2010年08月15日

米海兵隊の大改革の必要性?

 どうもマスコミの記者には理解できないものの一つに 「海兵隊」 というものがあるようです。

 昨日の朝日新聞のニュースに次のような記事がありました。


 ネットから落ちてしまうといけませんので、全文をここに引用させていただきます。

(当該記事全文引用ここから)
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 【ワシントン=村山祐介】ゲーツ米国防長官は12日、サンフランシスコで講演し、高性能対艦ミサイルの普及や海兵隊の運用の実態を踏まえ、海兵隊のあり方を抜本的に見直すようメイバス海軍長官らに指示したことを明らかにした。在沖縄海兵隊の将来像にも影響する可能性がある。

 海兵隊は陸海空軍と並ぶ4軍の一つで、主に最前線で海などから上陸し、後から来る陸軍部隊などのために拠点を築く部隊。ゲーツ長官は、対艦ミサイルの長距離化や高精度化が進んだことで、海兵隊は「100キロ以上離れた艦船から上陸する必要があるかもしれない」と状況の変化を指摘。近年はイラクやアフガニスタンなど内陸部での長期駐留が増えたことで陸軍との違いが薄れたり、部隊の肥大化が進んだりしていることにも触れ、「今後数年、数十年の脅威に備えるために改革する必要がある」と強調した。

 改革案は、コンウェイ海兵隊総司令官の後任として指名されているアモス副司令官を中心にまとめる。ゲーツ長官は改革の方向性について、「海兵隊特有の上陸能力は今後も必要になる」と説明。陸海空軍と重なる任務を整理する一方、最新兵器への対応や暴動・テロなど多様化する脅威への即応能力を強化するものとみられる。

 海兵隊は約20万人規模で、日本には約1万7千人が駐留する。在日米軍再編で司令部中心に隊員約8千人とその家族がグアムに移転することになっている。

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(引用ここまで)

 私に言わせれば “何を今さら” です。

 このゲーツ長官の講演内容は、長官がやっと海兵隊というものを理解し、現状の誤った運用の方向から海兵隊の本来のあり方に戻すべきだ、と発言したと解釈すべきものなのです。

 そして米陸軍の余りにもその頼りなさの故に、イラクでもアフガンでも本来任務ではないことに “使わざるを得ない” 現状を、そして米海兵隊がその特徴と能力の故に “便利屋” としてこき使われている現状を嘆いたと言うべきです。

 対艦ミサイル云々、などと言っていますが、揚陸侵攻部隊にとって経空脅威の存在などは元から周知のことであって、それに対する措置が考えられていないはずが無いでしょう。

 実際に、そのようなことは米海軍・海兵隊において既に10年も前から 「STOM (Ship to Object Maneuver)」 と 「OMFTS (Operational Maneuver from the Sea)」 という2つの新しいコンセプトを中核とする Transformation を実施中です。

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 そしてその実現の一部が、ハードとしてはAAAVであったりオスプレイなどであり、またソフトとしては 「SPMAGFT (Special Purpose Marine Air Ground Task Force)」 であり、「ESF (Expeditionary Strike Force)」 構想なのです。

USMarine_04_s.jpg

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 ここで何故 「米海軍・海兵隊」 と言ったかと言いますと、米海兵隊というものが米海軍の一部であって、その両方を併せて 「Naval Forces」 あるいは「Naval Services」と称するからで、その実態については海軍の作戦の中で考えるべきものだからです。

 これは、米海兵隊のトップである海兵隊総監の最も重要な役割と責任が、教育訓練と装備の整った実戦部隊である 「艦隊海兵隊 (Fleet Marines) 」 を米海軍のトップである海軍作戦部長に提供することであることを考えれば明らかでしょう。

 そして上記の Transformation も、米海軍の新しいコンセプト 「Naval Power 21」 の一部として実現しようとしているものなのです。

 これらのこと、そして米海軍・海兵隊が世界中で発生する危機に対してどの様に対応するのか、が判らないければ、米海兵隊のことは理解できません。

 だから沖縄のこともトンチンカンな報道となるのです。

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(注) : 本項で引用した画像は全て米軍の公式史料より。
posted by 桜と錨 at 16:57| Comment(2) | TrackBack(0) | 現代戦のこと
この記事へのコメント
桜と錨様

海兵隊のもともとの存在意義は、突発有事の際海外における自国民の安全確保、進攻予定国に一番乗りをして橋頭堡を確保し後に続く陸軍部隊の揚陸を容易にする、といった機動的な運用を行う部隊であり、目的を達成すれば即座に撤収するというのが本来の姿、ということでしょうか。そういう定義で考えると、海外に常駐する海兵隊は本来の任務とは違う運用をされているということになる・・・旧日本海軍における陸戦隊と上海特別陸戦隊のような姿になっている(海兵隊と比べると少々乱暴になりますが)といったところでしょうか。
Posted by へたれ海軍史研究家 at 2010年08月15日 17:22
へたれ海軍史研究家さん

海兵隊は、海軍の陸上投入兵力として、その機動性、即応性、柔軟性、多目的・多用途性、自立性に特色があります。 そして最も強みなのは、海軍兵力の一部ですからそのバックには常にその海軍兵力があり、必要に応じて何時でも支援を得ることが可能なことにあります。 加えて航空戦力でさえ、自前のものに加え、海軍のものも自在に使えます。

これは陸軍や空軍の部隊ではとても真似のできないところです。

この特色と強みが活かせなければ、陸上戦闘兵力として陸軍と何処が違うのか、ということになるでしょう。

ですから、イラクやアフガンでの治安維持などは、本来は陸上の基地というものをベースにする陸軍の役割であって、海兵隊の本来の能力を殺していることになります。

何度も申し上げますが、海兵隊というのは海軍の一部なのですから。

そして海軍・海兵隊が世界中で勃発するニーズに対して即応待機することこそが、米国の国益、安全保障を支える重要な柱の一つなのです。

その中の一つとして、前方展開の即応兵力としての沖縄駐留のVMEFの意義があります。 決して在沖縄海兵隊として日本の防衛のためだけにあるわけではありません。

ご指摘の上陸(シャンリク、上特陸)も、立ち上がりはともかくとして、その後は同じく支那沿海部一帯に対する前方展開の即応兵力としての意義も大きかったといえます。 だからこそ最後まで支那方面艦隊の付属として独立運用されたわけで。 
Posted by 桜と錨 at 2010年08月15日 23:20
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