2013年10月10日

米海兵隊の運用法 (12)

海上事前配備船隊 MPSRON

前回お話しした MEB は標準編成で総計約18000名にもなり、しかもその装備、機材、補給物資なども膨大なものになります。

したがって、MEU の様にこれらの全てを洋上即応態勢とすることは、いくら米軍といえども不可能なことですし、例えその様なことをしても不経済です。

とはいっても、危機発生の場合には可能な限り速やかに所要兵力を米本土又は沖縄から目的地へ展開しなければなりません。 この迅速さが軍事においては最も重要なことの一つだからです。

このため、米海軍・海兵隊が採っている方策が海上事前配備船隊 MPSRON (Maritime Prepositioning Ships Squadron) と言うものです。

これは、民間の大型輸送船の各種タイプのものを傭入して、4〜6隻で1個船隊を組み、これに1個 MEB の装備 (個人装備を除く)、機材及び30日分の弾薬・補給物資を搭載して、予想される地域近くの洋上で即応待機させるものです。

そして、何かあれば所要の地近くの港湾に急行し、その地で海上又は航空輸送された MEB の兵員に搭載物件を引き渡すわけです。

もちろん、MPSRON は迅速な陸揚げのために設備の整った港湾に入ることが求められますが、その任務の性格上、ある程度自力での揚陸が可能な能力を考慮した船舶が選定されていることは申し上げるまでもありません。

この MPSRON は 軍事海上輸送軍団 MSC (Military Sealift Command) の下に3個船隊で構成されており、MPSRON 1 は 2 MEB (II MEF) 用として地中海・大西洋に、MPSRON 2 は 1 MEB (II MEF) 用としてディエゴ・ガルシア近傍に、 そして MPSRON 3 は 31 MEB (III MEF) 用としてグァム・テニアン近傍の洋上で即応待機の態勢を採って “いました”。

しかしながら、現在では大西洋及び地中海方面での危機発生の可能性は極めて低くなったと見積もられることから、米軍の Transformation と軍事費削減もあって、昨年の2012年9月に MPSRON 1 は解隊されてしまいました。

下の図は従来のものですが、各 MPSRON が7日及び14日で対応可能な範囲が示されています。

MPF_response_zone_s.jpg

これを見ると、MPSRON 1 は中東方面に対する MPSRON 2 の後詰めとしてもその価値は非常に高いことが判ります。 (実際、先のイラク戦争ではそれが遺憾なく発揮されたわけですが。)

残念ながら米海軍・海兵隊といえども流石に昨今の軍事費削減には堪えられないものと言えます。 そして現在再編中の MPF (Maritime Prepositioning Force) 及び MSC 全体の今後が注目されるところでもあります。

現在の MPSRON 2 は6隻、MPSRON 3 は4隻の編成ですが、所属船舶は固定されたものではなく、前者が12隻、後者が8隻の中から順次配属され、残りは修理や他の任務に就きながら定期的にローテーションします。

USNS_Charlton_s.jpg   USNS_kocak_s.jpg

USNS_martin2_s.jpg   USNS_stockham6_s.jpg
( MPSRON を構成する船舶の例  元画像 : 米海軍公式サイトより )

MPSRON の船舶は、その乗組員と共に海軍に傭入されており (もちろん傭入に伴いヘリコプター甲板の設置など所要の改造がなされています)、各船の運航は船長以下元々の船会社からの乗組員により行われていますが、船隊司令 (通常は海軍大佐) 及びその司令部要員だけは海軍軍人です。 (最近は少数ですが海軍軍人が乗員として乗り組んでいる船もあるようです。)

つまり、船隊及びその所属各船の運航・運用は船隊司令の指揮の下に行われており、また軍事的な情報などは全て司令部のみが取り扱います。

そして各船隊は洋上待機が基本で、止むを得ず近くの港湾に入る場合、あるいは錨泊する場合は、指示があってから24時間以内に全船が出港できることが条件となっています。 もちろん、各船の船長といえども自分の船を勝手に運航することはできませんで、全て船隊司令の指示と許可に基づきます。

また、各船の船長以下乗組員の交代についてはその傭船元の船会社によりますが、司令部の海軍軍人は1勤務1年間とされています。

因みに、2003年のイラク戦争の時には、ディエゴ・ガルシアの MPSRON 2 がカルフォルニアの 1 MEB と共に、I MEF FWD としていち早くクウェートに駆けつけたことは記憶に新しいところです。
(この項続く)

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前 : 「その11 海兵遠征旅団 MEB」

次 : 「その13 海兵遠征軍 MEF」

posted by 桜と錨 at 21:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと
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