2013年03月05日

モデル・アドバイザーの独り言 (1)

全国の書店にて1月から隔週で英国イーグルモス社の 『世界の軍艦コレクション』 が発売になりました。

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現在第5巻の 「金剛」 までが出ており、引き続き全80巻が予定されています。

そして私も一応これに 「モデル・アドバイザー」 の一人として途中から参画させていただいております。

今回イーグルモス社から正式な承諾をいただきましたので、同社の純粋な広告・宣伝の一部としてではなく、関係者の一人として当該シリーズについてのある意味正しい情報の提供と、シリーズについての私の想いを発信していきたいと思います。

もちろん内容は イーグルモス社としての公式見解ではなく、あくまでも私個人としてのものに過ぎない ことを予めお断りしておきます。

それではまず連載の開始にあたり、その私の立場をご理解いただくことから始めましょう。


◎ 本シリーズでの私の立場

イーグルモス社の宣伝でも、また商品内でも私は 『モデル監修者』 ということになっています。 確かに日本語にするとそうなるのでしょうが、「監修者」 を英語にすると 「Superviser」 になります。 つまりモデルの製作・製造について私が監督責任を負っている意味になってします。

実際は、私は 『モデル・アドバイザー』 の一人です。 即ち、日本海軍の艦艇について (日本艦以外は担当しておりません)、イーグルモス社が製造する1/1100スケールのフルハル・モデルの造形について、ここが違う、あそこはこうしたら良い、というアドバイスをすると共に、それに関連した必要な資料を提供することです。

したがいまして、商品化されるモデルの考証的形状及び部品製造・組立・塗装についても、イーグルモス社にアドバイスはしますが、最終的な結果については私の所掌範囲外と言えます。

もちろん、アドバイザーの一人ですので、本シリーズ参画についての正式な請負契約書などを交わした訳ではありませんで、ある意味ボランティアとも言えます (^_^)

また、このシリーズは書店での流通ですので、各巻ごと組立・塗装済みのフルハル完成品と、 「ブック」 という当該艦艇の解説パンフレットとがセットになっておりますが、この 「ブック」 については大久保義信氏が全てを担当しておられると聞いておりますので、私は全くのノータッチです。

既に発売分のモデルの組立・塗装について、多くの方々から厳しいご指摘をいただいているようですが ・・・・ (^_^;


◎ 参画の経緯

私が本シリーズに関わり始めたのは、既に静岡でのテスト販売が始まってからでした。 切っ掛けは大変に個人的な縁でしたが、ともかく英国の出版社であるので日本海軍艦艇についてのアドバイスを、ということでした。

したがって、全国販売に先だって静岡限定でテスト販売したものについて、特にその前半のものについては私はタッチできませんでした。

そして全国販売が決まった時に、そのテスト販売版の修正・改善についてイーグルモス社からアドバイスを求められましたが、残念ながら既に原型が出来上がっていることから、時間的、コスト的にほとんど間に合わない状態でした。

それでも、テスト販売版と全国版を比べていただけば、イーグルモス社なりの改善努力の跡がお判りいただけるのではと思います (^_^)


と言うことを前提にして、これからあれこれ “気まま” に書いていきたいと思います。

2013年03月06日

モデル・アドバイザーの独り言 (2)

◎ 本シリーズの位置付け

既に発売したものについて、艦船モデラーさんなどから大変厳しいご指摘をいただいているようです。 それはそれで、イーグルモス社としても今後のシリーズ展開のために有益なものであることは間違いありません。

しかしながら、中には本シリーズの位置付けについて、それを考慮していない意見もあるようです。

ご承知のとおり、本シリーズは模型店系列ではなく、書店での販売になります。 かつ、その内容は組立・塗装済みの1/1100スケール・フルハル完成モデル1隻と、その艦艇の解説パンフレットをセットとしたものです。

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( 第5巻 「金剛」 添付の解説パンフレットの表紙 )

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( 保護用のブリスターパックに入っている完成モデル )

したがいまして、その対象とするところは、艦船モデラーさんや艦艇についてそれなりの知識がある方々でないことは申し上げるまでもないことです。

即ち、艦艇について興味はあるものの市販組立モデルを作る時間もなく、また色々資料を集める余裕もない、そのような一般の “入門者” “初心者” の方々が主たる対象です。

このため、統一されたスケールのフルハル完成品を、手軽な価格で、出来るだけバラエティに富んだシリーズ構成の艦艇を、数多く揃える (飾れる) ということをコンセプトにしています。

スケールは残念ながら世界標準的な1/1250やプラモデルで知られた1/700ではありませんで、1/1100というちょっと変則的なものですが、これは書店販売のためにパッケージをA4サイズとするため、この中に収められるサイズとして選択されました。

このため、他の市販品と一緒に並べることなどは考慮しておらず、本シリーズを揃えることで一つのものとしております。

また、スケール的にも、そして一般の方々が気軽に揃えられるという価格的な制約からも、1隻1隻としては最近の市販の1/700組立モデルのように精密・正確なものとは言い難いものがあります。

これは致し方ないところです。 もしこれと同じ様なサイズでより精密なものを要求されるのであれば、それは専門メーカーが出している1/1250などの製品を購入されることをお勧めします。

もちろん、戦艦クラスなら洋上モデル1隻で1万円前後、フルハルならその倍前後という価格になりますが (^_^)

あるいはまた、工作の腕及び時間的・金銭的な余裕のある方は1/700の組立モデルなどを購入されて、自分で好きなだけ手を入れられることをお薦めします。

最近ではエッチングのものなどディティール・アップ素材も豊富に出回っていますし、ベテランモデラーさん達の製作記事などもネットや書籍で沢山紹介されていますので。

繰り返しになりますが、本シリーズはそのような経済的余裕のある方々、自分で工作される腕や時間があるモデラーさん、あるいは艦船 (の外観形状) についてそれなりの知識がある方々を主たる対象としたものではないということです。

したがって、その様な観点からの単なる “ご批判” は、筋が違うということになります。

もちろん、シリーズとしては (特に初期のものは) 色々問題点があることも確かですから、今後のシリーズ展開のための建設的な “ご意見・ご所見” はイーグルモス社としても歓迎するところでしょう。

とは言っても、全80隻のフルハル完成モデルが手軽な値段で揃えられる (飾れる) というのは、相当な魅力があると思います。

しかも、シリーズ後半では 「ハーミス」 や 「ガングート」 などのマニアックなものまで予定されているようですので (^_^)

また、(準) 同型艦などを出す場合には、特に理由が無い限り、可能な範囲で年代を違えて艦型が異なるものとするようにイーグルモス社には要望していますので、この点でも期待できると思います。

例えば既に出た 「大和」 と 「武蔵」、この後揃うことになる「赤城」 と 「加賀」、「長門」 と 「陸奥」、そして 「金剛」 型4隻の組合せなどのようにです。

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( 最終状態の第1巻 「大和」 (左) と就役時状態の第4巻 「武蔵」 (右) )

私の書斎には試作バージョンのものを含めて既に10隻以上が並んでいますが、これだけでもなかなかの見栄えです。

ただ、貧乏人の兎小屋なものですから、ホコリ対策のためにブリスターパックに入ったままですが (^_^;

これはそのうち百均などにある1個300円程度のコレクション・ケースにしようと思っています。 これ、サイズ的にピッタリのものがあるようですね。

2013年03月09日

モデル・アドバイザーの独り言 (3)

◎ モデルのコンセプトとポリシー

イーグルモス社から公式にアナウンスされたことはありませんし、私も担当者から詳しい内容を聞いたことはありませんので、あくまでも私の個人的な推測、ということで (^_^;

前回、本シリーズは、

  a. 統一されたスケールのフルハル完成品
  b. 手軽な価格
  c. 出来るだけバラエティに富んだシリーズ構成

で数多く揃える (飾れる) ということを目指している、と書きました。

そしてその主たる対象は、艦船モデルに興味がある一般の “入門者” “初心者” の方々である、と申し上げました。

その結果として、書店ルートで販売できるA4サイズのボックスに収まる1/1100スケールに落ち着いたわけです。

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( 第2巻 「赤城」 のパッケージ  パンフレット付き表カバーを開いた状態 )

ただし、このコンセプト、如何に小さなサイズであっても、オモチャのようなものではそのニーズに応えられないことは申し上げるまでもありません。

したがって、1/1100というサイズにあって、このコンセプトの中で如何に質の高いスケールモデルを提供することができるのか?

そのための最大のウリとするところがダイキャスト製の船体です。 購入された方々、あるいは書店で手にとってご覧いただいた方々はお判りのように、このサイズで “ズシッ” とくる重量感のフルハル・モデルは、それなりのインパクトはあると思います。

ただし、逆にこれが価格に繋がってきておりますし、また材質からくる加工上の問題でモールドなどをプラスチックやレジンのように細かく施すことが難しいことも事実です。

あるいはまた、私が参画し始めた当初、担当者に 「折角だから、船体を分割仕様にして、洋上モデルとフルハルのどちらでも飾れるようにしたら?」 と言った事がありますが、もちろんこれが直ちにコストに跳ね返ることは申し上げるまでもありません。

ダイキャスト製を選択したが為の利点と欠点であり、これらを考慮してイーグルモス社としては現在の形態に落ち着きました。

2013年03月11日

モデル・アドバイザーの独り言 (4)

◎ どこまで緻密さ・精密さを求めるか

いかなるスケールモデルであっても、これが最も大きな課題であることは間違いのないところです。

それは例え1/96のシップヤードモデルをもってしても、あるいは呉の 「大和ミュージアム」 にある1/10 「大和」 でさえ、完璧に実艦どおりに表現するなどは不可能なことだからです。

縮尺する以上、必ずどこかデフォルメしなければなりません。 必然であり、宿命です。 では、どこを、どこまで、どのように?

確かに、最近の1/700や1/350スケールの組立モデルなどは、一昔前からするとその精密さ、緻密さには物凄い進歩があります。 かつて私も手を染めた静岡4社による1/700 「ウォーターライン・シリーズ」 の初期のものなどからすると、それこそ今や雲泥の差があると言っても過言ではないでしょう。

そして、それらのディティールアップ用として販売されている各種の専用エッチンク・パーツを始め、 最近の 「ナノ・ドレッド」 シリーズと称するものや、以前ここでもご紹介したことのあるベテランモデルの製品などは、その “ピン” の部類と言えます。

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( ベテランモデル製の1/350用ディティールアップ・パーツの例 )

したがって、「世界の軍艦コレクション」 シリーズにおいても、現在の製造・加工技術のレベルをもってすれば、相当に細かい造形のものとすることができるでしょう。

では、実際問題として、本シリーズにそのような精密さ、緻密さを求めることが本当に適当なのか? これは当然、賛否両論があることでしょう。

もちろん、このサイズにあっても可能な限り精密・緻密であることは歓迎されることでしょう。 しかしそれには製造上のコストの問題に加えて、例えば、購入者の維持管理の問題なども伴います。

前者は申し上げるまでもないでしょうが、後者の場合で、もし取り扱いの最中に砲身やマストなどをポキッとやってしまったらどうするのでしょう? 本シリーズの主たる対象者にその場合のキチンとした修復が期待できるのでしょうか?

まあ、始めからブリスターパックなどの保護ケースから絶対に出さない (出せない) という前提にするなら、話しは別なのかもしれませんが ・・・・

また、上甲板以上は主としてプラスチックですから、もっと細かく部品分けすることにより緻密さを高めたらどうか、というご意見も当然あると思います。

これも製造・組立・塗装の問題でコストに跳ね返ってきますから、どこまで、どのように部品分割するかは難しい問題です。

モデラーさんの中からは、「自分で組立・塗装はやるので、完成品でなくて未組立の部品のままで販売して欲しい」 というご意見もかなりいただきました。

確かにそう言うものを模型店ルートで販売することも一つの方法かも知れません。 しかし、そうなると2つの製造・流通ルートが必要になりますし、なおかつ部品の精度などは現状の完成品でのレベルのままではモデラーさんは満足されないのでは、と考えます。

あるいは、かつてタカラ・トミーさんが出していた 「連斬模型」 を始めとする艦船シリーズのような、塗装済みの “半完成” モデルとすることによって、緻密度をある程度上げることもまた一つの方法かもしれません。 ( これはこれで面白い良いシリーズだったのですが ・・・・ )

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( かつてタカラトミーから出ていた艦船シリーズの一例 )

しかし、これも考えてみて下さい。 このタカラトミーさんのものでも、満足に組み立てられなかった人がおられたことを。

そのようなことでは、本シリーズのコンセプトとポリシーに反することになります。 そう言う人達こそが本シリーズの主たる対象なのですから。

これらのことを考えると、緻密さ・精密さについてある程度のレベルで、というよりかなりのところで、妥協しなければならないことになります。

組立・塗装済みの “完成品” というコンセプトそのものが、コスト上の最大のネックだからです。

もちろん本シリーズの現状が、今後ともこのままの状態で良いとは、私も決して思っていません。 イーグルモス社の改善・改良努力を大いに期待するところです (^_^)

2013年03月13日

モデル・アドバイザーの独り言 (5)

◎ 本シリーズの問題点 (前)

さて、本シリーズの現在のところの問題点ですが、それは多くの方々から厳しいご指摘を戴いているとおり、何と言ってもその組立と塗装の酷さです。

これは創刊号の 「大和」 はもちろんのこと、その後少しずつ改善はされてきていますが、今尚完全には解決していなものの一つで、本シリーズにおける最大の課題と認識しています。

同じモデルでも個々のものによってそれぞれバラツキがあって一概には言えないようですが、何れにしても多かれ少なかれ生じています。

しかもその多くは、手作業による製品として必然的に発生する、単なるバラツキとして許容されるレベルを超えている内容です。

直接の製造ラインにおける問題は勿論ですが、製品としての最終的な検査、検収体制は一体どの様になっているのかと、ちょっと不思議です。

部品が折れ曲がっていたり、整合不良で傾いていたり、あるいはあらぬ方向を向いて取り付けられていたり、などなど、一目見てすぐ解るような出来上がりのものが何故そのままパッキングされ、製品として発送されてしまうのか?

イーグルモス社の担当者には、同じことを毎回毎回、口を酸っぱくして言ってはいるのですが、これがなかなかです (^_^;

ご承知のとおり、本シリーズの完成済みモデルの部品製造、組立、塗装は中国メーカーの請け負いです。

実は、購入された方々には申し訳ないのですが、静岡でテスト販売された時のもの (今後このスレッドでは単に “静岡版” と言います) は現在の全国版のものよりもっと酷かったのです。

私も本シリーズに関わり始めた当初、その静岡版のサンプルを貰った時にはビックリしました。 これではダメだよ、と。

そして私のモデル・アドバイザーとしての最初の仕事は、その事を口を酸っぱくして担当者に認識してもらうことでした。 少なくとも日本のモデラーさんやコレクターさんには絶対に受け入れられないよ、今の日本のスケールモデル界は決してそんなに甘くないのだから、と。

もちろん、現在ではイーグルモス社の担当者も十分認識しており、かつ努力はしてくれているのですが ・・・・

度々訪中して指摘していると聞いていますが、何しろ英国の企業ですから、中国に自社の責任者を常駐させて、とはなかなか行かないようです。

誰か常駐させて常に目を光らせていないとダメなことは、先のタカラトミーの件やその他のことでも度々聞かされています。 また私も、中国のメーカーとはそういう所だとよく認識しています。

したがって、ここは是非とも、もっともっとイーグルモス社に頑張ってもらいたいところですね。

とはいえ、現在の全国版は静岡版より少しずつ改善されつつあることは確かです。 それは、例えば本シリーズのモニターを引き受けていただいているHN 「おまみ」 氏のブログ 『模型の花道』 の記事でも、そのように評価して戴いているところです。

第1巻 「大和」 :

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第3巻 「長門」 :

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( 画像の転載引用については同氏より許可をいただいています )

これらは、実際に連続して購入されおられる方々にも実感していただけるのではないでしょうか?

今後については ・・・・ 単なるモデル・アドバイザーの一人でしかない私としては、イーグルモス社の改善・改良努力が継続することを期待するとともに、購入者の皆さんには長い目で見ていただけるようにお願いするしかないのですが (^_^;


2013年03月15日

モデル・アドバイザーの独り言 (6)

◎ 本シリーズの問題点 (後)

もう一つの問題点は、装備品などの形状の統一、即ち標準化が出来ていないことです。 即ち、現在のところ日本艦が続いていますが、高角砲、機銃、探照灯、指揮装置などといった装備品で同じ型式のものの形状が、何故か1隻1隻で異なっていて、バラバラです。

これの標準化は同一スケールのシリーズものとして絶対に必要なことなのですが、未だに実現しません。 3DのCADですからから、設計そのものはやるつもりになればそれ程難しいことではないと思いますが ・・・・

残念ながら、私も本シリーズのモデル原型の設計について、どこの誰がどのような流れと分担で行われているのか知りません。 ただ、イーグルモス社の担当者には度々アドバイスはしていますので、理解はしてもらっているはずです。

とは言っても、まだ静岡版として原型が出来上がっている艦を発売している段階であり、全国展開として新規に作った艦の順番には入っていませんので、なかなか一挙にはいかないことも確かです。

特に甲板や構造物と一体となっている部分などについては、設計はともかく、製造段階での手戻り作業は、新規と比べれば手間暇もコストもはるかにかかりますので。


そして、その他でもまだまだ問題点、というより今後の課題があります。 艦載艇や艦載機の形状や塗装、あるいは組立前の部品の下地処理、などなどはその例です。

ただ再度申し上げたいのは、イーグルモス社としてもその努力はしているということです。 今出ている第1巻〜第5巻に見られるとおり、始めてこの世界に参入する企業として、シリーズ物として順次改善、改良する姿を実際に示していることは、評価しても良いのではないかと思っています。 もちろん、それが今後とも継続すること期待して。


これらのことをご理解・ご納得いただいて、購入者の方々にご支援とご声援をいただけるなら、もしかすると現在予定されている全80巻で終わらずに、その先に続くようになるかもしれません。 それに、更にマニアックな艦が出るかも ・・・・ って、実は私自身が欲しかったりもするんですが (^_^;

実際のところ、当初予定していた80隻について、既にモデル化する艦が変わったり、あるいはモデル化の設定年代が変わったりしたものがいくつかあるようです。 これらについては、いずれイーグルモス社から逐次正式なアナウンスが出されるでしょうが、期待していただいて良いと思います。


既に5隻が並んでいる方々ならご賛同いただけると思いますが、この価格で、このスタイルのシリーズが順次80隻まで揃うなら、決して悪くはないと思います。 しかも解説パンフレットが付いて、ですから。

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2013年03月18日

モデル・アドバイザーの独り言 (7)

ここからは、発売された各巻のモデルについて、私の思うところを呟いていきます。

( 解説パンフレットの中身については全く関与しておりませんので、ここでは取り上げません。 悪しからず。)

なお、サイト 『模型の花道』 を主催されるHN 「おまみ」 氏が、本シリーズの販売元であるハーレクイン社からモニターを引き受けられ、氏のブログ 『模型の花道のブログ』 にて、発売になった各巻についてその評価と、そしてモデルのディティールアップについてUPされています。

以後、氏のブログ記事と “勝手にコラボ” しながら、続けていきたいと思います。  もちろん氏には事前にお断りしてありますが (^_^;


◎ 第1巻 「大和」

創刊号は英国の出版社としてもっとも無難な選択である 「大和」 でした。 1945年の最終時の状態でモデル化です。

本モデルについての 『模型の花道のブログ』 のHN 「おまみ」 氏の評価は、次のURLにUPされています。


モニターさんだからと言うわけではありませんが、ネット上でのこの種の記事は、とかく本人の知識自慢の重箱つつき的、あるいは対象と商品コストを無視した過剰要求的なものが多い中にあって、私から見ても客観的かつ公平な視点からの内容であると言えます。

これは大変に好感の持てるところで、私のこのブログでもご紹介する所以でもあります。

ところでこの 「大和」、先にも書きましたように、私が本シリーズのモデル・アドバイザーの一人として関わり始めたときには、既に静岡でのテスト販売が始まった後でした。

そこで、この静岡版を評価用にいただいて全国販売に備えてのアドバイスをすることになりましたが ・・・・ 私が言うのもなんですが、如何に先にお話ししたコンセプトとポリシーであっても、ちょっとこれでは 、と言うところがありました (^_^;

しかしながら、要修正・要改善点についてのアドバイスは、結局のところ時間的・コスト的な制約が大きく、ほとんど実現しませんでした。

僅かに塗り分けなどは、おまみ氏の記事にあるように多少は改善されていますが、指摘のあった前部上甲板上の機銃座の位置と形状などの修正は、始めからダメ。 (注)

その他の形状なども、一部はアドバイスしましたが、私自身がほとんど手を着けませんでした。 始めからムリと言われていましたので。

イーグルモス社としても、製造 〜 販売までの大きなサイクルにおけるスケジュールとコストを考えるならばとてもムリだった訳で、購入者の方々にはこれは致し方なかったものとご了承いただくしかありません。


そして、多くの方々にご指摘いただいている、本モデルでの最大のミスが 「デリックのアームの上に艦載機が載っている」 という点です。 私としても、一体誰がこのようなことを考えたのか、と。

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どんな初心者の人でもちょっと考えればあり得ないことと気が付くレベルの誤りであり、これは当然イーグルモス社としても全国販売に備えて最優先で修正すべきものでした。

私もそのようにアドバイスし、イーグルモスの担当者も了解してはくれたのですが ・・・・ 中国のメーカーからスケジュール的にムリ、との回答で致し方なかったと聞いています。

これについては、結果的に誤りと判っていて販売することとなってしまい、イーグルモス社としては購入者の方々に素直に 「ごめんなさい」 と謝るしかないと思います。

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(注) : 甲板上の機銃座の位置と形状については、私としては多少異なる意見を持っています。

確かに “研究家による最近の考証結果では” ということではそう言われていますし、本モデルもそうなっていれば文句は無かったことでしょう。

しかしながら、考証は考証ですし、そして一つ前まではこれだったのですから、モデルとしてそれ程誤りという訳ではない話し、と考えております。

もちろん、もしこれで納得されない方がおられるのでしたら、どうか 「おまみ」 氏のディチールアップ記事にあるように、ご自分で修正されるようにお薦めします。

あるいは、全てが “最新の考証” に沿ったものでなければと言われる方々がおられれば、それこそ市販の組み立てモデルにご自身で納得いくまで好きなだけ手を入れられればよろしいと思います。

そこまで拘りをお持ちでしたら、ということで。


2013年03月23日

モデル・アドバイザーの独り言 (8)

◎ 第1巻 「大和」 (後)

シリーズ第1巻としてのこの 「大和」、前回書きましたように完成済みモデルとして色々と問題があることは確かです。

したがって、もしスケールモデル製作の心得のある人がこのモデルにちょっと手を入れたらどうなるか、と誰もが考えることではないでしょうか? それはモデルアドバイザーの一人である私としても当然ながら思うところです。

嬉しいことに、HN 「おまみ」 氏が、そのブログ 『模型の花道』 において、本シリーズのモニターとしての評価記事だけではなく実際にこれをやって、そのディティールアップのテクニックと成果を披露してくれています。

しかも驚くことに、この 「大和」 については、比較的簡単なものと、ちょっと手の込んだものの2つのディティール・アップをやって見せてくれました。


◎ ライトディティールアップ


ここで採りあげられているのは、おそらく現在では、1/700の洋上モデルなどを主とされるモデラーの方々にとってもそれ程難しいテクニックのものではなく、ごく普通にやっておられることばかりでしょう。

そしてこれくらい手を入れただけでも、その見栄えがグッと良くなることが判ります。 もちろん作者のおまみ氏の腕が良いこともありますが。

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もしこのレベルで販売されているとしたら、どなたからも文句の出ることはないでしょうね (^_^)


◎ ハードディティールアップ (その1)


まだ前半だけで、後半は引き続きやっていただいているようですが、取り敢えずの前半記事をUPされています。

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う〜ん、ここまで来るとちょっと凄い。 何しろ日本のスケールモデルで一般的な1/700ではなくて、更に小さい1/1100スケールのモデルなのですから。

続編を拝見できるのが今から楽しみで、待ち遠しいですね。


しかしながら、こうしてみるとモデル自体の出来は、このスケールとこの価格からすれば決して悪くはないでしょう。

そして、おまみ氏が示してくれたライトディティールアップ後の姿のレベルのものが、シリーズとして順次80隻卓上に並ぶとしたら、それは壮観なものとなるに違いありません。

それだけに、組立と塗装のレベルが現状ではちょっと、と残念です。 私としても、イーグルモス社に早急な改善努力を期待するところです。

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( 作品写真の転載引用についてはHN 「おまみ」 氏の許可を得ております。)

2013年03月26日

モデル・アドバイザーの独り言 (9)

◎ 第2巻 「赤城」

シリーズ第2巻は空母 「赤城」 です。 1942年のミッドウェー海戦当時の姿。

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本モデルの評価については、モニターさんのHN 「おまみ」 氏の記事がそのブログ 『模型の花道』 にUPされています。


私としても、大筋においてはそのとおりであると思います。 そして、1/1100スケールの完成済みモデルとして、全体的なプロポーションなどについては決して悪くはないといえるでしょう。

確かにこの 「赤城」 の船体の灰色は少々明るすぎますね。 ただこの船体色については、元船乗りとしてはモデラーさん達とは少し違う意見を持っています。 これについては項を別にしてお話しします。


さて、この第2巻の 「赤城」 についても、私が関わったのは既に完成していた静岡版からでした。  全国展開に備えてのアドバイスを、ということで。

まあ色々ありましたが、これも基本的には第1巻の 「大和」 と同じで、マーキング塗装が少し直ったことなど以外は時間的にほとんど無理ということでした。

もちろん、飛行甲板の後ろ下がりの表現や艦載機を3種類揃えるなどとても不可能なことで。 (それ以前のこととして、私の静岡版では飛行甲板の後半分が波を打っていました (^_^; )

それでも静岡版と比較していただければお判りのように、イーグルモス社としては、全国販売までのスケジュール的に厳しい中で、あちこち手を入れて頑張ってくれてはいます。

ただ、喫水線の黒色帯だけは、あれ? (^_^;

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( 全て手前が静岡版、奥が全国版 )

なお、この 「赤城」 では当初付いていた舷梯などは外し、また艦首・艦尾の旗竿も無くしてもらいました。 おまけに艦尾旗竿には何故か舵柄信号燈がついていましたので。

前者の舷梯については、これがあると停泊状態となりますので、他の部分との関連で問題が出てきます。 また、後者の旗竿は、このスケールでは少々オーバー過ぎですし、実艦では航海中なら倒したり外したりしている場合が多いので。

この2点については、以後のシリーズは全てこれになるはずです。 まあ、旗竿などは個人個人の好みの問題ですが、完成品で付いているものを外すよりは、後から真鍮線などで付ける方が楽でしょう。


この「赤城」で申し上げておきたいのは、飛行甲板に描かれている味方識別用の日の丸、いわゆる 「ミートボール」 と言われるものです。

実はこのモデル、静岡版ではモデル設定が1941年 (の開戦時を想定) とされていましたが、何故かこのミートボールが。 当然私としてはこのマーキングはミッドウェー海戦時に限定されるので消すべき、とアドバイスしました。

これに対して、やはりイーグルモス社は外国の企業ですね。 このマーキングは特徴的なものなので是非残したい、ということで、全国版では逆にモデル設定の方を1942年に変えたんです。

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( 静岡版の台座のネーム )

ところで、空母を1/1100スケールでモデル化するにあたり大変に難しい最大の点が2つ、一つは飛行甲板の厚さと支柱を含めた裏側の構造、そしてもう一つが何と言っても艦載機です。

前者の飛行甲板は素材と強度の問題でどうしてもそれ程薄くはできませんし、裏側の細かな構造もその表現には限界があります。 これは本シリーズではある程度は致し方ないものですが、全体的にはそれほど悪くはない出来になっています。 まあこの程度の厚さであれば許容範囲とし得るでしょう。

もう一つの点は艦載機です。 これはこの 「赤城」 に限らず、本シリーズの初期のものに共通で、やはり1/1100スケールであるとしてもデザイナーさんにもう少し頑張って欲しかったところです。

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特にこの 「赤城」 のものは脚が表現されていなかったために、多くの購読者の方々から 「胴体着陸」 と揶揄されたところです。 中にはそれなら艦載機は無理して付けなくても良かったのでは、というご意見も。

それでもこれについては、この後のシリーズでは少しずつですが改善されつつあります。 デザイナーさんとしても試行錯誤で頑張っている最中、というところです。

私としては、サードパーティーさんが本シリーズ用の塗装済み艦載機モデルを安価で出してくれないかな〜と期待してもいるのですが。 どこかやってくれませんかねえ ・・・・ ダメ?

2013年03月28日

モデル・アドバイザーの独り言 (10)

◎ 第2巻 「赤城」 (続)

続いて本モデルのディティールアップについてです。

これについてもHN 「おまみ」 氏がそのブログ 『模型の花道』 でテクニックと成果を披露してくれています。

「赤城」 ディティールアップ (前編)


「赤城」 ディティールアップ (後編)


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( 氏より転載引用の許可を得ております )

確かに1/1100スケールでこれだけの工作をするのは、さぞかし目が疲れるでしょうね (^_^)

でもここまで来ると、出した側としてもさぞ嬉しいでしょう。 できることならこういうものにして出したいと。

このおまみ氏の記事で感心させられるところは、ディティールアップのテクニックの紹介だけではなく、それに使用した工具や素材についてもキチンと書かれていることです。

これは良いです。 もしかすると、本シリーズを購読されている艦船スケールモデル初心者の方々の中には、当該ブログ記事をご覧になって “よし、俺も一つ” と思われる人もおられるかもしれません。

最初に申し上げましたように、本シリーズのコンセプトは艦船に興味はあるが、モデラーとまではいかない方々向けに、1/1100スケールという手頃なサイズの統一スケールで、完成済みフルハル・モデルの全80隻を一つのシリーズとして提供することにあります。

したがって当然ながら、個々のモデルを詳細に見るならば、それなりの知識のある人達には少々物足りないところがあるでしょうし、また残念ながら、現在の初期モデルでは組立てと塗装が不十分であることも確かです。

少しでも意欲があり、ご自分のコレクションをより見栄え良くと思われる方々は、このおまみ氏の作例とまではいかなくとも少しずつでも十分ですので、是非手を入れることにチャレンジしてみてください。

2013年03月30日

モデル・アドバイザーの独り言 (11)

◎ 第3巻 「長門」

シリーズ第3巻は 「長門」 です。 1944年の捷号作戦 (レイテ沖海戦) 当時の姿。 これも順当なセレクションと言えます。

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と言うか、静岡版を購入された方はお判りのように、実はこの 「長門」、当初の順番では第5巻で、この第3巻は 「金剛」 だったのです。 これも色々ありまして、全国版ではこの第3巻に順番が繰り上げられました。

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( 静岡版第5巻 「長門」 のパッケージ )

本モデルについてモニターさんであるHN 「おまみ」 氏の評価記事は、ブログ 『模型の花道』 の次のところにUPされています。


私としても、大筋においてはそのとおりであると思います。 そして、1/1100スケールの完成済みモデルとして、全体的なプロポーションなどについては決して悪くはないといえるでしょう。 特に、前檣楼などはこのサイズとしては頑張ってくれていると思います。 (もちろん組立と塗装は別として)

そして、当該ブログのコメント欄にご所見をいただいたバルジの形状などはそのとおりですが、全国展開までに修正はとてもとても無理 (^_^;

静岡版を購入された方々には申し訳ないのですが、もうそれどころでは無かったというのが正直なところです。 全国版では、これでも “まあよくここまで” と言えますので。

それでも何とか直してもらえたのが艦首の側面形状で、併せてこれに菊花紋章 (の金色) を付けて貰いました。

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( 左が静岡版、右が全国版 )

ただ、多分修正時にデザイナーさんが 「陸奥」 の図面をそのまま使って、これを写真などでチェックせずに直してしまったので、フェアリーダーの位置などはそのままということに (^_^;

その他の細かいことについては、おまみ氏の記事に静岡版と全国版とを写真で比較していただいていますので、そちらをご覧下さい。

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(おまみ氏に許可をいただいて縮小サイズを  大きなサイズは当該ブログで)

ただ、不思議に思うのは静岡版から全国版までの間の修正可能な点について、私などの感覚とは違うところがかなりあります。

これはちょっと無理かな、と思うようなところがアッサリと直ってしまう反面、これくらいのことは、と思うようなところが “無理” という回答であることが結構あります。

これがイーグルモス社自身の選択なのか、デザイナーさんでのことなのか、あるいは中国のメーカーさんでのことなのか、などの詳しいことについては私としても判りません。

2013年04月02日

モデル・アドバイザーの独り言 (12)

◎ 第3巻 「長門」 (続)

続いて、「長門」 のディティールアップです。 これも同じくおまみ氏が手を入れてくれています。



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( 全国版 )

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( おまみ氏のディティールアップ作品 )

( 引用転載は氏から許可をいただいています )

う〜ん、私からすると、1/1100スケールでここまでやるの、と。 はっきり言って凄いです (^_^)

特に張り線は、1/700スケールでもやる方がおられます (と言うより最近は多いようです) が、ほとんどの場合は省略形式で主要なところのみ。 このスケールでのこれは驚きの一言です。


ただ、1番及び2番副砲跡は、実はデザイナーさんは凸モールドで表現してくれていますが、後から原型を凹に直すのはなかなか難しいものがあるようです。

何れにしてもこのスケールでここまで表現するのか、の問題になりますので、どうしても気になる方はおまみ氏のように手を入れられるとよろしいでしょう。 特に写真に撮られる方は目立つかもしれませんので。

それと ・・・・ 旗竿を追加されるのはよろしいのですが ・・・・ 軍艦旗は艦尾旗竿か後檣斜桁かのどちらか1つに ・・・・ (^_^;

2013年04月04日

モデル・アドバイザーの独り言 (13)

◎ 第4巻 「武蔵」

シリーズ第4巻は 「武蔵」 です。 1942年の就役時、というより正確には就役直後の1942年の姿。

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モニターをしていただいているHN 「おまみ」 氏による評価記事は、氏のブログ 『模型の花道』 の次のURLです。


航空機運搬軌条が黒色になっていることをご指摘いただいておりますが、これは黒鉄色の指定に対して、メーカーの回答が 「黒鉄色の塗料がない」 からとのこと。 これには私もちょっと 「?」 と思いますが、では代わりに何色にするか。

実際にはサイドなどは灰色ですが、上面は鉄道のレールのように鉄色、あるいは銀色に近い色になります。 少し使わなかったり手入れが悪いと銹びることも。

塗装の件につきましては、後ほど纏めて記事にします。


ところで、実はこの 「武蔵」、元々は第10巻の予定で、この第4巻は 「伊勢」 でした。

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そしてこの 「武蔵」 は、最終状態である1944年の捷号作戦 (レイテ沖海戦) 時の姿でモデル化される予定でした。

私が本シリーズのお手伝いを始めた時に、この 「武蔵」 はまだモデルプランの段階でした。 そこで、第1巻の 「大和」 が最終状態のモデル化でしたので、「武蔵」 については副砲が4基の元々の姿である竣工時をリコメンドしました。

本シリーズは1/1100スケールで数を揃えることに重点を置いていますので、「大和」 「武蔵」 とも最終状態とすると、このサイズではパッと見ほとんどその違いを出せないからです。

そして 「武蔵」 を竣工時とすることによって、この 「大和」 型の変遷をシリーズ対象者の方々にお見せできることになります。

リコメンドした時には私自身もう開発段階として時期的に間に合わないかと思っていましたが、イーグルモス社の担当者はこれを受け入れてくれて、急遽デザインの変更となりました。

( イーグルモス社のこういう姿勢と努力は評価していただいて良いと思います。)

とは言っても、「大和」 型の艦型からして全体的にはそれほど大きくは手戻りにならず、かつ副砲などは共通部品として既に設計済みのものがそのまま使えることが大きかったと思います。

で、この変更は割とスムースに行きまして、そしてこの 「大和」 と 「武蔵」 の2つの姿を本シリーズとしてもアピールできることから、発刊順序も当初の第10巻から第4巻に前倒しになったと聞いています。

もちろん、購読者の方々の中には、「武蔵」 の最終状態の姿に愛着をもっておられる方がおらるかも知れませんが、本シリーズとしての艦容のバラエティさを優先させたためとお考え下さい。

本シリーズが80隻並んだ時に 「大和」 と 「武蔵」 がほぼ同じ形というよりは、こちらの方が遥かに見栄えがすると思いますし、それが本シリーズのコンセプトに合致するものと考えています。

このことは、シリーズのこの後で日本の同型艦を出す場合 (外国艦は全くのノータッチですので) にも、アドバイザーの一人として同じようにイーグルモス社に対してリコメンドしていくつもりにしています。

したがいまして、現在予告されているこの後の日本艦について、この艦はこの年代の姿で、というご意見・ご要望がありましたら、お聞かせいただければ大歓迎です。

もちろんイーグルモス社にはイーグルモス社としての考えと判断がありますから、全てが全てリコメンドどおりになる訳ではありませんが (^_^;


この 「武蔵」、何故か射撃指揮・測距儀塔の向きが前後逆に取り付けられて販売されてしまっています。 「大和」 と同じ部品で、なおかつ 「大和」 では正しく取り付けられているのですが ・・・・ ?

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そして、修正するようにアドバイスしてあった、2番及び3番副砲の前後にある機銃座の位置については直らないままでした。 これについては、当初の最終時状態のデザインから、急遽ここまで変更できたことで良しとして、ご容赦を。

細かなところでは、「大和」 との共通部分も含めて他にも色々ありますが、言い出すとキリのない話しになりますので ・・・・

2013年04月09日

モデル・アドバイザーの独り言 (14)

◎ 第5巻 「金剛」

第5巻は 「金剛」 です。 1944年の最終時の姿でモデル化されています。

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この 「金剛」 は当初は第3巻でしたが、先に書きましたとおり、全国版では第5巻予定の 「長門」 と順序が入れ替わっています。

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( 静岡版 「金剛」 のパッケージ表 )

モニターをしていただいているHN 「おまみ」 氏による評価記事は、氏のブログ 『模型の花道』 の次のURLです。


指摘されている点はそのとおりと思います。 特に、前部最上甲板の1番主砲塔と2番主砲塔の間にある繋ぎ目は顕著です。

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これは静岡版で指摘はしましたが、部品化の関係でとても間に合わず、修正できませんでした。 シリーズの他のモデルではこのような分割はしていないのに、何故この 「金剛」 だけこのようになってしまったのか ・・・・ ?

共通装備品のデザインの統一も指摘のとおりです。 シリーズが進むにつれてこのバラバラな形状がますます目立ってきています。 これも強くアドバイスしているところなのですが、少なくとも全国展開以前に静岡版で出してしまったモデルについては、時間的にほぼ無理なようです。

そして、静岡版の 「金剛」 で最も問題だったのが、塗装です。 特に前部主砲群から前檣楼脇にかけては 「?」 ものでした。 一体メーカーにどの様な塗装指示を出しているのかと。

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( 静岡版での塗装例 )

これらを含め、随分とあれこれ指摘はしましたが ・・・・

それでも全国版ではかなり、というかそれなりに見られる程度にはなりました。 イーグルモス社には今後の更なる改善努力に期待するところです。

2013年04月16日

モデル・アドバイザーの独り言 (15)

◎ 第6巻 「伊勢」

シリーズ第6巻は 「伊勢」 です。 航空戦艦としての改造後の1944年の姿。

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既に書きましたとおり、この 「伊勢」 は静岡版では第4巻でしたが、全国版ではこの第4巻には竣工時姿の 「武蔵」 が入り、「伊勢」 が第6巻となりました。

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モニターをしていただいているHN 「おまみ」 氏による評価記事は、氏のブログ 『模型の花道』 の次のURLです。


私としてもおまみ氏の評価についてはほぼ同意できるところです。 

ただ、静岡版を購入された方はお判りいただけると思いますが、全国版のこの状態でも静岡版からはかなり手が入りました。 この点はイーグルモス社としての改善努力は評価していただいてよろしいかと思います。 次のものなどはその例です。

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( いずれも左が静岡版、右が全国版 )

前檣楼下両舷の02甲板が鉄甲板となっており、リサーチミスとのご指摘をおまみ氏からいただいておりますが、実はここ、静岡版から改正された部分です。

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( 左が静岡版、右が全国版 )

前檣楼両脇にあった短艇及びそのダビットを撤去しましたが、この改正の際、当該甲板が当初の鉄甲板状態であることが非常に目立つようになりましたので、全国版用の改正テストモデルが出来た時に是非修正するように指摘をしましたが、モールド追加や塗り分けなどの関係があって、結局間に合わず (^_^;


この 「伊勢」 についても、私が関わりだしたのは静岡版完成の後でしたので、この他に色々と修正・改善についてアドバイスはしましたが、残念ながらスケジュールとコストの関係で大きなところは無理でした。

その最大の点がバルジの断面形状です。 このバルジが修正されていたならば、1/1100スケールのモデルとしてはかなりの出来栄えになったと考えます。

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ところで、おまみ氏の指摘があり、購入された方々からも多くの声をいただいているとおり、製品の出来上がりの個体差が非常に大きいことは本シリーズ当初からの問題点です。 そして、残念ながらこれは程度の差はあれ、現在も続いている問題です。

イーグルモス社の担当者に対しては静岡版の時から再三声を大にして言ってきているところですが ・・・・ これが全国版においては静岡版として既にラインが出来上がっている初期シリーズでの問題なのか、今後改善されるものなのかは私にも判りません。

この問題だけでも改善されて良くなると、本シリーズの見栄えは全くと言ってよいくらいに違ってくるのですが ・・・・

そして、今回この問題に更に拍車をかけてしまったのが、パッケージ方式の変更です。 当初のパッケージ・カバーを開くと中のモデルの状態を見ることが出来、書店で個々の出来を確認してから購入することができましたが、今回の変更により全くのブラインド状態となりました。

実はこのパッケージの変更についても静岡でのテスト販売時から予定されていましたので、イーグルモス社には “絶対に不可” とアドバイスしてありましたが、結局全国販売でもこの第6巻から変更になってしまいました。

最大の理由が 「コスト」 で、当初方式を継続するのは採算が取れなくなるとのことですが、今回の第6巻の完成見本が送られてきた時にアドバイザーとして再度警告に近い形で申し入れました。

この点についてはイーグルモス社も理解してくれたようで、

「 当初のパッケージ方式に戻すことは困難であるが、何らかの方法で中が見える形ものに変更することで検討する 」

との回答を得ております。

既に生産ラインが進んでいるものについては元に戻すことは難しく、急には変更できないでしょうが、何れ近い内に改善されるものと思っています。

そして、イーグルモス社からこの問題について早急に正式なコメントが出されることを期待しているのですが ・・・・

2013年04月21日

モデル・アドバイザーの独り言 (16)

◎ 第7巻 「霧島」

シリーズ第7巻は 「霧島」 です。 ソロモンの海に沈んだ1942年の姿。

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この 「霧島」 は静岡版では第6巻でしたが、全国版ではこの第6巻に 「伊勢 」 が入りましたので、一つ順送りとなり第7巻となりました。

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( 静岡版のパッケージ表 )

ただシリーズとして、「大和」 「武蔵」 ならばともかく、第5巻 (当初第3巻) で1944年の 「金剛」 のあと、何故これだけ短い間隔で、1/1100スケールとしてはほとんど差が出ない1942年の 「霧島」 がスケジュールされたのかは判りません。

(このこともありましたので、イーグルモス社に対しては、同型艦は可能な限り年代、姿が異なるものとなるようにすることをアドバイスしております。)

モニターをしていただいているHN 「おまみ」 氏による評価記事は、氏のブログ 『模型の花道』 の次のURLです。


おまみ氏から指摘いただいた、

「 前檣楼正面各層に隙間があり、正面まで開放式になっているような印象を受ける 」
「 製品の仕様なのか個体差なのか 」

については、これは “仕様” です。

ご承知のとおり、当該部分は広い窓部分になっておりますが、これを1/1100スケールでどの様に表現するかということになります。 その一つがこの 「霧島」 で採られた方法と理解しております。 そして、元船乗りとしてはこれはこれで悪くはないと思います。

では、何故 「金剛」 と 「霧島」 でその表現方法が異なるのか?

おそらく、1隻1隻の担当のデザイナーさんがそれぞれで違うためと思います。 シリーズ全80隻を次々に出すためには、一人のデザイナーさんでは不可能ですから。

そしてイーグルモス社としては、その個々のデザイナーさんの感性やモデル化の手法については、それをかなりの自由度で認める方針のようです。

これについては、色々意見があり、またモデラーさん達一人一人の好みの問題もあるところと思いますが、これはこれでシリーズとしての考え方の一つであり、コンセプトとしてあり得ることです。

またある意味、デザイナーチームとしても、一連のシリーズ物として試行錯誤の段階 (だった) と言えるでしょう。 この後のものでは、中には艦橋の窓枠を表現したものもありますので。

そしてこの 「霧島」、前檣楼の表現も含めて、全体的形状としてはこれまでのシリーズの中ではかなり上の方と考えます。

「金剛」 で問題であった、第1主砲塔と第2主砲塔間の最上甲板の部品分割による顕著な繋ぎ目もありません。

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( 左 : 「金剛」 モデル   右 : 今回の 「霧島」 モデル )

したがって、私が見たのはこの 「霧島」 も静岡版モデルが完成して以降ですが、組み立てや塗装に関することを除けば、イーグルモス社に対するアドバイス点の少なかったものの一つです。

そこでこの 「霧島」 について、モデラーのHN 「ジョージ某」 氏に再組立と再塗装をお願いし、現在のモデルでその両者さえキチンとすればここまで見栄えがするものになる、という見本を作ってもらいました。

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氏のこの作品は、イーグルモス社の担当者が来日した時に 「このモデルならここまで良くなる」 と言って渡しました。 この作品、現在では中国メーカーの工場出入り口に飾られていると聞いています。

次回は、このジョージ某氏の作品をご紹介します。


なお、第6巻からブラインド・パッケージになってしまいましたが、昨日 (20日) イーグルモス社のHP 『世界の軍艦コレクション』 にて、第12巻から中のモデルが見える形式のものに変更する旨の公式アナウンスがなされました。


2013年04月26日

モデル・アドバイザーの独り言 (17)

◎ 第7巻 「霧島」 (続)

シリーズ第7巻 「霧島」 の続きで、HN 「ジョージ某」 氏のディティール・アップ作品をご紹介します。

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この作品は、中国メーカーでの組み立てと塗装の拙さ(と検品体制の不備)についてイーグルモス社に改善のアドバイスをするために、氏にお願いして静岡版の時に手を入れて貰ったものです。

ディティール・アップとは言いましても、基本は原則として一度分解しての 「再組立」 と 「再塗装」 です。 後は氏の時間と好みにお任せ、ということで。

まずは分解と塗装落とし。 この作業で細かな部品が幾つか欠損してしまったようですので、これは後で自作をしていただくことに (^_^;

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製造上の問題の一つ、ダイキャスト製の船体と甲板との隙間はパテなどで埋めていただき、再塗装。 木甲板は少しずつ色調の異なる数種類で木目のモールドに沿って。 もちろん、全国版でも直っていなかった前檣楼下の02甲板も、木甲板のモールドを入れて塗装。
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1/1100スケールでここまでこの木目表現の塗装をするかどうかは意見・好みの別れるところでしょうが、これを施すとモデル全体がグッと引き締まってみえることも確かです。

そして甲板上の部品の再塗装と再組立。

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前檣楼背面は氏の好みにより少し追加工作をしていただきました。 また後部マスト上部は分解の際に折損してしまったそうで、真鍮線で作り直しです。

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再塗装では、鋼板と木甲板部分のきめ細かな塗り分けのほか、艦橋窓、前檣楼各層のリノリューム、探照燈前面のガラスなどなど、細部の塗り分けをしていただきました。 最後に、氏の好みにより軽く汚しを。

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これで完成。 見栄えが全く変わって、実に良くなりました。

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( 元々の静岡版 )

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( 氏の再組立・再塗装による作品 )

もう少し細部をご覧いただきます。

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( 飛行作業甲板と艦載機にはかなり手が入っていることがお判りかと )

そして、運搬のために百均で売っている200円 (?) のコレクションケ ースに台座を固定してくれました。 クッション材で包めばかなりの衝撃に堪えられるでしょう。

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( このケース、本シリーズのモデルにピッタリのサイズです )

ご覧いただいたように、ジョージ某氏の腕もなかなかのものです。 しかしながらその一方で、この 「軍艦コレ」 シリーズ、組み立てと塗装さえ良くなれば、モデル自体は1/1100スケールとして決して悪いものでないことはご納得いただけると思います。 問題はそこなんですが ・・・・

この氏の作品は、以前イーグルモス社の担当者が来日した時に 「やるつもりなら、ここまで良くなるはず」 といって渡しました。 関係者に回覧した上で、現在では中国メーカーの工場出入り口に展示されていると聞いています。

う〜ん、このレベルならば購読者の皆さんにも諸手を挙げて喜んでいただけるのでしょうが、そうなると一体コストはどれ程上がるのか ・・・・ ? (^_^;

ジョージ某氏、立派な作品をありがとうございました。

2013年05月02日

モデル・アドバイザーの独り言 (18)

◎ 第8巻 「三笠」

シリーズ第8巻は 「三笠」 です。 1902年の就役時の姿。

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「三笠」 は静岡版のときから第8巻で予定されていました。

この早い段階で明治の艦艇が入ったことは、本シリーズが 「世界の軍艦」 と銘打っていることからも、そのバラエティさを出すためには適切な選択であったと思います。

中には第2次大戦期のみの各国の代表的な艦艇を期待された方がおられるかもしれませんが、この 「三笠」 は最初に書いたイーグルモス社の本シリーズについてのコンセプトに従うものです。

また、第1〜7巻までのモデルに比べるとサイズ的にはかなり小さいものですので、価格的に割高感をお持ちの方がおられるかもしれません。 が、それは単に商品として大きさだけを問題にした話しで、統一スケールでの製造上の手間暇としてはほとんど同じであると言えるでしょう。

それに、サイズを同じにしてスケールを変えるなどは論外の話しです。 また、サイズで価格を変えていく、というのも流通を考えるならば難しいことであり、おかしなことですから。


さて、この 「三笠」 モデルについてですが、モニターをしていただいているHN 「おまみ」 氏による評価記事は、氏のブログ 『模型の花道』 の次のURLです。


塗装については、「喫水線上が鮮やかな白黒ツートーンの竣工時の姿」 であり、確かに 「船体色に好き嫌いがあるでしょう」 ですが、私からすれば、それは単に軍艦と言えば灰色、という先入観・固定観念に過ぎないといえるでしょう。

灰色でないもの、灰色でない時代もあることを本シリーズ本来の主たる対象者に知って貰うためには、この 「三笠」 については就役時の設定で良かったと考えています。

ただし、就役時とは言っても、厳密にはサウザンプトンでの引渡し・就役時そのものの写真などは残されておりませんので、塗装などについては詳細は不明です。

実際、建造途中の写真では各部の色がその時々で変わっているのがお判りになるかと。 また、日本海軍の塗装変更時期と丁度重なったため、英国でも多少混乱があったようで、回航委員長・初代艦長の早ア大佐から海軍省に対して塗装はどうするのかとの問い合わせが行われています。

そしてこの白色部分、実際には白色に近い、かなり明るい灰色なのですが、その色合いについては不明です。 白黒の混合比は判りませんし、英国でそれに合致した混合比のものが使われたかどうかも判りません。

( 補足しますと、明治29年の段階では 「亜鉛華ニ其千四百分ノ一松煙ヲ混合シタルモノ」 と規定されていますが、これが明治35年でもこのままだったのか、その実際の色はどうだったのか、また英国で塗料をこの色に調整・調達可能だったのか、などは不明です。)

静岡版では上甲板以上の構造物については、当時の日本海軍の規定に合わせて 「灰色」 としておりましたが、これは明らかにちょっと濃すぎました。

そして全国版では、イーグルモス社でテスト販売が行われたパートワーク・シリーズ 『三笠を作る』 という1/130スケールの大型インテリアモデルに合わせて 「白色」 とされました。 ですから、見た目にはちょっと “目に鮮やかな” 白黒ツートンカラーということに (^_^)

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( 左奥が今回の全国版、右手前が静岡版 )

ただ、おまみ氏からご指摘いただいている次の2点ですが、

   マストが黒一色で、見張所から上が白塗装されていない
   装載艇甲板がデッキ色に塗られていない

前者については、確かに建造中の写真では戦闘楼 (ファイティングトップ) から上が黒色ではないものもありますが、サウザンプトンでの引渡し・就役時にはこのままであったかどうかは不明です。

そして、旧海軍の当時の規定 (明治34年9月10日の 『戦艦及一等巡洋艦塗色ノ件』 )によりマストは 「シェルターデッキ以上は黒色」 とされており、実際、日本回航途中にインド洋で遣英艦隊と会合した時の写真でもマストは全て黒色ですので、これはこれで誤りではありません。

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( 関重忠著 『渡英のおもかげ』 より )

また後者については、ご存じのとおりボートデッキは建造時から鉄甲板であり、木甲板ではありませんので、これも誤りではありません。 ただし、全国版でもモールドが修正されないままなのですが (^_^;

ただしこの全国版モデルのように、アンカーダビット及びボートダビットが、それまでの白色 (灰色) から黒色に規定が変更されたのは明治35年9月のことです。 まあ、長い艦歴からすれば、この9月時点としても 「就役時」 と言えないことはありませんが。

また、主砲塔の天蓋やバーベット上部が黒色となっていますが、これはイーグルモス社の好みとしか (^_^;


モデルの形状としては、確かに細かい点は色々あります ・・・・ が、残念ながらこの 「三笠」 についても、私が関わったのは静岡版が出来て以降であり、かつ他のモデルと異なって、何故か全国版に向けて沢山アドバイスした事項は、そのほとんどが容れられませんでした。 スケジュールの都合で致し方無かったのかもしれません。

それでも、全体的には1/1100スケールとして、また本シリーズのコンセプトからしても無難かつ適当なものであると思っています。 (例によって、残念ながら組立と塗装の塗り分けを除いて、ですが (^_^; )

そして既刊の7隻と一緒に飾ると、形状的にも塗色的にも一際異彩を放っています。 本シリーズのバラエティさを象徴する1隻であると言えます。

また、一般に出回っているものとしては、組み立てモデルでは1/350、1/500及び1/700が出ており、また完成済みモデルでは1/500などがありますが、この1/1100スケールの完成済みモデルが加わった意義も評価されるべきでしょう。 そして何れも日本海海戦又は黄海海戦時の姿のものであり、就役時の姿のものはほとんどありませんので。

( 就役時と黄海海戦時とでは既に少し異なることは皆さんご承知のとおりです。)

もちろん、これらをどの様に評価されるかは、実際に購入される方々、個人個人のご判断ということになりますが。

2013年05月07日

モデル・アドバイザーの独り言 (19)

◎ 第9巻 「榛名」

シリーズ第9巻は 「榛名」 です。 1928年の第一次近代化改装後の姿。

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すでに第5巻で1944年時の 「金剛」、第7巻で1942年時の 「霧島」 と続いていますので、この 「榛名」 については当初予定を変更してこの1928年の姿となりました。

ただ、既に企画がかなり進んだ段階での変更でしたので、各部に色々問題点が残ってしまったところがあります。 しかしながら、スケジュールの都合上これは致し方なかったものとお考え下さい。

逆にこの段階で変更を受け入れたイーグルモス社の姿勢を評価していただいてよろしいかと思います。

何れにしても、第一次近代化後の1/1100スケールのモデルとして一応の基本的形状は表現されておりますし、この状態のものは組立モデルでもありません (確か) ので、本シリーズならではと思っています。 本シリーズのバラエティさを表す良い例となりました。


モニターをしていただいているHN 「おまみ」 氏による評価記事は、氏のブログ 『模型の花道』 の次のURLです。


後部マストの高さはご指摘のように確かに寸足らずですが、ブリスターの都合でこれで一杯一杯とご理解下さい。 どうしても気になる方は、マスト上部だけでも真鍮線で作り直されることをお薦めします。

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この 「榛名」、1928年モデルにし直しましたが、シリーズでも初期の作品でもあったため、全体的なモールドなどの甘さは残ってしまいました。

そして、本モデルで最も問題なのは後部艦橋の形状が違うこと。 これは図面や写真の他、静岡版を知人のモデラーさんに頼んで改修して貰ったもの (後部艦橋などの他は基本的には再組立再塗装のみ) までも渡しましたが、それでも直りませんでした (^_^;

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( 上が静岡版、下が知人の改修板 )

その他、8センチ単装高角砲が表現されていないこと (プラットフォームのみ)、水偵の塗色が銀色でないこと、などなど細かいところでは色々あります。

スケジュール的にも余裕がなかったと想像されますが、モデル・アドバイザーの一人としてはもう少し頑張って欲しかったですね。 最低限でも後部艦橋は。

それでも、おまみ氏にも評価いただいたように、これまでのモデルの中では組み立て及び塗装については一番であろうかと思います。

上部構造物やマストなどの傾きはほとんどありませんし、細かな部品の取付不良もわずかです。

ただこれがこの 「榛名」 だけのものなのか、シリーズとしての製造工程や検品などの体制について見直し・改善がなされたのかは私も判りません。 今後しばらくは様子を見ての上でのことになります。


これでやっと本ブログも現行発売の最新巻まで追いつきました (^_^)  次からは新巻の発売に合わせて書きます。


2013年05月12日

1/1100 「大和」 「武蔵」 ディティールアップ

イーグルモス社の 「世界の軍艦コレクション」 でモニターをされているHN 「おまみ」 氏が 「大和」 と 「武蔵」 のディティールアップを完了し、その姿をご自身のHP「模型の花道」にて公開されました。

「大和」 :

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「武蔵」 :

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画像の転載・引用については氏より承諾をいただいていますが、是非当該HPをご訪問いただき、大きなサイズと詳細画像の数々をご覧いただきたいと思います。

どちらも凄いです、というより驚嘆に値しますね。

1/1100スケールですが、画像で見る限りでは1/700と言われても信じてしまいそうですし、1/350に十分匹敵する内容です。

そしておまみ氏の感心するところは、これらのディティールアップについてそのテクニック、使用した素材や工具などを丁寧に紹介されていることです。

「大和」 「武蔵」 ディティールアップ (前編) :

「大和」 「武蔵」 ディティールアップ (後編) :

もちろんこれらについては、1/700でも1/350でもその製作上で十分に参考になるものですね。

う〜ん、これでシリーズ全80隻が揃ったらどういう事になるのか (^_^)

それにしても、このシリーズ、モデルそのものの基本は決して悪くはないことがお判りいただけるものと思います。 一番の問題は組立と塗装なんですが ・・・・