2011年01月15日

回想録 『第12震洋隊物語』 − (105・完)

著 : 辰巳 保夫 (乙飛練19期)

 日本軍の善戦も空し、ついに 「コ」 島要塞は米軍の手に (承前)

 極度に窮した水を至る所に求め、当初は野菜など水煮の缶詰の水を、次にビールなどから採り喉を潤したりした。 そして地下トンネル内に立て籠もった我が兵士達は最後の1兵となるまで敵に抗戦するのだと意気込み、生き続けたのである。

 がしかし一時の間に合わせ的な措置は島内全日本軍兵士の喉の渇きを癒すことはできなかった。 喉の渇きは日増しに募り、遂にある者は渇きのために気も狂わんばかりになり、小便溜用の缶に潜った小水を口にする一幕もあった。 水と人間、水と戦闘、数えれば痛々しいばかりの水による教訓を学んだのである。

 かかる最悪の状況下にありながら、また数々の悲運にさいなまされながら我が日本軍兵士は、よく指揮官の統率に従い一糸の乱れもなく敵と戦った。

 そして夜ごと、斬り込み決死隊をもって敵兵舎に、また敵陣地に殴り込みの奇襲をかけ、敵兵と刺し違える自決の形をとり、敵を悩まし続けた。 これは我が軍に残された唯一の戦闘方法でしかなかった。

 17日夜 (板垣大佐の死後) から、18日、19日と敵との交戦が続いた。 そして戦闘の度ごとに兵士の消耗がひどく、大部分の兵士はこの間の戦闘で傷つき倒れた。

 負傷兵が続出しても、この者達をこれといった医療手当を施すすべもなく、負傷兵を横目に見ながら、ただ手を拱くばかりであった。

 20日に至り台地方面の我が軍は陣地の大半を喪失し、本格的な戦闘はほば終結したも同然となった。 同日敵の小型連絡機が島にある飛行場に着陸、直ちに使用を開始した。

 23日午後3時、日本軍はもうこれまで、後は神頼みしかなかった。 神が我が皇軍のために何か異変を与えくれますように ・・・・。 その異変により頽勢を挽回してくれるものと、ただそれだけを願った。

 そしてもうこれより他にない最後の手段をもって我が軍は敵に当たった。 海岸のトンネル内に残った大量の爆薬を詰め、この爆薬の炸裂によって、自分達の上にいる敵を一挙に吹っ飛ばし殲滅せんものと図ったのである。

 大成功を夢見つつ爆薬に点火した。 ところがトンネルの入口は過日爆発事故及び敵側の砲、爆撃によって埋没し塞がっており、思いもよらずこの爆風は敵側へではなく、皮肉にも逆に我が方へ向かって炸裂してしまった。

 この爆破後、直ちに敵へ二の矢を射つベく待期中であった我が斬り込み決死隊約200名は、一瞬にしてこの爆風になめられ尊い命を奪われてしまった。 なんと不幸なことよ。 我に利あらず、窮するうえに加えて悲劇、悲運は続く、皇軍に神の加護なし、神風は吹かず。

 2月24日に至り、我が軍指揮官小山田少佐は、残留する日本軍兵士に対し

 「戦はもはやこれまで、これ以上敵に対しての抵抗も無駄であり、我に勝算なし。 いま生ある者はこの島から脱出せよ。」

 と悲壮なる命令を下した。 この命令を下した少佐自身午後に行われた戦闘で壮烈な戦死を遂げ散った。

 桜トンネル方面部隊約800名の我が軍兵士は同夜なおも敵陣に斬り込み攻撃をかけたが成功せず惨敗。 いよいよ27日我が軍はコレヒドール島東部の先端地区に追い詰められ、准士官以上の軍人は全て自決し、その後約150名の下士官兵は米軍に投降した。

 敵将マッカーサーは大東亜戦争開戦間もない昭和17年3月、日本軍の猛進撃にこのコレヒドール要塞を捨て豪州方面へ脱出した。 その時彼は、「予は必らずや帰ってくる」 と予言したが、それから数えて満3年、昭和20年3月2日彼は再びコレヒドール島に上陸、そしてマリンタヒルに高々と勝利の星条旗を掲げたのである。

 一方、いまだ米軍に投降せず台地方面に残った約300名の我が軍兵士は、3月上旬、暗夜を利用し対岸のバタアン半島方面に脱出を決行した。 その時約100名は海上において米軍の捕虜となり、その他の者は行方不明となる。 その時からくもバタアン半島に脱出し得た者はごく僅かであったとか ・・・・。

 かくして日本軍全兵士はあらん限りの力を振り絞り敵とよく戦ったが、その甲斐もなくマッカーサー元師の率いる連合軍の軍門に伏し、この島における戦闘は終結した。

( 終戦直後の昭和21年1月、同島西端のジャングル内に18名の日本軍兵士の生存していることが判明し、これらの兵士達は間もなく米軍側に収容されたということである。)

(『第12震洋隊物語』 完)
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