海自のイージス艦が持とうとしている、いえ既に持ちつつあるものは、この大気圏内防禦(Navy Area)システムなんでしょうか? それとも大気圏外防禦(Navy Theater Wide)システムなんでしょうか?
そう、後者のNTWなんです。 何故、前者は選択しなかったのでしょう?
実は、簡単で、海自が実に上手く立ち振る舞った結果なんです。
つまり、NAの能力は、米海軍は全てのイージス艦が持つことになります。 それに対してNTWは、米海軍でも特定のイージス艦のみ改造されてその能力を持つことになっています。
当初、米海軍では4隻のみがこれに改造されることになっていました。 勿論、NTWの成功により、現在はもっと隻数が増えましたが。
ということはどういうことになるのでしょうか?
ご存じのとおり、海自のイージス・システムは “ブラックボックス”、即ちその維持管理の全てを米海軍に任せる方式を採っています。
したがって、米海軍の全イージス艦がNAの能力を持つと言うことは、海自イージス艦と同時期の米海軍のイージス艦がNAの能力を有するようにシステムが更新されると、海自のイージス艦も “自動的に” この能力を持つことになります。
つまり、国会でわざわざ “イージス艦をTMD用に改造する” と言わなくても、黙っていても通常の米海軍による維持管理の中でこのNAの能力を持つのです。 PAC−3など問題にさえならない能力を。
後はまだ海自が持っていない SM−2 Block WA というミサイル弾だけを購入すればいいのです。 しかもこの弾は通常の対空用にも全く同じように使えますから、SM−2ミサイル弾の補充名目でも買うことは可能でしょう。
これに対してNTWの方は、イージス艦を“改造する” と言って防衛予算を新規に取らなければなりませんし、米海軍に対して “特別に改造してくれ” と注文を出さなければならないのです。
ですから、空自がまだ開発中のTHAADでなはしに、既に実戦化に進みつつあるPAC−3を選択したのに対し、海自は当時まだ開発中だったNTWを選択しました。 これがTMDについての防衛庁(当時)の防衛政策として決定されたのです。
海自は行く行くは全てのイージス艦をこのNTWに改造することにしています。 即ち、全艦がNTWとNAの両方の能力を有することになります。
これは凄いことです。
もう一度その能力を見てみましょう ↓ この両方の能力を全イージス艦が保有するのです。

それに対して空自は、既に示してきたように、TMDではせいぜい拠点防禦にしか役に立たないPAC−3 “しか” この先当分は持たないのです。
海上自衛隊は実に上手くやっていると思いませんか?