2010年12月01日

「打方」 について (1)

 日露戦争期の砲術について、これまでで外堀 (ハードウェアのお話し) はほぼ埋め尽くしました (^_^)

(砲熕武器と艦艇の発達史については、また別にお話しすることにします。)

 ご来訪の皆さんには、もうこの外堀を埋めた段階で既に 『別宮暖朗本』 が実に如何にいい加減なウソと誤りだらけであるかはご理解いただけたと思います。

 さていよいよこれから少しずつ肝心な本丸攻め (射撃指揮) のお話しに入っていきたいと思います。

 まず最初は 「打方」 についてです。

 ここで言います 「打方」 とは、先に 「連装砲の発射法 (1) 〜 (補)」 でお話ししました各砲塔砲や各砲廓砲などにおけるそれぞれでの発射の仕方、極く簡単に言えば “各砲における引金の引き方” の事ではなく、射撃指揮として個艦の主砲全体、あるいは副砲全体などにおけるものです。

 つまり、 「打方」 とは “発射する砲の管制の仕方” を表す専門用語 です。 (一般的に言うところの 「打ち方」 という言葉ではないことにご注意ください。)

 この 「打方」 には色々な方法、名称のものがありますが、旧海軍において用いられ今日においても通じる基本的なものには、次のものがあります。

       一斉打方
       交互打方
       指名打方
       独立打方
  
 この4種類については、ご説明の必要の無いほど皆さんもよく耳にされていることと思います。

 しかしご注意いただきたいのは、この4種類については 昭和12年の 『艦砲射撃教範』 の全面改訂時に併せて始めて正式に定義 され、それが太平洋戦争まで続き、更には戦後の海上自衛隊にも継承されたもの、と言うことです。

 旧海軍におけるこれらの正式な定義については、本家サイトの 『艦砲射撃用語集』 (↓) 中 の 『射撃指揮』 の欄で呈示しております。


 改めてこの旧海軍の定義と、そして海上自衛隊における定義とをご紹介しますと、次のとおりです。

  「一斉打方」
    (海軍) : 一指揮系統に属する砲 (連装砲) を一斉に発射せしむること
    (海自) : 全砲を一斉に発射すること

  「交互打方」
    (海軍) : 一指揮系統に属する連装砲を、二連装砲に在りては左右交互に、三連
          装砲に在りては右中左交互に又は左右砲中砲を交互に発射せしむるこ
          と
    (海自) : 全砲を二分して各群ごとに交互に発射すること

  「指命打方」
    (海軍) : 一門又は数門の砲 (砲塔) を指定し、毎回若干門宛発射発令時に発射
          せしむること
    (海自) : 特定の砲をその都度指命して発射すること

  「独立打方」
    (海軍) : 一指揮系統に属する砲 (砲塔) を各砲単独に発射せしむること
    (海自) : 各砲独立して発射時期を選定発射すること

 海自の定義はここに抜萃したものが 「全砲」 「各砲」 となっていますが、勿論これが 「一指揮系統に属する」 であることは言わずもがなです。

 重ねて申し上げておきますが、現在に通じるこの4種類の打方が旧海軍において正式に定義されたのは “昭和12年” のことであることを忘れないでください。

 このことを忘れて、明治期の射撃について述べる時に気軽に昭和12年以降の定義でもって 「一斉打方」 などと言ってしまうとおかしな事になります。

 まずこの4種類の基本の打方を頭に置いていただいてから、明治期のお話しに入ることにします。
(この項続く)
posted by 桜と錨 at 15:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 砲術の話し
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