著 : 辰巳 保夫
水上特攻部隊の編成と展開 (承前)
震洋艇の運用については捷号作戦の性質上から海軍部と陸軍部とは密接に協調すべきであった。 それは陸軍側においても、「震洋」 と同種の特攻艇 「〇れ」 を大量に建造し訓練に入っていた。
陸海軍部は、この種特攻艇を総称して 「〇八」 と略称し、その展開、指揮系統及びその他について協定を結んだ。 その協定は次のとおりであった。
運用に関する中央協定 昭和19年8月8日 大本営陸軍部 大本営海軍部 第1 運用方針 1 敵ノ来攻ニ対シ敵輸送船団等ヲ主トシテ泊地ニ於テ捕捉撃滅シ、敵ノ上陸企図ヲ撃砕シ戦局ノ転換ヲ策ス 2 使用方面、時機ニ関シテハ奇襲的使用ト大量集中使用トニ依り、敵ニ震憾的打撃ヲ与フルヲ主眼トシ両軍緊密ナル連絡協調ノ下之ヲノム 第2 運用要領 1 展 開 附表及附図ノ如ク予定ス (略) 但シ資材整備ノ状況、情勢ノ推移ニヨル本予定ヲ変更スルコトアリ 2 輸 送 両軍ノ積極的協カニ依り展開ノ迅速確実ヲ図ルヲ主眼トシ、細目ニ関シテハ別途協議ス 3 両軍ノ関係(1) 同一方面所在ノ陸海軍〇八並ニ魚雷艇隊運用ニ関シテハ、其ノ総合成果ヲ最大ナラシムル如ク之ヲ協同統制シ、特ニ基地設定、訓練、運用ニ於テ彼我緊密二提携シ長短相補フ如ク相互積極的ニ支援ス (2) 両軍〇八ノ指揮協定関係ヲ定ムルコト次ノ如シ(イ) 小笠原方面 陸軍〇れヲ父島方面特別根拠地隊司令官ノ指揮下ニ入ラシム (ロ) 北東方面 〇れ魚雷艇隊ノ運用ニ関シ第27軍司令官、北東方面艦隊司令長官間ニ於テ相互協定ス (ハ) 南西諸島方面第32軍司令官、沖縄方面根拠地隊司令官間ニ於テ相互協定ノ上、各島嶼ニ於ケル指揮関係ヲ定ム (ニ) 台 湾台湾軍司令官、高雄警備府司令官間ニ於テ相互協定ノ上、指揮関係ヲ定ム (ホ) 比 島第14方面軍司令官、第3商連艦隊司令官間ニ於テ相互協定ノ上、指揮関係ヲ定ム 4 所在魚雷艇隊ハ〇八卜協同作戦ス、嚮導任務ニ服スル魚雷艇ハ当該〇八指揮官ノ指揮下ニ入ルモノトス 第3 企図秘匿 1 陸軍〇れ艇、海軍〇四艇ヲ総合シ〇八ト略称シ、〇八ニ依ル兵力、戦法ヲ 「震天」 ト呼称ス 2 訓練、輸送、基地設定、展開ニ於テハ一般住民、敵潜空ノ偵察ニ対シ厳ニ企図ヲ秘匿ス 3 展開遅延其ノ他ノ事情ニ依り所定ノ兵力ヲ展開シ得サル為確実ナル効果ヲ期待シ得ル目途ナキ場合ニ於テハ、其ノ方面ニ於ケル本兵力ノ使用ヲ取止ム |
このように協定され、関係指揮官に指示した。 大本営では大量の兵力を極秘裡に敵上陸予想地点に集中し、敵の意表をついて敵上陸兵団をその泊地、輸送船上に撃滅しようとしたわけである。 兵力の使用については、現地部隊指揮官は大本営の許可が必要であった。
(続く)