2009年07月31日

聖市夜話(第39話) 鉾をおさめて(その10)

著 : 森 栄(海兵63期)

 やがて3月に入り、2大集中営の中の浦東集中営の残留員が30日復興島に移り、以後復興島集中営だけとなり、あとの作業は簡単化し、引き場げ船の来着によって逐次引き揚げるばかりとなった。

 次いで最後の旧上陸電信所と第2送信所の復興島集中で森司令官の終戦処理の大任に一段落がつき、4月15日司令官は上海方面日本海軍連絡部長の任務を解かれ、残務は首席参謀池田大佐と人事主任亀井主計中尉が処理し、その他の上連司令部員は司令官とともに第15回便に4月20日乗船帰国することになった。

 乗る艦は八十島垂三(海兵71期)元大尉の指揮する特別輸送艦駆潜47号で、これに海軍部隊は森司令官以下30名、陸軍部隊は総軍参謀副長川本少将以下6個司令部員の125名、合計155名であったが、私は 「よく乗せるなー」 と驚いた。

 また別に私を驚かせたことは、同艦に信号代理として海兵75期の斉藤正一、萩原孝、堀井利彦の3君が乗組んでいたことであって、そのけなげさに深く感謝した。

 森司令官の上海方面日本海軍終戦処理報告の本紙(主)は司令官自身が携行し、写1通(副)は私が腹に巻いて携行したが、私にとっては上海市政府における厳重な乗船前の身体検査でもこの写が一番大事な携行品であった。

 そして幸いにも(正)(副)とも無事日本に着き、(主)は帰国直後司令官が直接中央に提出し、(副)は34年1月私から防衛庁戦史室に寄贈したのであったが、この報告書がまた私にとっては私の海軍時代で最も簡潔にして要領を得たお手本の一つであったことも特筆に値するところである。

 4月20日の乗船は記録にあるが、博多に着いた日は記憶していない(25日?)。 博多では旧知の石隈辰彦元少佐の温かい出迎えを受けて嬉しかったが、退職金500円を貰い、上海製の洗面器などを入れたリュックサックを背負って佐賀まで汽車に乗った道中は、周囲の人の眼が冷たかったように感じた。

 私の内地復員はこれで終わったが、以上のように中支方面で私達を武装解除したのが、終戦後重慶から出てきた中国軍であり、かつその背後には共産軍が追撃していたという情勢は他の方面では見られない独特のものであったし、したがって鉾の収め方についても幾多の教訓を残したのであった。
(第39話終)
この記事へのコメント
森 栄 様 初めまして。私は海自OBで75歳になる寺尾元宏と申します。このブログは初めて訪問しました。実は昭和42年に自衛艦隊司令部に居られた斉藤正一(兵75期)様にお世話になった私の友人から斉藤正一様の消息を探してくれと頼まれまして、斉藤正一・海兵75期で検索してみましたらこのブログに辿り着きました。
私の友人がご健在なら是非お会いしたいと申しておりますので斉藤正一様の消息をお聞かせ願えませんでしょうか?
なお私は昭和30年1月に陸自に入隊して2年満期で海自に入隊し直し舞練26期として電信員として勤務しました。友人も10普電信同期生です。この男は学生時代に大へまをやらかして退学になるところを斉藤正一様に助けられた大恩があると申しています。もし消息をご存知でしたら別途メールにてお知らせいただければ幸甚です。何卒よろしくお願い申し上げます。

10月10日 寺尾元宏 拝
Posted by 寺尾 元宏 at 2010年10月10日 18:53
 寺尾元宏 様

 ご来訪いただきありがとうございます、本ブログ管理人の桜と錨です。

 本ブログで掲載いたしております森栄氏著 『聖市夜話』 につきましては、下記ページにて記載いたしましたように、私個人の責任において公開いたしているものです。

http://navgunschl.sblo.jp/article/21747330.html

 残念ながら著者の森栄氏につきまして、数年前に移住先のブラジル・サンパウロ市において永眠されたと聞き及んでおります。

 なお、海兵75期の方の消息でしたら、下記の同期会サイトがございますので、そちらでお尋ねいただくのがよろしいかと存じます。

http://navy75.web.infoseek.co.jp/

 あるいは (財) 水交会の方で把握しているかもしれません。

http://suikoukai-jp.com/

 また、海上自衛隊幹部OBですと、海上幕僚監部人事課に退職幹部名簿がございますので、そちらで退職時の住所などは判ると思いますし、同広報室又は情報公開室を通してお尋ねいただくのも一つの手かと思います。

http://www.mod.go.jp/msdf/

 折角ご来訪いただきましたが、お役に立てずに申し訳ありません。

    管理人 桜と錨 拝

Posted by 桜と錨 at 2010年10月10日 19:41
錨と桜 様
早速のご返事を有難うございます。同期会サイト、水交会、海幕等に問い合わせてみます。どうも有り難うございました。
なお、ブログ並びにホームページ中々読み応えが有りました。知人、友人、先輩各位(50数名)に紹介させて頂きます。
Posted by 寺尾 元宏 at 2010年10月11日 10:30
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