2012年08月27日

大空への追想 (18)

著 : 日辻常雄 (兵64期)

第2章 支那事変の巻 (承前)

    第3話 南支沿岸封鎖作戦 (承前)

        その3 陸上輸送攻撃

 陸上輸送の主力は牛車である。 6ヶ月間の戦闘で自動車を発見したのはただ一両に過ぎなかった。

 人海戦術に事欠かないことと、支邦人特有の執念深さがよく陸上輸送にあらわれていた。 海上のジャンクから、牛車に連なり、道路、橋梁の破壊された所では一輪の手押し車、天秤棒までが貴重な輸送機閑になる。 やられてもやられても、続くのだから決して短期間では片づかない。

(1) 15年6月24日に広州湾密輸港良田 (前出) を襲ったものの、その先の陸上輸送は末だ確認されていなかった。 雷州半島に沿っての山岳地帯の天候回復を待って偵察の結果、田んぼの中に新しい道路を発見した。


 蛇のようにうねる道路を丘から森、畠とたどってゆくうちに、延々と続く牛車の大群を発見した。 その数3百台。 それッというので好餌にむらがるハゲ鷹のように各機が襲いかかった。

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( 原著より  延々と続く牛車の群れ )

 九五水偵が降爆に続いて銃撃、次から次へと繰り返す。 九四水偵隊の方がこの攻撃にはむいている。 地上10米くらいまで舞い下りると、単縦陣の牛車の列に平行に飛びながら、旋回銃を連射しつつ何回でも往復できる。 牛が暴れ出す、人夫が牛車をすてて逃げまわる。 哀れと思うが、援蒋物資の阻止作戦上やむを得ない。

 逃げおくれると、人夫たちは牛車の横にすわり込んで飛行機を拝む。 中には大の字に寝転んで動かない者、恐らく “好きなようにしてくれ” と心中で叫んでいるのだろう。 こんなむごい攻撃は全く嫌になる。 しかし 「許せよ」 と叫びながら、心を鬼にして射ちまくる以外にない。

 太平洋戦争でも、引き揚げ邦人を満載した輸送船が数多く潜水艦の雷撃で沈められた。 特に病院船までが撃沈されている。 これが戦争なのである。 攻撃する我々にしても決して快哉を叫んで、襲いかかっているのではないのだ。

 このような攻撃が3日間続いた。 大体3日間連続攻撃すると、そのルートは変更される。 一回くらいの攻撃が成功しても、彼らは決して輸送を断念しない。
(続く)


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