2009年07月11日

防空幹部隊、防空隊、防空砲台、照空隊・・・・

 いつもお世話になっているNH 「出沼ひさし」 さんの掲示板 「戦時編制調査室」


 で話題になった旧海軍の 「防空幹部隊」 などについて少し。

 当該掲示板で出てきたものは、「防空隊」「防空砲台」「照空隊」「防空幹部隊」「船舶防空隊」 などです。

 話題の切っ掛けは、前3つは判るとしても、後の2つ、特に 「防空幹部隊」 とはいったいなんじゃろな? ということから。 そして、その概略は戦史叢書 「海軍軍戦備2」 の末尾付録に記述されているもののやはりよく判らん、ということでした。

 実は、ここでいう「防空隊」「防空砲台」「照空隊」「防空幹部隊」「船舶防空隊」は、「海軍諸令則」 中で規程される常設の部隊でもなく、また 「特設艦船部隊令」(大正8年内令116号) で規定される特設の部隊でもありません。

(以後、説明の都合上 「船舶防空隊」 については除外させていただきます。)

 防空関係部隊に関しては確かに後者の規程に 「特設防空指揮所」 と 「特設防空隊」 というのがあり、それぞれについて内令定員も定められています。

 しかし、前者は鎮守府や要港 (警備府) など決まった場所の防空組織のためのものであり、後者は一定の装備・人員を整えてから必要なところへ送り出すものです。

 ところが、戦争が進捗するにつれて防空隊などは、一々一定規模の装備・人員を整えてから送り出すような状況ではなくなってきましたし、また現地でも、地理的・地勢的な問題や部隊の規模等々に応じて必要とされる防空組織の規模も内容もそれぞれ異なってきます。

 したがって、各現地部隊の方で、五月雨的に送り込まれてくる装備や人員を、それぞれの実状・実態に応じた形で編成し、配備し、部隊のニーズにあった防空組織を構築していく必要が出てきました。

 これの基準になるのが、この話題の部隊です。 したがって、これらの部隊は一応標準的な装備・人員は決められましたが、これはあくまでも実際に編成する上での参考に過ぎません。

 主たる配備先としては根拠地隊や航空戦隊であり、航空基地、重要工業地帯、軍需品集積所、港湾などを防護するための防空組織を構築することが目的です。

 では、「防空幹部隊」 とは何か? ということですが、既に当該掲示板で出沼さんご自身が旧海軍文書から見つけてこられたとおり、

「 所在防空隊 (防空砲台) 照空隊及監視機関ヲ統一指揮スル為防空幹部隊 (仮称) ヲ編成シ配備地所在ノ根拠地隊等ノ他部隊ニ臨増ス 」

 というものです。

 この防空幹部隊の “幹部” というのは、艦艇での射撃指揮における 「射撃幹部」、即ち射撃指揮所及び発令所において、射撃指揮官たる砲術長や副砲長、高射長の射撃指揮を補佐する将校及び下士官などのことと同じ意味です。

 つまり、前線部隊において防空指揮官を補佐するためのもので、鎮守府などに配備された 「特設防空指揮所」 に相当するものですが、これのように固定施設配置を念頭に置いたものではなく前線部隊への移動・配置が前提で、このため自衛のための機銃なども装備しています。

 これら逐次部隊に送り込まれてくる装備及び人員をもって、「防空隊」 などを順次編成、陣地を構築して配備し、最適な防空組織を作り上げる役目として、「防空主務幕僚」 の創設も考慮されていましたが、現実には艦隊や根拠地隊の参謀、あるいは乙航空隊司令などが分掌担当せざるを得ませんでした。

 因みに、昭和19年の段階で、これら 「防空隊」 など防空関係部隊の編成標準として考えられていたものは、次のとおりです。

区    分主  要  装  備人 員
 防空隊 甲1 四十五口径十二糎高角砲 x 6門
 陸用高射装置 x 1組
 高角測距儀 x 1基 等々
114
甲2 九七式七糎野戦高射砲 x 6門
 高角測距儀 x 1基 等々
136
丙1 四十五口径十二糎高角砲 x 4門
 二十五粍単装機銃 x 12基
 陸用高射装置 x 1組
 高角測距儀 x 1基 等々
164
 十二糎高角砲台 四十五口径十二糎高角砲 x 4門
 陸用高射装置 x 1組
 高角測距儀 x 1基 等々
 77
 十糎連装高角砲台 九八式十糎連装高角砲 x 2門
 陸用高射装置 x 1組
 高角測距儀 x 1基 等々
 70
 二十五粍単装機銃砲台 二十五粍単装機銃 x 12基 等々 77
 防空幹部隊 豆移動電信機 x 1台
 TM軽便電信機 x 2台
 共電式電話機 x 28組 等々
 64
 照空隊 自動車付150糎探照燈 x 3台
 管制器 x 3台
 四号三型電探 x 1組
 二十五粍単装機銃 x 8基
 十三粍機銃 x 6基
 携帯電話機 x 4組 等々
 62

 以上が旧海軍史料に基づいて私が理解しているところですが、更なる点についてご存じの方がおられましたら、是非ともご教授をお願いいたします。
posted by 桜と錨 at 18:15| Comment(2) | TrackBack(0) | 海軍のこと
この記事へのコメント
さすが桜と錨様ですね。私より詳しいじゃないですか。これ以上、付け加えることはございません。
次回、冒険に行った時に防空幹部隊、照空隊、船舶防空隊の一覧を写経してまいりますので、ここに発表しましょう。
しかし、当たり前と言えば当たり前ですが、編制は奥が深いです。
Posted by 出沼ひさし at 2009年07月12日 00:14
防空も一応私の所掌範囲ですが、それにしても大戦後半になると史料も断片的なものしかありません。 それらをつなぎ合わせて纏めるのはなかなか難しいものがあります。

ダンキチ(なんのこっちゃ(^_^))史料、良い物がありましたら是非お願いしますね。
Posted by 桜と錨 at 2009年07月12日 15:37
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