前回、砲術長安保清種の実施した砲術について 『三笠戦闘詳報』 から抜萃してご紹介しました。 この報告書は 『日本海海戦戦闘詳報 第一号』 (三笠機密第151号、明治38年6月10日) として連合艦隊司令長官に提出されています。
この戦闘詳報は戦闘実施の詳細について、いわゆる “記録” として報告することが定められていますので、戦訓事項については本来的な意味からすると付加的なものです。
そこで 「三笠」 艦長の伊地知は、将来の海戦及び戦備を念頭にこれまでの戦訓に基づいた改善・改良について、自らはもちろんのこと、主要幹部を始め、初級士官や候補生、准士官に至るまで広く意見を集め、これを纏めて連合艦隊司令長官に提出しました。 現場担当者の率直な意見をそのまま全て出した訳です。
これが 『第二期戦闘中ノ実験ニ依リ攻究シ得タル事項並ニ将来改良ヲ要スベキ諸種ノ点ニ付キ意見』 (三笠機密第177号、明治38年7月4日) です。

( 防衛省防衛研究所保存保管の史料より )
( なお、軍令部及び海軍省も同様の意見聴取の必要性を認め、8月8日になって 「官房機密第943号」 により全艦艇から提出させることとしました。)
伊地知艦長自身の意見を始め、それぞれ大変に興味深いことが沢山書かれていますが、ここでは本題に沿って、当の安保清種砲術長の提出分からその全項目をご紹介します。
当時の艦砲射撃について砲熕武器と砲術の両方の実態について記されているとともに、当時の戦艦の砲術長としてどの様な事が関心事であったかが判る貴重なものです。
日本海海戦に於ける実験事項並びに将来の改良に就いての希望 三笠砲術長 海軍少佐 安保清種 一、砲火の指揮は全然艦橋に於いて掌握するを原則とし指揮に関する通信系統は必ず之に基づきて設計するを要す |
(注) : 6尹7番砲の事とし、かつ砲手番号が未記入ですが、「三笠戦闘詳報」 を見る限りではこれは6尹5番砲の事で、当該砲手は5番の野村幸平二等水兵の事と考えられます。
既に何度もご説明してきましたので更なるものは不要と思いますが、ここに記されてるのは砲側照準による 「独立打方」 を如何に有効ならしめるか、ということ であって、 「一斉打方」 の方法ではありませんし、勿論この要領では 「一斉打方」 はできません。