います。

例によってモニターをされているHN 「おまみ」 氏による評価ですが、次のURLにUPされてます。


おまみ氏はかなり高い評価をされており、私もそれには賛同できます。 1/1100というスケールを考えれば、これだけの細部とデフォルメの表現であれば十分と言えるでしょう。

そしてその点では、この 「ティルピッツ」 も前作 「ビスマルク」 に優るとも劣らない見栄えです。

ただし、以下の点についてはちょっと考えさせられるところです。


1.モデル・デザインについて

「ビスマルク」 との艤装の違いについてはキチンと表現されており、これには好感がもてます。

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ただ、そのために何故か 「ビスマルク」 とは共通である船体も含め、全て一からモデルの図面を起こしています。 主砲塔さえ新しいデザインとなっています。

このため 「ビスマルク」 との違いは確保できた一方で、その反面、例えば特徴ある SK C/33 105粍対空連装砲などは逆に “あれっ?” という残念な出来に変わっています。

このことからすると、「ビスマルク」 と 「ティルピッツ」 とではデザイナーが別人であり、かつ 「ビスマルク」 のモデル図面を流用してそれを手直しするのでは返って作業の手間暇がかかると考えたためと思われます。

そしてなによりも「ティルピッツ」担当のデザイナーに幸いしたことは、「ビスマルク」 と同じくこの 「ティルピッツ」 個艦についても、公式図面を含む詳細かつ多種多様な資料が利用できたことでしょう。

例えば、「ティルピッツ」 そのものについても次の様な詳細な船体線図が残され、かつ公表されています。

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また一般刊行物などにはそのまま1/1100にスケールダウンして使える1/500のモデル用図面集も出ています。

これは楽だったでしょうね (^_^)


2.迷彩塗装について

「ティルピッツ」の迷彩塗装は幾度かの変遷があり複数のものが知られていますが、本モデルのものは1944年でも最終時のパターンと考えられます。

ただし、このパターンの場合迷彩色にはグリーンも使用されていたはずで、私はこのモデルの色のものは見たことがありません。

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( 元画像 : AJ Press #18 より )

同じく、上甲板に草色の斑模様の迷彩が表現されていますが、これも私は知りません。

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どなたかご存じの方があればご教示いただきたいところです。

上甲板以上の上部構造物にも施されていた迷彩が省略されているのは、コスト上致し方なかったのかもしれません。 これは本シリーズの他のモデルでも同様ですので。

ただし、上部構造物の各フラットや短艇の上部がデッキ・タンに塗られていることなどは明らかに塗色指定のミスです。 製造過程において折角キチンと塗り分けられているにもかかわらず、残念なことです。


さて、ここで本シリーズにおける問題点が一つ明らかになったと言えるでしょう。

それは、モデル・デザイナーの仕事というのは、本シリーズ全体を通しての “質の均一性“ を確保することではなく、各モデル毎の “作業量を同等” にすることであるのでは? ということです。

この 「ティルピッツ」 やその他の艦、特に外国艦のように、公式図や写真、スケール・モデル用の一般刊行図面類など利用可能な資料が豊富にある場合は、それに基づいてササッとモデル・デザインを行えば、それなりのものを作ることができます。

が、その一方で資料が少ない艦の場合、特に公式図や写真などが限られている時には、細かい部分の考証などを確認して採り入れる作業にはあまり力を入れず、得られた資料の量に応じて “同じ作業時間内に収まる様に” デザイナー自身の考えによって作ってしまうのではないか? これは日本艦の場合にハッキリしている様に思われます。

それに、コストと開発時間の制約という両方の面からして、イーグルモス社側自身もこれを是認しているところがあるように見えます。 まあ営利企業である以上、それはやむを得ないと言えばそうなのかもしれませんが。

これを考えるならば、モデル・プラン及びモデル・デザインの初期段階における私達アドバイザーの考証や意見が反映されてこないことも、十分に肯けるところです。

次の第32巻 「三隈」 では ・・・・ さて?

2014年03月24日

モデル・アドバイザーの独り言 (42)


◎ 第32巻 「三隈」

本第32巻は、シリーズ第20巻の 「最上」 に続き、その姉妹艦である重巡 「三隈」 で、1942年の最終時、ミッドウェー海戦時の設定とされています。

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「最上」 は航空巡洋艦に改装後の姿であり、この 「三隈」 は重巡としてのオリジナルの姿であることから、並べて比較することが出来る点では良い選択であると言えるでしょう。

ただそうなるとこの 「最上」 型の当初の姿である軽巡時代のものとしては第66巻予定の 「鈴谷」 か第77巻予定の 「熊野」 に期待することになりますが ・・・・?

例によってモニターをされているHN 「おまみ」 氏による評価ですが、次のURLにUPされてます。


この 「三隈」 については、おまみ氏も全体的な出来についてはかなり高い評価をされており、私もそれには賛同できます。 1/1100というスケール (と価格) を考えれば、これだけの見栄えであれば十分と言えるでしょう。

ただし、前回も書きましたが、シリーズとしての質の方向性については、これで良いのかとちょっと考えさせられるところです。

本モデルでも、前回の 「ビスマルク」 と 「ティルピッツ」 と同様で、「最上」 モデルからの流用部分は無く、全く一からモデル・デザイン起こしをしており、主砲塔さえ 「最上」 とは異なる新しいデザインとなっています。

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( 上が今回の 「三隈」、下が 「最上」 のそれぞれ中央部 )

このため、艦橋回りや高角砲、機銃など 「最上」 よりはかなり良い出来となっているところがある反面、逆に退化してしまっているところも多々あります。

本シリーズの当初から指摘している様に、武器・装備品は何故標準化しないのでしょうか?

また、同型艦で船体などの共通部分は共通部分として、各艦ごとの細かなところの考証について何故もっと力を入れないのでしょうか?

おまみ氏の指摘にあったバルジの形状などについては、決してデフォルメ表現上のものではありません。 明らかにデザイン・ミスです。


ハッキリ申し上げて、モデル・デザイナーに考証までを任せっきりにしはダメです。

そのためにも、まず考証とデフォルメをしっかり採り入れた原型モデル用の1/1100図面を作りましょうよ。

今までの様に、史料や写真などからいきなりモデル・デザイナーによる部品分割までした3Dデザインではダメなんです。

そして考証もモデル化も、モデル・デザイナー任せにして各モデル製造上の横並による “作業量の均等化” を許容するのではなく、“モデルの出来の均質化” を目指すべきでしょう。


その他の細々としたことはおまみ氏の評価記事にお任せしますので、省略させていただきます。

2014年04月14日

モデル・アドバイザーの独り言 (43)

◎ 第33巻 「長良」

本シリーズ第33巻は、5500トン型軽巡の1隻 「長良」 で、1936年の設定とされています。

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ご承知のとおり、5500トン型軽巡は3タイプ14隻ありますが、「長良」 はその2つ目のタイプで 「長良」 型6隻のネームシップです。 この5500トン型軽巡として最もスタンダードな形の1936年設定ですから、選択としては適切なものと言えるでしょう。


本シリーズでは、5500トン型軽巡はこのあと 「球磨」 型の 「球磨」 と川内型の 「川内」 が予定されています。 しかしながらこれら3タイプの違いは形状的にほとんど目立ちませんし、ましてや1/1100スケールなら、です。 まあ、3本煙突か4本かの差はありますが。 

シリーズとしてのバリエーションを出すならば、防空巡洋艦となった 「五十鈴」、重雷装艦となった 「北上」 「大井」、その後回天搭載艦となった 「北上」 というのも良い選択の一つと考えます。 が、これらは今のところ予定はされておりません。

あるいは北方作戦時の迷彩塗装も捨てがたいですねえ。 ( 特に、本シリーズでの迷彩モデルはどれも評判が良い様なので (^_^; )

これらについては、既にイーグルモス社へはリコメンドをしておりますが、どうなりますか ・・・・ ?


さて、バタバタしている間に、発売から日にちが経ってしまいましたが ・・・・

例によってモニターをされているHN 「おまみ」 氏による評価は、既に次のURLにUPされています。


本モデルの形状については、機雷投下軌条の形状を始めとして細かなところ諸々ありますが、それらを含めて全体的な出来についてはこれまでの平均的なレベルであり、中の上と言うところでしょうか。

しかし “見かけ” となると、またしても信じられない大きなミスをしておます。

リノリュームが木甲板となっているのは、何故こんなことになるのか、私としてもちょっと首を傾けざるを得ません。 ほぼ全長にわたる広い範囲であるだけに非常に目につきますので、印象が異なったものとなってしまっています。

細部も含めて、写真や図面などをちゃんと見てくれてさえいれば、このようなことにはならないはずなんですが ・・・・ ? 凡ミスで済まされるものではありません。

特に、昭和11年 (1936年) に上海で撮影された一連の素晴らしい写真があるのに ・・・・ 一体何のためにモデルの設定をわざわざこの年にしたのか?


私は本シリーズ日本艦のモデル・アドバイザーの一人ではありますが、残念ながらこの 「長良」 についてはモデル・プランの最初の段階で写真や図面などの提供をしただけで、それ以降は全く関与していません。 そのため、どの様なモデルとなったのかについては、この度の製品版で初めて見ております。

こう言ったことが度々起きてしまう可能性のある開発・製造体制だと言うことはこれまで何度も指摘してきましたが、今回もまさにその欠陥の結果です。


今回はこれだけ書けば購読者の皆さん方にも十分と思いますので、ここまでに。

2014年04月19日

モデル・アドバイザーの独り言 (44)


◎ 第34巻 「ネルソン」

本シリーズ第34巻は、第22巻の 「フッド」 に続く英戦艦の 「ネルソン」 で、1931年の設定とされています。

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ご承知のとおり、この 「ネルソン」 と姉妹艦の 「ロドニー」 の2隻は竣工当時世界の 「ビッグ7」 と謳われた40糎砲搭載艦であり、かつその3連装主砲塔3基を前部に集中した独特の、というより特異な艦型により知られているものです。

その艦型故に本シリーズの1隻としては適当な選択の一つであると言えるでしょう。

例によってモニターをされているHN 「おまみ」 氏による評価は、次のURLにUPされています。

おまみ氏としてはかなり高い評価をしておられますが、確かに本モデルの見栄えというか、出来としては最近のスタンダードです。

マストが少々傾いていたり、隙間や段差があるなど相変わらずですが、まあ全体としては及第点といえるのではないでしょうか。


その反面、これまでにも度々申し上げてきたとおり、やはり考証面での 「?」 が目立ちます。

最大の疑問は、おまみ氏の指摘にもあるように、何故 「1931年」 設定なのか? です。

ご存じのとおり、このクラスの状況・状態については、この1930年前後が最も情報の少ない年代です。 それとも、イーグルモス社やモデル・デザイナーは何か確たる資料が入手できたのでしょうか?

前部艦橋上部の航海艦橋付近の改造・増設については、1931年とされる大変に綺麗な写真が残されていますので、これによるならば当該部分は本モデルのとおりで良いと判断されます。

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( 1931年撮影とされる写真より 「ネルソン」 中央部 )

しかしながら、その他のところでは、デフォルメ表現としてではなく、考証ミスと思われる個所はかなりあります。

既におまみ氏によって指摘されている後部マストのデリック・ブームの欠落の他に、その主要なものは次のとおりです。

1.前部艦橋と煙突間の構造物上に水上機が置かれていますが、当時ここに搭載されていたという根拠があるのでしょうか? 少なくとも私が知る限りそのような資料は全くありません。 というより、ここは置ける構造ではないはずです。

034_Nelson_model_02_s.jpg

おそらくウィキにあるイラストをそのまま使ってしまったのではないかと思われますが ・・・・ ?

Nelson_illust_01_s.jpg
( Wikipedia Commons より )

2.高角砲がシールド付きの様になっています、当時はシールド無しです。

3.左舷の主錨がありません。

034_Nelson_model_03_s.jpg

4.主砲塔の形状、特に測距儀の位置が異なります。

5.艦首側面の下部の形状が異なります。 R付きとなっていますが、艦首と艦底部とは直線で交わっています。

Nelson_draw_01_s.jpg

6.舵の形状が違います。

7.前部水中発射管部が凸となっていますが、管口部から前は凹です。

8.艦橋構造物左舷脇にある大型クレーンですが、基部の形状が異なります。

034_Nelson_model_04_s.jpg

9.マストの塗装の黒色塗り分けが違います。

10.艦橋最上部の露天甲板がリノリューム (らしく) なっていますが、当時ここがそうだという根拠は何でしょうか?

11.第3砲塔上の 「NE」 のレターコードですが、これが1931年にあったという根拠は何でしょうか? 36年とされる写真ではあるものと無いもの、そして37年には描かれている写真がありますが ・・・・

12.短艇類の種類と数が全く合っていません。 特に煙突・後部マスト間の短艇甲板には左舷側半分しか置かれておらず、右舷側は空です。


これらをしっかりとチェックしていれば、例えば艦尾両舷側の四角い舷窓などをわざわざギザギザに表現するよりははるかにましでしょう。

一体、本シリーズでは誰が考証に責任を持っているのでしょう?

外国艦のモデルアドバイザーの方々がどこまで指摘されたのかは解りませんが、はっきり申し上げて、少なくともモデリングの段階での考証が不充分であることは明らかです。

私からすれば、折角船体線図なども揃っているのに、何故もっと形状・状態の根拠がはっきりしている年代設定にしかなったのかと思います。 あっさり第2次大戦中の迷彩塗装にする手もあったはずです。

2014年04月28日

HN 「おまみ」 氏のディティール・アップ (続)

久々にこの 「世界の軍艦コレクション」 のモニターをされているHN 「おまみ」 氏の手になる、本シリーズのモデルのディティール・アップ記事を2つご紹介します。


◎第23巻 「龍驤」

この第23巻 「龍驤」 の製品版については 「モデル・アドバイザーの独り言 (33) 」 で述べたところです。

さて、このモデルにおまみ氏が手を入れるとどのように変わるのか。

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( オリジナルの製品版 )

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( おまみ氏によるディティール・アップ )

全体の印象がグッと引き締まって、1/1100スケールとは思えない見栄えになっています。

もちろん製品版としてここまでのレベルをイーグルモス社及びその下請けの中国メーカーに求めることは少々無理があるでしょう。

しかしながらおまみ氏のディティール・アップは、元々のモデルに少し手を入れればここまで見栄えを良くすることができるという証しの一つです。

つまり製品版においても、その気になりさえすれば、モデリングや製造工程での改善と工夫によっていくらでも更なる向上に繋げることができるということですね。


なお、今回おまみ氏が手を入れた飛行甲板前部と格納庫後端ですが、前者については私の考証は次の記事で述べたところです。

「 「龍驤」 の飛行甲板について」 :

結論的には、「龍驤」 の就役時の飛行甲板については確たる史料が残されておりませんので、おまみ氏のディティール・アップも一つの考えとしてはこれはこれでありでしょう。

ただ後者については、残念ながらここは就役時には後部に張り出した形の上部格納庫下から上甲板まで続く大きな開口部となっており、通常はキャンバスの幕を張るようになっていたことは、残された写真からはっきりしています (^_^;

omami_023_ryujo_02a.jpg  omami_023_ryujo_02b.jpg

Ryujo_photo_1933_10_mod2_s.jpg

Ryujo_photo_1933_11_mod1_s.jpg

「龍驤」 のディティール・アップの詳細については、おまみ氏のブログ及びサイトの次の記事にUPされていますのでご覧ください。


◎第24巻 「利根」

第24巻 「利根」 の製品版についても 「モデル・アドバイザーの独り言 (34) 」 で述べたところです。

このモデルについても、おまみ氏が手を入れるとどのように変わるのかは次の画像を比較していただければ一目瞭然かと。

024_tone_model_A01_s.jpg
( オリジナルの製品版 )

omami_024_tone_01.jpg
( おまみ氏によるディティール・アップ )

「利根」 のディティール・アップの詳細については、おまみ氏のブログ及びサイトの次の記事にUPされていますのでご覧ください。


まあ、艦コレ・シールは好みの別れるところかもしれませんが ・・・・ (^_^)


なお、前回のおまみ氏のディティール・アップ記事 (「鳥海」、「伊勢」) は次のところでご紹介しておりますので、まだご覧になっておられない方は是非一度。

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(注) : おまみ氏のディティール・アップ画像の引用・掲載については、氏から承諾を得ております。

2014年05月10日

モデル・アドバイザーの独り言 (45)


◎ 第35巻 「飛龍」

本シリーズ第35巻は、旧海軍を代表する空母中の1隻 「飛龍」 で、1942年の設定とされています。

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ご承知のとおり、太平洋戦争初頭において活躍した旧海軍の空母6隻については、本シリーズとしても外せないところです。

そして当初のスケジュールでは 「蒼龍」 が先に予定されていましたが、公式図を始めとする史料・資料が揃っていることからこの 「飛龍」 を先に出すべきとアドバイスした結果が反映されました。

例によってモニターをされているHN 「おまみ」 氏による評価は、次のURLにUPされています。


おまみ氏としてはかなり高い評価をしておられますが、確かに本モデルの見栄えというか、全体の出来としては、組立や塗装 (塗り分け) を含めて、まあ最近のスタンダードのものに “見える” かもしれません。

しかしながら、考証面でも決して高い評価を与えられるものではなく、またモデル・デザインからも細部の造形やデフォルメ表現も良いとは言い難く、残念ながら私としては本シリーズのレベルの中ではかなり下げざるをえません。


1.考証面について

公式図及び公試時の鮮明な写真が残されており、キチンとこれらに基づけば間違いようのないにも関わらず、何故こうなってしまったの? という点が多々あります。 それもかなり大きなミスが。

(1) 煙突より後部の右舷高角砲及び機銃

第29巻 「瑞鳳」 でもそうでしたが、またまたシールド無しとなっています。 なぜ同じミスを繰り返すのでしょうか?

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(2) 無線信号マストの不揃い

後部左右両舷に2本ずつ対になっているマストの両舷後部側の取り付け位置が誤っており、このためこれらの高さが前部より低くなっています。 この様なことは、図面及び写真を一瞥しただけでも明らなことですし、このマストの用途をちょっと考えれば判るはずです。

035_Hiryu_model_03_s.jpg

(3) 両舷舷側の構造物

デフォルメ表現上のものとは言い難い誤りがかなりあります。 特に左舷後部の機銃プラットフォーム下部は信じられないくらい酷いです。

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(4) アンカー・レセス

細かいことと言えばそうかもしれませんが、アンカー格納部にはレセスはありません。

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(5) 飛行甲板の鉄甲板表現

飛行甲板周囲のみならず、鉄甲板部分まで同じ滑り止め表現のモールドとなっています。

035_Hiryu_model_05a_s.jpg  035_Hiryu_model_05b_s.jpg


その他、細かいところを採り上げればキリがありませんが、要は公式図や写真を渡してあるのに、ということなんですが ・・・・・ 一体どこからこれらのようなことが出て来るのでしょうか。


2.モデル・デザインについて

(1) 装備品

航空機も含めて、艦上の装備武器・機器について形状の統一、標準化が図られておらず、相変わらずシリーズとして1隻1隻バラバラのままです。

この 「飛龍」 については、高角砲については確かにシリーズ中では最も良いものの一つと言えますが、機銃については 「いまさらこれ何?」 というレベルです。

シリーズも35巻まで進んで来たにもかかわらず、なぜ1隻1隻でこれらの形状がバラバラになるのでしょうか?

(2) 舷側各プラットホーム下の形状の不整合

上の考証 (3) に関連しますが、とてもデフォルメ表現の方法の一つとは言い難いところが沢山ありますし、段差や隙間、ズレなどが全体にわたっており、しかもかなり目立ちます。

このようなことは艦船について知識のない人でも一目見れば判るものであることは明らかです。 モデル・デザイン以降製品版となるまでの間に誰も気が付かない、指摘しないなどと言うことは信じられないのですが。


その他、飛行甲板の鉄甲板部分の滑り止め表現のモールド、フレキシブル・ジョイント部分の塗り分けなどなど、指摘を始めればいくらでも出てくるでしょう。

折角飛行甲板の標識や高角砲砲身キャンバスの塗り分けなど、塗装面での向上が図られているだけに何とも勿体ない話しです。


この 「飛龍」 についても、私はモデル・アドバイザーの一人として、モデル・プラン (企画) の最初の段階で史料を提供しただけで終わってしまい、その後の経緯は全く知りませんので、この製品版で初めてその結果を見ております。

それを踏まえて申し上げるならば、ちょっとこの出来には唖然としております。

なぜもっと公式図や写真などの確かな史料に忠実にならないのか、なぜ同じミスを繰り返すのか、なぜ統一すべき装備品の形状が各艦ごとバラバラなのか?

そしてこれらを各段階、段階で誰もチェックをしないのでしょうか?

これについては、私の思うところを改めて後で纏めて述べてみたいと思っています。

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なお、パンフレット (ブック) をご覧になった方はお気づきになられたかもしれませんが、本号の表紙裏から私の名前が無くなっております。

実は、私の方の都合により、この 「飛龍」 での資料提供を最後に、イーグルモス社さんにお断りして本シリーズ日本艦のモデル・アドバイザー役を降ろさせていただきました。

したがいまして、次の第36巻 「高雄」 以降は私は全く関与しておりませんことを予め申し上げておきたいと思います。

2014年05月29日

オールド・セイラーの眼 (1)

前回お知らせいたしましたように、都合により第35巻 「飛龍」 を最後にして英イーグルモス社から発売されている 『世界の軍艦コレクション』 シリーズの日本艦のアドバイザーを降ろさせていただきました。

しかしながら、引き続きサンプルについては送っていただけるようですので、今回からは元船乗り、元アドバイザーとして、そして自称隠れモデラー (^_^; の一人としての眼からするところを綴ってみたいと思います。

その第1回が、本シリーズ第36巻となる 「高雄」 です。


◎ 第36巻 「高雄」

この 「高雄」 は1944年の設定とされ、1940年設定の第11巻 「鳥海」 に続く 「高雄」 型4隻中の2隻目となります。

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036_Takao_cover_01_s.jpg

モデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価は既に次のURLで披露されているところです。


日本艦としては比較的好印象の高い評価を与えられており、最近の本シリーズの出来としては標準的なところ、と言うものでしょうか。

しかしながら、やはり私の観点からするならばこの 「高雄」 についてももう少し辛口の評価をしなければならないでしょう。

その最も肝心なところは、本連載でも今まで度々申し上げてきましたように、

なぜ残された史料や研究資料にもう少し忠実にならないのか?

同型艦についてさえなぜ1隻1隻 (異なったデザイナーさんによって) デザインを一から全てやり直さなければならないのか?

ということに尽きるでしょう。 これによって、船体形状などの統一、装備品形状の標準化、考証とデフォルメ表現の統一、などと言った面で様々な不具合が生じていることはこれまでの本シリーズの出来から明らかなところです。

1.船体形状

(1) 前部

前部のシーアによる部分の形状が全く違っています。 というより、フレアーの表現さえありません。 第11巻の 「鳥海」 ではまがりなりにも表現されていたのに、なぜこのような形状になってしまったのでしょう。

036_Takao_model_04_s.jpg  036_Takao_model_04a_s.jpg
( 左 : 今回の 「高雄」 モデル  右 : 第11巻 「鳥海」 モデル )

(2) 中部

中部魚雷甲板の張り出し部分が表現されていません。 これも第11巻の 「鳥海」 ではほぼ正しく表現されていたのに、です。

そして、この張り出しによる上甲板の幅の差はその上の構造物においてどこに行ってしまったのでしょう?

036_Takao_model_03a_s.jpg
036_Takao_model_03_s.jpg
( 上 : 第11巻 「鳥海」 モデル  下 : 今回の 「高雄」 モデル )

(3) バルジ

バルジの側面形状も断面形状も正しくありません。 折角のフルハル・モデルを売り物にしているのに、これでは台無しでしょう。

2.主砲塔形状

全く別物になってしまっています。 特に側面形状は “何これ?” と言うものです。 図面も写真もありますし、第11巻の 「鳥海」 では不満はあるもののまあ許容範囲内のものになっていたのに、この 「高雄」 は一体どこからこのような形状が出てきたのでしょう?

036_Takao_model_02_s.jpg


3.魚雷発射管口及び魚雷搭載口

右舷側の2基の4連装発射管 (らしきもの) が外舷に突き出た形にしたのは、前回の 「飛龍」 でエレベーターを下げた状態で表現したのと同じように、少しでも遊び心を出すための工夫かと思いますので、それはそれで良しとするとしても、何故魚雷発射管口や魚雷搭載口の表現が 「鳥海」 と比べてさえ劣化してしまったのでしょう。

本シリーズではこの「高雄」型のように、同型艦のみならず、日本艦としてさえ各種形状の統一による見栄えのバランスを取ることはしていませんし、今後もする予定は無いように見えます。 何故なんでしょう?


また、これらに加えて、飛行作業甲板下の回廊風の通路の表現がありません。 ここは特徴的なところだけに、なぜこのようにしてしまったのか疑問に思います。 とても単なるデフォルメ表現上のことととは考えられませんが ・・・・ ?

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その他、前後部煙突回りの増設された機銃座などを始めとして、指摘点を全て採り上げるとキリがありませんので、その他については省略いたします。

結果的に、遠くから眺める分には最近の本シリーズの平均的レベルで、全体の見栄えはそれなりであるものの、ちょっと手に取って間近に見ると本来の 「高雄」 とは相当に印象が異なったものとなってしまっています。

船体など基本的な形状については改装前の公式図が残っていますのでこれが使えますし、何と言ってもヤヌス・シコルスキー氏の手になる有名な素晴らしい図面集が出ています。

特に、このシコルスキー本1冊だけでも、考証面では1/1100スケール・モデルとして十分すぎるほどで、なぜこれに従ってデフォルメしなかったのか全く不思議に思います。

takao_skulski_cover_s.jpg

Janues Skuiksi 著 「Anatomy of the Ship, The Heavy Cruiser TAKAO」
( Conway Maritime Pr, 2004  ISBN-10 : 0851779743 )

     
次ぎに、製造・組立・塗装に関してです。

モデル全体について、3Dモデル作成時の部品分割において既に部品間にかなりの隙間 (製造・組立上の誤差見込?) が取られており、これによって実際の部品製造・組立においてかなりの隙間、段差などが生じていることはこのシリーズの当初からのものです。

それはこの「高雄」においても各部分に顕著に出ていることはモデルを手に取られれば明らかです。 そしてこの状態は今後とも改善される見込は無いものと考えられます。

組立は、シリーズ初期のものからするとかなり改善はされてきましたが、この部品製造上の理由によって今後とも傾きや歪みなどが無くなることはないでしょうし、これによる個体差は当然出てくるでしょう。 定期購読者の方々には出来を見比べて選択することができませんので、運・不運が生じるかと。

塗装も、シリーズ初期のものからはかなり改善されましたが、モデルごとの出来・不出来が生じるでしょう。

特に今回の 「高雄」 については舷窓、それも戦訓対策として塞がれてしまったものまでをもそのまま、ボテボテの黒点表現しているのは (^_^;


私としては、既に第11巻で 「鳥海」 が出ているだけに、単にこれと並べることを考えただけでも、この 「高雄」 はちょっと “?” と言わざるを得ません。

2014年06月06日

オールド・セイラーの眼 (2)

私が日本艦のモデル・アドバイザーを降りましてからの第2回目が、本シリーズ第37巻となる 「比叡」 です。


◎ 第37巻 「比叡」

この 「比叡」 は1935年 (大正10年) の設定とされ、軍縮条約時代の練習戦艦としての姿です。

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037_Hiei_cover_01_s.jpg

同型艦4隻全てがラインナップされている 「金剛」 型は、第5巻 「金剛」 が1944年の最終時、第7巻 「霧島」 が1942年の最終時(ほぼ開戦時の状態)、第9巻 「榛名」 が1928年の第1次改装後として既刊であり、そして最後となるこの 「比叡」 が1935年の練習戦艦時代の設定です。

この 「比叡」 については、近代化改装後の 「大和」 型のテスト・ベットとしての前檣楼に期待した向きもあるかもしれませんが、私としては 「金剛」 型4隻の並びとしてこの 「比叡」 の練習戦艦時代は良い選択であると思います。

そしてなによりも、市販のスケール・モデルとしては初となるものであることは、「世界の軍艦コレクション」 ならではの面目躍如たるものがあると言えるでしょう。

( ただ私としては、折角のシリーズですから更にバラエティさを出すために 「金剛」 型4隻中の1隻は就役時の姿としたかったのですが ・・・・ )

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( 左より 「金剛」 「比叡」 「榛名」 「霧島」の各モデル)

モデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価は次のURLのとおりです。

全体的な出来としては “並” であるものの、やはり練習戦艦時代ということを評価されているようです。

ただ、年代設定がなぜ1935年 (大正10年) なのかは判りませんが、これはおそらくこのモデルのデザインの基本として石橋孝夫氏の 『日本帝国海軍全艦船 1868-1945 第1巻 戦艦・巡洋戦艦』 のp234のイラストをそのまま使用したためと考えられます。 したがって、良くも悪くもこのイラストの出来を引きずっていると言えるでしょう。

そしてなによりも、基本的なデザインはそれによったとしても、細部の考証についてはほとんどと言って良いほどになされておらず、石橋氏のイラストを元に、あとは適当にデザインした (スケール上のデフォルメ表現ではなく) としか見えないことは大いに気になる点です。

主なものを列挙しますと次のとおりです。

1.前檣楼の形状がかなり異なります。 特に艦橋及びその一段下、司令塔の後ろ側は全くと言ってよいほどに違います。 また射撃指揮所とその下の形状もかなり異なりますし、元三脚檣の脚の下部が変ですので、これらによって前檣楼全体の印象が違ったものになってしまっています。

037_Hiei_model_05_s.jpg   hiei_bridge_photo_1933_01_s.jpg

2.主砲砲塔の形状、特に側面形状がかなり異なります。 「金剛」 や 「霧島」 のモデルよりも更に劣化したものになっています。 しかも砲身の取り付け位置が全然違います。

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hiei_maintrt_photo_1933_01_s.jpg

3.船体上甲板の平面ラインが誤っています。 特に、何故か後部がボッテリしすぎており、「金剛」 型の特徴が出ておりません。

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( 上 : 今回の 「比叡」 モデル、下 : 「榛名」 モデル )

4.水線下、特に前後部の形状が全然違います。 一体どこからこのような形状が出てきたのか不思議です。

037_Hiei_model_02a_s.jpg 037_Hiei_model_02b_s.jpg

5.船体部品がダイキャストであるとはいえ、装甲板撤去跡の表現が非常にダルく、折角のこの時期の特徴であり、本モデルの一番のウリであるところが十分に活かせていません。 また舷側にある特徴的な灰燼筒や汚水捨管などのモールドが全くなく、そのダルさを一層引き立たせている結果になっています。

6.おまみ氏の指摘にもあった左舷2番の8センチ高角砲の位置や、高射装置架台などの形状、前部のフェアリーダ、主錨、等々

7.4番主砲塔跡に設置された御座所の形状は時期により異なるようですが、3番主砲塔後ろの最上甲板の構造物の形状と併せ、折角の練習艦時代の表現としては不充分と言えるでしょう。

8.3番主砲塔後部の最上甲板がリノリュウムとなっていますが、ここは就役時から本格的な航空艤装がなされるまでの間は木甲板のはずです。

(もしここが当時既にリノリュウムであったとする史料をお持ちの方がおられましたら、是非ともご教示ください。)

9.艦橋天蓋がリノリュウムとなっていますが、ここはキャンバス張りであり、形状も異なります。

10.左舷4基の8センチ高角砲の表現はもう少し何とかならなかったのでしょうか? まるで25粍単装機銃ですし、右舷の40粍機銃より小さいとは (^_^;

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11.これは “う〜ん?” というものです。 前檣楼下の両脇にあるこの円柱状の物体、一体何なんでしょう (^_^;  こんな目立つ位置に訳の判らないものがあっても、製品版となるまで誰も気が付かないのでしょうか?

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その他、1/1100スケール上のデフォルメ表現やいつもの部品分割の問題のことなども含め多々ありますが、省略いたします。

いずれにしても、製品開発においてもうちょっと力を入れれば直ぐに気が付くはず、というものがほとんどです。

これを要するに、モデル全体の見栄えとしてはそれなりに出来ている (これは評価しても良いでしょう) と言えるかもしれませんが、細部の考証・デザインについてはちょっと安易過ぎるでしょう。

練習戦艦時代の 「比叡」 のスケール・モデルとして初の試みであるだけに、少々残念であり勿体ないかと。

2014年07月03日

オールド・セイラーの眼 (3)

先月から全く時間が取れない状況となっていましたので、レビューがすっかり遅くなってしまいました (^_^;

私が日本艦のモデル・アドバイザーを降りましてからの第3回目ですが、元々外国艦はノータッチでしたので、オールド・セイラー&隠れモデラーの一人としての忌憚のない所見を。


◎ 第38巻 「イントレピッド」

本シリーズでの米空母2隻目であり、太平洋戦争における米空母を代表する 「エセックス」 級の1隻である 「イントレピッド」 です。 1943年の設定とされていますので、まさに就役直後の姿になります。

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038_Intrepid_cover_01_s.jpg

1942年就役の1番艦 「エセックス」 以下17隻が太平洋戦争中に就役して様々な海戦で活躍しましたので、どれを採り上げてもおかしくはありませんが、やはり一般的な資料の多いこの 「イントレピッド」 が選ばれたのかと。

日本艦中心の本シリーズですので、「エセックス」 型も1隻のみというのは理解できますが、私の好みとしては、迷彩を施した後期型も捨てがたいものが ・・・・ っと (^_^;

モデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価は次のURLのとおりです。


全体的な見栄えとしての出来は “良” と評価されていますが、この点については私も同感です。

ブログでの連載の冒頭に申し上げましたように、これだけの見栄えであるならば本シリーズの基本コンセプトとしては十分なものでしょう。

それだけに、如何に1/1100であるとはいえ、スケール・モデルとしてもう少し改善・改良の余地があると思います。

特に、本シリーズをいくつも並べて飾って見る分にはよいでしょうが、やはり1つ1つを手にとって見るとなると、この点が気になるところです。

この 「イントレピッド」 についても、まさにその典型であると言えるでしょう。

1.考証について

「エセックス」 級については、写真資料は大変に豊富ですが、図面などの資料となると一般に手に入るものとしてはあまり多くはありません。

おそらく本モデルのモデル・アドバイザーさんが基本としたのは、このイラストではないでしょうか?


それはそれで良いのですが、細部となるともう少ししっかりとしたものが必要となります。 この 「イントレピッド」 については、次のものが公刊されており、本シリーズ用としてはこれ1冊があればまず十分と考えます。

Anatomy_Intrepid_cover_s.jpg

『Anatomy of the ship, Aircraft Carrier Intrepid』
( Naval Inst Pr. 1982 ISBN-10 : 0870219014 )

公式図に基づいた1/500を主とする多数の図面も含まれておりますので、このままスケール・ダウンして使うことも可能です。

ですが ・・・・

(1) 左舷前部の5インチ砲 (形状はともかく) と40ミリ機銃の並びが違います。 なぜこのような単純ミスを度々繰り返すのか・・・・?

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Intrepid_draw_01_s.jpg

(2) 艦尾の40ミリ機銃の位置が違いますし、右横にある射撃指揮装置がありません。

40ミリ機銃座は船体中央 (中心線上) にあるのではなく、左舷側にずれています。 これもしっかりと図面や写真をチェックしていれば間違えないはずのものです。

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Intrepid_photo_02_s.jpg  Intrepid_draw_02_s.jpg


(3) 発着艦標識ライン

3本の白色ラインの位置が少々違います。 また、真ん中のラインは43年当時に描かれていたのかどうか確たる資料がありませんし、写真も見たことがありません。

Intrepid_model_03_s.jpg


(4) 艦首形状

これはモデル・デザイン上のものかもしれませんが、実艦の艦首下部は軽いバルバス・バウ形状となっています。 これがうまく表現されていません。

Intrepid_draw_04a_s.jpg  Intrepid_draw_04b_s.jpg

また、艦首艦底が反り上がるような形状になっていますが、これも誤りで、水平の艦底部と艦首側面とは直角に交わり、交点部分に軽いアールが付いています。

Intrepid_model_04c_s.jpg   Intrepid_draw_04c_s.jpg


(5) ビルジキール

ビルジキールが2分割されています。 これについては市販の図面・イラストやスケールモデルでも同じようにされているものと、通常の1本表現のものとがあります。

残念ながら公式の側面図がちょっと出てきませんが、少なくとも船体中央の断面図にはビルジキールがありますので、おそらく2分割ではなく (そもそも分割する理由がない) 通常の1本形状であったと考えられます。

Intrepid_model_05_s.jpg

Intrepid_draw_05_s.jpg
( 左半分がフレーム104番、右半分がフレーム102番の船体断面図 )

(このビルジキールについては確たる資料をお持ちの方がおられましたら、是非ともご教示ください。)


2.モデル・デザインについて

1/1100スケールともなると、やはり相当なデフォルメ表現が必要になってきます。 とてもではありませんが、1/350や1/700のようには行きません。

しかしながら、そのデフォルメ表現もキチンとした考証に基づいてのことであって、それを無視したり、手抜き的なモデル・デザインではダメなことは申し上げるまでもありません。

この点からすると、シリーズ各巻間の作業量を均一するための措置ということも理解できないわけではありませんが、この 「イントレピッド」 も “?” と思わされるところが各所に散見されます。

それらのうちの主なものは次のとおりです。

(1) 艦橋窓枠

艦橋窓枠が表現されていますが、「イントレピッド」 の艦橋はこのような構造ではありませんので、この表現は誤りといえるでしょう。

Intrepid_model_06_s.jpg

Intrepid_draw_06_s.jpg  Intrepid_photo_06_s.jpg


(2) 格納庫前部側面の開口

「飛龍」 のエレベーターと同じで、モデル・デザイナーによる “遊び心” の一つとして、ここを開口して中の格納庫甲板も表現したことは評価してもよいでしょう。

しかしながら、その甲板も飛行甲板と同じ横モールドであったり、カタパルト延長部の構造物が省略されていたりします。 (もちろん格納庫甲板にはカタパルトのモールドはありません。) この辺はちょっと中途半端かと (^_^;

Intrepid_model_07a_s.jpg  Intrepid_model_07b_s.jpg

Intrepid_photo_07a_s.jpg  Intrepid_photo_07b_s.jpg


(3) 飛行甲板

甲板や制動索のモールドが大袈裟過ぎる割には、昇降機やカタパルトなどがほとんど判らないくらいです。 また、制動索とバリアーの表現の区別もありません。

Intrepid_model_08_s.jpg


(4) 飛行甲板下部

飛行甲板の前後部の裏面にはそれなりに構造表現のモールドがなされていますが、舷側裏面にはまったくありません。 のっぺらぼうのままです。

Intrepid_model_09_s.jpg

特に特徴的な舷側エレベーター下部の表現が無いのは痛いです。 折角その前部側に開口が表現されているのに、なぜここの手を抜くのか。

私としては、カタパルト部の舷側を開口とするよりは、むしろこのエレベーター下部舷側を開口とし、併せてエレベーター裏面の表現をする方が良かったのではと考えます。

(5) 船体舷側

船体舷側には、水線上のブラインド・ビット部のモールドと黒点が表現されていますが、就役時にあった舷窓などは全くありません。 また、格納庫部舷側の各種開口部も位置や形状が異なっているところが散見されます。

(6) 作業員待機所及びウォークウェイ

飛行甲板舷側部で、機銃座以外の待機所及びウォークウェイ部が何故かスリット状のものになっています。

これはおそらく上記のイラストを基にしたためと思われますが、ここは途切れ途切れになっているのではなく、一つの通路になっています。

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その他、舷側に並ぶ20ミリ機銃のプラットホームが飛行甲板とフラットであり、このため機銃が甲板より高くなっているのは見栄えを大きく損なっています。 これは飛行甲板の部品製造上のコストを押さえるため?


まあ、細かいところを採り上げるとキリがありませんので省略します。 SKやSCアンテナ背面のあのゴツゴツした表現や格納庫前後端部の形状なども目をつぶることに (^_^;

(艦橋構造物上のレーダー・アンテナの配置は、設定の43年中でも就役時とその後とでは異なってきますが、その辺はあまり細かいことは言わずに。)


ただし、強調しておきたいことは、本連載記事は決してこのシリーズ個々のモデルの “粗探し” をしているのではない、と言うことです。

度々申し上げてきましたように、本シリーズはその基本的なコンセプトに基づくものとしてその見栄えは決して悪くはありません。 そしてイーグルモス社の改善努力により初期のものからするとここまで良いものになってきました。

それだけに、上記のような点について配慮するならば “更に良いものになる” ということが主眼です。 ご来訪の皆さんには、これについては誤解の無いようにお願いいたします。


全80巻予定の本シリーズもまもなく折り返し点です。 シリーズ後半がますます良いものになることを期待しましょう。

2014年07月10日

オールド・セイラーの眼 (4)

◎ 第39巻 「吹雪」

本シリーズ初の駆逐艦です。 日本海軍を代表する特型駆逐艦である 「吹雪」 型のネームシップで、1942年の設定とされています。

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その駆逐艦として、日本が世界に誇った大型駆逐艦の最初の特型を選択したことはシリーズとして極めて妥当なものであると思います。

しかしながら、駆逐艦ですから当然ながらこれまでの戦艦や空母、巡洋艦などからするとサイズ的には極めて小さなものとなります。 しかもこの小さなモデル1つでいつもと同じ価格ですので、割高感を覚える方も多いでしょう。

定期購読の方ならば、全巻通しての1巻当たりの分割価格と考えればまあそれなりに納得されるかもしれませんが、単品を選んで購入される方々にはちょっと納得しがたいものがあるかもしれません。

何故書店ルートでの販売の場合にパッケージ価格を各巻毎に変えることが出来ないのか判りませんが、もしそうであるならば、同型艦2隻セットとする方法などもあったのではないかと思いますが ・・・・ ?

もし、イーグルモス社又は製造メーカー側において、小さくとも大きくとも手間暇は同じ、と主張されるとしても、それは購読者側の見方ではありませんので少々難しい理屈ではないでしょうか。


それはともかくとして、モデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価は次のURLのとおりです。


全体的な見栄えとしての出来は “良” と評価されていますが、この点については私も同感です。

ブログでの連載の冒頭に申し上げましたように、これだけの見栄えであるならば本シリーズの基本コンセプトとしては十分なものでしょう。

ただし、モデルそのものが小さいだけに、既刊のものよりも “手に取ってみると” 更に色々注文を付けるところがあります。


1.考証面について

(1) 特型のネームシップである 「吹雪」 を選択したの良いとしても、何故資料の少ない1942年設定としたのか? よく判りません。

それ故の誤りの筆頭が、艦首の隊番号と舷側中央部の艦名でしょう。 これは開戦直前の臨戦準備の一貫として消されていますので、昭和17年設定であるならば全くの考証ミスです。

また、煙突の識別帯は開戦時に一旦消されたものの、水雷戦隊所属の駆逐隊については17年中に復活していますので、誤りとまでは言えません。

がしかし、「吹雪」 が17年10月のサボ島沖海戦までの期間に後部煙突に1本線を描いていたことがあるという根拠は不明です。 というより私は知りません。 (同海戦直前に撮影されたとされるちょっと不鮮明な写真では3本のようです。)

おそらくモデルは昭和5年の写真をそのまま参考にしたのではないか、とも考えられます。

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それ以前の問題として、金色塗装で艦首に菊の御紋章の表現があるなどは、余りにも単純な凡ミス過ぎて ・・・・ (^_^;

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その他、細かいところですが、

(2) 第2煙突前の13ミリ機銃が単装x2基になっていますが、これは戦前既に連装x1基に換装されています。

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(3) 後部の2本の爆雷投下軌条が並行になっていますが、初期9隻は 「ハ」 の字に開いた形です。

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なお、おまみ氏から言及のあった艦名文字が舷外消磁電路にかかる件ですが、臨戦準備で舷外電路を装備した際に、この様な例もあります。 もちろん開戦前のわずかな期間ですが。

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2.モデルデザインについて

(1) 特型以降の特徴の一つに、船首楼舷側の朝顔状に大きく開いた独特のフレアー、甲板両端の丸みを帯びた形状、そして後端の両舷が垂直にスパッと切れた形がありますが、これらがまったく表現されておりません。 シリーズにはこのあと 「陽炎」 型や 「朝潮」 型も予定されているだけに残念なところです。

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(2) 「吹雪」 型の特型 (T) とも言われる初期9隻の特徴の一つである上部艦橋が上手く表現されていません。

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(3) サイズ的にも艦載艇のダビットなどを正しく表現することは難しいのかもしれませんが ・・・・ それにしても中部両舷の内火艇の形状は “これ何” というものです。

(4)シリーズの他の日本艦でもそうですが、このモデルでは艦橋両脇の7mカッターが合戦準備状態のモールドとされ、白色に塗られています。

アクセントのつもりかもしれませんが、既に申し上げているとおりこれだけを合戦準備状態にしても全く意味がありませんし、かつ当該位置のカッターは航海中の救助艇として準備されますので、誤りです。

これもイーグルモス社には過去何度も指摘しましたが、いまだに直らないものの一つですが。

(5) 何故かメインマストの上半分が黒色に塗られていますが、これも誤り。 基本的な単純ミスです。

(6) 主砲塔は一般的に 「A型」 と言われる形状をまあまあ表現していますが、それにしてももう少し細かいモールドがあっても良かったかと。

それに、いつもどおり砲身の取り付け位置が高すぎます。 これによって印象をかなり損なっています。

その他、採り上げればキリがありませんが ・・・・

全体として非常に “大雑把” なデザインになっています。 サイズが小さいだけにもう少し繊細なキリッとしたところが欲しかったところです。

そして何よりも、私としてはこのモデルにデザイナーの “こだわり” というのが全く感じられません。

したがって、結論的には結局並べてみた時に全体的な印象は “それらしく見える” というモデルで終わっていると言えるでしょう。


ところで、本日次の第40巻 「アドミラル・グラフ・シュペー」 が届きました。 パッケージを開けてざっとみたところですが ・・・・

なにこのマストとヤードの細さは。 これができるならなぜ 「吹雪」 でやらないのかと (^_^;

2014年07月15日

オールド・セイラーの眼 (5)

イーグルモス社の 『世界の軍艦コレクション』 シリーズ、全80巻予定でスタートしましたが、遂に折り返し点にまで来ました (^_^)

◎ 第40巻 「アドミラル・グラフ・シュペー」

シリーズ第40巻は、「ポケット戦艦」 として世に広く知られる独逸海軍の装甲艦 「アドミラル・グラフ・シュペー」 で、1939年 (最終時) の設定とされています。

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本連載の最初に、そして前回の 「吹雪」 でも申し上げましたとおり、このイーグルモス社の 『世界の軍艦コレクション』 シリーズ全80巻は、艦船及び艦船モデルの初心者の方々が手軽な価格でフルハル・モデルを集め、それらを並べて飾って楽しむというところに主たる狙いがあります。

この 「アドミラル・グラフ・シュペー」 も、既刊の戦艦や航空母艦などと並べてご覧いただけば、その大きさや艦型などの特徴がよくお判りいただけるでしょう。

まさにその主旨が発揮されたものであり、かつシリーズ折り返し点における本艦のモデル化はその意味においても良い選択であると思います。


モデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価は次のURLのとおりです。


全体的な出来として高い評価されており、特にマストなどのシャープさについては好印象を持たれているようです。 この点については私も全く同感です。

これまでの外国艦の例に漏れず、よい出来であり、本シリーズとしてもトップレベルの一つではないでしょうか。

とはいっても、元アドバイザーの一人としてはやはりいくつかの点で注文を付けなければならないでしょう。


1.考証面について

(1) 1939年設定ですので、おそらく12月のラプラタ沖海戦時の姿と考えられます。 しかしながら、船体前部舷側に施された波切りの迷彩は肯けますが、上部構造物には迷彩が施されておりません。

しかも、主砲塔上面は黒色に塗られ、かつ紋章を思わせるような灰色の図柄が描かれていますが、この砲塔の迷彩は本当に黒色と灰色で、かつこの形状だったという根拠は何でしょうか?

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(2) 中部装甲帯の下にあるバルジの張り出し形状が上手く表現されていません。 このため船体の印象がかなり異なったものとなっています。 何故なんでしょう? 考証ミス、それともデザイン上の問題、あるいはダイキャスト製品の工作上の問題?

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2.モデル・デザインについて

(1) これは考証の問題と言うよりデザイン及び部品製造上の問題なのでしょうが、舷側上端と甲板との接合部は顕著なR (丸み) がついていますが、これが表現されていません。

(2) 前檣楼について

   a.中段前面に移設された探照燈の位置がやや高すぎ、かつサイズ及び形状も少々違います。 このため前檣楼の印象がかなり変わってしまっています。


   b.艦橋の窓が凸モールドになっていますが、これは戦闘時用の装甲覆いを被せた姿を表現のつもり?


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(3) 航海艦橋下部の操舵室ウィングが前檣楼前面より前に出て回廊付きのような形状になっていますが、ここは面一です。

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(4) 艦載艇の数、特に前檣楼と煙突間の短艇甲板は全く足りません。 特徴てきな部分でもありますので、それなりの種類と数を揃える必要があったと思います。

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その他、レーダー・アンテナのモールドを初めとして、細かいところは色々ありますが、しかしながら1/1100スケールのフルハル・モデルとして、これだけの出来であるならば、シリーズの趣旨からもまあ十分であるといえるのではないでしょうか。

とくに、今回のマストやその他のシャープさを見ると、これがメーカーにおける部品製造上の物理的な制約・制限であったのではなく、これまでもやろうと思えば出来たことで、単にモデル・デザイナーによるデザイン上の話しであったことがわかります。

私としても、今後予定されている日本艦も是非このクオリティ・レベルでモデル化して欲しいと思いますね (^_^;

2014年08月08日

オールド・セイラーの眼 (6)



世の中お盆休みを迎えておりますが、相変わらず何かバタバタしておりまして、全く余裕がありません。 本連載もすっかり遅くなってしまいました。

さて、イーグルモス社の 『世界の軍艦コレクション』 シリーズ、全80巻予定の折り返し最初のものになりました。


◎ 第41巻 「大鳳」

シリーズ第41巻は、旧海軍における最新近代空母で、ミッドウェー海戦後の機動部隊再建の期待を一心に担いながら、全くの不運な短命で終わった 「大鳳」 で、1944年の設定とされています。

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シリーズ折り返し後の最初のものとして、本艦のモデル化は良い選択であると思います。 ただし、写真も含めた史料がほとんどないのが最大の難点であると言えますが ・・・・

モデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価は次のURLのとおりです。


氏の評価は “残念ポイントがちょっと目立ってしまった印象” と言うことですが、確かに全体的な見栄えということでは私もそのとおりだと思います。

ただし、単なる “見栄え” だけではなく、以下の点を考慮して総合評価する必要はあるでしょう。

1.考証について

写真も含めて、残された史料が非常に少ないことを考えるならば、何か一つの考証資料に基づくことになります。

おそらく、昭和34年に川崎重工 (株) の造船設計部の手になる有名な復元モデルの写真であろうと思われます。 現在においてもこれはこれで十分な根拠となり得るものです。

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確かに、現在までに研究家と称する多くの方々によって、各部について “新説” とされるものが発表されてきました。

その典型が飛行甲板の表面が木甲板であったとするものですが、残念ながら、例えその一部が木甲板であったとしても、飛行甲板のどこからどの部分という明確な根拠はなく、今のところあくまでも断片資料に基づく “推論” に過ぎません。

証拠の一つとされる木甲板の写真も、それが本当に 「大鳳」 艦上のものであるのか、そしてそれがどの部分なのか、という決定的なことに欠けます。

したがって、様々な説は説として、話題としては面白いかもしれませんが、それらを採り入れていないから、考証として “古い” というのは当たらないでしょう。

それはそれで良いのですが ・・・・


2.モデル・デザインについて

(1) 全体の見栄え

おまみ氏の指摘にあるように、大型艦であり、かつ空母であるために、全体が非常にあっさりとした見栄えになっています。 確かに実艦もおそらくそのような印象では無かったのか、という感じもします。

ただし、如何に資料が少ないとはいえ、各部のデザインに時間をかけたという感じは全くありません。 もう少し細部に凝っても良かったと思います。 先の 「アドミラル・グラフ・シュペー」 であれだけの作り込みが出来たのですから。

(2) エンクローズド・バウ

「大鳳」 の大きな特徴であるエンクローズド・バウを主体とする艦体前部の形状が全く正しく表現されておりません。 これではダメです。 何でこんなデザインになってしまったのか ・・・・ ?  如何に資料が少ないとはいえ、これではちょっと (^_^;

そして、船首艦底部は軽い球状船首の膨らみがありますが、これも全く表現されていません。 (主錨のモールドなどはもう論外の有り様です。)

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現在では、米国国立公文書館に船体線図の原図 (完成図ではないが) が保管されていることも知られており、少ないとは言いながらそれなりの原点史料があるにも関わらず、これらが活かされていません。

その他、艦橋、高角砲や機銃、舵、飛行甲板のマーキングなどなど、指摘すべきことが多々ありますが、これらについては全て省略します。

いままで度々申し上げてきたように、デザイナーが手間暇をかける時間は同じなので、デザイナーの手元に集まった資料の質と量によって出来栄えが大きく左右される、ということは明らかでしょう。 そして、このデザイナーさんは艦船に関する知識が全く無いことも。

どうも、本連載の早い時期から危惧してきたことが現実となってきていますが ・・・・ シリーズはあと半分ありますので、もう少しキチンとした考証に基づくモデル・デザインにしません (させません) か、イーグルモス社さん ?

さて、本日第42巻の 「加古」 が届きましたが、どうでしょうか。

2014年08月16日

オールド・セイラーの眼 (7)

◎ 第42巻 「加古」

シリーズ第42巻は、既に第27巻でモデル化されている 「古鷹」 の姉妹艦 「加古」 で、1942年の設定とされています。

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第27巻 「古鷹」 は20糎単装砲塔 x 6基の1926年竣工時の時代の姿でしたが、この 「加古」 は改装後の同連装砲塔 x 3基の姿です。

第27巻 「古鷹」 の記事 :

両者を並べてみると、その艦容の変化が良くお判りいただけると思います。 この様に手軽に並べて飾れることこそ、この 「世界の軍艦コレクション」 シリーズの醍醐味ではないでしょうか?

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( 手前が今回の 「加古」、奥が第27巻の 「古鷹」 )

そこでこの 「加古」 ですが、例によってモデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価ですが、次のURLのとおりです。


氏曰く “相変わらず考証の凡ミスがいくつか見つかりましたが、古鷹と比べると模型としての出来は幾分良くなっています。 このシリーズの平均的な品質かと。”

確かに 「古鷹」 に比べれば、という事なんですが ・・・・ 外国艦も数が揃い始めた現在においては、おそらく購読者の多くの方々にとっては “日本艦はシリーズ42巻まで来てまだこのレベルか” という印象の方が強いのではないでしょうか?

そこで今回は、この 「加古」 のモデルについての具体的な考証上の指摘についてはともかくとして、ここに来ての本シリーズについての全体的な所見を 「加古」 を例にして採り上げることにします。


1.モデル・デザインの方法について

本シリーズの初期から指摘していますように、なぜ武器・装備品などについてその標準化を図らないのでしょうか?

今回の 「加古」 についても、やはりいまだに船体・構造物はもちろんのこと、各部品に至るまで全て一から新たに起こしているようです。

それも段々良くなるならまだしも、例えば高角砲などはこの期に及んで “何これ?” という出来です。

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すでに申し上げてきましたとおり、モデル・デザイナーが1隻にかける手間暇 (工数、時間) は毎回同じようです。 支払われるデザイン料が同じなら当然のことでしょう。

したがって、結果としてデザイナーの手元に集まった一般資料の量と質によって、そのモデルの精粗がそのまま出てくることになります。

それならば、なぜ武器・装備品などについて標準化・共通化を図り、そこで浮いた手間暇を個艦の細部を正しく表現するための考証に回さないのでしょうか?


2.モデルの質の向上について

今回のこの 「加古」 のモデルをみると、質の向上を図るためにこれまで積み上げてきたデザインのノウハウがほとんど活かされていないように感じられます。

42巻まで進んできたのですから、どんどんレベルが上がって来るのが当然であると普通なら思います。 しかしそれがどうもあまり感じられません。 もちろん、全くというわけではありませんが ・・・・

ですから、上にも書きましたように “日本艦は42巻まで来てまだこのレベルか” という評価に繋がるのでしょう。

うがった見方をするならば、もしかするとイーグルモス社としては、既に発売してきた初期のモデルとの差をあまり出したくないと考えているのかとも思えます。 つまり、これまでのものとレベルをあまり変えたくない、あるいはシリーズ通しての “質の均一化” を図りたい、ということかと。

しかし、もしそうだとするなら、私に言わせるならばそれは明らかに誤りです。 購読者は後のモデルになればなるほど、その出来、質の向上を期待するのは当然のことだからです。

そして質の向上、改善努力は、イーグルモス社としての本シリーズに対する姿勢を示すものであると言えます。

もし次第にレベルが向上するならば、予定の全80巻を更に続けることもできるでしょうし、あるいはまた初期のもののバージョン2に繋がる可能性もあるかもしれません。

本シリーズのコンセプトを理解し、好意的に見ている購読者の方々の多くもそれを期待しているのではないでしょうか?

私としては、ちょっと今のままの方針維持のやり方には疑問を持っています。


3.艦船モデルとしての基本

いまだに艦船としての基本的事項が正しくモデル化されていないところが見られます。

例えばその一つが、この 「加古」 の例ではその各部の塗り分けがあります。 錨甲板や飛行作業甲板の黒塗り、内火艇の上甲板の白塗り、艦橋上部のリノリュウム表現、等々 ・・・・

あるいは前回の 「大鳳」 のように主錨があらぬ方向を向いている、等々 ・・・・

ちょっと艦船についての基礎的な知識があるならば間違えようがないものですので、少なくともモデル・プランから始まって、モデル・デザイン、製造の段階のどこかで一度でも誰かがキチンとチェックしてさえいれば、このようなことにはならないはずです。

このことは、本シリーズ冒頭の第1巻 「大和」 がとんでもないミスで始まって以降、現在に至るも各モデルで多かれ少なかれ引き続く問題です。 もう少しキチンとした配慮があっても良いのではないでしょうか?


とは言っても、これまでも度々申し上げてきましたように、本シリーズはそのコンセプト、そしてこれまでの全体的な見栄えとしての出来からすると決して悪いものではありません。 

そして、日本及び諸外国の代表的な艦船を、統一されたスケールでのフルハル・モデルで、それを手軽な価格で気軽に集め、一堂に並べて飾ることの出来る良い企画であると思っています。

ですから、そのレベル向上のためにもう少し考えていただけませんか、イーグルモス社さん? 折角のチャンスなのですから。


う〜ん、今回はちょっと辛口だったか ・・・・ でも、本シリーズの発展を願えばこその提言と捉えていただければと思います。

2014年09月01日

オールド・セイラーの眼 (8)

◎ 第43巻 「ダンケルク」

シリーズ第43巻は初の仏海軍艦艇、戦艦 「ダンケルク」 で、1939年の設定とされています。

でも何故1939年の設定なんでしょう ・・・・ ? まあ、「ダンケルク」 の生涯の内で最も華々しい時期、と言えば確かにそうなのですが、その設定に応じたモデルとするに足る資料が得られたということなのでしょうか (^_^;

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例によってモデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価は次のURLのとおりです。


おまみ氏も評価されているように、1/1100スケールのフルハル・モデルとしての全体的な見栄えは悪くありません。

手元にあったコレクション・ケースに入れてみましたが、こうしてケースに入れて飾る分には十分な出来でしょう。 そしてシリーズの他のモデルと並べて飾ってもなかなか良いと思います。

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「ダンケルク」は残念ながら日本においてはあまりメジャーな艦とは言い難いものがあります。 それもあってスケール・モデルとしては輸入物のレジン・キットがあるくらいですので、こういう艦が本シリーズの一つとしてモデル化されるのは喜ばしいところでしょう。

しかも、公式図が残されており、かつそれに基づく1/200などの図面集も比較的容易に入手可能です。 特に後者は、そのまま1/1100にスケールダウンして利用可能なパーツ・レベルのものも揃っています。

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これらを利用すれば、比較的容易に、しかも考証面で大きなミスをすることなく、モデルのデザインをすることが可能なはずの艦です。


で、いつものとおり、“これを直せば” あるいは “ここに注意していれば” もっと良いモデル、製品になるということ頭に、元船乗りであり隠れモデラーとしての観点から述べてみることにします。


1.全体の出来について

この 「ダンケルク」 担当のモデル・デザイナーがどのような資料に基づいたのかは分かりませんが、本シリーズ外国艦の例に漏れず、マストや主砲砲身を始めとしてそれなりにシャープに出来ており、全体のプロポーションも悪くはありません。

1/1100スケールのフルハル・モデルとして、本シリーズの基本コンセプトに沿ったものとして十分な見栄えではないでしょうか。

ただし、細部については以下に述べるように、本モデルでも基本的なところでの凡ミスが見られるなど、ちょっと残念なところがあります。


2.細部について

(1) 艦首の主錨は3つですが、肝心な艦首正面のもの (前錨) がありません。 錨甲板には正面の錨鎖もちゃんとモールドされているのですが ・・・・ ? 目立つところだけに、これはちょっと痛いミスと言えるでしょう。

また、艦尾にある副錨も表現されていません。 それでなくともダイキャストという素材に拘ったために船体のモールドが甘く、ノッペリとした見かけになりがちですので、こういった特徴的な艤装品については省略せずにキチンと表現するべき、と私なら思います。

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(2) 艦首艦底部は丁度キールが張り出したような特異な形状になっていますが、これが十分に表現されていません。 このことを知らない人が見ると、傷が着いている製造不良品かと思ってしまうかもしれません。 本シリーズでラインナップされている他の艦船にはない、本級の特徴的なところの一つですので、是非とももっとしっかりと明確に表現すべきであったと思います。

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(3) 船体の下部中央部のビルジ・キールとキール (竜骨) の間に、複キール状の構造がありますがこれが表現されていません。

1/1100モデルでは少々オーバー・スケールになるかもしれませんが、本級の特徴的なところの一つであり、折角のフルハル・モデルなのですから、これもキチンと表現すべきであったと思います。

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(4) 前部艦橋構造物について

前面中段にある探照燈の位置が何故か少々高すぎますし、また窓枠表現のための部品分割により隙間が出来てしまっていますので、上部艦橋の平面で覆われて角張った印象的な形状が損なわれてしまっています。 また、司令塔レベル及びその上の甲板のレイアウトなども少々違っています。

これらのため艦橋構造物全体の印象がかなり異なって見えます。 多分にデフォルメの仕方のためもあるのでしょうが、それにしても艦の顔の部分であるだけにもう少し気を使ってデザインする必要があるでしょう。

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(5) 塗装について

カッターなどはともかくとして、内火艇類の上甲板以上が明るい灰色一色に塗られています。 これらは目立つだけにもっと配慮をする必要があるでしょう。 コストに響くことはわかりますが、これの手を抜くと “艦のことをを知らない” と指摘される元にもなりますので。

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全体の見栄えは悪くないだけに、その他機銃を始め、各部の塗装及び塗り分けについても、更に改善の余地があります。 

また、おまみ氏の指摘にもあるように、前部の錨甲板が黒色に塗られていますが、これは1939年の設定として何か根拠があることなのでしょうか。 少なくとも残された写真を見る限りでは濃い灰色であると思われますが ・・・・ ?

(6) 艦載機について

どうも本シリーズでは初期のものからいまだに艦載機については “おまけ” 的な扱いのように見えます。

今回の「ロワール130」という特異な形状の飛行艇も、その造形はもちろんですが、プラ部品の地肌のままの無塗装で、しかも国籍マークが白丸というのは全くいただけません。 私の手元にあるサンプルがたまたまだったのかと思いましたが、おまみ氏のものも同じようですので ・・・・

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80巻まで完結するためには、これらのところ “も” もう少し配慮をしていく必要がある事項でしょう。 その他採り上げ出すとキリがありませんので、今回はこの辺にします。


最後に一つ。 おまみ氏のページでも言及があったプロペラの翼数のことですが、これは4枚ではなく、公式図にあるとおりモデルの3枚で正解です。

ただし、折角翼数は正しく出来ているのに、翼のピッチ (捻り) の向きが間違ってバラバラに取り付けられてしまっています。 なぜこれをチェックしないのかと (^_^;


(9月3日追記) : 後部マストの上部が欠落しているという所見が出ている向きがありますが、ちゃんと表現されています。 ただまあ、若干低い (短い) と言えばそうですが ・・・・ 全体的な見栄えとしてはこれで大きな問題はありませんし、それを言い出すと他に沢山出てきてキリがありませんので (^_^;

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2014年09月19日

オールド・セイラーの眼 (9)

◎ 第44巻 「鳳翔」

シリーズ第44巻は最初から空母として設計・建造され世界で最初に就役したことで知られる日本海軍の空母 「鳳翔」 で、1944年の設定とされています。

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例によってモデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価は次のURLのとおりです。


本シリーズのこれまでの日本艦艇、特に各空母と比較するならば、良い部類に入るでしょうし、1/1100スケールのフルハル・モデルとしての全体的な見栄えは決して悪くありません。

結局のところ、最も大きな問題点は1944年設定と言うところにあるように思います。

なぜ1944年なんでしょうか? この年のものは写真も残されていませんし、史料的にも全くと言えるほどありません。 イーグルモス社として、あるいは担当のデザイナーとして、モデル化するに足る新しい史料が手に入ったと言うことなのでしょうか?

そもそも、この 「鳳翔」 をモデル化するならば、その世界初の正規空母として就役した1922年、あるいはこの「鳳翔」にとって最も華々しい時代であった上海事変や支那事変当時である方が適当であったと言えます。 そしてこれらの時代の方が、余程写真や史料が豊富です。

あるいは、飛行甲板拡張後のこのモデルの状態とするならば、航行可能な唯一の空母として残った終戦時であるべきであったと思います。

最も疑問とするところは、その飛行甲板改造 (延長拡大) です。 この状態への改造は1944年末から45年初め頃とされ、具体的にいつであったのかは明確ではありません。 したがって、1944年設定とする根拠は不充分です。

また、飛行甲板に木甲板モールドがありませんので、おそらくラテックス仕様を表現したものと思われますが、とするとその状態ならば終戦直後の写真にみられるように迷彩塗装がなされていたと考えられ、少なくともこのモデルのような明るい灰色では無かったはずです。

しかも飛行甲板上のマーキングの根拠は何でしょう? 1944年の改装後にこれであったという根拠があるのでしょうか?

この点からするならば非常に “不思議な” モデルとなっています。 史料が残されていませんので、これをイーグルモス社、あるいは担当デザイナーの “解釈” と言うならば、それはそれで良いのかもしれませんが、モデラーさん達や艦艇研究家から受け入れられるかどうかは ・・・・ ?

元モデル・アドバイザーの一人として言わせて貰うならば、無難、かつより適切な年代設定のモデルにするべきであったと考えます。


さて、それはさておいてモデルの出来の細部についていくつか。

(1) おまみ氏の所見にもあるように、飛行甲板前後部の裏には桁も表現され、また上甲板の木甲板もモールドと塗装がなされています。 また、艦橋も窓枠が “それらしく” 施されています。 これらの見えにくいところにもキチンと手を入れたことは評価してよいでしょう。

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(2) 飛行甲板前後部の支柱は、かなりデフォルメされています。 実際にはもっと異なった形をしていますが、このスケールでの強度を確保するためと考えるならば、まあある程度はやむを得ないところかと。

ただし、前部の支柱の工作、取付が不良のため、飛行甲板前部が反り揚がってしまっています。 スキージャンプではないのですから、これはないでしょう (^_^; これはちょっと痛いところかと。 もっとも、私の手元にあるサンプルだけの問題かもしれませんが。

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(3) 飛行甲板は改装にあわせて “おそらく” 不燃対策として木甲板をラテックスに換えたとした表現としたものと思われます。 まあそれはそれで一つの解釈としてよいのでしょうが ・・・・

何故前後エレベーターに 「×」 の凹モールドが? また、伸縮接手や遮風柵、その他のモールドはありませんので、一層ノッペリとしてしてまっています。 そして、先にも書きましたように甲板のマーキングはこれで正しいのかどうか?

(4) 見かけ上の特徴である、飛行甲板中部両舷にある大きな転落防止柵がありません。 これは何らかの方法でキチンと表現するべきだったでしょう。

(5) メインマストが飛行甲板に立っているように見えます。 艦橋脇のウィング (実際の起倒部はもう一つ下) にありますが、何故かこのウィングが飛行甲板とほぼ面一になっているためです。

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艦橋は表現されているのですから、少なくともこのレベルに合わせなければなりません。 このため、この付近の印象 (両舷とも) が大きく異なってしまっています。

(6) 飛行甲板中部両舷にある通信マスト及び後部の着艦標識が、全て同じ形の扁平な細長い板になっています。 これはそれぞれキチンと表現するべきであったでしょう。

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(7) 船体の主錨、あるいは舷外通路もシリーズとしては良くできていると言えるでしょう。 ただし、それ以外については他のモデルと変わらずノッペリしています。

(8) 船体で最大の欠点はビルジキールが無いことです。 これはちょっと痛い。 何となく筋が入っているようにも見えますので、製造上のミスでしょうか? また、舵の形状が違っています。

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(9) これは私のサンブルだけの問題かもしれませんが、1番煙突が曲がって取り付けられています。 まさか製品全てがこの “仕様” ではないですよね?

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(10) 舷側の短艇類が全て舷外に張り出して宙に浮いたような中途半端な状態になっています。 キチンと格納状態にするか、張り出した場合にはそれなりのモールドが必要でしょう。

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(11) 本シリーズではどうも艦載機はまあ “おまけ” と考えているようで、本モデルでもご多分に漏れず、です (^_^;


他にも指摘することはまだまだ沢山ありますが、キリがありませんので今回はこの辺で。


結論として、やはり細部がどうのこうのという前に、1944年という年代設定と、それに伴う諸々の問題が大きい、ということに尽きるかと思います。


本日、次の第45巻 「薩摩」 が届きました。 う〜ん (^_^;

2014年10月04日

オールド・セイラーの眼 (10)

◎ 第45巻 「薩摩」

シリーズ第45巻は、旧海軍が初めて自前で設計・建造した戦艦の 「薩摩」 で、1910年の就役時の姿とされています。

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もちろん独自の設計・建造とは言っても、船体・機関・兵装の全てにわたり、英国を主とする諸外国の技術に全面的に倣ったもので、早い話しが “見よう見まね” で作ったものです。

そして皆さんご存じのように、就役時には既に英国の 「ドレッドノート」 の後塵を拝しており、戦艦の発達史上は 「準ド級艦」 に分類され、就役と同時に二流扱いされてしまいました。

もちろん、就役当時の戦術状況からするならば、決してド級艦に劣るわけではないのですが ・・・・ お話しし始めると長くなりますので、これはまた別の機会ということに。

何れにしても、工業らしい工業も無かった日本が、明治維新後僅か40年にして列強海軍に並ぶ自前の戦艦を建造し得たことは賞賛に値することです。

そして、残念ながら今日においては、日本艦の中でも非常にマイナーな存在とされてしまっている 「薩摩」 を採り上げたことは、本シリーズの面目躍如たるものがあり、かつスケール・モデルとしては、僅かに工房飛龍さんのレジンキットがあるだけの現状からすると、稀少価値のあるものと言えるでしょう。

それだけに、今回のモデルは折角の機会であるにも関わらず、ちょっと ・・・・

例によって、モデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価は次のURLのとおりです。


全体としての出来についてなかなか厳しい評価ですが、私も全く同意見です。 シリーズ第45巻目としてはまさに “う〜ん” です。


考証、デザイン、製造の面について、その主なところを以下に列挙してみます。

1.船体形状が全体的にかなり違います。 不充分ながらも公式図も残されていますし、綺麗な写真もありますので、キチンと考証する必要があったでしょう。 これは大きなミスです。

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2.舷側両舷の防雷網のブームもネットラックもありません。 当時の大型艦の外観上の大きな特徴であり、かつ 「薩摩」 は就役以降これが無かった時期はありません。

如何に船体がダイキャスト製のために細かな工作が難しいとはいえ、あるいは如何に1/1100のスケールであるとはいえ、省略の理由には成り得ません。

少しでも当時の艦船についての知識があるなら絶対に外せないところですので、別部品にするなりの何らかの表現の方法を考える必要があったはずです。 これは痛いです。

3.12インチ主砲塔及び一般に中間砲といわれる10インチ砲塔の形状が違います。 それに主砲塔の側面にあるラッタルが凹になっています。

また、10インチ砲塔はサイズが小さすぎますし、それに平面上の位置も少々ずれています。

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4.前後部艦橋を含む上構の形状もなかり異なります。 これはスケール上のデフォルメによるとは言い難いので、考証ミスと言えるでしょう。 これによって、艦中央部の印象がかなり違ったものになっています。

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特に中間砲塔間の上部がボート・デッキとなている構造物 (甲板室) がありません。 したがって、艦載艇がおかしな格納状態になっています。 また、中間砲塔下部のバーベット部の形状も全く違います。

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( 大正4年撮影とされる 「薩摩」 左舷中部 )

ただし、おまみ氏の指摘にあった主砲塔上の対水雷艇用の子砲は就役時にはまだありませんでしたので、モデルの状態で正解です。

5.上甲板の木甲板のモールドがありません。 既刊のモデルにはありますので、この巻まできてなぜ表現方法が統一されていないのでしょう? 広い前後の甲板にこのモールドがあるだけでも随分と引き締まって見えるのですが・・・・

6.組立はシリーズ初期のものに比べればかなり良くなりましたが、煙突やマストの傾きはありますし、加えて私のサンプルでは前部マストが大きく曲がっています。

これは輸送中に変形したものとは考えられませんので、相変わらず製造時及びパッケージ時のチェックが不充分なまま出荷されているのでしょう。

(その他細部の指摘を言い始めるとキリが無くなりますので、これらは全て省略いたします。)

以上を纏めると、塗装も含めて、はやりシリーズ初期からの様々な問題点がいまだに十分改善されていないと言えます。


そしてなりよりも、何と言っても最大の問題点が考証とモデル・デザインです。

以前に何度か、巻が進むに連れて資料の少ない艦が予定されているので、この両者をしっかりとやらなければダメですよ、と言ってきました。

まさに本モデルなどはその典型でしょう。 なぜ十分な考証と、それに基づくモデル・デザインをやらないのでしょう?

本シリーズは全80巻通して販売価格は同一です。 艦の大小や艦種形状の違いに関わらず、そして資料の多い少ないに関わらず、です。

流通上の問題などの制約ももちろんあるのでしょうが、そこにはこの開発・製造上要する手間暇の多い少ないも、80隻分全て合わせての等分均一価格の意味もあるとのではと思います。

それならば、何故資料が少なくて難しい艦ほど十分な考証とデザインに力を入れないのでしょうか?

現状では、1隻当たりの手間暇を同じにするため、必然的に資料の多い艦は比較的出来がよく、逆に資料の少ない艦は同じ手間暇分しかやっていないのでそれなりの出来、としか見えません。

本モデルなどは、おそらく The-blueprint.com のイラストのようなものを下敷きにしたのではないかと考えられるレベルのものです。

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( 同サイトより )

もちろん、本シリーズの基本コンセプトからするならば、全体的な見栄えという点では “それなりの” ものになってきたと言えるでしょう。

しかしながら、シリーズの折り返し点を過ぎた第46巻でこれでは ・・・・ と思うのは私だけでしょうか?

このままの状況で最終の第80巻まで続けられる (=売れる) のか、元アドバイザーの一人としては少々不安になります。

イーグルモス社さん、この辺で改めて開発・製造体制の見直しをして、購読者の方々に納得してもらえるスケール・モデルにしませんか?

2014年10月11日

オールド・セイラーの眼 (11)


◎ 第46巻 「プリンス・オブ・ウェールズ」

シリーズ第46巻は、英国戦艦3隻目の 「プリンス・オブ・ウェールズ」 (以下単に 「PoW」 と略します) で、旧海軍の陸攻部隊によりマレー沖海戦で撃沈された1941年の設定とされています。

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数ある英国戦艦の中から、 「キング・ジョージ5世」 級5隻中の1隻であるこの 「PoW」 が選択されたのは、もちろん本シリーズが日本における発売であることを考慮したものであることは明らかでしょう。

そして、これまで本シリーズでは外国艦の出来は良かったので、この 「PoW」 においてもそれを期待された方々が多いのではないでしょうか。

例によって、モデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価は次のURLのとおりです。


なかなか高い評価をされています。 私としても、全体の見栄えとしては賛同できますが、やはり細部を観ると色々とあるようです。

それは前回記事を始めとしてこれまで指摘してきた本シリーズの開発・製造体制の基本的な欠点から抜け出せないからと言えるでしょう。


1.全体としての形状については良い線を行っていると思います。 英国艦であるだけに資料も豊富であり、かつ一般出版物の中には1/500スケールの図面集も出ており、そのままスケール・ダウンして利用できるものです。 デザイナーは楽だったろうな〜、と思います。

それだけに、やはり考証やデザインに十分な時間をかけていないがためと考えられるところが多々あります。

その代表的なところが舷側の装甲板です。 ダイキャスト製であるために上端部のエッジがシャープでないのはそうかなと思いますが、前後端のエッジが表現されていません。

046_PoW_model_03a.jpg  046_PoW_model_03b.jpg

PoW_photo_05_s.jpg
( 写真は5番艦 「ハウ」 )

046_PoW_draw_01b.jpg  046_PoW_draw_01a.jpg

これは本級の特徴の一つでもあり、またノッペリとした船体表現であるが故にこれがあると無いとではかなり印象が異なってきます。 ちょっと残念なところ。

2.また、艦首側面の水線下の形状が 「?」 です。

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ここは元々はストレートであることは進水時の写真からも明らかです。

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このクラスは後からパラベーン曳航用のスケグが追加されたとの説もあり、これを表した図面などもあることはあります。 これは後に消磁電纜が装備された 「キング・ジョージ5世」 ではハッキリしています。

ただし「PoW」では、これを示す史料はありませんし、また戦後の潜水調査によるイラストでもこのスケグの存在は描かれておりませんので、私としては無かったと考えています。

PoW_illust_01.jpg

そして、本モデルではこのスケグが装着されたとする説を採用したものと考えられますが (というより、入手し得た資料がこれだったのか?)、例えそれだとしても、残念ながら本モデルような形状ではありません。

3.デフォルメ表現や部品分割の方法などには、全体的にちょっと違和感を感じるところがかなりあります。

艦橋構造物などは、本シリーズの特徴 (もちろん悪い方で) の一つとして、相変わらずの部品接合部の段差や隙間などのため、一層この違和感が際立ってしまっています。

その他に、両舷の特徴ある両用砲、水上機用のデリック・クレーン、艦橋両脇上甲板上のボート・ダビット、艦尾上甲板の甲板室状になってしまっている構造物、などなど、もう少しデザインに気を使ったら、と思うのですが ・・・・

4.迷彩塗装はこれまでと同じで船体のみですが、今回はこれに加えて上部構造物には部品毎の色分けがなされ、いわゆる擬似的な表現となっています。

ただ、これは好みの別れるところで、異論も多いことでしょうね。 いずれにしても、「PoW」 のあるべき迷彩塗装ではない (=コスト的に無理なのか?) ですが (^_^;

また船体の迷彩パターンも、残された写真からすると少々異なります。 特に船体後半部が顕著です。

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その他については省略しますが、以上のように多々問題点はあるにしても、全体的な見栄えは本シリーズ中では最も良いモデルの一つであることは間違いないでしょう。 これは評価できます。

それだけに、如何に英国艦であり、また資料が豊富であるとは言え、一連の外国艦並かそれ以上のレベルの見栄えのモデルが出来るならば、何故日本艦ではこの質が出せないのか、と少々残念でなりません。

さて、次の第47巻は 「愛宕」 ですが ・・・・