2010年08月25日

海軍人事の不文律 − その1

 飲み友達の一人であるHN 「出沼ひさし」 氏がいま戦時編成調査の流れとして駆逐艦長全ての人事について調べておられます。 これも今日となっては大変地道な努力が必要となる事項で、氏の熱意に感服する次第です。

 さて、その氏の掲示板で 「天津風」 艦長の人事についての話しがありました。


 これに関連して、駆逐艦長そのものについてではありませんが、ちょっと旧海軍の人事についてのお話しを、長くなりますのでこちらで。 

 何かと言いますと、海軍というものには、元々伝統的に補職人事上の不文律がいくつかありました。 その一つが、

 規則で階級が定められた職に対して、その階級の者を補職できない場合には、それより上位階級の者を就けることはなく、下位階級の者を補職する。

 というものです。

 例えば、旧海軍では定員上中佐である駆逐艦長の職には、その中佐に適任者がいない場合には、上位階級の大佐の者を替わりに就かせることはなく、少佐、場合によっては大尉が補職されることになります。

 理由はお判りいただけると思います。 即ち、上級階級の者を充てるということは、その本人にとっても、また回りの者達から見ても、実際の理由はともかくとして “降格” となるからです。 これは軍という組織として、規律と士気の維持のためには極めて好ましくないことです。

 このことは旧海軍においても初めは言わずもがなのことだったのですが、だんだんと体制が整備されてくるにつれてそうも行かなくなり、明治29年に始めて 『海軍定員令』 (明治29年内令1号) が制定された時に、次のように規則として盛り込まれました。

  「 第7条 各部定員中上級者に欠員あるときは其の次級以下ものを以て之を補することを得 」


 つまり、上位階級の者を就けることは規則上もできないように明文化されたのです。

 しかし下位階級の者を就ける場合でも、この “欠員あるとき” というのがその解釈上のネックになって、この規則の運用にはかなりの支障がありました。

 そこで、大正3年の 『海軍定員令』 改訂時 (内令34号) に、次のようにスッキリとしたものになります。

  「 第9条 海軍各部の定員は一時下級者を以て之に充つることを得 」


 この 「一時」 というのがどの程度の期間なのかは明確にしておりません。 また、「次級者」 ではなく 「下級者」 としています。 この2つによって規則運用上の柔軟性を確保したわけです。 
(続く)

posted by 桜と錨 at 18:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 海軍のこと
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