2010年11月12日

「内筒砲射撃」 について (後)

 さてそれではこの項の最後として、例によって 『別宮暖朗本』 のウソと誤りをみてみましょう。

 前述 (63ページ) のように、近代砲術の世界では大中口径砲手の腕や目や神経は、命中率と関係がない。 いくら砲手を訓練したところで事故を防ぐことはできるが、命中率をあげることはできない。 6インチ砲や主砲を命中させることができるのは、砲術長、すなわち安保清種なのである。 (p269) (p278)

 これが全くの大ウソであることは既に 「照準」 のところで根拠を示してお話ししました。 少しでも砲熕武器や砲術について知っているならば、何を馬鹿なことを、ということですが ・・・・

 12インチ砲であろうと6インチ砲であろうと射手が 「照準」 を行うことに変わりはありません。 したがって、これらの砲でも内筒砲射撃による訓練は必須でした。

 というより、小中口径砲より砲身命数が少ない12インチ砲などは、実弾射撃訓練の機会が少なく、かつ砲の操作が難しいだけに、内筒砲射撃による訓練がより重要になることはお判りいただけるでしょう。

 (前略) これの例外は小口径砲であって、主として水雷艇対策である。 鎮海湾で実弾訓練が行われたのは 「内筒砲」 訓練と呼ばれるもので、小口径砲に小銃をくくりつけ、洋上を走行するマトを狙ってうつものである。 小銃の実効射程距離は500メートル以下にすぎないが、小口径砲の弾道に似ているといえば似ている。 (p269) (p279)

 “水雷艇対策” って一体何時の時代の話しなのか、というツッコミはさておき (要するにそんなことさえこの著者は知らないで書いているのか、ということなんですが ・・・・ )

 しかも 「小口径砲に小銃をくくりつけ」 って、内筒砲は砲内に挿入するものですから “くくりつけ” などと言う表現には絶対になりません。 この著者、もしかしたら内筒砲とは何かを知らずに、これ ↓ のことと勘違いして言っているのでしょうか? 

gaitouhou_01_s.jpg
( 57ミリ砲砲鞍上部に装着された小銃口径外筒砲 )

 更に 「小口径砲の弾道に似ているといえば似ている」 って、一体何を言いたいのか? 弾道学の基礎ぐらい勉強してからにして欲しいですね。

 それでも砲と小銃の弾道は同一でなく、気休めに近いものだっただろう。 ただ日本の小口径砲はすべて照準望遠鏡が設置されており、使い勝手を知ることはできた。 そして6インチ砲の訓練の中心は弾丸装填の模擬訓練であり、これは一日一回、必ずやり、かつ鎮海湾には、乗員と同数の予備兵も待機しており、その訓練も交代で行われた。 (p269) (p279)

 これを要するに、この著者は内筒砲射撃について全く、知らない、判らない、調べていない、ことが明らかです。 「照準」 ということが全く判っていないので、当然と言えば当然なのですが。

 そして 「日本の小口径砲はすべて照準望遠鏡が設置されており」 って、この著者は照準望遠鏡が装備されている砲種さえ知らない。

 それにしても、「気休めに近いものだったろう」 など、砲術については全くの素人であることを自ら暴露しているに過ぎません。 それでよくもこんな本が出版できるものと。 お恥ずかしい限り、の一言。

 しかも 「乗員と同数の予備兵も待機しており、その訓練も交代で行われた」 など一体何を根拠にしているのやら。 これが大ウソであることは、例えば 『三笠戦時日誌』 を読めば明らかでしょう。

 一体どこにそんな数の兵員が “待機” しており、各艦に乗ってきて交代で訓練したなどと書かれているのでしょうか?

 そもそも、そんな余分な兵員がいるなら、何故各艦から旅順攻略の陸戦重砲隊に兵員を派遣しなければならないのでしょうか? あまりにもいい加減で、話しにもなりません。

 これを要するに、この内筒砲射撃も含めた砲術の訓練についても 『別宮暖朗本』 はウソと誤りしか書かれていない、ということです。
(この項続く)
posted by 桜と錨 at 15:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 砲術の話し
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