2011年04月03日

『艦船乗員の伝統精神』 − (8)

著 : 坂部省三 (元海軍少将、海兵37期)

  第一章 海上勤務の特殊性 (承前)

    第六節 慣熟と油断

 運用術は日常遭遇する各種の状況を消化し、万遍なき苦心と修練を積み、漸く慣熟の域に達するものなるが、慣れて油断する者には怪我多く、初心者に却って過失の少ないと言うことは、昔から度々注意されて居ることで、無経験者必ずしも失敗あるに非ず、経験者とて油断すれば却って失敗を招く、要は何事を為すにも注意周到に緊張してやると言うことである。

 英国では航海の Sea Term として three "L"s と言うものがある。

    1. Look Out    2. Log    3.Lead

 吾々が船を取扱うにも、常に 「慣れても初心者なれ」 と言う訓言を守り驕慢を慎むと共に、虚栄心を起さざる様留意すること肝要なり。

 「天狗は芸の行き止まり、生兵法は大怪我の源」 と言うことも艦船操縦者にとりて味合うべきことである。

 昭和2年某船が長江に於て外国船に触衝したのも、自己の経験を過信し、無理をして他船の潮上に回頭を企図したことが主因とされて居る。

 大正13年寺島水道付近に於て某駆逐隊は三隻とも触礁又は坐礁した事件があるが、之れは慣れて居る海面の油断から来たものと言われておる。

 昔から、「同じ航路も初航路」 と教えられておる。 又 「保安に手加減は、保安の万全を期する所以にあらず。 常に万全を期することが保安の第一義なり」 とも言われておる。

 河野左金太少将 (海兵13期) は、「狭い水域で気を暢ばし、広い海面では警戒せよ」 と諭されておる。 要は油断なく而も虚心担懐なれと言うことであると思う。
(続く)
posted by 桜と錨 at 11:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 艦船乗員伝統精神(完)
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