2012年06月29日

大空への追想 (1)

著 : 日辻常雄 (兵64期)
第1章 水上機の巻

    第1話 大空への憧れ

        その1 故 郷

 「オギャーッ」 と産声をあげたのが大正3年 (1914年)、茨城県は筑波山の麓、霞ケ浦に流れ込む桜川を囲む沃野一望の中の片田舎である。 海軍航空のメッカ霞ヶ浦から飛び立つ練習機の唯一の目標は “筑波山ヨーソロ” である。

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( 原著より )

 この山に抱かれ、飛行機の爆音を開きながら育ったのだから、大空への憧れが人一倍強くなったのは当然である。

 小高い丘の上の小学校に学び、裏にそそり立つ石山の上に登って、遥かに霞ヶ浦航空隊のツェッペリン飛行船格納庫の大きな銀色の建物を眺めながら、虫のように飛び上がった飛行機が次第に近づいてくるのを待つのが何よりの楽しみであった。

 土浦中学校に通学し始めてからは、市内を闊歩する航空隊士官の姿が強く目に滲みるようになっていた。

 昭和7年頃、毎日のように新聞紙上を賑わせる上海事変の海鷲の活躍、その大胆不敵の行動に心を踊らせるようになったのが中学4年、

「 よしッ。 俺は海兵に入ろう。 若いうちに思う存分暴れ回ってパッと散ってしまいたい。 それには飛行機乗りになることだ。」


 という一風変わった考えを心の中に決め込んだのである。 家は貧乏だが親戚が応援してくれるはずだ。

 当時の教育環境だが、死を大前提としての教育は軍隊ばかりではない。 北畠親房公が神皇正統記を書いたという小田城跡を残している我が故郷、やはり俺の体の中には勤皇の血が流れていたのである。

(続く)

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