防雷具の本体は 「パラベーン」 (Paravane) と言われるもので、第1次大戦時に英海軍で採用され、旧海軍では地中海に派遣された第二特務艦隊がこれを使用し持ち帰ったのが始まりです。
当初は本体に爆薬を装着した対潜兵器でしたが、その後効果・効率の点から対機雷装備となりました。

( 第二特務艦隊の駆逐艦に装備された英国製の対潜用パラベーン )
その後今次大戦の終戦までサイズや性能により幾つかの型式のものが作られましたが、戦艦及び巡洋戦艦クラスで使用するのが 「大防雷具」 (旧防雷具一号)、巡洋艦クラスが 「中防雷具一型」 (旧防雷具二号)、そして駆逐艦クラスでは 「中防雷具二型」 及び 「同三型」 と言います。
図はその一例で、「中防雷具一型」 ですが、他のものも外形及び構造はほとんど同一で、一見するとほとんど区別がつきません。

この防雷具本体 (展開器) は昭和期でも結構写真などに写っていますので、あ〜あれか、と思われるのでは?

( 中防雷具の例 左 : 「三日月」、右 : 「不知火」 ) (注)
基本的にこれを主力艦では艦首から、駆逐艦クラスでは艦尾から、ワイヤーで水中10〜15メートルの深さ、左右展開32〜35メートルになるように曳航します。
展開した状態はちょっと良い図がないのですが、イメージ的には次の様になります。 (ただしこの図は特設艦船用の 「軽便防雷具」 のもので、装置そのものは主力艦クラスとはちょっと異なります (^_^; )

主力艦の場合では、次のように曳航ワイヤーを通すための穴が艦首に開いています。

( 左 : 「鈴谷」 右 : 「矢矧」 )

( 左 : 「加古」 右 : 「高雄」 )

( 柱島沖から引き揚げられた 「陸奥」 の艦首 )
「阿賀野」 の公試写真で艦首両舷に見えるワイヤーはこの穴に通じているパラベーンの曳航索です。

防雷具は、事前に掃海艇などで繋維機雷の掃海を実施する余裕がない場合などに、自身でこれを曳航して海面に進入するためのものです。
当然ながら、繋維機雷に対するものですから、港湾など沿岸近くの浅海面で作戦する場合に使用します。
曳航ワイヤーに引っかかった繋維機雷の繋維索が、そのままワイヤーに沿ってズルズルと本体のところまで行き、そこで本体の頭部にあるカッターで繋維索を切断するようになっています。
繋維索が切れた機雷缶 (本体) は浮力で海面に浮かび上がりますので、後続の艦はこれを避けるか、銃撃処分することになります。
いわば掃海具の一種といえますが、大型艦の場合は艦首から展張することにより、その曳航ワイヤーによって繋維機雷が船体に当たることを防ぐことが出来ます。
また、掃海艇による掃海と異なり、作戦行動中に高速で使用可能なように作られており、「大防雷具」 なら最大22ノット (通常使用は20ノット)、駆逐艦クラスの 「中防雷具三型」 なら最大31ノットまでOKです。
この高速使用のため、本体の水中姿勢を安定させるために水銀が使われているのが特長です。
掲示板でお尋ねの 「阿賀野」 の 「防雷具の公試中」 の写真は、この防雷具がキチンと展張・揚収ができ、かつ所定の速力まで安定して作動するかどうかを確認するためのものです。
なお、判りやすい簡単なイラスト解説としてはグランプリ出版から出ている 『軍艦メカニズム図鑑』 シリーズなどをご覧いただけばよろしいでしょう。
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(注) : 「展開器」 の例として駆逐艦搭載の写真を2例提示しておりますが、もしかすると誤解される方がおられるかも知れませんので、追加説明を。
写真の 「三日月」 と 「不知火」 搭載の展開器は、そのサイズと形状がはっきりしませんが、これが 「中防雷具三型」 の展開器とするとこれは本装置を 「防雷具」 として使用していることになります。
その一方で、この展開器が 「中防雷具一型」 のものと同じものとすると、これは 「単艦式大掃海具」 (旧大掃海具三号) の展開器であり、「掃海具」 として使用していることになります。
しかも、この2つの展開器は形状及びサイズともに非常によく似ていますが、駆逐艦の本装置で 「中防雷具三型」 の展開器を掃海目的に使用しても、これを 「単艦式大掃海具」 とは言いません。
話しが非常にややこしいことになり、かつ何れともその可能性がありますが、残念ながら写真ではカバーがかかっており、この展開器がどちらなのかはっきりしません。