2013年08月06日

米海兵隊の運用法 (3)

海兵空地任務部隊 MAGTF

では、米海兵隊の主作戦兵力である艦隊海兵隊 FMF がどのように使われるのか、ということですが、その運用の基本が海兵空地任務部隊 MAGTF (Marine Air-Ground Task Force) (通称 “マグタフ” と呼びます) と言われるものです。

MAGTF は余程特殊な任務用、例えば、平和維持活動、災害派遣、医療支援、及び在外自国民避難など、主としていわゆる MOOTW (Military Operation Other than War) でない限り、必ず司令部 (Command Element、CE)、陸上戦闘部隊 (Ground Combat Elemant、GCE)、航空戦闘部隊 (Aviation Combat Element、ACE)、戦闘役務支援部隊 (Combat Service Support Element、CSSE)というの4つの要素で構成される任務 (統合) 部隊が作戦・運用単位となります。

USAmphib_Ops_08_s.jpg

即ち、米海兵隊は陸軍のような大隊とか師団などと言った管理編成がそのまま戦闘・作戦単位として使われることはありません。 必ずこの兵種混合の一体かつバランスのとれた部隊として運用されます。

そして MAGTF は、作戦規模と作戦目的によって、次のように MEF (Marine Expeditionary Force)、MEB (Marine Expeditionary Brigade) (通称 “メブ” )、MEU (Marine Expeditionary Unit) (通称 “メウ” ) という3段階の部隊編成の何れかがとられます。

MAGTF_01_s.jpg

その他、Special Purpose MAGTF というものもありますが、これは上記の特殊な任務用のもので、軍本来からすればいわば片手間的なものと言えます。 とは言え、昨今の国際情勢からはこれの活用場面が増えていることも確かですが (^_^;

(米軍における MOOTW や ROMO (Range of Military Operations)の考え方については、これはこれで一つの項目になりますので、機会があればまた別に。)

海兵隊の実戦部隊は MEF が最大でこれ以上の編成はありません。 というより、標準の MEF 以上の規模が求められる場合には、この MEF 編成がどんどん大きくなるだけのことです。

つまり、MEF、MEB、MEU というのは、単にその兵力規模の大小の違いというだけではなく、次のように基本的な運用の方法が夫々で異なるのです。

USAmphib_Ops_13_s.jpg

実際にどの様に異なるのかは本項のメインにもなりますので、この後順次詳細にご説明します。


さて、現在の米海兵隊の FMF は4個 MEF で構成されており、Force Provider 、即ち準備・態勢の完了した海兵隊部隊を艦隊に提供するための (実際の作戦指揮の権限は持たない) Marine Force Pacific (MARFORPAC)、同 Atlantic (MARFORLANT) 及び同 Reserve (MARFORRES) の下に次の様に配備されています。

USAmphib_Ops_03_s.jpg

常設の実動部隊は I 〜 III の3個 MEF で、IV MEF は即応予備です。 ただし IV MEF は予備とは言ってもその大部分は即応予備役 (Individual Ready Reserve、IRR) と特定予備役 (Selected Marine Corps Reserve、SMCR) の海兵隊員で構成されており、定められた定期的な召集訓練を繰り返し、必要に応じ即時に動員されて実戦配備に就く態勢が維持されています。

( もちろん同じ “即応予備” とはいっても、陸自のものとは規模も、内容も、レベルも、全く違いますが。)

これらはの MEF は、管理編成としてはいずれも1個海兵師団 (Marine Division)、1個海兵航空団 (Marine Aircraft Wing)、1個後方支援群 (Marine Logistic Group)、及びその他の部隊で構成されます。

“その他の部隊” と簡単に言ってしまいましたが、大変に沢山の部隊、兵種があります。 詳細については米海兵隊の公式サイトをご参照いただくとして、ここではひとまず省略します。

そして、これらの管理編成上の部隊から、それぞれその時その時の作戦上の要求に応じて必要な規模、内容、装備の兵力が実動編成の MEF、MEB、MEU に割り当てられます。

例えば、カルフォルニアに本拠を置く I MEF には MEF 自体の他に I MEB 及び 11、13、15 MEU という作戦部隊がありますが、これらは恒常的に存在するのは司令部のみで、兵力は必要に応じて管理編成の各部隊の中から訓練及び作戦準備が出来ている戦闘単位が割り当てられます。

というより、平時においては MEB 及び MEU は即応態勢維持のために、次はお前の部隊の番だ、一緒に組み合わされる他兵種部隊はこれこれだ、と言うように予め指定されたものである場合が多いのですが。

したがって通常はこの運用サイクルと予期される任務を見越して、人事・装備などを整え、それを以って部隊としての必要な教育訓練を行って、最終的な検閲に合格した上で実戦配備に就くことになります。

( この検閲に不合格となった場合には、指揮官は直ちに更迭、配属部隊は必要に応じて入れ替えられた後に新指揮官の下で改めて練成し直します。 このため交代時期がずれることもあり得ます。)

もちろん MEF というような大規模な兵力が必要になった場合には、その割り当てられている管理編成部隊の作戦可能な全兵力で対応することは申し上げるまでもありませんし、状況によっては即応予備の IV MEF などからの増強を受けることもあります。

とはいっても、危機対応でその MEF 全体がいきなり出ることはまずありませんで、それより先に、他の MEF からのものも含めた、即応態勢にある MEU や MEB が動いている可能性が高いですし、MEF の先遣部隊として MEB 規模レベルの MEF FWD (Foward) が出る場合がありますが、これについてはこのあと順に詳しくお話しして行きます。

要は、海兵隊の運用は、事態に応じた即応性と MAGTF 編成の柔軟性が特徴であり、カギであると言うことで、これは決して陸軍 (そして空軍も) には真似の出来ないところです。

しかもそれを可能とするのは、海軍と一体となったものであるからこそ、ということを頭に置いていただき、次に進みましょう。
(この項続く)

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前 : 「その2 米海兵隊とは何か」

次 : 「その4 海兵遠征隊 MEU」

posted by 桜と錨 at 17:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと
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