海軍特務中尉 南 村 鶴 太 郎
『 日露戦争の従軍を憶ひて 』 (承前)
八、敵駆逐艦一隻を鳩湾に迫ひて撃沈
其の後我が第三戦隊は屡旅順に迫り、敵の哨艦と戦ひ、或は敵砲台より砲火を受けたる事枚挙に遑はない程であった。
或日 (2月25日) 、我が主力艦が旅順砲台を攻撃するに際し、我が第三戦隊は港口近く南方にありて敵艦隊の動静を監視しつゝあったが、午後一時頃敵の駆逐艦二隻港口に向ひ航海して居るのを認めたので、殿艦たる 「吉野」 は旗信に依り隊より離れ突進、之を砲撃した。
敵艦大に驚き、中一隻は 「吉野」 に追はれつヽ辛うじて港内に遁げ込んだが他の一隻は舵を転じて西方に向つて遁げ出したので本艦は 「千歳」、「笠置」 と共に全速力を以て之を追跡した。
敵は周章狼狽老鉄山を右に廻り鳩湾に入りて陸岸に乗り上げた。 而して乗員は皆海に飛び入り陸上目がけて遁げて居る有様がよく見えた。

( ロシア駆逐艦 「ウヌシーテリヌイ」 座礁沈没位置
図左 : 防衛研究所保管史料より、図右 : 1956年の米軍地図より )
我が戦隊は敵砲台の射撃を冒して接近し砲撃暫くにして、破壊沈没せしめ凱歌を挙げて引上げた。
(続く)