2015年05月06日

オールド・セイラーの眼 (26)


◎ 第61巻 「ボロジノ」

シリーズ第61巻は、日本海海戦におけるロシア側の主役 「ボロジノ」 型のネームシップである 「ボロジノ」 で、その1905年の設定とされています。

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例によってモデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価記事は次のURLでUPされております。


“ トータル的に良く出来ている部類 ” “ 希少価値も上乗せしてこの模型はなかなか良いのでは ” と評価されていますが、これには私も賛同いたします。

本シリーズでは外国艦は割と出来がよいというのが通例になってしまっていますが、この 「ボロジノ」 も例外ではなかったようです。

1/1100スケールのフルハル・モデルとしては、見栄えは十分で、全体としての出来はシリーズ中で上の部類と言えるでしょう。

ただし、デザインの元となったのがどうも市販の1/350のキットのようで、長所短所ともにそのままです。

この 「ボロジノ」 型、公式図が残されておりますが、今回のモデル化にあたってそこまでは考証の手間暇をかけてはいないようですね。

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で、その最大の点が、船体後部船底部の側面形状 (構造) が大きく違うことです。 そしてこれに関連して、艦尾や舵などの形状が異なったものとなってしまっています。

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その他、目立つ点ではやはり木甲板のモールドでしょう。 上甲板の木甲板は、日本を始めとする列国のように長い板を半分ずつずらしていく張り方ではなく、長さの短いものを綺麗に揃え、その前後に横方向の長いもので区分していく方式です。

「ボロジノ」 ではありませんが、例えばこのようになっています。

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このことは 「ボロジノ」 でも公式図でキチンと示されております。

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ただまあ1/1100スケールで、これを正しく表現するのかということになりますと ・・・・ 木目表現がされている、というだけでも許容範囲と言えば言えるかもしれませんが (^_^;

次に目立つ点は、艦首の形状がちょっと不良で、もう少しフレアーがついて拡がった特徴が活かせていません。

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加えて、私的には艦首部のアンカー・ダビットを表現して欲しかったですね。 独特な形状のものですから、もしあれば目立ちますし。 そしておまみ氏の指摘にもあるように、艦首の紋章はそれらしいものが欲しかったところです。


各部の塗装などは、ネットでも公開されている1/350キットの作例そのままのようで ・・・・

ただし、当時の船体外舷などは黒色とされていますが、このモデルでは何故か濃紺になっています。 この根拠は何でしょうか、イーグルモス社さん?


その他、細かいところでは沢山ありますが省略させていただきます。 まあ、1/1100スケールということを考えるならば、許容範囲と言えばそうなのかもしれませんし ・・・・


最後に、これは私のサンプルがたまたま外れだったのかもしれませんが、冒頭写真のように前後のマストが大きく曲がっていたり、煙突が傾いていたりしたまま出荷されています。

今回は全体としての出来はよかった反面、製品の完成時とパック時の検査が不充分であったと考えられ、この辺はいまだに改善が見られない点であり、残念なところです。


う〜ん、こうやって 「三笠」 と並べて飾ってみる、という本シリーズのコンセプトとしては決して悪くはなんですが ・・・・

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ただし 「三笠」 は本シリーズ第8巻というごく初期のもので、私がモデル・アドバイザーの一人として参画した時には既に手遅れであったのですが、今更ながら出来はもう少し何とかならなかったものかとつくづく残念でなりません (^_^;


さて、今回はタイミングよくおまみ氏とコラボすることができました (^_^)

それにしても、おまみ氏は毎回キッチリと手を入れたものを作られますね。 よほどスケールモデルに愛着を持っておられるのですね、感心します。

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「タンブルホーム」 について

当時のフランス艦、そしてそれを手本にしたロシア艦の最大の特徴の一つが何と言っても船体の顕著なタンブルホームでしょう。

今回の 「ボロジノ」 もその代表の一つなのですが、このフルハル・モデルを手にされると、何となくあまりそれらしく見えないかもしれません。 そしてこれについては、いまだに誤解されている方々も中にはおられるようです。

タンブルホームとは、船体水線付近がバルジ、あるいはビヤ樽のように膨らんだ形状のことではありません。

下図でお判りいただけるように、船底から水線付近までの断面は通常の艦船と変わりはありません。 そしてそこから上の船体が大きく内側に絞られていることが特徴なのです。

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したがって、水線上の船体が小さいので、艦の安定性ということでは確かに有利な船型といえます。

ただし、船体の水線上の容積と、甲板の面積が小さくなりますので、結果的に上へ上へと積み上げる傾向が出てきます。 このため安定性を損ねる結果に繋がります。

当時のロシア艦はまさにその典型で、設計及び建造の拙さもあって、動揺性能及び耐航性が極めて不充分で、かつ船体損傷時の復元性能が劣った艦となっています。

なお、このタンブルホームについては、次の記事でご紹介しておりますので、ご参照下さい。

「船舶工学の基礎 −タンブル・ホームと復元力」 (1)〜(4) :

2015年04月21日

オールド・セイラーの眼 (25)


◎ 第60巻 「蒼龍」

シリーズ第60巻は、日本海軍が開戦時世界に誇った機動部隊6隻の空母中の1隻であり、優秀な性能を発揮した中型空母の 「蒼龍」 で、1938年 (昭和13年) の設定とされています。

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そして今回の 「蒼龍」 にて6隻中の5隻が揃うことになり、残るは第63巻予定の 「瑞鶴」 1隻となりましたので、期待されていた方もおられると思います。

それからすると、例によって “何故、1938年の設定?” と言うこともあるのですが、それ以前の問題として ・・・・


例によってモデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価記事は次のURLのとおりです。


総合的には “僚艦飛龍がそこそこ良く出来ていただけに残念” というものですが、細部については比較的良い評価をされているように見えます。

しかしながら、私の所見としては、残念ながら全くの期待外れと言わざるを得ませんでした。

私がモデル・アドバイザーの一人であった本シリーズの初期では、この 「蒼龍」 と第35巻の 「飛龍」 とはスケジュールの後先が逆の予定でした。

そこでイーグルモス社さんに、図面や写真などの史料が揃っている 「飛龍」 を先とし、「蒼龍」 は後の巻にするべきと進言して、これが入れられたわけです。


その意図するところは言わずもがなで、史料のほとんど無い 「蒼龍」 については、その間に考証とモデル・デザインにじっくりと時間をかけるべき、というものです。

ところが、このところ度々書いてきましたように、デザイナーさんが考証とモデル・デザインにかける手間暇は、史料の多い艦でも少ない艦でも同じでは? ということが明らかになってきたわけです。

・・・・ で今回のこのモデル、“遂にやってしまったか” と危惧していたことが現実に。 一言で言って 「蒼龍」 とは似て非なるものです。

そもそも船体寸法が合っていません。 吃水線における最大幅は21.3mですから、1/1100で約19.4ミリになりますが、なんとこの部分で既に4ミリ近くも足りません。

飛行甲板の形状はほぼ合っていますので、この船体幅が足りない分は、結局デザイン的にも辻褄が合わせられなかったのでしょう、飛行甲板が異常に船体から張り出す形に纏められています。

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このためもあり、また史料が少ないことも禍して、舷側の構造・形状が全く違ったものになっています。

このことは、次の様に右舷側と左舷側それぞれを実艦の写真と比較していただければ、よくお判りいただけるでしょう。

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加えて、艦尾側面や舵の形状も、船の顔である艦橋構造物の形状なども、全く異なった別物になっています。

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これらに比べれば、飛行甲板上のマーキング等の誤り、飛行甲板に載っている短艇、高角砲や機銃は今更 “何これ” という形状、などなどのことは、小さい小さい (^_^;


ご存じの通り、「蒼龍」 は公式図などは残されておりませんし、写真も全体が判るものはごく限られております。

であるならば、なぜ考証とモデル・デザインに十分な時間をかけなかったのでしょう?

しかも船体の寸法を誤るなど ・・・・ これなどはモデル・デザインの途中ですぐにおかしいと気が付くはずのものですが ・・・・ ?


結局のところ、組立と塗装はそれなりに良くなっていますが、肝心要の考証とモデル・デザインについては、本シリーズ中で最も悪いものの一つとなっています。 はっきり申し上げて、これではとても “スケールモデル” と言えるものではありません。

イーグルモス社さん、しっかりして下さい。 このようなことではダメです。

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私は本シリーズのモデル・アドバイザーの一人として初期の巻にはある程度関与しましたが、「ブック」 と言われる解説書には全くノータッチでしたので、本連載でもこれまで余程でない限り極力触れないようにしてきました。

しかしながら、この解説書の内容については、如何に初心者向けとは言いながら “これはちょっと” と思われるところがかなりあることは申し上げました。

そしてこの第60巻について、本来の 「蒼龍」 とは直接の関係はない記事ですが、ちょっと見逃せませんので一言。

それは 「柱島錨地」 についてのコラム (「柱島泊地」 と言っています) です。

なんと、この写真 ↓ がその柱島と説明されています。 おいおいちょっと待ってよ、これって一体どこの島? です (^_^;

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おそらくこの記事を書いた人は、柱島も柱島錨地もどこのことかさえ知らなかったのではないでしょうか。

(柱島錨地については、本家サイトの次の記事をご参照下さい。)


そしてこの柱島錨地についての解説もちょっと、というか全くの的外れ。

ここは艦隊錨地、即ち “作業地” の一つとして使われていたところです。 その作業地という意味が理解出来ていないので、

  海軍基地と造船所を補充する形で
  複雑なドック施設を必要としない船が多数停泊出来た

など訳の判らない文章になるのでしょう。 ちょっと恥ずかしいコラムですね。

2015年04月13日

オールド・セイラーの眼 (24)


◎ 第59巻 「川内」

シリーズ第59巻は、旧海軍の軽巡洋艦で5500トン型の最後を飾る 「川内」 型3隻のネームシップ 「川内」 です。 モデルは後甲板にカタパルトが装備される直前の1933年の設定とされています。

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旧海軍の水雷戦隊旗艦用の3200トン型及び5500トン型はこれで第48巻の 「龍田」 (1940年)、「長良」 (1936年)、そして今回の 「川内」 (1933年) の3タイプが出ましたので、あとは第68巻で予定されている 「球磨」 が出れば一応4タイプ全てが揃うことになります。

「球磨」 のモデル設定が何時の時期になるのか判りませんが、既刊のものはいずれも戦前の姿で、並べてみると各艦型の違いが判ってこれはこれでコレクションとして良いと思います。

ただし、購読者の中には戦時中の 「大井」 や 「北上」 などの姿を期待した向きがあるかもしれませんが ・・・・

例によってモデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価記事は次のURLのとおりです。


総合的には “ギリ及第点というところ” というものですが、私としては全体的な見栄えとしては日本艦の中ではもう少し高い評価を与えても良いかもしれません。

ただし、おまみ氏の指摘にもあるように、なぜ1933年の設定なんでしょうか? 翌年には改装工事が行われていますし、またこの年に特筆すべき出来事があったわけではありません。

「川内」 を含む5500トン型は戦前から長く国民に親しまれてきて名が知れ渡っているにもかかわらず、細部の考証となると公式図など史料の少ないものの一つで、写真も限られています。

それだけに改装前の時期であっても、就役後各部に手が入れられてきたことを考えるなら、何か特別な理由がない限りモデル化としては竣工時が最も無難であったのですが ・・・・?

細部の出来についてはおまみ氏の記事のとおりですのでそちらをご参照いただくことにして、艦橋回りはあまり感心できる出来とは言いがたいものがあるでしょう。

特に、例によって部品分割による中段の隙間、前部への傾斜のない滑走台、航海艦橋の天幕、右側面の搭載機用デリックブームの欠落、などなどは見かけを大きく損ねています。 そして前部マスト中段の各フラットの形状の誤りなどは大きな考証ミスと言えるでしょう。

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( 左 : 昭和6年、右 : 大正13年の 「川内」 艦橋付近 )

その他、敢えて言うとすれば、5番砲両脇の甲板形状が少し違う点と、艦尾の大袈裟すぎる機雷敷設軌条でしょうか。

いつものことですが、細部の考証とモデル・デザインには一段の配慮が必要と思います。

そして折角の特徴ある滑走台ですから、おまみ氏の指摘にあるように水偵は是非とも載せて欲しかったところですね。

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( 昭和7年の「由良」の例 )


う〜ん、それにしてもこうして3タイプを並べて飾る分には、コンセプトは決して悪くはないのですがねぇ ・・・・

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2015年03月24日

オールド・セイラーの眼 (23)


◎ 第58巻 「デアフリンガー」

シリーズ第58巻は、ドイツ巡洋戦艦 「デアフリンガー」 型3隻のネーム・シップ 「デアフリンガー」 で1916年の設定とされています。

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1916年と言えば、まさに第1次世界大戦における最大の海戦であったジュトランド沖海戦において英巡洋戦艦 「クイーン・メリー」 「インヴィンシブル」 撃沈などの戦果を挙げつつ、自らも満身創痍の状態で帰投したことで知られています。 

これが本艦がシリーズの一つとして採り上げられた理由と思うのですが ・・・・

その反面、公式図面はもちろん、写真などの資料にしても限られており、スケールモデル化するには非常に難しいところがある一隻と言えます。

このため、モデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の次のURLの評価記事にあるとおり、


結果的に “目立つ箇所だけにこの考証間違いは痛い ・・・ 比較的良作の多い外国艦でここまでの凡ミスは珍しい” ということが出てくるものと考えます。

私としては、前回第57巻 「筑摩」 の評価として “シリーズ当初から少なくともこのレベルであれば”と書いたところですが、その直後にもかかわらず “う〜ん、これでは” と言わざるを得ません。

そもそもこの 「デアフリンガー」 を採り上げ、しかも1916年の設定とした理由からは、モデルはジュトランド沖海戦時の状態であるべきでしょう。 そしてそれはちょっと調べれば大きな間違いはしないはずのものです。

にもかかわらず、同海戦の損傷修理後の姿をモデル化し、かつ撤去されたネット・ブームはそのまま、という如何にも中途半端なものになっています。 一体このような姿は何に基づいたのでしょうか?

と言うよりこの連載で度々申し上げてきたように、要するに資料の多い少ないにかかわらず、モデルデザイナーが各モデルのデザインに費やす時間は同じ、ということなのでしょう。

即ち、公式図を始めとする資料の多い艦は手間暇がかからず比較的出来がよい、反対に資料の少ない艦は考証に十分な労力をかけていないので、したがってそれなりの出来でしかない、と言うことです。

まさにこの 「デアフリンガー」 はその典型と言えると思います。 シリーズはあと1/4残っていますが、本当にこの様なやり方で良いのでしょうか、イーグルモス社さん?


細部についてはおまみ氏の記事をご覧いただくことにして、いくつか補足を。

1.おまみ氏が指摘されている推進器翼の枚数ですが、スカパフローでの引き揚げ時の写真で、次のとおりです。

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2.これもおまみ氏が指摘されている前甲板の反り上がりが足りないというものですが ・・・・ これは適度に表現はされているのですが、黒色の水線塗装が間違っていて前部に行くほど高くなっておりますので、余計にそう見えるものと思います。

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3.これはどちらかなのか不明です。 艦首下端の形状 (赤丸内) は、魚雷発射管の位置を誤って表現したものなのか、それとも製造途中で落としたりして変形してしまったものなのか ・・・・ ?

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それにしても、艦首部下部の魚雷発射管 (緑丸内) が上手く表現されていませんし、船体前後の舷側発射管は表現されていません。

4.本シリーズの問題点として、いつも最初のデザイン段階から大きな隙間をとった部品分割がなされています。 そしていつも指摘しているように、それがそのまま部品組立不良の原因となっています。

この 「デアフリンガー」 の場合は船体全周にわたり舷側上縁から主甲板が大きく沈んでしまっています。 このため全体の見かけが全周にブルワークでもあるのかのようで、大きく外観を損ねています。

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5.これも部品分割とも関係しますが、舷側の副砲砲廓部だけを別部品にして嵌め込む形にしておりますので、副砲形状のデザイン不良もあって、この部分が大変奇異な見かけになっています。

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これを要するに、今回の 「デアフリンガー」 では、考証もモデルデ・ザインも不充分であり、これに本シリーズ共通のいつもの問題点が合わさって、残念ながら良い評価が与えられる出来とはとても言えません。


それにしても不思議なのは、何故このように資料が少ない艦を選んだのでしょうか? 第1次大戦前後の主力艦を選ぶならば、無理をせずとも公式図などが公表されている他の艦でも良かったように思います。

それとも、「ブック」 と称する解説書がメインであって、フルハルのスケールモデルは単なる “付録” なのでしょうか ・・・・?

イーグルモス社さんには、何とかもう少し頑張って欲しいところです。

2015年03月12日

オールド・セイラーの眼 (22)


◎ 第57巻 「筑摩」

シリーズ第57巻は、「利根」 型の2番艦の 「筑摩」 で1944年の設定とされています。

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「利根」 型3番艦の 「伊吹」 が建造途中で空母への改装工事に入ってしまったため旧海軍で最後に就役した重巡洋艦となったことはご承知のとおりです。

その反面スケールモデルとしては、就役が昭和14年であったため最終状態との差が少なく、また「利根」との外見上の違いもこのスケールとしてはほとんど問題にするほどではないため、モデル化のためのバリエーションとしては少ない艦といえます。

特に、公式図は 「利根」 のものが残されているものの 「筑摩」 はありませんので、電探や機銃の増備などで差を持たせるくらいしかありません。

以上のことから、普通に考えるなら、基本的には第24巻の 「利根」 のモデルをそのまま使い、後は多少の手直しをすれば良いはずですが ・・・・

例によってモデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価記事は次のURLのとおりです。


“ 利根はシリーズ中良作の部類でして、この筑摩はその細部が改善された物という具合で、利根と同等かそれ以上の良作 ”

というもので、確かに “見栄え” ということでは全く同意・賛同です。 とにかく、シリーズ当初からせめてこのレベルであれば、と思うのは私だけではないでしょう。

ただし、本シリーズ共通の問題点は相変わらずそのまま引きずっていることもまた確かです。

最も問題なのは、度々指摘してきていることですが、何故同型艦であるのに船体を始め全てを一からデザインし直さなければならないのか、という点です。 そしていつも通り装備品については全く共通性がなく、これもその都度のデザインです。

その一からデザインし直すことにより、細部の考証などが正しくなっているのかというと、相変わらずその様なことはほとんど見られません。

このような無駄な手間暇をかけるなら、その分を他のことに回せば、といつも思のですが ・・・・

具体的な点についてはおまみ氏の記事をご覧いただくとして、加えて次の2点も指摘されるべきでしょう。

1.主砲塔の形状、特に側面形が違う。 (この部品は 「利根」 と共通?)

2.高角砲の形状はシリーズ中では良好な出来であるが、またまたご丁寧に左舷側の2つが “左右” 反転した形状になっている。

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( 上が左舷のもの、下が右舷のもの )

特にこの高角砲は、何でこんな大ポカを繰り返すのか。 例え開発・デザイン担当者達に艦船の知識が無いにしても、それなりの専門家がチェックさえすれば (させれば) 間違えるわけの無いことなのですが ・・・・ ?


その他、航空作業甲板のリノリュウムとその色、前部錨甲板の意味不明なモールドなどなどを始めとして、細部では言いたいところが沢山ありますが ・・・・ まあ、全体的な見栄えは日本艦としてシリーズ中で最も良い出来の一つということで ・・・・ あとは省略します (^_^)

で、第24巻の 「利根」 と並べてみますと、こうして飾って眺める限りにおいては、決して悪くはありませんし、これがこの企画のウリの一つと言えます。

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2015年02月24日

オールド・セイラーの眼 (21)


◎ 第56巻 「ベアルン」

シリーズ第56巻は、日本ではほとんど知られていない艦艇の一つ、第2次大戦期まで仏海軍が建造した唯一の空母であった 「ベアルン」 で、1939年の設定となっています。

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「ベアルン」 は就役以来、外見上は大きな改装らしい改装はほとんどありませんで、最も目立つと点と言えば、就役直後に前部飛行甲板に下がり傾斜がつけられたことと、1935年に前部飛行甲板下に区画が増設されていることでしょうか。

後は大戦中の機銃の増設や、航空機運搬艦としての艤装などくらい、それに迷彩塗装です。 それくらいモデル化のためのバリエーションとしては少ないですね。

確かに1939年は、「ベアルン」 にとっての唯一の戦歴とも言える 「アドミラル・グラフ・シュペー」 追撃戦参加の年ではありますが、その理由でモデルの年代設定を決めたのか ・・・・ ?

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( モデル設定時の姿の 「ベアルン」 )

私なら、詳細な公式図も写真もあり、かつ 「ベアルン」 の建造意義を示す最も代表的な姿である1927年を選びますね。


例によってモデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価記事は次のURLのとおりです。


“考証的に問題なければ 「よくできました」 を差し上げたい” と極めて高い評価です。

確かに、全体的な見栄えとしては良好で、本シリーズとしては最も良い部類の一つに入るでしょう。

加えて水線下の “真っ赤” な色といい、飛行甲板両舷の甲板員待機所などの赤錆色といい、これらの塗装によって派手さが目立ちますね (^_^)


で、その考証ですが、これについては 「ベアルン」 は1927年時点の詳細な公式図面集が公開されていますし、写真もそれなりにありますので、これらに基づけばこのスケール的には問題の出ようがありません。

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おそらくデザイナーさんもこの図面集に基づいたと思われ、特に大きなミスは無いようです。 (実は1個所あるのですが、ほとんど見えないところですので (^_^; )


むしろ指摘すべき点はデフォルメも含めたモデル・デザインの方で、その主要点は次のものです。

1.初めてダイキャスト船体に外板継ぎ目が表現されていますが、あまりにも大袈裟すぎます。 スケールを考えるなら、無い方が良いでしょう。

特に水線下のえぐれた様な凹ラインは “極めて奇異” に見えます。

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2.部品分割を含め、全体的に繊細さがなく、大雑把な造り。 特にアイランドは例によって本シリーズの特徴である問題の多い部品分割法と製造・組立によって、印象がかなり異なったものとなっています。

前面の上下2段の艦橋が適切に表現されていないなどは残念なところ。

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3.飛行甲板のマーキングまで凸モールド表現になっている。

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4.デザイナーの遊び心なのかもしれませんが、前部昇降機が上昇状態なのはまあ良しとします。

が、しかしその反面、中部及び後部昇降機の飛行甲板が両開きとなり格納庫甲板部がせり上がってくるという、世界の空母の中でもこの 「ベアルン」 の最も特徴的な個所が表現されていないのは片手落ちと言えます。 むしろこちらの方が優先度ははるかに高いでしょう。

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などなどで、その他度々書いてきた本シリーズ共通の問題点は省略します。 まあ、上記のものは、好みの問題と言えばそう言えるかもしれませんが。

あっ、艦載機についてはいつも通り “おまけ” とお考えいただければ ・・・・ (^_^;


もちろん、「ベアルン」 は日本で気軽に入手できる適当なモデルが無いだけに、本シリーズの一つとして貴重な選択であることは確かです。

そして、シリーズの他の名の知れた艦艇と並べて飾ると、更にその価値が増すでしょう。 本シリーズ企画の意義の一つが良く表れています。 これは評価してもよいでしょう。


ふぅ〜、やっと今回は何とかおまみ氏とのコラボに追いつきました (^_^)

2015年02月19日

オールド・セイラーの眼 (20)

「世界の軍艦コレクション」 のレビューの遅れを取り戻すべく、一昨日に続いて最新の第55巻です。


◎ 第55巻 「夕張」

シリーズ第55巻は、平賀譲の傑作の一つであり、艦艇設計における一つの世界的な技術革新となった “偉大な試作艦” 軽巡洋艦 「夕張」 で、1944年の最終時の設定となっています。

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例によってモデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価記事は次のURLのとおりです。


全体としての見栄えは悪くはない。 これは私も全く同感です。 したがって、1/1100スケールで統一された各種艦艇のフルハル・モデルを初心者の方々が手軽な価格で揃えて飾る、という本シリーズの基本コンセプトからするならば、決して外れているわけではありません。

ただし、毎回書いておりますように、本シリーズにおける考証及びモデル・デザイン上の基本的な問題点は、この 「夕張」 でも相変わらずです。

しかも、何故1944年なのでしょう? 先の第54巻 「山城」 では、年代設定の一つとして最終状態の選択も十分あり得ることをお話しししましたが、この 「夕張」 においては大いに疑問とするところです。

まずは、十分な史料も写真も残されていません。 研究家による考証史料も大いに推定が含まれており、モデル化するには十分ではありません。

そしてそもそもの 「夕張」 の存在価値からするならば、当然竣工時を選択するべきであった、と私は思うのですが ・・・・ ?


で、ここでハタと気が付きました。 もしかしてこの 「夕張」 はこの本にある1944年状態の1/700及び1/100の全体図及び各部図面を元にそのままモデル化したのではないか、と。

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全体はもちろん、主砲塔や魚雷発射管を始めとする各部の形状は、細部に至るまでほぼそのままです。 艦橋両舷にある、まるで “ヒゲ” のようなデリックや、前部マストなどは、まさにこれの図面どおりに表現すればこうなるという見本でしょう。

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世界的に有名であるにもかかわらず、元々が公式図を始めとする史料の少ない艦ですので、細部考証の手間暇を省くために英国においても手に入りやすい当該本をそのまま利用したことは肯けます。

まあ、それはそれで “あり” なのかもしれませんが ・・・・

モデル・デザイン上の細部はおまみ氏の記事に譲るとして ・・・・ それにしても、どうして推進器を4軸でデザインすると言う “大ポカ” をしてしまうのか。 上記の本でさえも、ちゃんと3軸になっているにもかかわらず、です。

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前回の第54巻 「山城」 に続いて、またまた基本的な事項でのミスです。 このシリーズの開発体制の問題点は連載当初ら指摘して来ておりますが、ここに来てその問題点が顕著に表れてきております。

イーグルモス社さん、しっかりして下さい。 まだシリーズは1/3が残っているのですから。


・・・・ で、ここまで書けば今回は十分と思いますので、これで終わりとし、後は全て省略いたします。


なお、おまみ氏によるディテール・アップが早々に次のURLで紹介されています。 問題の推進器を4軸から本来の3軸に直す工作はもちろんのこと、いつも通り各所に手を入れられており、見栄えは格段に向上しております。 是非ご覧下さい。



2015年02月17日

オールド・セイラーの眼 (19)

既に第55巻 「夕張」 が発売となっておりますが、バタバタとしていてすっかり遅くなり、またまた一巡遅れとなってしまいました m(_ _)m


◎ 第54巻 「山城」

シリーズ第54巻は、本コレクション・シリーズで太平洋戦争期の日本戦艦12隻中の最後となる 「山城」 で、1941年開戦時の設定となっています。

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例によってモデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価記事は次のURLのとおりです。


色々と問題点も指摘されておられますが、全体的な見かけとして良好であり、本シリーズのあり方も含めてちょっと総合評価に迷うところと、とされています。

まさにそのとおりと思います。 毎回書いておりますように、本シリーズの基本コンセプトからするならば、1/1100スケールのフルハル・モデルとして “全体的な見栄え” としては決して悪くはありません。

したがって、初心者の方々が気軽に購入してシリーズを並べて飾るにはそれなりのものと思います。

特に、第21巻として出された 「扶桑」 と並べてみると、その特異な艦容とそれぞれの特徴がスケール的にそれなりに表現されています。

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ただし、毎回指摘してきている本シリーズの欠点は相変わらずで、ちょっと手に持って眺めるとそれらが目についてしまうこともまた確かです。

う〜ん、ですから勿体ないのですよね。 もう少し頑張ってもらえればと。


それに、なぜ1941年の設定なのでしょうか? この年の状況でモデル化する理由はなんでしょうか?

例えば、大改装時の公式図は残っていますし、昭和18〜19年なら真継不二夫氏の手になる艦上写真もあります。

新造時、大改装後、最終状態など、「山城」 のモデルとして採り上げるべき時期はもっと適当なところが有ったはず、と私は思います。

しかも、1941年にしては消磁電路など臨戦準備に伴う表現はありませんし ・・・・


それはともかく、考証上の大きな問題点が2つあります。 1つは最大幅が大きすぎます。 モデルで33.5mm、実寸にすると36.85mになってしまい、実際の33.08mに対して3.7m強も違います。

第21巻 「扶桑」 はほぼ合っていますので、並べてみるとこの差は大きく、船体平面の形状が明らかに異なります。

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そしてもう一つの問題は、何と言っても舵が1枚しかないことです。

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なぜこんな事になってしまうのでしょうか?

イーグルモス社さんには、こんなつまらない基本的なミスで本シリーズ全体が評価されることになることを真摯に受け止めていただきたいです。


そして、艦首側面形状も違います。 これもちょっと痛いところ。 これに加えてまるで “デベソ” のような菊花紋章のデザインのため、艦首の印象が大きく損なわれています。

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( 右は大改装時の公式図から )


そしてモデル・デザインですが、相変わらず装備品などにシリーズとしての共通性がないことでしょう。

特に今回は高角砲の形状です。 しかもご丁寧に右舷側は左右が反対にデザインされてしまっている始末です (^_^;

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その他、考証上及びスケールのデフォルメも含めたモデル・デザインについては多々ありますが、言い出すとキリがありませんので全て省略いたします。

また、本シリーズ共通の部品分割、組立塗装の問題点は相変わらずですが、これについても省略いたします。


う〜ん、繰り返しますが、折角のシリーズ企画なのにちょっと勿体ないのですよねぇ。

全80巻の2/3を過ぎましたが、残り1/3、イーグルモス社さんには何とかもう少し頑張って欲しいところです。


なお、おまみ氏によるディテール・アップが次のURLで紹介されています。 本シリーズがこれくらいの出来になると、飾ってもグッと見違えるようになるのですが ・・・・



2015年01月21日

オールド・セイラーの眼 (18)


◎ 第53巻 「衣笠」

シリーズ第53巻は、改 「古鷹」 型とも言える 「青葉」 型の2番艦 「衣笠」 です。

本シリーズではすでに 「古鷹」 「加古」 「青葉」 が出ておりますので、最後に残った1隻となり、モデルの設定はサボ島沖海戦で沈んだ1942年となっています。

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例によってモデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価記事は次のURLのとおりです。


総合としては “このシリーズ中秀作ではありませんが悪くない方” とされ、付け加えて “組立塗装の良い個体に当たっていたら、もう1ランク評価が上がってた” と評価されています。

う〜ん、ちょっと褒めすぎでは (^_^)


最も問題なのは、何故1942年設定なのか、と言うことでしょう。 確かに戦歴的には華々しいこのサボ島沖海戦時であるのは肯けるところですが、逆に開戦後の 「衣笠」 に関する史料や写真はモデル化するに足るものが残されておらず、細部の形状的には不明な点の多い時期です。

ではモデル・デザイン的にほぼ同じ時期の 「青葉」 を使っているかというと、そうでもありません。 そして考証的にも “?” というところの多いものとなってしまっています。

だとすると、何故鮮明な写真や、考証家による資料がある戦前の時期を選ばなかったのか、大いに疑問とするところでしょう。

何も最終状態に拘る必要はないのですから、正確なモデル化のためには考証的に問題が少ない時期を選ぶのが筋と考えますが ・・・・


したがって、この 「衣笠」 は、モデル・デザインも含めた本シリーズ共通の問題点を抱えていることに加え、さらにこの点からの考証的な問題もあります。

主要な点を列挙すれば次のとおりとでしょう。

1.主砲塔及び支持部、高角砲の形状が異なる。
2.船体側面の上甲板ラインが適正に表現されていない。
3.船体舷側がバルジ形状も含め、あまりにもアッサリし過ぎ。
4.1942年設定にもかかわらず消磁電纜が表現されていない。
5.各種装備品は相変わらずシリーズ通しての共通性がない。
6.後部マスト全体が灰色などの塗装上のミスがある。

などなどです。

それにおまみ氏からも指摘があった、カタパルト先端などは ・・・・ (^_^;


と問題点ばかり指摘してきましたが、「古鷹」 型2隻と 「青葉」 型2隻を並べて飾ってみますと、決して見栄えが悪いわけではありません。

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( 左奥より 「古鷹」 「加古」 「青葉」 「衣笠」 の順 )

そして日本海軍を中心とする各種艦艇を同一スケールのフルハル・モデルで手軽に集め、並べて飾る。 この基本コンセプト自体は間違ってはいないことは明らかでしょう。

ただし、イーグルモス社が新たにこの種コレクション・シリーズで、先行大手に対抗して日本市場に食い込んで行くためには、まずはその先行大手を上まわるモデルの “質” が重要であって、一層の改善・向上努力が必要ではないでしょうか?

2015年01月10日

オールド・セイラーの眼 (17)


既に次の第53巻 「衣笠」 のサンプルが届いており、1回遅れとなってしまいましたが ・・・・


◎ 第52巻 「ドレッドノート」

シリーズ第52巻は、「ド (弩) 級戦艦」 という代名詞の語源となったほど世界の艦艇史の中で最も有名なものの1隻であり、かつその後の戦艦建造に大きな影響を与えた 「ドレッドノート」 です。

ただし、その単一巨砲艦という方向性は正しいものでしたが、「ドレッドノート」 そのものは革新的なアイデアと回りでもてはやされる程完成した姿ではなく、試験艦的な、ある意味 “中途半端” な性能・能力であることは当時から用兵者の間で論評されているところです。

そして実際、より改善されたド級戦艦の出現によりその後すぐに旧式化し、かつ大した活躍もないまま比較的短命で終わったことは皮肉とか言いようがありません。

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例によってモデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価記事は次のURLのとおりです。


出来の良い外国艦が続いている中にあって “もうちょっと頑張って欲しかった” という評価ですが、私としても全くもって同感です。

シリーズも52巻まで進み、これまでの要改善点も合わせ、そして出版元の英国を代表する超有名艦であるだけに、ある意味 “満を持した” モデルというところを期待したのですが ・・・・

結局のところ、イーグルモス社としても本シリーズそのものに対する考え方は、今回のこのモデルからして明らかなように、最後までこのレベルを通してシリーズ全体の質のレベルを維持する意図のようです。 即ち、今後とも大幅なレベルUPを図るつもりはないという。

元モデル・アドバイザーの一人としては何とも勿体ないと思わざるを得ません。


さてその 「ドレッドノート」 ですが、全体的な形状の見栄えとしては、確かにいつも通り本シリーズの一つとして並べて飾っておくにはそれなりの出来ではありますが ・・・・


まずは考証面から。

この 「ドレッドノート」 は有名であるだけに資料も豊富で、特に1/1100スケールであるならば、これ一つでも十分すぎるほどです。 しかも、新版が出ておりますので、現在でも容易に手に入るはずのものです。

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しかしながら、モデル・デザイナーはこのようなもの一つさえもキチンと確認していないのでは、と疑問を持たずにはおられません。

最大の問題点は、中部両舷にある主砲塔の舷側にバーベット部の装甲がありません。 特徴があり、かつ目立つものなのですが ・・・・

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これ一つを採り上げるだけで十分ですので、他のことは全て省略します。


次いで、デザイン面です。

上甲板以上の構造物について、いかに1/1100スケールとしてのデフォルメ表現の都合とはいえ、決して実際の構造・形状を正しく理解してのものとは考えられないものです。

まあ大袈裟過ぎる木甲板の表現や、付け足しのように甘いモールドのネット・ブームには目をつぶるとしても・・・・

上甲板上に多数あるデリックの表現、特に後部マストの形状。

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052_Dreadnought_photo_02a.jpg  052_Dreadnought_photo_02b.jpg

そして上部構造物中部の表現は短艇類で隠れる部分が多いとは言え、部品分割の仕方と合わせて、デフォルメ表現としては実艦の雰囲気が満足に出ていません。

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また、船体前後部にある水中発射管の表現がありません。 折角のフルハル・モデルなのですから。

加えて、いつも通りのダイキャスト船体とプラスチックの上甲板との接合面。 組立上の問題もありますが、今回はほぼ全周にわたり舷側にまるでブルワークでもあるかのように上甲板が船体舷側上部ラインより沈んでいます。 特に後部になるにしたがって酷いですね。

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もう一つは塗装。 主砲塔天蓋が黒色に塗られており、確かに1909年では残された写真からこれが確認できますが、モデル設定の1907年では少なくとも知られている著名な写真にはありません。 1907年当時にこれであったという根拠は何でしょうか?

そして、今回は組立です。 特に第1煙突とメインマストの傾きは酷いです。 よくこれで検品と納品のチェックを通ったものと。

おまみ氏のサンプルではこの傾きは無かったようですので、製品の個体差が大きく、当たり外れがあるということなのでしょうが、こと52巻に至ってもいまだにこの状態では ・・・・


イーグルモス社さん、もっと頑張りませんか? ちょっとその気になれば、すぐにでも改善できる点は少なくありません。 折角のシリーズ企画がこのままでは勿体ないと思いますよ。

元々のシリーズの企画と、各モデルの全体的な見栄えは決して悪くはないのですから。

2014年12月21日

オールド・セイラーの眼 (16)


◎ 第51巻 「朝潮」

シリーズ第51巻は、第36巻 「吹雪」 に次いで旧海軍駆逐艦の2つ目になる 「朝潮」 型1番艦の 「朝潮」 で、1942年の設定とされています。

( 何故か製品版では台座のネームプレートは 「朝潮型」 に換わってしまっているのですが (^_^; )

ただし、1番砲塔天蓋に日章旗が描かれていることから、ミッドウェー作戦時を意識したものと思われます。

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例によってモデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価記事は次のURLのとおりです。


シリーズとして並であり、艦首の菊花紋章などいくつかミスを指摘され、全体的にはあまり高い評価ではないようです。

しかしながら、元モデルアドバイザーの一人として、更にもう少し厳しい評価が必要ではないかと思われます。

全体的な形状の見栄えとしては、確かに本シリーズの一つとして並べて飾っておくにはそれなりの出来ではありますが ・・・・

問題はいつもどおり考証とモデル・デザインです。


まずは考証について主要なものから。

1.塗装

戦前の日本海軍の駆逐艦の “顔” とも言える舷側の艦名表記ですが、開戦にあたりこれは消されることとなり、少なくとも昭和17年の春には全ての駆逐艦でなくなっているはずです。

特に5月のミッドウェー作戦時には無かったと判断されます。

むしろ逆に艦首の隊番号がありません。 百歩譲って、モデルの見栄えのために意図して舷側の艦名を残したのであれば、この隊番号も一緒に無いのは “誤り” といえます。 と言うより、むしろ艦名は無くしても、この隊番号を残す方が妥当だったと言えるでしょう。

そして何よりも、艦首の菊花紋章などは、本シリーズ第1巻 「大和」 でクレーン上に艦載機が載っていたのと同じような信じられないポカ・ミスで ・・・・


2.船体形状

(1) 船体前部

まず、艦首楼甲板の側面形状であるシーア・ラインが全く違います。

実艦では船首楼後端から1番砲塔までは水平で、そこから前が反り上がる形になっていますが、モデルでは船首楼後端から既に徐々に反り上がる形になってしまっています。

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艦首のステムが厚すぎて “ボテッ” としており、また朝顔型に開いたフレアは特型に比べると小さいとはいえこれが十分に表現されていません。 したがってこのため、船首楼後端の舷側形状が垂直にスパッと切れたようになっていません。

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これらによって、高速艦のスマートさが全く出ておらず、全体の見かけを大きく損なっており、明らかに基本的なところでの考証ミスと言えます。

(2) 船体中部

ビルジ・キールの形状が違います。

(3) 船体後部

艦尾の形状が異なります。 モデルのものは 「朝潮」 の新造時の形状で、就役後に改造されています。 (解説冊子p5の図も間違っていますが (^_^; )

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( 元図 : 光人社 「日本の駆逐艦」 より  上が新造時、下が改造後 )

この改造は旋回径不良の対策として採られたものですが、併せて舵の形状も少々違います。

これを要するに、デザイナーは船体の基本的な部分についてキチンと確認をしていないと言えるでしょう。

3.各種装備品など

1/1100スケールですから、デフォルメ表現上のことを考慮すると、主砲塔形状を始めとしてその他の上構及び各種装備品・艤装品はまあまあ許容範囲といえるでしょう。

ただし、4連装魚雷発射管、特にその楯の形状は全く違います。

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また、1番煙突両脇の内火艇のサイズが違います。 これは全長7.5mですが、その前にある艦橋両脇のカッターが7mのものですので、明らかに誤であることはお判りいただけるでしょう。


次がデザイン面についてです。

(1) 本シリーズ共通の特徴、というか欠点である、ダイキャスト製船体とプラスティックの上甲板との接合面に大きな段差や隙間があることですが、本モデルにおいてもそれが顕著です。

特にサイズが小さいだけに、余計にこれが目立ち、見かけを大きく損なっています。

この基本的な原因は、モデル・デザイン時の部品分割において、不必要と思われる大きな隙間 (余裕) を採っていることにあると考えられます。 これについては、本シリーズの当初からイーグルモス社さんには指摘してきたところですが、いまだに改善されていないようです。

私の手元にあるサンプルは、組立不良もあるのでしょうが、この問題によって船体前部では上甲板が船体舷側より凹み、かつ隙間が生じており、反対に船体後部では上甲板が船体舷側より大きく浮き上がってしまっています。

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(2) 中部上甲板の舷側に意味不明なギザギサ状のモールドがあります。 これは何でしょう? それともデザイン・ミスではなく、部品製造上の不良? あるいは組立時に生じたもの?

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(3) 羅針艦橋甲板で部品分割されています。 例によってこの部品の整合が悪いために大きな隙間と段差が生じており、このため 「朝潮」 型艦橋の特徴ある形状が上手く表現されていません。

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いつもどおり、細かいところを採り上げ出すとキリがありませんので、他のところは全て省略しますが ・・・・

前にも書きましたように、モデルのサイズが小さいだけに、戦艦や空母、巡洋艦などと同じ価格では非常に割高感が強いのですが、それだけに何故こういった考証やデザインに力を入れないのでしょうか?

これでは購読者の方々に納得して貰うにはちょっと無理があるかと。


それにしても、本シリーズでの日本駆逐艦は、この後 「磯風」 と 「秋月」 の2つが予定されています。 これと第39巻の 「吹雪」 を考えると、なぜここで 「朝潮」 なのかと思わざるを得ません。

しかも、わざわざ参考となる史料や写真がほとんど無い1942年の設定で。

元モデル・アドバイザーの一人としては、もっと他に適当な選択肢が幾つもあるのに、と思います。

上記の考証やデザインの問題と併せ、今回のこの選択についてもちょっと疑問であり、残念に思います。


最後に一つ。 私はモデル・アドバイザーの一人であった時も 「ブック」 と呼ばれる解説冊子には全くノータッチでしたので、本連載でもほとんど触れませんでしたが、如何に本シリーズが艦船初心者を対象にするとは言え、内容的に “ちょっとこれは” と思う内容が毎号幾つもあることは残念です。

例えば、今回のものでは、

“ 3級前の吹雪型と比べて発射管が1門少ないものの、朝潮の4連装発射管は旋回できるので全門片舷斉射が可能だ ”

あるいは浮世絵の説明で

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( 解説冊子の2頁より )

“ 舵取りが船尾の中央に取り付けた舵柄を操っている ”

などに至っては、思わず吹き出してしまいました。 おい、おい (^_^;

しかも掃海具と防雷具の区別さえされていないし ・・・・ (違いが判っていない?)

2014年12月04日

オールド・セイラーの眼 (15)


◎ 第50巻 「隼鷹」

シリーズ第50巻は日本郵船の客船 「橿原丸」 を建造途中で空母に改装した 「隼鷹」 で、1944年の設定とされています。

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旧海軍の空母の迷彩塗装については先の第29巻 「瑞鳳」 の例があり、また第49巻 「シャルンホルスト」 のように外国艦では出来の良いものが続いていますので、期待された向きが多いと思いますが ・・・・

例によってモデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価記事は次のURLのとおりです。


いくつかの若干の注文はあるものの、出来は概ね高いレベルで、日本空母の中では最も良好の評価をされています。


う〜ん。 元モデルアドバイザーとしては、もう少し違う見方です。

空母改装時の基本的な図面については旧海軍の公式図が残されており、これに従えば全体的なところは間違えようがありません。

また、マリアナ沖海戦後の姿については、最終時のものとして終戦直後の鮮明な米軍写真などがあり、またそれに基づく詳細な考証資料も出されています。

結論から言えば、全体的な見かけはまずまずで、製造 (部品形状・組立・塗装) は最近の本シリーズでの出来のレベルと評価できます。

しかしながら、問題は考証とモデル・デザインです。


まずは考証について主要な点を。

1.塗装

本モデルで最も目につくのが迷彩のパターンで、残された写真などから判別することは可能ですし、それに基づいた研究成果も多く出されています。

しかしながら、灰色船体に濃灰色、と言うより黒色の迷彩の根拠は一体何でしょうか? 舷側の迷彩パターンは日本空母でほぼ共通のものですから、この様な色の組合せはありませんが ・・・・

そして何よりも奇異に感じるのは甲板標識の中央線です。 この赤白の塗り分けの根拠は一体何でしょうか?

もしかしたら、これ? (制動索の誤りもこれと同じだし ・・・・ )

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( 引用元画像 : 「Profile Morskie No.41 Junyo」 より )


2.舷側レイアウト

噴進砲の装備位置を始め、舷側のレイアウトがかなり異なります。 一体どこからこのようなものが出てきたのか?

写真も、それに基づく考証資料も数多くありますので、このような基本的なところは間違えようがないのですが ・・・・ これは痛いところ。

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( 右舷前部の比較例  三連装機銃や噴進砲の配置など全く誤っています )


3.バルバスバウ

艦首下部にバルバスバウがありません。 これは公式図や写真でも明らかな事ですので、デザイナーがキチンと確認していない、大きなミスと言えます。

050_Junyo_model_03b.jpg  050_Junyo_model_03a.jpg

Junyo_draw_01_s.jpg  Junyo_photo_1944_01_s2.jpg


4.艦首側面形状

艦首側面、上甲板ラインのシーアの形状がかなり異なります。 これも本艦型の特徴の一つであり、公式図などから明らかなことですので、残念なところ。

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その他、

   推進器翼の枚数 (3枚でなく4枚)と向き (内回りでなく外回り) の誤り
   制動索の誤り (前部昇降機の前が欠落、後部昇降機の後ろは余計)
   飛行甲板前部及び後部の木甲板部と鉄甲板部との形状の誤り
   飛行甲板後部両舷にある着艦表示灯張り出しの位置の誤り
   艦首ホーズパイプの欠落

等々、などなど ・・・・ 採り上げ始めるとキリがありませんので省略いたしますが、ハッキリ言ってまともに調べていないかと (^_^;


次いで、デザインについて

1.船体と上部構造物との接点

このモデルもこれまでの日本空母の例に漏れず、高角砲座とその支柱部などの接合部が合っていません。 私のサンプルの場合、特に左舷が顕著です。

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( 左舷前部の例 )

これは組立ミスではなく、全くのデザインの誤りと言えます。 他の日本空母のモデルといい、何故何度もこのようになるのか?


2.装備品などの形状

これまでも度々申し上げてきたことですが、本モデルにおいても各種装備品は新たにデザインし直されたものであり、これまでの日本艦のものとの共通点は全くありません。

なぜ、この様な共通装備品のデザインを各モデルごと一々デザインしなおす必要があるのでしょうか?

その様な余分な手間暇をかけるくらいなら、それを当然かけるべき他の部分で用いるべきでしょう。

特に、連装高角砲などは目立つだけに、シリーズがここまで進んで “何このデザインは” というものです。

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三連装機銃や、飛行甲板前後の背面の桁形状などは (シリーズ中では) 良く表現されているだけに、その気になれば十分出来るはずです。

そしていつものとおりですが、船体と飛行甲板、飛行甲板と艦橋構造物との接合面の、大きな隙間と段差は何とかならないものかと。 これがあるばかりに当該部分の印象がかなり違います。 (この部品分割のため、艦橋構造物直下の特徴ある大きな吸気口2つや3連装機銃座などが上手く、というか正しく表現されていません。)

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まあ、艦載機は本シリーズにおいては相変わらず “おまけ” のような扱いですから (^_^;


これを要するに、モデル形状全体の見栄えと組立塗装などの製造面については最近の本シリーズとして上の部類ですが、その一方で細部の考証とモデルデザインは並よりかなり下、と言えるでしょう。

シリーズ50巻目としてはちょっと残念。 イーグルモス社さんには、特に考証とモデルデザインについて、真摯な改善努力を期待するところです。

2014年11月20日

オールド・セイラーの眼 (14)


第48巻 「龍田」 に続き、遅れを取り戻すべく第49巻 「シャルンホルスト」 の記事を (^_^)


◎ 第49巻 「シャルンホルスト」

シリーズ第48巻はドイツ戦艦 「シャルンホルスト」 で、1942年のチャンネル・ダッシュ当時の設定とされています。

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これまでのところ、本シリーズでの外国艦はほぼ高レベルの出来が続いており、この 「シャルンホルスト」 についても期待された向きが多いと思います。

例によってモデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価記事は次のURLのとおりです。


モデル・デザインなどに若干の注文はあるものの、出来は概ね高いレベルの評価をされています。

実際のところ、これをパッケージから取り出しての最初の感想は皆さん “おっ” と思われるものではないでしょうか。

これだけの見栄えであれば、1/1100スケール・フルハルのモデルとして、本シリーズの基本コンセプトからは、まず十分なものではないでしょうか?

まあ、公式図は残されていますし、写真も建造時から含めてふんだんにあります。 またこれらに基づく出版物にも良いものがあります。 モデル・デザイナーさんは楽だったろうな、と (^_^)

考証的には、ざっと見たところ、細かいところを除いて全体的にはそれほど大きな誤りはないようです。 (当然と言えば当然ですが)

ただし、モデル・デザイン的には細かいところでチョコチョコあります。 これをスケール的に許容範囲と見るか、デザインミスと見るかは様々でしょう。

指摘しておかなければならない主要なところは、次の点です。

1.艦橋ブルワークの高さと2番主砲塔天蓋の高さとの差が若干足りません。 これがデフォルメ上の問題なのか、考証ミスなのかは迷うところですが、しかしながら、これと (本シリーズ共通の大きな欠点の一つである) 部品分割による大きな隙間のために、艦橋を含む艦中央部の印象がかなり違って見えるのは残念なところです。

2.おまみ氏の指摘にもありますように、艦首錨は撤去された状態の表現になっているにも関わらず、錨鎖がモールドされてしまっています。 これは設定年当時は艦首錨と共に撤去されてます。

3.上甲板の木甲板表現はちょっと好みの別れるところでしょう。

4.機銃などは “何じゃこれは” というものではありますが ・・・・ その他でも各種装備品を始めそのデフォルメ表現には、スケールを考慮しても色々好みの別れるものがあるでしょう。 特にクレーンは目立つだけにちょっと ・・・・ 前後部ともデザイン・ミスかと (^_^;

4.迷彩塗装は、例によって船体側面のみ、上甲板以上は僅かに主砲塔天蓋がブルーに塗られているだけです。 製造工程とコストの点からやむを得ないのかもしれませんが、この何とも中途半端なところは評価の分かれるところでしょう。 ただし、舷側の灰色迷彩は明らかに薄すぎ (明るすぎ) ます。

う〜ん、それにしても、これだけの出来のレベルが日本艦にもあれば ・・・・

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(追記) : コメント欄でHN 「にっしー」 さんから一番主砲塔の測距儀の有無についてお尋ねいただきました。

当該測距儀は本モデルの設定年である1942年に撤去されたとされており、実際、1942年2月のOperation Cerberus 中に撮影されたとする写真では装備されておりません。

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ただし、厳密な撤去期日については判りませんし、また設定を1942年として、このチャンネル・ダッシュ時とは限定しておりませんので、モデルとしては選択の余地があるでしょう。

また、出版物には1942年状態として両方の資料も存在しますので、これをイーグルモス社の考証ミスとまで言うのは酷かと。 

もちろん、2番主砲塔上に4連装機銃が装備されていることやレーダーアンテナなどの状況からすれば、撤去していた姿の方が判りやすく、無難であったとは言えます。

2014年11月19日

オールド・セイラーの眼 (13)


既に第49巻の 「シャルンホルスト」 が発売となり、HN 「おまみ」 氏からもその記事がUPされておりますが、遅ればせながら ・・・・ アセアセ (^_^;


◎ 第48巻 「龍田」

シリーズ第48巻は日本海軍の近代的軽巡洋艦の始まりである 「天龍」 型の2番艦 「龍田」 で、1940年の設定とされています。

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モデラーさんであるおまみ氏の評価は次のURLのとおりで、全体的な出来は良好ですが、考証が古いということで ・・・・


元モデル・アドバイザーの一人としての私の評価は、次のとおりです。

ご存じのとおり 「天龍」 型 は公式図面も含めて元々が史料の大変に少ない艦です。 そしてその同型2隻のうちでも今回の 「龍田」 はさらにありません。

その上でしかも何故昭和15年の設定なんでしょうか? 写真さえ満足にないのにもかかわらず。

モデル化を考えるなら、当然ながら鮮明な写真も多い 「天龍」 であり、かつ大正〜昭和初期の設定とするのが常識的と言えるでしょう。

したがってこのことを反映したのでしょう、確かに全体的な “見栄え” としては、本シリーズの最近のレベルと言えますが、細部はちょっと考証的にもモデル・デザイン的にも設定の昭和15年前後時点とはなっておらず、首を傾げざるをえません。

最大の問題点は何と言っても前部艦橋の形状でしょう。 ここは 「天龍」 との大きな識別点でもあるところですが、大戦直前の 「龍田」 とは似て非なるものになっています。

その他大きなところでは、魚雷発射管と同移動軌条 (改装により左右舷側への移動式にはなっていない)、1番煙突、舵、艦尾の機雷投下軌条、などの形状が異なります。

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Tatsuta_photo_S13_01_s.jpg  Tatsuta_photo_S16_01_s.jpg
( ちょっと不鮮明ですが、左が昭和13年、右が昭和16年の「龍田」中央部 )

そしてモデル・デザイン的には、艦首上縁部、短艇ダビット (全く表現されていない)、水線部の塗り分けラインの誤り、魚雷発射管の形状、等々 ・・・・

いつも申し上げているように、一般的に利用可能な史料も限られていることからすると、何故考証やモデル・デザインに力を入れないのでしょうか?

特に、サイズ的に小さなモデルであるために、他の艦と同一価格では購読者にとっては割高感が強くなるだけに、このことは重要でしょう。

確かに、その史料の少ない艦を本シリーズにラインナップしたこと自体は高く評価できます。 それだけに、上記のことを見るに “なぜ” と思わざるを得ません。

史料の多い少ないに関わらず考証とモデル・デザインに同じ手間暇しかかけない。 したがって、史料の多い艦と少ない艦では、その出来に歴然たる差が出るという、本シリーズにおける開発体制の欠点がそのまま反映されている典型のように見えます。

私の評価としては、全体的な “見栄え” としては最近のシリーズ並み、考証とモデル・デザインについては並以下、と言えます。 少々残念。

2014年11月03日

オールド・セイラーの眼 (12)


既に次の第48巻 「龍田」 のサンプルが届き、モニターをされているHN 「おまみ」 氏のブログでも紹介がUPされていますが ・・・・ すっかり遅くなってしまいました、第47巻の 「愛宕」 です。


◎ 第47巻 「愛宕」

シリーズ第47巻は、本シリーズでは第11巻 「鳥海」、第36巻 「高雄」 に続く重巡 「高雄」 型4隻中の3隻目である 「愛宕」 で、1942年の設定とされています。

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一応、42年に第1段作戦が終了して5月に横須賀で修理の際に高角砲が換装されたとする説を採用した姿となっています。

これであと残るは 「摩耶」 で、今後のラインナップにも上がっていますので、これが何時の姿の設定になるのかが楽しみになりましたが ・・・・

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( 右手前から 「鳥海」 「高雄」 「愛宕」 の順 )


例によって、おまみ氏の評価は次のURLのとおりで、日本艦としては “平均的な佳作” という評価をされています。


しかしながら、全体的な見栄えはともかくとして (これは決して悪くはありません)、前回記事でも指摘した本シリーズの開発・製造体制の基本的な欠点から抜け出せないものとなっていることは、相変わらず同じと言えます。

ともかく、同型艦3隻で各個艦の細部の違いの表現は当然としても、何故共通である (あるべき) ところまで、一々始めからデザインし直さなければならないのでしょうか?

そして、デザインし直して考証的により正しくなるならば肯けますが、何故船体や主要上部構造物などについて3隻一つ一つが異なったものになるのでしょう?

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( 第47巻 「愛宕」 )

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( 第11巻 「鳥海」 )

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( 第36巻 「高雄」 )

特に船体などは、この 「愛宕」 は既刊の2隻よりも劣るものになってしまっています。

おまみ氏の指摘にあるビルジキールの形状・位置どころではなく、船底形状が全く別物ですし、バルジ形状、艦首上縁の形状なども違います。 

( といっても、既刊の他の2隻も正しいものはないのですが ・・・・ )

また、外見上の特徴の一つと言える中部上部構造物 (魚雷甲板) の舷側からの張り出しと言った肝心なところが表現されていません。 この部分の横幅の寸法の差はどこに吸収されてしまったのでしょう?

加えて、42年設定ならば船体全周にわたって消磁電纜がなければなりませんし、初期のモデルでは表現されていた汚水捨管などの表現 (第11巻 「鳥海」 にはそれなりにあった) も全くありません。 これはダイキャスト製の船体だから、ということは言い訳にはなりません。

そして、カタパルト上の艦載機の向きや、4番と5番主砲塔の順序などのあり得ないボンミスは、ちょっと恥ずかしいことです。

う〜ん、第47巻まで進んできて、これですか。

・・・・ ということで、元モデル・アドバイザーの一人としては、細部の所見に入る前に、ちょっと力が抜けてしまいましたので ・・・・ 後の詳細についてはおまみ氏のブログ記事をご参照ください m(_ _)m

イーグルモス社さん、何度も申し上げますが、今後もこのままの開発・製造体制で続けられるおつもりで本当によろしいのでしょうか?

2014年10月11日

オールド・セイラーの眼 (11)


◎ 第46巻 「プリンス・オブ・ウェールズ」

シリーズ第46巻は、英国戦艦3隻目の 「プリンス・オブ・ウェールズ」 (以下単に 「PoW」 と略します) で、旧海軍の陸攻部隊によりマレー沖海戦で撃沈された1941年の設定とされています。

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数ある英国戦艦の中から、 「キング・ジョージ5世」 級5隻中の1隻であるこの 「PoW」 が選択されたのは、もちろん本シリーズが日本における発売であることを考慮したものであることは明らかでしょう。

そして、これまで本シリーズでは外国艦の出来は良かったので、この 「PoW」 においてもそれを期待された方々が多いのではないでしょうか。

例によって、モデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価は次のURLのとおりです。


なかなか高い評価をされています。 私としても、全体の見栄えとしては賛同できますが、やはり細部を観ると色々とあるようです。

それは前回記事を始めとしてこれまで指摘してきた本シリーズの開発・製造体制の基本的な欠点から抜け出せないからと言えるでしょう。


1.全体としての形状については良い線を行っていると思います。 英国艦であるだけに資料も豊富であり、かつ一般出版物の中には1/500スケールの図面集も出ており、そのままスケール・ダウンして利用できるものです。 デザイナーは楽だったろうな〜、と思います。

それだけに、やはり考証やデザインに十分な時間をかけていないがためと考えられるところが多々あります。

その代表的なところが舷側の装甲板です。 ダイキャスト製であるために上端部のエッジがシャープでないのはそうかなと思いますが、前後端のエッジが表現されていません。

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( 写真は5番艦 「ハウ」 )

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これは本級の特徴の一つでもあり、またノッペリとした船体表現であるが故にこれがあると無いとではかなり印象が異なってきます。 ちょっと残念なところ。

2.また、艦首側面の水線下の形状が 「?」 です。

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ここは元々はストレートであることは進水時の写真からも明らかです。

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このクラスは後からパラベーン曳航用のスケグが追加されたとの説もあり、これを表した図面などもあることはあります。 これは後に消磁電纜が装備された 「キング・ジョージ5世」 ではハッキリしています。

ただし「PoW」では、これを示す史料はありませんし、また戦後の潜水調査によるイラストでもこのスケグの存在は描かれておりませんので、私としては無かったと考えています。

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そして、本モデルではこのスケグが装着されたとする説を採用したものと考えられますが (というより、入手し得た資料がこれだったのか?)、例えそれだとしても、残念ながら本モデルような形状ではありません。

3.デフォルメ表現や部品分割の方法などには、全体的にちょっと違和感を感じるところがかなりあります。

艦橋構造物などは、本シリーズの特徴 (もちろん悪い方で) の一つとして、相変わらずの部品接合部の段差や隙間などのため、一層この違和感が際立ってしまっています。

その他に、両舷の特徴ある両用砲、水上機用のデリック・クレーン、艦橋両脇上甲板上のボート・ダビット、艦尾上甲板の甲板室状になってしまっている構造物、などなど、もう少しデザインに気を使ったら、と思うのですが ・・・・

4.迷彩塗装はこれまでと同じで船体のみですが、今回はこれに加えて上部構造物には部品毎の色分けがなされ、いわゆる擬似的な表現となっています。

ただ、これは好みの別れるところで、異論も多いことでしょうね。 いずれにしても、「PoW」 のあるべき迷彩塗装ではない (=コスト的に無理なのか?) ですが (^_^;

また船体の迷彩パターンも、残された写真からすると少々異なります。 特に船体後半部が顕著です。

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その他については省略しますが、以上のように多々問題点はあるにしても、全体的な見栄えは本シリーズ中では最も良いモデルの一つであることは間違いないでしょう。 これは評価できます。

それだけに、如何に英国艦であり、また資料が豊富であるとは言え、一連の外国艦並かそれ以上のレベルの見栄えのモデルが出来るならば、何故日本艦ではこの質が出せないのか、と少々残念でなりません。

さて、次の第47巻は 「愛宕」 ですが ・・・・

2014年10月04日

オールド・セイラーの眼 (10)

◎ 第45巻 「薩摩」

シリーズ第45巻は、旧海軍が初めて自前で設計・建造した戦艦の 「薩摩」 で、1910年の就役時の姿とされています。

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もちろん独自の設計・建造とは言っても、船体・機関・兵装の全てにわたり、英国を主とする諸外国の技術に全面的に倣ったもので、早い話しが “見よう見まね” で作ったものです。

そして皆さんご存じのように、就役時には既に英国の 「ドレッドノート」 の後塵を拝しており、戦艦の発達史上は 「準ド級艦」 に分類され、就役と同時に二流扱いされてしまいました。

もちろん、就役当時の戦術状況からするならば、決してド級艦に劣るわけではないのですが ・・・・ お話しし始めると長くなりますので、これはまた別の機会ということに。

何れにしても、工業らしい工業も無かった日本が、明治維新後僅か40年にして列強海軍に並ぶ自前の戦艦を建造し得たことは賞賛に値することです。

そして、残念ながら今日においては、日本艦の中でも非常にマイナーな存在とされてしまっている 「薩摩」 を採り上げたことは、本シリーズの面目躍如たるものがあり、かつスケール・モデルとしては、僅かに工房飛龍さんのレジンキットがあるだけの現状からすると、稀少価値のあるものと言えるでしょう。

それだけに、今回のモデルは折角の機会であるにも関わらず、ちょっと ・・・・

例によって、モデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価は次のURLのとおりです。


全体としての出来についてなかなか厳しい評価ですが、私も全く同意見です。 シリーズ第45巻目としてはまさに “う〜ん” です。


考証、デザイン、製造の面について、その主なところを以下に列挙してみます。

1.船体形状が全体的にかなり違います。 不充分ながらも公式図も残されていますし、綺麗な写真もありますので、キチンと考証する必要があったでしょう。 これは大きなミスです。

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2.舷側両舷の防雷網のブームもネットラックもありません。 当時の大型艦の外観上の大きな特徴であり、かつ 「薩摩」 は就役以降これが無かった時期はありません。

如何に船体がダイキャスト製のために細かな工作が難しいとはいえ、あるいは如何に1/1100のスケールであるとはいえ、省略の理由には成り得ません。

少しでも当時の艦船についての知識があるなら絶対に外せないところですので、別部品にするなりの何らかの表現の方法を考える必要があったはずです。 これは痛いです。

3.12インチ主砲塔及び一般に中間砲といわれる10インチ砲塔の形状が違います。 それに主砲塔の側面にあるラッタルが凹になっています。

また、10インチ砲塔はサイズが小さすぎますし、それに平面上の位置も少々ずれています。

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4.前後部艦橋を含む上構の形状もなかり異なります。 これはスケール上のデフォルメによるとは言い難いので、考証ミスと言えるでしょう。 これによって、艦中央部の印象がかなり違ったものになっています。

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特に中間砲塔間の上部がボート・デッキとなている構造物 (甲板室) がありません。 したがって、艦載艇がおかしな格納状態になっています。 また、中間砲塔下部のバーベット部の形状も全く違います。

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( 大正4年撮影とされる 「薩摩」 左舷中部 )

ただし、おまみ氏の指摘にあった主砲塔上の対水雷艇用の子砲は就役時にはまだありませんでしたので、モデルの状態で正解です。

5.上甲板の木甲板のモールドがありません。 既刊のモデルにはありますので、この巻まできてなぜ表現方法が統一されていないのでしょう? 広い前後の甲板にこのモールドがあるだけでも随分と引き締まって見えるのですが・・・・

6.組立はシリーズ初期のものに比べればかなり良くなりましたが、煙突やマストの傾きはありますし、加えて私のサンプルでは前部マストが大きく曲がっています。

これは輸送中に変形したものとは考えられませんので、相変わらず製造時及びパッケージ時のチェックが不充分なまま出荷されているのでしょう。

(その他細部の指摘を言い始めるとキリが無くなりますので、これらは全て省略いたします。)

以上を纏めると、塗装も含めて、はやりシリーズ初期からの様々な問題点がいまだに十分改善されていないと言えます。


そしてなりよりも、何と言っても最大の問題点が考証とモデル・デザインです。

以前に何度か、巻が進むに連れて資料の少ない艦が予定されているので、この両者をしっかりとやらなければダメですよ、と言ってきました。

まさに本モデルなどはその典型でしょう。 なぜ十分な考証と、それに基づくモデル・デザインをやらないのでしょう?

本シリーズは全80巻通して販売価格は同一です。 艦の大小や艦種形状の違いに関わらず、そして資料の多い少ないに関わらず、です。

流通上の問題などの制約ももちろんあるのでしょうが、そこにはこの開発・製造上要する手間暇の多い少ないも、80隻分全て合わせての等分均一価格の意味もあるとのではと思います。

それならば、何故資料が少なくて難しい艦ほど十分な考証とデザインに力を入れないのでしょうか?

現状では、1隻当たりの手間暇を同じにするため、必然的に資料の多い艦は比較的出来がよく、逆に資料の少ない艦は同じ手間暇分しかやっていないのでそれなりの出来、としか見えません。

本モデルなどは、おそらく The-blueprint.com のイラストのようなものを下敷きにしたのではないかと考えられるレベルのものです。

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( 同サイトより )

もちろん、本シリーズの基本コンセプトからするならば、全体的な見栄えという点では “それなりの” ものになってきたと言えるでしょう。

しかしながら、シリーズの折り返し点を過ぎた第46巻でこれでは ・・・・ と思うのは私だけでしょうか?

このままの状況で最終の第80巻まで続けられる (=売れる) のか、元アドバイザーの一人としては少々不安になります。

イーグルモス社さん、この辺で改めて開発・製造体制の見直しをして、購読者の方々に納得してもらえるスケール・モデルにしませんか?

2014年09月19日

オールド・セイラーの眼 (9)

◎ 第44巻 「鳳翔」

シリーズ第44巻は最初から空母として設計・建造され世界で最初に就役したことで知られる日本海軍の空母 「鳳翔」 で、1944年の設定とされています。

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例によってモデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価は次のURLのとおりです。


本シリーズのこれまでの日本艦艇、特に各空母と比較するならば、良い部類に入るでしょうし、1/1100スケールのフルハル・モデルとしての全体的な見栄えは決して悪くありません。

結局のところ、最も大きな問題点は1944年設定と言うところにあるように思います。

なぜ1944年なんでしょうか? この年のものは写真も残されていませんし、史料的にも全くと言えるほどありません。 イーグルモス社として、あるいは担当のデザイナーとして、モデル化するに足る新しい史料が手に入ったと言うことなのでしょうか?

そもそも、この 「鳳翔」 をモデル化するならば、その世界初の正規空母として就役した1922年、あるいはこの「鳳翔」にとって最も華々しい時代であった上海事変や支那事変当時である方が適当であったと言えます。 そしてこれらの時代の方が、余程写真や史料が豊富です。

あるいは、飛行甲板拡張後のこのモデルの状態とするならば、航行可能な唯一の空母として残った終戦時であるべきであったと思います。

最も疑問とするところは、その飛行甲板改造 (延長拡大) です。 この状態への改造は1944年末から45年初め頃とされ、具体的にいつであったのかは明確ではありません。 したがって、1944年設定とする根拠は不充分です。

また、飛行甲板に木甲板モールドがありませんので、おそらくラテックス仕様を表現したものと思われますが、とするとその状態ならば終戦直後の写真にみられるように迷彩塗装がなされていたと考えられ、少なくともこのモデルのような明るい灰色では無かったはずです。

しかも飛行甲板上のマーキングの根拠は何でしょう? 1944年の改装後にこれであったという根拠があるのでしょうか?

この点からするならば非常に “不思議な” モデルとなっています。 史料が残されていませんので、これをイーグルモス社、あるいは担当デザイナーの “解釈” と言うならば、それはそれで良いのかもしれませんが、モデラーさん達や艦艇研究家から受け入れられるかどうかは ・・・・ ?

元モデル・アドバイザーの一人として言わせて貰うならば、無難、かつより適切な年代設定のモデルにするべきであったと考えます。


さて、それはさておいてモデルの出来の細部についていくつか。

(1) おまみ氏の所見にもあるように、飛行甲板前後部の裏には桁も表現され、また上甲板の木甲板もモールドと塗装がなされています。 また、艦橋も窓枠が “それらしく” 施されています。 これらの見えにくいところにもキチンと手を入れたことは評価してよいでしょう。

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(2) 飛行甲板前後部の支柱は、かなりデフォルメされています。 実際にはもっと異なった形をしていますが、このスケールでの強度を確保するためと考えるならば、まあある程度はやむを得ないところかと。

ただし、前部の支柱の工作、取付が不良のため、飛行甲板前部が反り揚がってしまっています。 スキージャンプではないのですから、これはないでしょう (^_^; これはちょっと痛いところかと。 もっとも、私の手元にあるサンプルだけの問題かもしれませんが。

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(3) 飛行甲板は改装にあわせて “おそらく” 不燃対策として木甲板をラテックスに換えたとした表現としたものと思われます。 まあそれはそれで一つの解釈としてよいのでしょうが ・・・・

何故前後エレベーターに 「×」 の凹モールドが? また、伸縮接手や遮風柵、その他のモールドはありませんので、一層ノッペリとしてしてまっています。 そして、先にも書きましたように甲板のマーキングはこれで正しいのかどうか?

(4) 見かけ上の特徴である、飛行甲板中部両舷にある大きな転落防止柵がありません。 これは何らかの方法でキチンと表現するべきだったでしょう。

(5) メインマストが飛行甲板に立っているように見えます。 艦橋脇のウィング (実際の起倒部はもう一つ下) にありますが、何故かこのウィングが飛行甲板とほぼ面一になっているためです。

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艦橋は表現されているのですから、少なくともこのレベルに合わせなければなりません。 このため、この付近の印象 (両舷とも) が大きく異なってしまっています。

(6) 飛行甲板中部両舷にある通信マスト及び後部の着艦標識が、全て同じ形の扁平な細長い板になっています。 これはそれぞれキチンと表現するべきであったでしょう。

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(7) 船体の主錨、あるいは舷外通路もシリーズとしては良くできていると言えるでしょう。 ただし、それ以外については他のモデルと変わらずノッペリしています。

(8) 船体で最大の欠点はビルジキールが無いことです。 これはちょっと痛い。 何となく筋が入っているようにも見えますので、製造上のミスでしょうか? また、舵の形状が違っています。

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(9) これは私のサンブルだけの問題かもしれませんが、1番煙突が曲がって取り付けられています。 まさか製品全てがこの “仕様” ではないですよね?

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(10) 舷側の短艇類が全て舷外に張り出して宙に浮いたような中途半端な状態になっています。 キチンと格納状態にするか、張り出した場合にはそれなりのモールドが必要でしょう。

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(11) 本シリーズではどうも艦載機はまあ “おまけ” と考えているようで、本モデルでもご多分に漏れず、です (^_^;


他にも指摘することはまだまだ沢山ありますが、キリがありませんので今回はこの辺で。


結論として、やはり細部がどうのこうのという前に、1944年という年代設定と、それに伴う諸々の問題が大きい、ということに尽きるかと思います。


本日、次の第45巻 「薩摩」 が届きました。 う〜ん (^_^;

2014年09月01日

オールド・セイラーの眼 (8)

◎ 第43巻 「ダンケルク」

シリーズ第43巻は初の仏海軍艦艇、戦艦 「ダンケルク」 で、1939年の設定とされています。

でも何故1939年の設定なんでしょう ・・・・ ? まあ、「ダンケルク」 の生涯の内で最も華々しい時期、と言えば確かにそうなのですが、その設定に応じたモデルとするに足る資料が得られたということなのでしょうか (^_^;

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例によってモデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価は次のURLのとおりです。


おまみ氏も評価されているように、1/1100スケールのフルハル・モデルとしての全体的な見栄えは悪くありません。

手元にあったコレクション・ケースに入れてみましたが、こうしてケースに入れて飾る分には十分な出来でしょう。 そしてシリーズの他のモデルと並べて飾ってもなかなか良いと思います。

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「ダンケルク」は残念ながら日本においてはあまりメジャーな艦とは言い難いものがあります。 それもあってスケール・モデルとしては輸入物のレジン・キットがあるくらいですので、こういう艦が本シリーズの一つとしてモデル化されるのは喜ばしいところでしょう。

しかも、公式図が残されており、かつそれに基づく1/200などの図面集も比較的容易に入手可能です。 特に後者は、そのまま1/1100にスケールダウンして利用可能なパーツ・レベルのものも揃っています。

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これらを利用すれば、比較的容易に、しかも考証面で大きなミスをすることなく、モデルのデザインをすることが可能なはずの艦です。


で、いつものとおり、“これを直せば” あるいは “ここに注意していれば” もっと良いモデル、製品になるということ頭に、元船乗りであり隠れモデラーとしての観点から述べてみることにします。


1.全体の出来について

この 「ダンケルク」 担当のモデル・デザイナーがどのような資料に基づいたのかは分かりませんが、本シリーズ外国艦の例に漏れず、マストや主砲砲身を始めとしてそれなりにシャープに出来ており、全体のプロポーションも悪くはありません。

1/1100スケールのフルハル・モデルとして、本シリーズの基本コンセプトに沿ったものとして十分な見栄えではないでしょうか。

ただし、細部については以下に述べるように、本モデルでも基本的なところでの凡ミスが見られるなど、ちょっと残念なところがあります。


2.細部について

(1) 艦首の主錨は3つですが、肝心な艦首正面のもの (前錨) がありません。 錨甲板には正面の錨鎖もちゃんとモールドされているのですが ・・・・ ? 目立つところだけに、これはちょっと痛いミスと言えるでしょう。

また、艦尾にある副錨も表現されていません。 それでなくともダイキャストという素材に拘ったために船体のモールドが甘く、ノッペリとした見かけになりがちですので、こういった特徴的な艤装品については省略せずにキチンと表現するべき、と私なら思います。

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Dunkerque_photo_01a.jpg  Dunkerque_photo_01b.jpg

(2) 艦首艦底部は丁度キールが張り出したような特異な形状になっていますが、これが十分に表現されていません。 このことを知らない人が見ると、傷が着いている製造不良品かと思ってしまうかもしれません。 本シリーズでラインナップされている他の艦船にはない、本級の特徴的なところの一つですので、是非とももっとしっかりと明確に表現すべきであったと思います。

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(3) 船体の下部中央部のビルジ・キールとキール (竜骨) の間に、複キール状の構造がありますがこれが表現されていません。

1/1100モデルでは少々オーバー・スケールになるかもしれませんが、本級の特徴的なところの一つであり、折角のフルハル・モデルなのですから、これもキチンと表現すべきであったと思います。

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(4) 前部艦橋構造物について

前面中段にある探照燈の位置が何故か少々高すぎますし、また窓枠表現のための部品分割により隙間が出来てしまっていますので、上部艦橋の平面で覆われて角張った印象的な形状が損なわれてしまっています。 また、司令塔レベル及びその上の甲板のレイアウトなども少々違っています。

これらのため艦橋構造物全体の印象がかなり異なって見えます。 多分にデフォルメの仕方のためもあるのでしょうが、それにしても艦の顔の部分であるだけにもう少し気を使ってデザインする必要があるでしょう。

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(5) 塗装について

カッターなどはともかくとして、内火艇類の上甲板以上が明るい灰色一色に塗られています。 これらは目立つだけにもっと配慮をする必要があるでしょう。 コストに響くことはわかりますが、これの手を抜くと “艦のことをを知らない” と指摘される元にもなりますので。

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全体の見栄えは悪くないだけに、その他機銃を始め、各部の塗装及び塗り分けについても、更に改善の余地があります。 

また、おまみ氏の指摘にもあるように、前部の錨甲板が黒色に塗られていますが、これは1939年の設定として何か根拠があることなのでしょうか。 少なくとも残された写真を見る限りでは濃い灰色であると思われますが ・・・・ ?

(6) 艦載機について

どうも本シリーズでは初期のものからいまだに艦載機については “おまけ” 的な扱いのように見えます。

今回の「ロワール130」という特異な形状の飛行艇も、その造形はもちろんですが、プラ部品の地肌のままの無塗装で、しかも国籍マークが白丸というのは全くいただけません。 私の手元にあるサンプルがたまたまだったのかと思いましたが、おまみ氏のものも同じようですので ・・・・

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80巻まで完結するためには、これらのところ “も” もう少し配慮をしていく必要がある事項でしょう。 その他採り上げ出すとキリがありませんので、今回はこの辺にします。


最後に一つ。 おまみ氏のページでも言及があったプロペラの翼数のことですが、これは4枚ではなく、公式図にあるとおりモデルの3枚で正解です。

ただし、折角翼数は正しく出来ているのに、翼のピッチ (捻り) の向きが間違ってバラバラに取り付けられてしまっています。 なぜこれをチェックしないのかと (^_^;


(9月3日追記) : 後部マストの上部が欠落しているという所見が出ている向きがありますが、ちゃんと表現されています。 ただまあ、若干低い (短い) と言えばそうですが ・・・・ 全体的な見栄えとしてはこれで大きな問題はありませんし、それを言い出すと他に沢山出てきてキリがありませんので (^_^;

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2014年08月16日

オールド・セイラーの眼 (7)

◎ 第42巻 「加古」

シリーズ第42巻は、既に第27巻でモデル化されている 「古鷹」 の姉妹艦 「加古」 で、1942年の設定とされています。

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第27巻 「古鷹」 は20糎単装砲塔 x 6基の1926年竣工時の時代の姿でしたが、この 「加古」 は改装後の同連装砲塔 x 3基の姿です。

第27巻 「古鷹」 の記事 :

両者を並べてみると、その艦容の変化が良くお判りいただけると思います。 この様に手軽に並べて飾れることこそ、この 「世界の軍艦コレクション」 シリーズの醍醐味ではないでしょうか?

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( 手前が今回の 「加古」、奥が第27巻の 「古鷹」 )

そこでこの 「加古」 ですが、例によってモデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価ですが、次のURLのとおりです。


氏曰く “相変わらず考証の凡ミスがいくつか見つかりましたが、古鷹と比べると模型としての出来は幾分良くなっています。 このシリーズの平均的な品質かと。”

確かに 「古鷹」 に比べれば、という事なんですが ・・・・ 外国艦も数が揃い始めた現在においては、おそらく購読者の多くの方々にとっては “日本艦はシリーズ42巻まで来てまだこのレベルか” という印象の方が強いのではないでしょうか?

そこで今回は、この 「加古」 のモデルについての具体的な考証上の指摘についてはともかくとして、ここに来ての本シリーズについての全体的な所見を 「加古」 を例にして採り上げることにします。


1.モデル・デザインの方法について

本シリーズの初期から指摘していますように、なぜ武器・装備品などについてその標準化を図らないのでしょうか?

今回の 「加古」 についても、やはりいまだに船体・構造物はもちろんのこと、各部品に至るまで全て一から新たに起こしているようです。

それも段々良くなるならまだしも、例えば高角砲などはこの期に及んで “何これ?” という出来です。

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すでに申し上げてきましたとおり、モデル・デザイナーが1隻にかける手間暇 (工数、時間) は毎回同じようです。 支払われるデザイン料が同じなら当然のことでしょう。

したがって、結果としてデザイナーの手元に集まった一般資料の量と質によって、そのモデルの精粗がそのまま出てくることになります。

それならば、なぜ武器・装備品などについて標準化・共通化を図り、そこで浮いた手間暇を個艦の細部を正しく表現するための考証に回さないのでしょうか?


2.モデルの質の向上について

今回のこの 「加古」 のモデルをみると、質の向上を図るためにこれまで積み上げてきたデザインのノウハウがほとんど活かされていないように感じられます。

42巻まで進んできたのですから、どんどんレベルが上がって来るのが当然であると普通なら思います。 しかしそれがどうもあまり感じられません。 もちろん、全くというわけではありませんが ・・・・

ですから、上にも書きましたように “日本艦は42巻まで来てまだこのレベルか” という評価に繋がるのでしょう。

うがった見方をするならば、もしかするとイーグルモス社としては、既に発売してきた初期のモデルとの差をあまり出したくないと考えているのかとも思えます。 つまり、これまでのものとレベルをあまり変えたくない、あるいはシリーズ通しての “質の均一化” を図りたい、ということかと。

しかし、もしそうだとするなら、私に言わせるならばそれは明らかに誤りです。 購読者は後のモデルになればなるほど、その出来、質の向上を期待するのは当然のことだからです。

そして質の向上、改善努力は、イーグルモス社としての本シリーズに対する姿勢を示すものであると言えます。

もし次第にレベルが向上するならば、予定の全80巻を更に続けることもできるでしょうし、あるいはまた初期のもののバージョン2に繋がる可能性もあるかもしれません。

本シリーズのコンセプトを理解し、好意的に見ている購読者の方々の多くもそれを期待しているのではないでしょうか?

私としては、ちょっと今のままの方針維持のやり方には疑問を持っています。


3.艦船モデルとしての基本

いまだに艦船としての基本的事項が正しくモデル化されていないところが見られます。

例えばその一つが、この 「加古」 の例ではその各部の塗り分けがあります。 錨甲板や飛行作業甲板の黒塗り、内火艇の上甲板の白塗り、艦橋上部のリノリュウム表現、等々 ・・・・

あるいは前回の 「大鳳」 のように主錨があらぬ方向を向いている、等々 ・・・・

ちょっと艦船についての基礎的な知識があるならば間違えようがないものですので、少なくともモデル・プランから始まって、モデル・デザイン、製造の段階のどこかで一度でも誰かがキチンとチェックしてさえいれば、このようなことにはならないはずです。

このことは、本シリーズ冒頭の第1巻 「大和」 がとんでもないミスで始まって以降、現在に至るも各モデルで多かれ少なかれ引き続く問題です。 もう少しキチンとした配慮があっても良いのではないでしょうか?


とは言っても、これまでも度々申し上げてきましたように、本シリーズはそのコンセプト、そしてこれまでの全体的な見栄えとしての出来からすると決して悪いものではありません。 

そして、日本及び諸外国の代表的な艦船を、統一されたスケールでのフルハル・モデルで、それを手軽な価格で気軽に集め、一堂に並べて飾ることの出来る良い企画であると思っています。

ですから、そのレベル向上のためにもう少し考えていただけませんか、イーグルモス社さん? 折角のチャンスなのですから。


う〜ん、今回はちょっと辛口だったか ・・・・ でも、本シリーズの発展を願えばこその提言と捉えていただければと思います。