2011年01月20日

斉射のやり方 (4)

1.射撃の手順 (承前)

(6) 弾着観測

 「一斉打方」 や 「交互打方」 における斉射では、その斉射弾の弾着観測を実施する方法は、大きく分けて2つあります。 「距間観測」 と 「比例観測」 です。

 前者は弾着の散布界の中心 (射撃中心、射心) と目標位置の中心 (標心) との距離を観測する方法で、これは4〜6千メートル程度の射距離であれば、檣楼上から何とか判定できる場合があります。 第1次大戦頃まではこの方法も各国海軍で一部用いられていました。

 後者はその名の通りで、目標と弾着点との距離に関係なく、目標の前後にそれぞれ何発ずつ弾着したかを観測する方法です。 例えば、「全遠」 「全近」 「夾叉 (2近4遠)」 などと言うようにです。

 斉射における弾着観測については、詳しくお話ししますとこれまた大変に長くなりますので、また別の機会にさせていただきますが ・・・・

 何れにしても、正確な弾着観測を実施するためには、弾着観測を実施する者に、その砲種の発砲と弾着のそれぞれの時期 (瞬間)、そして発砲 (弾着) のその都度の弾数が伝わらなければなりません。 (斉射とはいっても、必ずしも毎回準備門数の全門が発砲する (できる) わけではありませんので。)

 したがって、「時計射撃 (変距射法)」 や 「測距儀射撃 (測距射法)」 という近代射法において、「一斉打方」 や 「交互打方」 によって斉射を行おうとするならば、異なる砲種の弾着観測を一人 (砲術長又はその補助者) で実施できるわけがありません。


(7) 射弾修正

 いかに正確な測的をし(実際にはこれの誤差が大きいのです)、正確な射撃計算をし、正確な照準に基づく発砲をしても、現実には必ず誤差が生じます。 ですから艦砲射撃というのはなかなか当たらないものなのですが (^_^;

 例えば風一つとってみてもお判りいただけるでしょう。 射撃計算に使用した風向・風速はある時点で自艦で測定したものです。 風は “息” をしますし、ましてや自艦海面と目標 (敵艦) 海面のそれぞれで同じ風が吹いているとは限りませんし、更には海面と上空の風とは異なります。

 ですから、実際に打ってみて、計算と実際の弾着の差を修正し、「適正照尺」 「適正苗頭」 を把握しなければなりません。 これが試射を必要とする理由です。 これは射撃指揮装置が発達した現在でも同じことです。

 したがって、(6) の弾着観測に基づきそれを修正していくことになりますが、ここで注意しなければならないことは、その修正値は (1) や (2) では加味されないということです。 つまり最新の測的データに基づいて通常の射撃計算を行った(2)の後に、その都度その時の射弾修正値を加える必要があります。

 これは、砲戦実施中は誰かが常に現在の修正値を把握し、射撃計算に付け加えていかなければならない、と言うことです。 しかもそれは各砲種ごと別個に。


 以上簡単にお話ししましたが、これら全てのことが 「一斉打方」 や 「交互打方」 で斉射をやろうとすると必要になってきます。

 そしてこれらは機械・装置によって全自動的に実施し得ない限り、誰かがやらなければなりません。

 では誰がやるのか? もちろん砲術長自身が一人でこれら全てのことをやっている余裕など無いことは、皆さんも十分にお判りいただけると思います。

 したがって当然のこととして、そのための人員配置や機器・設備が必要になってきます。
(この項続く)
posted by 桜と錨 at 19:41| Comment(2) | TrackBack(0) | 砲術の話し
この記事へのコメント
私事で恐縮ですが、老父が若い頃(PFが主力だった頃です)、演習で父が射撃指揮をして、1回目で夾叉したので、「そのまま、急げ」で全斉射撃で夾叉したと、今でも時々自慢します。ただし、演習後の研究会での評価は、照準修正を行って2斉射目か3斉射目で夾叉した僚艦の同期生の方が高かったとか。父は、この点には不満の様子です。「まぐれで初回夾叉した者」よりも「基本に忠実に、照準修正を行った者」の評価が高かったのかも知れません。
その後、父は船務科を専門術科とし、同期生の方は砲術に進まれたとか。
50年以上前の話です。
Posted by YAMA at 2011年01月21日 20:12
 YAMA さん、こん**は。

 PFの頃はまだ旧海軍で射撃を習った、いわゆる神様達が沢山おられました。 その人達なら射後分析結果を見れば、まぐれかそうでないかは直ぐに判ったはずです。 おそらく若いご尊父様が “天狗” にならないようにとの配慮だったのではないかと推察しますが・・・・
 私の経験からも、優秀な射撃成績であった射撃指揮官よりも、大失敗をしながらもその後を冷静に対処し、かつ事後研究会でそれをしっかり分析・反省できていた者の方が褒められる、といった様なことは結構ありました。
Posted by 桜と錨 at 2011年01月21日 21:07
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/42761038
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック