お話ししてきましたこの艦砲射撃における基本中の基本である 「照準」 というものは、これの 良否 が “ 教育・訓練と経験による熟達であり、 射手個人の才能・技能であり、 精神力の賜 ” でないとすると、一体何なんでしょう?
したがって、「天気晴朗なれども波高し」 の日本海海戦における艦砲射撃の基本が何にあったかはお判りいただけると思います。
・・・・ところが
| 艦砲の命中率とは、砲手が訓練をたくさんして、目を澄まして、心を沈着にし、狙いをつけても向上するものではない。 つまり、小銃の射撃訓練のようなことをして、練度をあげても弾はよく当たらない。 |
| 艦砲で敵艦に狙いをつけるというのは、旋回手(Trainer)と俯仰手(Layman)の機械操作でしかなく、いずれもポイントを目盛りのどこにあてるかだけが課題である。 |
| 近代砲術の世界では大中口径砲手の腕や目や神経は、命中率と関係がない。 いくら砲手を訓練したところで事故を防ぐことはできるが、命中率をあげることはできない。 6インチ砲や主砲を命中させることができるのは、砲術長、すなわち安保清種なのである。 |
| 大口径主砲の砲手は、目盛り操作と弾丸装填のみに集中しており、敵艦をみるチャンスはない。 またみえたとしても目標は砲術長が決定するのが原則である。 |
| 引き金を引く砲手は、単にブザーに合わせるだけだ。 |
| 安保は部下の砲手を機械の一部として活躍させたことについて、公言することを潔しとしなかった。 |
( 以上全て原文のまま )
などと、呆れるばかりの “嘘っぱち” を堂々と書き連ねた本を出版している人もいるのです。
しかもこのことが、この本における著者の “主張の骨幹” に関わることなのですから、もう全く何をか況や、です。
ましてや、「照準」 と 「目標指示」 との区別 “すら” ついていない、「照準」 と 「照尺距離及び苗頭の調定」 の違い “さえ” 判っていないとは・・・・いやはや、まさに失笑ものと言わざるを得ません。
いや、この本、実はこれは序の口で、全編失笑だらけなんですが (^_^;
(続く)
すみません、理解するまで時間がかなりかかりました(汗)艦船での砲撃と陸上速射砲での砲撃、仕組みが全然違うということを失念していたのでしょうか。艦船での砲撃の場合、方位盤では指揮官と動揺手、旋回手、俯仰手がいて彼等が砲撃目標をそれぞれ追っていき、方位盤で出された目標の諸元データが各砲塔に送られて、各砲塔にいる砲塔員が方位盤から送られてきたデータに目盛りを合わせることで発砲装置に通電してはじめて射撃可能となり、方位盤にいる俯仰手が引き金を引くと発砲する、ということで理解していたのですが・・・間違っているのでしょうか?(汗)
ご指導願います!
>彼等が砲撃目標をそれぞれ追っていき
照準に関して、「照準点」を狙う (へたれさんの言われる “目標を追う”) のは旋回手と射手(俯仰手)の二人のみです。 射撃指揮官も動揺手も照準をするわけではありません。
>方位盤で出された目標の諸元データが各砲塔に送られ
「目標の諸元データ」と言うのが何を意味するのか判りませんが・・・・射撃盤が無い場合、あるいは射撃盤が方位盤と連接されていない場合と、方位盤と射撃盤が組み合わされた「射撃指揮装置」の場合とでは、異なってきますね。
>方位盤にいる俯仰手が引き金を引くと発砲する
「概念」 としてはそうなのですが、現実 (厳密) には方位盤射手が引金を引いている間 (旧海軍では約3秒間) に砲の射手と旋回手が指示位置 (俯仰角、旋回角) に砲を合わせれば、ということになります。
これらのことも、艦砲射撃の基礎として、追々お話ししていくつもりです。
ところで不躾なお願いでありますが、大和の射撃システムについて伺っても構いませんか?
これは私の現在の理解でありますが...
・俯仰手と旋回手が照準望遠鏡の中で照準を敵艦に合わせ続ける
・方位盤から射撃盤へ刻々と諸々の諸元データが送られ、基針として砲側に表示され、砲側俯仰手たちが追針を合わせ続けるように調整する。
実は、この過程の中で動揺手が具体的にどのような役割を持つのか理解出来ないのです。また、俯仰手は反射速度を考慮に入れて引き金を引くらしいのですが、これについてもさっぱりであります。本当でしょうか
?
なにとぞご鞭撻のほどを宜しくお願い致します。
照準線に対する横動揺の修正の必要性については改めてご説明の必要は無いと思います。
縦動揺は、平射 (水上射撃) の場合は射手が目標を照準し続ければ、そこには必然的にこの縦動揺も含まれたものとなります。 水上目標の運動は当然ながら水面だけの問題で縦方向はありませんので、この照準線の縦の動きは動揺として見なせることになります。
しかしながら 「大和」 型の 「九八式」 の場合は、対空射撃など射手の照準望遠鏡の視野内に水平線が入らなくなる以上の高角の照準ができるようになっています。 そうなると、目標追尾における照準線の動きは目標の運動によるものなのか、それとも動揺によるものかの区別できなくなります。 そのために水平線を維持する縦動揺手が必要になってきますし、これによって射手も水上射撃において動揺を気にせずに安定した照準が可能になります。
詳しくは本家サイトの次の記事をご覧下さい。
http://navgunschl.sakura.ne.jp/koudou/ijn/buki/fcs/fcsmech/dir_pointer.html
>俯仰手は反射速度を考慮に入れて
どういうことかもう少しご説明ください。
お陰様で艦船や砲術の知識に疎い小生でも少しながら理解出来ました。「ジャイロが有るのに動揺手は必要なのか?」なんて思ってましたけど、疑問が晴れてホッとしました。
要するに旋回手が照準線のy軸を敵艦に合わせ、動揺手が照準線を水平に保ち、俯仰手が上下に揺れる照準線を補正する事で照準が完了するんですね!
それと「反射速度」の件についてですが、ネットで初めて知ったので詳細については存じ上げません。申し訳ありません。どうやら射手が反射速度による遅延分を見越して引き金を早く引くらしいのですが...。
当時のジャイロは精密な射撃の要求に合うような高精度のものはありませんでした。
>動揺手が照準線を水平に保ち、俯仰手が上下に揺れる照準線を補正する
射手 (俯仰手) が目標を照準し、縦動揺手がそのままでは上下に揺れる照準線を一定に保つ、ですね。
>どうやら射手が反射速度による遅延分を見越して引き金を早く引くらしい
どのようなことかの詳細が判りませんと何ともお答え出来ないところですが、推察すればおそらく次の様なことではと思います。
発砲は予令の 「用〜意」 (・・・) に続いて動令の 「て−」 (−) の号令 (ブザー) で引金を引くことになります。
砲側で発射する場合には、そのまま各砲で引金を引けばいいのですが、方位盤で発射する場合には 「てー」 (−) の号令とブザーにより方位盤射手が引金を引き、砲側では各砲 (砲塔) で旋回・俯仰の指示器の基針に追針を併せるように操作します。
この時、方位盤射手は引金を約3秒間引いて発砲回路に通電しますので、この間に各砲 (砲塔) で指示器を合致させれば回路が 「閉」 となって発砲します。
しかしながら、発砲の号令とブザーも人が行うものですから、必ずしも機械仕掛けのように予令と動令間の間隔が全く同じになるわけではありませんので、方位盤射手と砲側とでそれぞれ微妙なタイミングで号令・ブザーの立ち上がりとずれることもあり得ます。
また先にご説明したとおり、指示器の基針は動揺などによって常に変動しますので、旋回・俯仰の操作はこの3秒の通電時間の立ち上がりピッタリの瞬間に一致し、その後はずれる (発砲回路が 「閉」 にならない) ことも十分ありますので、方位盤射手が 「てー」 (−) の号令・ブザーを聞いてから引金を引いたのではタイミングが合わないことになります。
したがって、方位盤射手は “動令のタイミングを見越して” その立ち上がりピッタリに発砲回路に通電するごとく引金を引くのがベストなやり方と考えられます。
もちろんこれは機械的なものではありませんし、どこにもこうするという規定があるものではありませんので、あくまでも方位盤射手・砲側・発令所員の練度とチームワークによる 「阿吽の呼吸」 の話しになります。 まさに職人芸の世界のことですね。