2010年08月23日

「飛翔雲」 の連載完結に当たって

 269回にわたって連載してきました高橋定氏の回想録 『飛翔雲』 が完結いたしました。

 この回想録は、連載の冒頭でも書きましたように、高橋定氏が海自の部内誌に連載されたものを、昭和53年に改めて全6章に編纂し直し、1冊のものとして部内配布したものです。

 このため、各章ごとの内容にややバラツキ、精粗などがあることはやむを得ないものと考えます。 また、編纂し直しに当たって割愛された記事もいくつかあります。

 例えば、私の好きな記事の一つに、当時のパイロットのトレードマークでもあった白い絹のマフラーにまつわる支那の少女との話しもあったのですが、削られてしまっております。

 この件については、その昔氏のお宅で飲んでいる時に 「あの話しがありませんが?」 と申し上げましたら、「いや〜、あれはちょっとねぇ」 と言ってはにかんでおられたのを覚えています。 いつまでも青年のような純朴さを持ったお人柄でした。

 この回想録は最初にお話ししたように、先の森栄氏の回想録 『聖市夜話』 とともに、私の現役中の貴重な教科書でした。 将校、指揮官としてのあるべき一つの道を示してくれたものと思っています。 そして一般の方々にとっても、単なる戦記物、当事者の回想録に止まらず、後世に残すべき非常に有益な内容を含んでいると思います。

 残念ながら海自の部内資料であるため、今まで一般の方々の目に触れることがありませんでしたが、既に両氏もお亡くなりになり、また当の海自においても今ではこれらの資料が残っているところはほとんどありません。

 したがいまして、この貴重な回想録がこのまま埋もれ、失われてしまうことを懸念し、退官を機会に私個人の責任においてネットで公開するものです。 大変に長いものですが、ご来訪いただく皆さんの一人でも多くの方にお読みいただければ幸いです。

 なお、ブログでの掲載に当たり、段落や連載回の区切りなどは私の方の都合で変えさせていただきました。 もしこれによって著者の元々の意図が正しく伝わらなくなったとしたら、これは私の責任であり、ご容赦いただきたいと存じます。

(「飛翔雲」 完)


(平成28年5月28日追記) :

著者の高橋定氏について、昨年逝去されたことが官報で告示されているとのお知らせをいただきました。 官報とのことですので間違いないと思いますが、事実とすれば大変なご長寿であったと思います。

そして、私が人伝にお亡くなりになられたと聞いた頃、知る人ぞ知るさる方のご葬儀にもお顔をお見せにならなかったことから納得しておりましたし、海自幹部学校を始め関係者は氏のその後の消息などは全く判りませんでしたので、一切の周りとの縁を切られて静かな余生を送られたものと推察いたします。

見事なといえば見事な身の処し方であり、また高橋氏らしいといえば全く氏らしい生き方であったと思います。

おそらく、なすべきことは全て成し遂げられた人生であり、何一つ思い残すことなく、本連載に出てくるような思い出の中に一人静かに浸っておられたのではと。

お知らせいただいた山ア氏にお礼申し上げます。

そして、改めて高橋氏のご冥福をお祈りいたします。


この記事へのコメント
前作に続き,楽しく拝読させて戴きました。桜と錨様の座右の書にされたのに相応しい,時代を越えて感銘を与え得るとても奥深い内容と感じました。
また,早期に実質壊滅した機動部隊の空母の運用に関する詳細記述は特に希少で,大いに興味をそそると共に,知識を享受させて戴きました。

 高橋氏は聖市夜話の森栄氏同様,バランス感覚に秀でた物事の本質を見抜き,神髄を究められる方と敬服致しました。

欲を申せば,「白いマフラー」の件も興味津々です。薄々想像はつきますが,関係者の方々と高橋氏の名誉を考慮すれば,やむを得ないと諦めます。

お忙しい中,長編力作の編纂のご尽力に深謝致します。また,本年も「坂の上の雲」の公開を楽しみに待たせて戴きます。
重ねてご好意にお礼申し上げます。
Posted by bimo大好き at 2010年08月25日 00:54
 bimo大好きさん、ありがとうございます。

>「白いマフラー」の件
 ほのぼのとした大変によい記事だったと記憶しているのですが ・・・・ 多分1冊に纏めるに当たり全体の分量の都合で連載の中で出てきました 「靴」 の話しとどちらにするか、だったこともあるのでしょう。

>本年も「坂の上の雲」の公開を楽しみに
 いま編集が佳境に入っていますが、海軍関係では、第9話 (今年の最終回) の旅順口閉塞作戦のところは大変に面白い “ドラマ” になっていると思います。 また、第7話(今年の2回目)の子規の最期もなかなかです。 この演技のために香川さんは9キロも減量したと聞いています。 ご期待下さい。
 ただちょっと残念なのは、長い話しをたった全13話でやりますので、全体にテンポが速く、ちょっと端折り過ぎていることでしょうが、これは “人間ドラマ” としての方に主眼が置かれていますので、いたしかたないところではあります。
Posted by 桜と錨 at 2010年08月25日 11:25
何気なくwikipediaで高橋定さんを検索しました。亡くなられたのが昨年末だと知り、父も驚いています。長寿の家系ですが103歳は驚きです。前回書き込みさせていただいたいた時は当然生きていないという前提でした。
Posted by 山崎正俊 at 2016年05月26日 23:41
山ア正俊さん、お知らせありがとうございます。

先程本頁に追記させていただきました。

Posted by 桜と錨 at 2016年05月28日 14:29
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