2011年04月23日

安保清種の砲術 (9)


二十六、司令塔にして海戦に災害を被りしもの敵にして 「ツレサレウ井ッチ」 「リューリック」 「オスラビヤ」 等其重なるものにして我に於ても今回の海戦に三笠、朝日、富士、日進等孰れも人員要具に多少の損傷を被れり 之れ蓋し現時の司令塔が恰も弾片派遣の収容所たるが如き位置に設置せらるるに因るものにして必ず改良せざるべからざるものの一つなり

元来司令塔なるものは戦闘中主脳将校が其艦を指揮操縦すべき最良唯一の発令所として設計せられたるものなるに拘わらず今日尚実戦に際し艦長其他主務将校等の位置に関し区々として多少の議論ある所以のもの必意するに司令塔の位置比較的低きに過ぐると展望の点に於て較や欠く所あるが為めに外ならずして其位置の高低展望の便否は実際一艦の戦闘力発揚上少なからざる関係を有するを以てなり

砲火の指揮は指揮者の眼高大なれば大なる程有利なるとは夙に一般の認める処にして実戦を経るに従て益々其感を深くせり

近来英国に在りても指揮者の位置を上檣楼に選定すべしとの議論ありと言うも蓋し所以あるなり 然れども其効果は指揮に関する通信機関の完全なる具備と相俟たざるべからざるが故に造船上設計せられたる指揮者の位置を離れて戦闘中任意の位置を選ぶは自から幾分の不利不便を免れずさればとて現時の司令塔を其儘高めんには 「ツリム」 の許さざる所にして勢い鈑厚を減ぜざる可らず 然るに操艦に要する諸機関なるものは各種の砲弾に対し絶対的に防護するの必要あり 舵機は固より回転「テレグラフ」の微と雖も其破損は直ちに陣形紊乱の因をなして戦局の不利を醸すことなきを保せず 「ツレサレウ井ッチ」 「リューリック」 の如き舵機に関する其好適例なり

是に於てか高きに従て益々有利なるべき指揮者の位置と飽迄防護を要すべき操艦諸旗艦の位置との調和は自から容易ならずして其孰れかに幾分の譲歩を見るか全然分離するか二者を選ばざる可からざるに居たる

今試に司令塔に就ての小官の考案を述ぶれば左の如し 但し一等巡洋艦以上の新造艦に対するものとす

現時の厚甲鈑司令塔を廃し中甲板「シタデル」甲鈑内に薄甲鈑大型司令塔を設け此処に舵輪其他操艦に要する一切の旗艦を備え尚お砲火指揮に関する諸機関の予備装置を設くるものにして其大さは適宜とし甲鈑の厚さは「シタデル」甲鈑と相俟て各種の砲弾に対し絶対的に防護せらるるに足るを要す 其天蓋甲鈑も亦然り、前檣の下半部を装甲檣とし其頂点に一司令塔を設け此処に「コンパス」測距儀其他砲火指揮に関する一切の機関を備ふるものにして下層司令塔、上檣楼、各指揮塔に通ずる伝話管の如きは殊に大径なるを要す 其の高さは現時の「コンパスブリッジ」より較や高きを適当とし其大さは内径3米突乃至3米突半位とす

上層司令塔並に装甲檣の厚さは3吋乃至3吋半位にて4千米突内外の距離に於ける6尹以下の砲弾と破片とを防護するに足るを要す


Mikasa_ModCon_01_s.jpg

   測距儀は上層司令塔の上部と装甲檣の台とに2個を常備し孰れも防護鈑を有す 別に日常の航海用として操舵に要する機関の一部を現時の如く下層司令塔より 「ホイルハウス」 に導く可し 「ホイルハウス」 は戦時取除く様設計するも可なり

前檣は装甲檣とは全く独立にし小形のものを設くるも可なり 右は昨年10月小官八雲在職中提出したる意見と其主義に於て同一なるも今回の海戦に於て益々其必要を認めたるに付微細の点に修正を加え更に提出せるものとす


(この項続く)
posted by 桜と錨 at 11:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 砲術の話し
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