2010年11月11日

「内筒砲射撃」 について (中)

 内筒砲射撃の訓練方法については、先にご紹介した明治37年12月制定の 『連合艦隊艦砲射撃教範』 で詳細に規定されています。

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 即ち、次の3段階からなります。

   (1) 各個射撃 : 1標的に各回1門で射撃しその都度採点
   (2) 砲台射撃 : 1標的を砲台毎の数門で同時に射撃し砲台成績として採点
   (3) 戦闘射撃 : 可能な限り実戦に近い形で、一回に艦全体で射撃し採点

 即ち、始めは 「各個射撃」 として文字通り各砲1門毎の訓練を行います。 これはまず最初に根拠地などでの停泊中での 「近距離射撃」 (標準は100m) で、停止した標的に対して静的射撃を行い、正確・確実な照準発射の基本を訓練します。 これは6インチ砲なら約800mの射距離に相当するものです。

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( 『連合艦隊艦砲射撃教範』 で例示された各個射撃用の自作標的 )

 次いで距離を遠くした 「遠距離射撃」 (標準は400m) に移り、まず停止した静的射撃を実施した後、汽艇などによって標的を曳航しての動的射撃を訓練します。 これは6インチ砲で約3400mに相当します。

 この遠距離射撃になりますと、採点は標的に描かれたマークへの命中点によって何点ということではなく、発射弾数に対する標的への命中弾数となります。

 この各個射撃を済ませると次は 「砲台射撃」 です。 つまり1つの標的に対して砲台毎の同砲種数門で一度に射撃を行います。 各個射撃の遠距離射撃と同じ要領で、静的射撃、次いで動的射撃を行います。

 この砲台射撃になると、砲台長の射撃指揮を始め、砲台総員によるチームとしての訓練が実施できます。 また、成績は砲台での全発射弾数に対する全命中弾数として採点されます。

 そして最後が 「戦闘射撃」 で、関係員を戦闘配置に就かせた上で、出来るだけ実戦に近い形で実施し、1標的に対して艦全体で射撃し、全ての砲種を合わせた1艦の総発射弾数に対する総命中弾数で採点します。

 この内筒砲射撃の仕上げは、2隻でそれぞれ標的を曳航しながら、互いに相手の曳く標的を狙って同航射撃や反航射撃を行う対抗射撃訓練です。 標準の射距離は600〜800mです。 6インチ砲で約5000〜7000mの射撃に相当します。

 この対抗射撃訓練の実施要領については、例えば明治37年の9月の 『内筒砲対抗射撃規則』 (聯隊法令第75号) で詳細に規定されています。

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( 元画像 : 防衛研究所図書館史料室の保有保管史料より )

 標的の形状・サイズやそれぞれの射撃訓練での実施要領や採点法などについて、もし興味がある方がおられましたらこれをご覧下さい。

 これらの訓練が一通り終わった後に、実弾射撃訓練を行って艦隊でその成果を競うことになります。 そしてこれ以降は上記の3段階を適宜組合せながら、練度の維持・向上に努めます。

 この内筒砲訓練の実施については、例えば 『三笠戦時日誌』 の明治38年2月以降をご覧いただけばお判りいただけると思いますが、ほとんど毎日、他の予定がなければ午前と午後にわたって実施しております。

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( 元画像 : 防衛研究所図書館史料室の保有保管史料より )

 日本海海戦でバルチック艦隊を迎え撃つまでの間、連合艦隊が如何に猛烈な砲術訓練を実施したのか。 そしてその基本・基礎として如何に内筒砲射撃というものを重視したかをご理解いただけたでしょうか?

 そして、日本海海戦での砲戦における最大の勝因の一つがこの内筒砲射撃による 「照準発射」 の成果であることを。
(続く)
posted by 桜と錨 at 18:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 砲術の話し
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