では米国はMD(ミサイル防衛)についてどの様に考えているのか? それはその米国に対する脅威がどの様なものであると考えているのかを見れば解ります。
世界中で、というより米国の同盟国・友好国以外の国々で、長距離から短距離までの少なくともいずれかの弾道弾を保有している国及びその種類は、1972年では ↓ とされていました。

しかしこれが2001年には ↓ の様になったとされています。(ちょっと古いですが何故2001年のものなのかは後で。)

これが “弾道弾の脅威の拡散” といわれるものです。
しかしながら、これらの弾道弾の内訳をみると ↓ の様になります。 つまり、射程3000km以下の戦域弾道弾の“数”が弾道弾全体の75〜80%を占めていることが解ります。

これは何を意味するか?
米国にとっては、直接米本土に飛来するようなものは長距離(大陸間、戦略)弾道弾しか考えられません。 しかもそんなものを保有するのは極めて限定された国だけですし、もしそんなものを使うとなったらそれこそ第3次世界大戦です。
(従来の大国に加えて、最近は北朝鮮のような訳の判らない“ならず者国家”がこの能力を持とうとしているから、米国が躍起になっているんですが。)
加えて、射程3000kmを越える戦略弾道弾は飛翔経路のほとんどが大気圏外であり、かつ弾頭の突入速度がそれ以下の射程の戦域弾道弾に比べて格段に速くなることは、それに対する技術的対処が非常に難しいことになりますから、弾道弾そのものを直接阻止するMD方策は後回しになります。
それより、米国が超大国としての発言力を維持し、諸外国に軍事的コミットメントをするためには、先ず短距離弾道弾の脅威にさらされる遠征軍(海外展開部隊)の防禦が最優先になります。 そして、技術的にはこちらの方が容易です。
ですから、既存のものの改良であろうが新規開発であろうが、こちらの方、即ちそれらを大気圏内で迎撃するシステムの配備が最優先となるのは自然の成り行きです。
例えPAC−3の様な極めて有効射程の短いものであろうとも。