2011年02月04日

加藤寛治の砲術 (4)

 続いて 『八月十日の海戦に於て砲火の指揮に関し得たる実験要領』 の後半で、前半の教訓事項に基づき加藤寛治が今後の 「三笠」 の砲戦のあり方についてその一方策を改善提起したものです。

 その全文を頭から順にご紹介し、ご説明します。

 以上の結論に基づき戦艦砲火の指揮に関する内規を試定せば左の如し

一、砲火の指揮系統
艦長 ―― 砲術長 ―― 伝令 (伝令管配置の将校及び下士卒)
                 砲台長 ― 砲台附 (中少尉候補生若は准士官下士)
                 砲術長従属
                 距離測定者


二、指揮者の位置
艦長             司令塔
砲術長           距離通報器の側
砲術長従属 (中少尉)    前上檣楼弾着観測
砲台長           上甲板前後六尹砲郭及び前後十二尹砲塔
砲台附           各六尹砲郭に一名宛必ず之を要す
                (但し砲台長所在の砲郭には之を置かざることを得)
                十二听砲以下は一分隊一砲台に一名宛
伝令             司令塔、斥候塔及び各伝令管に適宜


 この指揮系統・組織は先の 「斉射のやり方 (5)」 でご説明したものと同じです。 「三笠」 は開戦時からほぼこの形で実施してきましたが、変わったのは砲台附1名を6インチ砲の各砲廓ごとに置くことです。 その理由はこの後で出てきます。

 さて、「発令所」 もない、「号令官」 もいない、これで一体どうやったら砲術長の指揮の下に主砲、6インチ砲、補助砲の各砲種ごとの一斉打方ができるのでしょうか?

 つまり、黄海海戦においても、そしてその戦訓を得た後の日本海海戦においても、一斉打方はやっていないし、できなかった、ということです。

三、砲員
現在の定員にて配員するは当分の内左の標準に依る

一、六尹砲     砲郭 七名(内一名は照準器改装手となし伝令管員は射舷砲
             の七番より補う)
             露天 六名 (新式艦砲操式に依り射舷砲より補う)
一、十二听砲        三名 (朝日の如きは引揚員を二名宛とす)
一、二听半砲    檣楼 二名
   三听砲      上甲板 一舷二門に五名
一、十二尹砲    現在定員の六番若はなし得れば更に一名の怜悧なる砲手を
             加え照準器改装手となすことを絶対的に必要なり


(備考) 以上の砲員を配置するに当り要するときは探海燈員を発射管員兼務となすことを得 (朝日の如し)


 「射舷砲」 とありますが、おそらく 「対舷砲」 の書き写し間違いです。 でないと意味が通じませんので。

 それはともかく、“艦橋より令する射距離は各砲台・各砲で勝手に変えるな” というのであるならば、それは刻々と射撃計算済みの照尺距離を砲台に伝え、これを直ちに砲側照準器に調定していくことが必要になります。

 しかしながら、明治36年の 『海軍艦砲操式』 では、6インチ砲ではこの照準器の改調は8番砲手が行うことになっていますが、何故か 「三笠」 では砲廓砲で7名しか配員がありません。 これは 「三笠」 の乗組定員上の問題・制約から来るものと考えられます。

 したがって、1名をこの8番に、しかも照準器の操作専用に充てるには人員不足であり、更に伝声管の伝令が1名必要になりますから、あと2名は反対舷 (非戦闘舷) の砲などからの増援が必要と言うことになります。

 また、主砲では照尺改調は左右各砲の射手である砲塔長及び砲塔次長自らが行うことになっておりますので、各砲の6番砲手 (主として3番が行う揚弾・揚薬の補助) をこれに充てるか、別の照尺改調の専従員が必要であることを言っています。
(この項続く)
posted by 桜と錨 at 19:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 砲術の話し
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