2010年07月06日

「飛翔雲」 第6章 戦場回想 −その1

著 : 高橋 定 (海兵61期)

 前 お き

 昭和49年2月17日から24日まで、30年振りにフィリピンを訪問し、マニラに4泊、セブに2泊、サンボアンガに2泊し、古戦場を見て回った。

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( 原著より )

 フィリピンの国土は、泥沼に埋まった巨大な怪獣が半分姿を現わしたような格好をしている。 7083の大小の島から成り、名前が付いているものが2773島ある。 その中で主な島は、ルソン、ミンダナオ、サマール、レイテ、セブ、ネグロス、パナイ、マスバテ、ボホール、ミンドロ、パラワンの11島である。 ルソン島の太平洋岸近くに、地球上で3番目に深い海溝 (10540m) がある。 総面積は29万9千平方粁で日本の国土から北海道を除いた面積と同じだ。

 これらの島々は、北緯5度から20度の間にあるから熱帯地方に属し、12月から3月までの乾季と、それ以外の湿李とに分けられる。 一年の平均気温は26、7度で、月別の平均気温差は5度前後しかない。

 颱風は、太平洋の中心部の北緯5度〜15度で発生して西北西に進み、10度〜22度で発達して北進し、15度〜28度で最盛期に達し、30度附近で東北に変針して日本にやって来るのが平均のパターンだが、フィリピンの経度は東経120度〜125度で、太平洋の中心部から大分西に偏しているので国土の大部分は颱風圏に入らない。

 ルソン島の北部だけが、9月から12月にかけて発達中の颱風が東から西へ通過することがある。 この颱風は、30m/秒を越える暴風を伴うことは少ないけれども、豪雨を持って来て国土を荒廃させることがある。

 明治44年 (1911年)、ルソン島中央部のバギオ測候所で記録した1日1168mmの世界記録は、66年後 (執筆当時) の現在でもまだ更新されていない。 また、1937年には、サマール、レイテ島の農産物の80%を壊滅させている。

 自然科学者は、フィリピンには四季はないと言う。 確かに、いつ訪れても同じように暑いし、同じ花が咲いているように思う。 また、中南部のササール、レイテ、セブ島等を訪れると、椰子の実、マンゴー、パパイヤ、ザボン、バナナ、ナツメ等がいつでも食べられるし、季節の果物という感覚からも四季がないように思う。

 しかし、よく観察するとそうでもない。 同じ花でも、時期によって色も香りも全く違う。 乾季の花は冬枯れたようにわびしく、蝶や蜂を誘う魅力はない。 それに比べて、3月末から4月に入って南の方から湿李が来ると、ブーゲンビリヤやサンパギータ (フィリピンの国花) の花が、赤、黄、紫、白と鮮明な色を誇り、ジャスミンの香りが野に満ちて岸辺に繋いだ船の中にまで匂ってくる。

 DONA AURA が梔子 (くちなし) の大輪のよううな花 (花弁の周辺の葉も純白なので大輪の花のように見える) を付け、PALM TREE も真赤ないちごの大群のような花を葉影にちらつかせる。 すると、乾季を過ごして来たこの国の人達は、春が来たなと思う。

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( 原著より  著者作成の DONA AURA の押花 )

(続く)
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