2013年08月20日

米海兵隊の運用法 (6)

両用即応群 ARG (続)

太平洋には前回ご説明した ARG A に加えて、第7艦隊所属の佐世保を母港とする PHIBRON 11 に沖縄の III MEF 隷下の 31 MEU を搭載した ARG B と呼ばれるものがあります。

USAmphib_Ops_24_s.jpg
(PHIBRON 11 の構成は現在のもの)

この ARG B は前回ご説明した ARG A とはちょと異なり、次の3つを主任務とします。

USAmphib_Ops_25_s.jpg

これは、沖縄に前方展開する III MEF が極東における抑止力として機能するためには、その MEU は常時洋上待機とするよりは、必要に応じて展開する方が効果的と考えられてるためです。

( つまり、III MEF は、ベトナム戦争などの大規模紛争時を除くと、純粋に極東の抑えであり、逆に言うと米海軍の兵力運用の振り回しからすると極東の人質という足枷になっているわけです。)

加えて、即応待機している ARG A をアジア諸国との共同演習など (これが年間相当な数に上ります) に使うわけにはいかないためでもあります。

USAmphib_Ops_26_s.jpg

ところが、最近の国際情勢からは、中東及びインド洋での必要性が高まり、即応待機の2個の ARG では不足するためにそうも言っておられず、これに加えて昨今の国防費・国防兵力削減が追い打ちをかけ、この ARG B (MEU 31) も忙しくなってきました。


なお ARG そのものには護衛艦艇は含まれませんが、当然ながらこれが作戦を行う時には別に護衛部隊が指定されますし、状況によっては ARG が空母機動部隊 CVBG (Aircraft Carrier Battle Group) に組み込まれて作戦部隊を編成することもあります。

( 最近この ARG を中核として更に強化した態勢がとられるようになりましたが、この米海軍の危機対応のやり方及び従来方式からの変化については次回で。)


ところで、ここで注意しなければならないことは、当然ながらこれら ARG は単に約2000名強の規模の1個 MEU の全兵員、装備・機材、物資を搭載していればよいという訳ではありません。

どこでどのような形で勃発するか判らない危機に対し、MEU をいつでも最適に運用して任務を完遂できる態勢を整えていなければなりません。

このため、ARG にはARG 指揮官とその司令部に加え、更に支援部隊として次のものが配属されて乗り組んでいます。

  艦隊外科医療班 Fleet Surgical Team (FTS)
  海軍海岸主導分遣隊 Naval Beach Group Detachment (NBG det.)
  捜索救難分遣隊 Search and Rescue Det. (HC SAR det.)
  水中処分分遣隊 Explosive Ordnance Disposal Det. (EOD det.)
  戦術航空管制分遣隊 Tactical Air Control Squadron Det.(TACRON det.)
  艦隊情報戦センター分遣隊 Fleet Information Warfare Center Det. (FIWC det.)
  海軍特殊戦任務隊 Naval Special Warfare Task Unit (NSWTU)

これらの将兵は、本来の部隊から単にその時に ARG に割り当てられて乗艦している、いわゆる “お客さん” や “便乗者” ではありません。

当然ながら、各自の専門に加えて両用戦及び外地での作戦について、そしてARG や MEU の作戦行動内容について、十分な知識と技量、経験をもったスペシャリスト達です。

そして、MEU と同じく、これら全てが展開予定の ARG として事前準備・事前訓練を行い (通常6ヶ月間)、最終的な展開前検閲を受けます。

もちろんこの検閲に合格しなければ最悪 ARG 指揮官が即座に更迭されるか、少なくとも不合格となった部隊の指揮官更迭、部隊再編成の上で、改めて ARG 展開準備のやり直しとなります。

したがって、現実に即応展開している ARG には、両用艦艇の固有乗員と搭載する1個 MEU に加え、これらの要員を含めた数千名 (総計はその時その時で異なってきます) の人員が、高練度の一体となった運用態勢を整えているのです。

このことをとっても、単に海自輸送艦艇に上陸戦用の陸自部隊を搭載し、所要の地で陸揚げすれば、などという話しのレベルではないというはお判りいただけるでしょう。
(この項続く)

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前 : 「その5 両用即応群 ARG 」

次 : 「その7 遠征打撃群 ESG 」

posted by 桜と錨 at 18:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと
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