シリーズ第8巻は 「三笠」 です。 1902年の就役時の姿。

「三笠」 は静岡版のときから第8巻で予定されていました。
この早い段階で明治の艦艇が入ったことは、本シリーズが 「世界の軍艦」 と銘打っていることからも、そのバラエティさを出すためには適切な選択であったと思います。
中には第2次大戦期のみの各国の代表的な艦艇を期待された方がおられるかもしれませんが、この 「三笠」 は最初に書いたイーグルモス社の本シリーズについてのコンセプトに従うものです。
また、第1〜7巻までのモデルに比べるとサイズ的にはかなり小さいものですので、価格的に割高感をお持ちの方がおられるかもしれません。 が、それは単に商品として大きさだけを問題にした話しで、統一スケールでの製造上の手間暇としてはほとんど同じであると言えるでしょう。
それに、サイズを同じにしてスケールを変えるなどは論外の話しです。 また、サイズで価格を変えていく、というのも流通を考えるならば難しいことであり、おかしなことですから。
さて、この 「三笠」 モデルについてですが、モニターをしていただいているHN 「おまみ」 氏による評価記事は、氏のブログ 『模型の花道』 の次のURLです。
塗装については、「喫水線上が鮮やかな白黒ツートーンの竣工時の姿」 であり、確かに 「船体色に好き嫌いがあるでしょう」 ですが、私からすれば、それは単に軍艦と言えば灰色、という先入観・固定観念に過ぎないといえるでしょう。
灰色でないもの、灰色でない時代もあることを本シリーズ本来の主たる対象者に知って貰うためには、この 「三笠」 については就役時の設定で良かったと考えています。
ただし、就役時とは言っても、厳密にはサウザンプトンでの引渡し・就役時そのものの写真などは残されておりませんので、塗装などについては詳細は不明です。
実際、建造途中の写真では各部の色がその時々で変わっているのがお判りになるかと。 また、日本海軍の塗装変更時期と丁度重なったため、英国でも多少混乱があったようで、回航委員長・初代艦長の早ア大佐から海軍省に対して塗装はどうするのかとの問い合わせが行われています。
そしてこの白色部分、実際には白色に近い、かなり明るい灰色なのですが、その色合いについては不明です。 白黒の混合比は判りませんし、英国でそれに合致した混合比のものが使われたかどうかも判りません。
( 補足しますと、明治29年の段階では 「亜鉛華ニ其千四百分ノ一松煙ヲ混合シタルモノ」 と規定されていますが、これが明治35年でもこのままだったのか、その実際の色はどうだったのか、また英国で塗料をこの色に調整・調達可能だったのか、などは不明です。)
静岡版では上甲板以上の構造物については、当時の日本海軍の規定に合わせて 「灰色」 としておりましたが、これは明らかにちょっと濃すぎました。
そして全国版では、イーグルモス社でテスト販売が行われたパートワーク・シリーズ 『三笠を作る』 という1/130スケールの大型インテリアモデルに合わせて 「白色」 とされました。 ですから、見た目にはちょっと “目に鮮やかな” 白黒ツートンカラーということに (^_^)

( 左奥が今回の全国版、右手前が静岡版 )
ただ、おまみ氏からご指摘いただいている次の2点ですが、
マストが黒一色で、見張所から上が白塗装されていない
装載艇甲板がデッキ色に塗られていない
前者については、確かに建造中の写真では戦闘楼 (ファイティングトップ) から上が黒色ではないものもありますが、サウザンプトンでの引渡し・就役時にはこのままであったかどうかは不明です。
そして、旧海軍の当時の規定 (明治34年9月10日の 『戦艦及一等巡洋艦塗色ノ件』 )によりマストは 「シェルターデッキ以上は黒色」 とされており、実際、日本回航途中にインド洋で遣英艦隊と会合した時の写真でもマストは全て黒色ですので、これはこれで誤りではありません。

( 関重忠著 『渡英のおもかげ』 より )
また後者については、ご存じのとおりボートデッキは建造時から鉄甲板であり、木甲板ではありませんので、これも誤りではありません。 ただし、全国版でもモールドが修正されないままなのですが (^_^;
ただしこの全国版モデルのように、アンカーダビット及びボートダビットが、それまでの白色 (灰色) から黒色に規定が変更されたのは明治35年9月のことです。 まあ、長い艦歴からすれば、この9月時点としても 「就役時」 と言えないことはありませんが。
また、主砲塔の天蓋やバーベット上部が黒色となっていますが、これはイーグルモス社の好みとしか (^_^;
モデルの形状としては、確かに細かい点は色々あります ・・・・ が、残念ながらこの 「三笠」 についても、私が関わったのは静岡版が出来て以降であり、かつ他のモデルと異なって、何故か全国版に向けて沢山アドバイスした事項は、そのほとんどが容れられませんでした。 スケジュールの都合で致し方無かったのかもしれません。
それでも、全体的には1/1100スケールとして、また本シリーズのコンセプトからしても無難かつ適当なものであると思っています。 (例によって、残念ながら組立と塗装の塗り分けを除いて、ですが (^_^; )
そして既刊の7隻と一緒に飾ると、形状的にも塗色的にも一際異彩を放っています。 本シリーズのバラエティさを象徴する1隻であると言えます。
また、一般に出回っているものとしては、組み立てモデルでは1/350、1/500及び1/700が出ており、また完成済みモデルでは1/500などがありますが、この1/1100スケールの完成済みモデルが加わった意義も評価されるべきでしょう。 そして何れも日本海海戦又は黄海海戦時の姿のものであり、就役時の姿のものはほとんどありませんので。
( 就役時と黄海海戦時とでは既に少し異なることは皆さんご承知のとおりです。)
もちろん、これらをどの様に評価されるかは、実際に購入される方々、個人個人のご判断ということになりますが。