2011年03月08日

『海軍電気技術史』 −(前)

 今回ご紹介する史料は、知る人ぞ知る旧海軍関係の貴重な資料です。

 終戦直後に関係者が集まって各分野・部門ごとに旧海軍の技術史を纏めたものの一つ、 『 海軍電気技術史 』 です。

IJN_nav_tech_his_01_s.jpg   IJN_nav_tech_his_02_s.jpg

 元々のものは、昭和22年になって一応完成した原稿のうち、第1章を除いたものが10部ほどガリ版印刷されたとされています。

 その内の1部、編纂委員長であった名和武元海軍技術中将保管分が防衛庁 (当時) に寄贈されましたが、既に経年劣化もあって非常に読み難いものでしたので、昭和44年にこれを技術研究本部においてタイプで起こし直して印刷・部内配布したものが、今回ご紹介するものです。 (以下単に 「防衛庁版」 と言います)  第1章を除く第2〜第5章を6部 (分冊) に分けて簡易製本されたもので、全頁数は900頁を越えます。 

 ただ残念なことに、この防衛庁版では本来第1部 (第1分冊) たるべき第1章が欠落しています。 防衛庁版ではこの第1章は 「原本紛失のため削除」 とされていますが、果たして本当なのでしょうか?

 当該資料の執筆者の一人である深田正雄氏に直接伺った話では、この電気技術史の全原稿が完成した時に、第1章の原稿は委員長の名和氏が 「これは俺が預かる」 と言って持っていったままそれきりになった、とのことでした。

 第1章の記述内容は第2章以下の概観であり、旧海軍電気技術の総括であったと推測されます。

 何か当時部外に出ては不都合な内容があったのか、あるいは海軍の技術行政・制度そのものに対する批判、特に当時存命中の上層部の者に対する、が書かれていたのか、とも考えられますが、それならそれとして当事者達の忌憚のない意見として貴重なものだったはずです。

 この第1章の原稿は、どこからかポロッと出てくるのではないかと期待しているのですが ・・・・

 何れにしても、現在残されている第2章以下の内容は大変貴重なもので、電気技術史とは言いながら、電気そのものはもちろんのこと、その電気が関係した砲熕武器・射撃指揮装置、電波兵器、電信電話、磁気兵器など広範かつ詳細なものが含まれています。

 この防衛庁版は研究者の間では有名なものでしたが、その内容の多くは今まで一般には出たことがなく、ほとんど知られていない事項も沢山含まれています。

 何故この様な貴重なものが復刻され出版されないのか、私としては不思議でなりません。

 今となってはこの防衛庁版もどこにどれだけ残されているのか判りませんが、もしチャンスがあるならば、旧海軍の武器関係に興味のある方は例えコピーであっても絶対に入手されておかれるべきものと思います。

 元々の資料作成経緯の詳細や現在の原稿の所在に関連した事項などについては、この後お話しします。
(この項続く)

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『海軍電気技術史』 −(後)

posted by 桜と錨 at 18:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 海軍のこと
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