| 照準点 一、四千米突以上の射距離に在りて横射に在りては敵艦如何なる方向に在るを問はず敵艦首より約四分の一の処にして前檣の直下 (二檣の場合を言う一本檣の時は最前部煙突の前方前艦橋の下を言う) 水準線上約三分の一の所 (甲) と改む縦射に於ては乾舷上中部 (乙) を照準するものとす ![]() 二、四千米突以内の距離に在りては十二尹砲は主として中央機関部の水準線直上を照準し (丙) 六尹以下の砲は飽迄も第一項を継続するものとす 三、三千米突以内に在りては十二斤砲以下は主として六尹砲台以上艦の中央部に射注するを要す 四、水雷艇 (駆逐艦) は常に其の艇首を照準す可し 五、照準線は如何なる場合を問はず必ず敵艦の艦首より此を導き前記の照準点に至らしむるものとす 六、通常射手が引金を曳き発砲するの作用を為したる瞬間より弾丸の砲口を離るるに至る迄は平均約半秒の間隔ある事を記憶す可し |
照準点の設定については、この後の 「付言」 の項でその主旨について出てきますので、そちらと併せてお読みください。
| 号 令 一、号令は総て号音、電話管、電気通信機及白書したる黒板を以てす 二、敵の軍艦水雷艇に向て同時に交戦する時は各必要なる号令の頭首に敵艦或は水雷艇なる語を冠して区別するものとす 三、距離の言令には左の発音を用ゆ 四、目標となす可し敵艦艇を示さざる時は砲台長或は砲台附将校は前に本職の指示する方針に従ひ適宜の選択をなし示令するものとす 五、先頭艦は戦闘艦と国音等しきを以て嚮導艦の語を用い最後の艦は殿艦なる語を用ゆ其の他の艦に在りては先頭或は我より見て右或は左より番号を以て示し 「右或は左より何番艦」 と唱ふ 六、転舵を為す時は面舵 (取舵) 宜候と唱へて砲台に通報す 七、射距離正確なりと信思するも弾着不良なる時は砲種或は砲番号と共に遠近を示して不良なるを知らしむ |
特にご説明を要するものはないと思います。
| 付 言 (イ) 八月十日の海戦は砲弾の被害をして比較的艦の後部に多かりしを確証せり (ロ) 厳格なる射撃軍紀の維持は砲戦中敵に制勝すべき唯一の素因なり |
(イ) 項については、日本海海戦におけるバルチック艦隊に与えたダメージを見る時、この方針が守られ、かつ適切であったことが判ります。 逆に言えば、それが出来る砲戦距離でもあったわけですが。
(ロ) 項についても、日本海海戦における諸艦の戦闘詳報を見るに、この方法が有効であったことが判ります。 そして逆に言えば、これが 「一斉打方」 ではなく、砲側照準による 「独立打方」 であったことの一つの証拠でもあります。
| 水雷戦策 一、魚形水雷は甲種水雷を使用す 但し乙種調和器発条に変換し得る準備あるべし 二、水雷の発射角度は前部は正横前十度後部は正横後二十二度半なる故に逆行の場合には艦首より其の角度迄の方位以外に於ては殆んど発射の時機なきを以て其の方位以内に於て発射の時機を得る事に努む可し同行の場合には之に及ばず 三、敵艦隊と平行の場合に於て正横距離二千五百米突以内にあらざれば発射の時機を得る事難し此線上に於て発射し得る最遠距離は約五千米突にして正横より四点又は五点以上の方位以外に於て照準を定むるの必要あり 四、艦隊の戦闘に於て本艦が敵に接近するの機会は寧ろ前部発射管に多きを見るならん故に乙種若は甲種の変換は一層迅速ならん事を要す 五、水雷発射の為め転舵の必要あるも砲火の妨げをなすことなく其の成功を期し得るの時に限り施行せんとす (終) |
水雷戦術のことですのでここではご説明は省略しますが、魚雷についてこの後別項にてお話しする時のために覚えておいていただきたいと思います。
それは 「甲種水雷を使用す」 と言っていることです。 そして必要に応じて何時でも乙種に切り替えて使うということを。 (えっ、何を言いたいのかもう判った、ですって? 鋭い!)
