2009年08月18日

艦砲射撃の基本中の基本 − 「照準」 について (1)

 世の中にはごく一般的なことについて、その様なことは一々話さなくても他の人も当然判っているだろう、と思っていると実は全く判っていなかった、ということを皆さんも沢山経験されていると思います。

 艦砲射撃、砲術の世界でも同じです。

 私達のように船や砲術に携わってきた者は、あまりにもその世界に長くいますと、一々説明するまでもなく当たり前のこと、と思っていることでも、世間一般の人には全く通じないと言うことが色々出てきます。

 これからお話しする砲の 「照準」 ということも、どうやらその一つのようです。

 つまり、拳銃・小銃に限らず、弓矢でも、石投げでも、あるいは野球においてさえ、物をある一点に当てる (投げる) ためには 「狙い」、すなわち 「照準」 が必要なことは、これはごく一般の人でもよく理解しておられるところでしょう。

 では大砲の場合はどうなのか?

 どうも艦砲射撃というものを、陸上での野砲などの射撃と混同している人がいるのではないか? と思うことが度々あります。

 つまり、陸上戦闘における野戦砲兵や重砲兵などの射撃では、早い話、砲を水準器を使って水平に据え付け、地図上で砲の位置から目標の位置までの方位と距離 (それと高度差) を割り出して射撃計算をし、その結果を砲の旋回、俯仰として設定して、撃つ。

 細かなことを除いて、ごく簡単に言ってしまえばそういうことになります。

 艦砲射撃もそれと同じ感覚だと思っている人がいるのでは?

 ところが、艦砲射撃では、自分の艦も目標 (相手艦) も動いています。 艦の動揺もあれば上下動もありますし、保針上の振れ回りもあります。

 これが何を意味するかというと、砲は発砲時に必ず目標 (相手艦) を自分で 「狙う」、つまり 「照準」 している必要があるということです。

 “大正期以降 になって” 方位盤を装備するようになってからは (当然のことながら、明治期にはありません )、各砲での砲側照準に代わってそれぞれの方位盤が照準する (=方位盤照準) ようになりましたが、それでもこれは、早い話が各砲側の照準器を方位盤に移したということに過ぎず、砲の射撃に 「照準」 が必要であるということには何ら変わりはありません。

 これは大口径砲であろうと中小口径砲であろうと、また、砲塔砲であろうと砲廓砲、露天砲であろうと同じで、その全てで 「照準」 が必須ということです。

 すなわち、小銃や拳銃で射撃するのと同じことなのです。

 したがって、この 「照準」 ということは、艦砲射撃の基本中の基本であり、照準が正しくなければ当たるも何もありません。

 どうもこの当たり前のことが判っておられない方がおられるようです。 いや、現実におられるわけですが (^_^;
(続く)
posted by 桜と錨 at 12:43| Comment(3) | TrackBack(0) | 砲術の話し
この記事へのコメント
桜と錨様、ご無沙汰しています。navalarchitectです。
もう20年程前ですが、展示訓練を見学する機会があって、某艦に乗せていただいた時に、偶々私の近くにいた、小父さんが案内の士官に、「陸自の特火演で、りゅう弾砲の射撃を観たのですが、よく当たるのに驚きました。大砲というのものは良く当たるものですね。」と話しかけたことがありました。その士官氏が、即座に「あんなもの当たるの当たり前です。」と答えるのを聞いて、私は思わずニヤッとしてしまいました。
Posted by navalarchitect at 2009年08月18日 19:38
桜と錨様、大変ご無沙汰いたしております。へたれ海軍史研究家です。

確かに、艦砲射撃と野砲兵および重砲兵の射撃は違いますね。あらためて気づかされました。頭ではなんとなく分かっているつもりでも、実際には混同してしまっていたようです(汗)艦砲射撃は敵味方相互に激しい運動を行った状態や相手や自艦の「未来位置」を予想した上での射撃、野砲および重砲は陣地構築を行った上での安定した状態でお互いほぼ動かない状態での射撃、という理解でいいのでしょうか?より近い射撃照準で言えば、戦闘機による機銃(機関砲)射撃が近いのでしょうか?
時間があれば、手元にある海軍の艦砲射撃教範と陸軍の砲兵射撃教範を見比べてみるのもおもしろいかも・・・
Posted by へたれ海軍史研究家 at 2009年08月19日 21:09
navalarchitect さん、へたれさん、コメントありがとうございます。

先程続きをUPしましたのでご覧下さい。

>私は思わずニヤッと
 全くですね(^_^)
Posted by 桜と錨 at 2009年08月19日 23:35
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