2009年09月20日

艦砲射撃の基礎 − 「測的」 について

 今回は 「測的」 についてお話ししますが、この 「測的」 についての一般的な理論については、既に本家HPでご説明しておりますのでそちらをご覧下さい。

( 『砲術講堂』 → 『射撃理論概説 初級編』 → 『未来位置の決定』 です。)

 したがって、ここでは日露戦争当時における水上射撃を念頭に、もう少し的を絞ってお話ししたいと思います。

 念のために再度確認しますが、本家HPにもありますように、

 「測的」 とは、「照準」 と 「測距」 とにより得られる測定諸元を組み合わせることによって達成されるものです。

 この点は絶対に忘れないで下さい。 これが判らないと 『別宮暖朗本』 のような無茶苦茶なものになってしまいます。

 それでは、その 「照準」 と 「測距」 によってどういうデータが得られるか、ということになります。 これは日露戦争当時でも現在の優れた射撃指揮装置でも、基本は同じです。

 つまり、ある一定時間をおいた(最低限)2回の 「照準」 と 「測距」 によって、次のデータが得られることになります。

relative_02_s.jpg

( 極く短時間に回数を多くして連続した計測をすれば、それらを平均することによって精度の高いものになることは言うまでもありません。)

 即ち、1回目の計測が R と Br、2回目が R1 と Br1 で、これによって自艦から見る的艦の方位と距離の差が判ります。

( ここではご説明を簡単にするために、「照準」 データと 「測距」 データは同じ時刻に同時に得られるものとします。 また自艦も的艦もそれぞれ一定の針路・速力で直進しているものとします。)

 これは本家HPの座標系のところでご説明してありますように、自艦に座標の基準点をおいたもので、自艦の運動と的の運動との合計ベクトルが、的艦の “見かけの運動” として示されるものです。 このことを、的艦の 「相対運動」 と言います。

 つまり陸上の道路を、カーナビや地図を見ながら車を運転するのと異なり、広い、周りに自他の船以外何も無い海の上では、艦長や砲術長や射手は、自分の艦の上から相手がどう動いて “見えるか” と言うことです。

 即ち、照準を行う射手には、ただ自艦に対して相手がどう動いて “見えるか” だけしか判らないし、その照準そのものの実施には、自艦がどの方向に何ノットの速力で動いているかということは関係が無いのです。

 この2回の測的データの差によって得られた相対的な的艦の運動量 (Relative Target Movement) を、照準線方向とそれに直角な方向とに分ければ、それがその計測時間内における距離差 (ΔR) と照準方位の変化 (ΔBr) になります。

 そして更に、この距離差 (ΔR) と照準方位の変化 (ΔBr) を計測間隔の秒時で割れば、必要な単位時間 (1分とか1秒とか )当たりの距離変化率と方位変化率が得られます。

 一方で、この得られた計測データを基に、自艦の針路と速力のデータ、そして照準と測距の計測時間 (間隔) を組み合わせることにより、次のような図を画くことができます。

relative_01_s.jpg

 自艦を基準点とする座標系での 「相対運動」 から、地理上の一点を基準点とする座標系での (自艦と) 的艦の 「絶対運動」 への座標変換ができます。 即ち、的艦の 「針路」 「速力」 が得られることになります。

(続く)

posted by 桜と錨 at 13:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 砲術の話し
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