2009年11月23日

艦砲射撃の基礎 − 連装砲の発射法 (2)

 前回お話ししましたように、日露戦争における戦訓を反映した艦砲の操法は、明治41年の 『海軍艦砲操式草案』 で試行したあと、近代射法の誕生に整合をとる形で大正元年版 『海軍艦砲操式』 として制定されました。

 この大正元年版では 「三笠」 の爆沈の件があってか、記述からその12インチ砲については外されていますので、「朝日」 の例です。

 四十口径安式十二吋砲の砲員の新しい配置は下図のとおりで、砲塔長以下15名 (他に砲塔下部に更に3名) です。 36年版の時が 「朝日」 の型式では10名 (他に砲塔下部に5名) でしたから、砲塔内は5名も増えてしまいました。

asahi_12inch_pos_01_s.jpg

 砲塔内の各砲員の主たる役割は次のとおりです。

砲塔長 : 名前は同じですが、自ら砲の操作をすることはなくなり、砲員・砲台の監督に専従することとなりました。

右 (左) 射手 : 各砲の射手です。 この二人のうち、右射手が主たる射手になります。 詳細はあとで。

旋回手 : 以前は砲塔長が自ら行っていた旋回操作を担当し、左右方向の照準を行います。

右 (左) 掌尺手 : 正規に新設された配置で、右 (左) 射手が使用する照準器への照尺距離・苗頭の調定を担当します。

中掌尺手 : 旋回手の照準器に照尺距離・苗頭を調定するのが担当で、これも新規に配員されました。

右 (左) 一番〜四番砲手 : 36年版と同じです。

 因みに 「三笠」 の場合は、砲手が一番〜五番となり、36年版での揚弾・装填補佐担当の六番が無くなりました。 (というより、もうこれ以上砲塔内に人が入る余地がない (^_^; )


 それでは砲塔の中にいるのはこれら砲員だけか? と言うとそうではありません。

 これまでお話ししてきたのは “砲台 (砲) を操作する者” で、砲塔内にはこれに “砲台を指揮する者” がいます。

 つまり、砲塔長以下の砲員が操作する砲をどの様に使うのか、どの様に発砲していくのかを決めるのが責務で、これが 「砲台長」 です。

 砲台長は、通常大尉が配置されます。 そしてこの砲台長は、内務的には砲台の砲員をもって編成する分隊の 「分隊長」 を兼ねるのが普通です。

( ただし、海軍における人事上の発令は逆で、「分隊長」として乗艦を命ぜられた者の中から、艦長によって各砲台長に指定されます。)

 そしてその 「砲台長」 を補佐する役割として、「砲台付」 がいます。 砲台付には、通常若手の中・少尉たる 「砲台付将校」 や少尉候補生、それに准士官や兵曹が配員されます。 更にはこの砲台付以外に、必要に応じて 「伝令」 などが付きます。

 この砲台長と砲術長との関係については、この後の 「射撃指揮」 の項として別に詳しくお話しいたしますので、ここでは省略しますが、まずは明治36年版 『海軍艦砲操式』 で、砲台長について、次の様に規定されていることを覚えておいて下さい。

  「 第494 砲台長は艦長の方針に依り指示されたる目標に対し 適切なる射法を採り射撃速度及用うべき弾種を定め射撃諸元を号令して 砲台を指揮し砲台付以下を監督し常に射撃の効果に注意し射撃中必要なる修正を為し絶えず射撃を有効に実施するの責に任ず 」


  「 第495 砲台長は可成部下各砲を監視し射撃の効果を観測し兼て艦長砲術長との連絡を保持し得る如き位置にあるを要す若各砲の監視と射弾の観測とを併せ行う能わざるときは砲台付をして専ら各砲の監視に任せしめ砲台長は射撃の指揮及び修正に重きを置くを要す 」


  「 第496 艦の構造砲台の状況に依り射撃の指揮は艦長若は砲術長の号令に依て完全に行わるる如き場合に在りては砲台長は主として砲台各部を監督し其の実行に重きを置くを可とす 」


 それでは次回は、この連装砲塔砲の左右2門の砲でどの様に発砲して行くのか、その発射法についてご説明します。
(この項続く)

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 そこで 『別宮暖朗本』 ですが、

 中央管制は斉射法と表裏をなすものである。 つまり砲術将校(=分隊長)を砲ごとにおくのは現実的ではない。 (p66)

 だそうです。

 「中央管制」 だの 「斉射法」 だの訳のわからない言葉や、「分隊長」 などのことはさておいて、

 ふ〜ん、射撃指揮装置が整備されてきた大正後半期以降昭和期には砲台長、砲台付は必要なかったんですね? 配員されなくなったんでしょうか?

 そんなことは、上記の砲台長の職責や、昭和期の戦艦などで砲をどのような配員で運用していたかを一度でもチャント確認すれば、こんな文章は書けないはずです。

 第一、戦闘中に艦橋との連絡が取れなくなった場合 (戦闘被害、故障、騒音、等々) などは、それが例え一時的にせよ、各砲台の (途切れることのない、継続した) 射撃指揮は一体誰がどのようにやるんでしょう? そして、砲塔内だけでも十数名いる砲員の指揮は?

 砲塔・砲台というものを、射撃指揮においてどのように運用していくものなのか、つまり 「艦砲射撃」 というものがどのように行われるものなのかを、全く判っていないからですね。
posted by 桜と錨 at 17:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 砲術の話し
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