2012年08月11日

大空への追想 (13)

著 : 日辻常雄 (兵64期)

第2章 支那事変の巻 (承前)

    第2話 これが戦場だ (承前)

 15年5月18日、この日が私の初陣である。 指揮官として九五水偵2機、九四水偵2機を率い、福州、興化間の橋梁爆撃に出た。

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( 九四式水上偵察機 )

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( 九五式水上偵察機 )

 高度千5百米、雲上から切れ間を利用して測風をやり、敵陣を偵察する。 不気味な陣地はあるが地上からの反撃なしと見て、九五水偵隊がまず勇ましい降爆に入った。 私よりもみな戦場の先輩である。 弾着は惜しくも橋脚をそれた。

 新参者だが、潜爆 (対潜爆撃法) なら自信がある。 水平爆撃をやめて、突っ込んだ。 高度3百米、橋が大きく目の中にふくらんで来る。

「 テーッ 」

 力一杯引き起こして目標を見ると、命中だッ。 橋が大きな煤煙に包まれ、ズシーンと機体に感ずる振動の快感。 これが初陣、どうやらこの調子ならいけそうだぞ ・・・・。

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( 原著より  江口橋梁爆撃 (昭和15年5月18日) ) (注)

 それにしても、一か月前まで飛び回っていた九州平野と比較すると、この福州は不気味な静けさに包まれていた。

 点在する支那特有の小さな部落と、これを繋ぐ道路、それも所々が大きく分断され、車両の通行を阻止している。 飛行機隊の姿を見たからかも分からないが、人ッ子一人いない。 各部に塹壕とトーチカらしい盛り土が見える。 一見平和な田舎のように見えるが、暗い陰が漂っている。

 ふと我に返ってみると、緊張の一語あるのみ、いつどこから射ってくるかも分からない。 列機の主翼の日の丸だけが、いやに目に滲みる。 これが戦場というものだろう。
(続く)

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(注) : 上の写真が江口橋梁で間違いないとすると、下の写真の場所と考えられます。 現在の福建省ホ田市 (ホは 「蒲」 から三水を除いた字) 江口鎮付近で、2つの川が合流する地点 (赤丸) です。


ekouchin_bridge_sat_02_s_mod.jpg
( 元画像 : Google Earth 及び Google Map より )

   拡大・回転し、斜め上から見下ろした形にして記録写真と比較してみました。 左方向が北になります。 赤丸内が当時の橋梁跡と考えられます。


013_01_s.jpg

ekouchin_bridge_sat_03_s.jpg
( 元画像 : Google Earth より )

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