2009年02月23日

聖市夜話(第25話)船団轟沈・流れ弾警戒−2(その4)

著 : 森 栄(海兵63期)

 この被雷撃で残りの船団24隻はスッカリ混乱し、船団部隊指揮官より全船団奄美大島に避泊せよとの命令があり、全船は我れ先きに各船の最大速力をもって奄美大島に向かった。

 ところが「朝顔」と後1隻の護衛艦はその後の命により天明を待って被害現場に引き返し敵潜捜索中、「朝顔」は敵潜らしきものを探知し爆雷攻撃したところ、敵潜は多量の油を出したが、現場は水深深く(約400m以上と記憶)、爾後再探知不能で、油も一時的に大量に浮上したがあと浮上が認められない点よりみて、うまく逃げられたものと判断された。

 結局3番船の人員は若干が救助されたようであったが、轟沈した2番船は救助された者は皆無のようであった。

 船団はバラバラになって、15日1040前後に大島海狭着、護衛艦は船団の主力を護衛するもの、現場で被害船人員を救助するもの、「朝顔」及び他の1隻のように敵潜掃討を命ぜられるもの、という風に区分されてしまうと、全部でもわずか5隻しかないので、船団について行けるのは2隻にしかならない。

 ただしこの場合現場に残り敵潜掃討に、1隻でなく2隻をわずかな隻数の中から配せられたことは極めてありがたいことであって、指揮官の措置に敬服させられた。

 大体船団護衛中、電撃を受けた場合には、護衛艦の配備を次のように決めなければならない。

 第1 船団誘導
 第2 乗員救助 …… 一般に1隻
 第3 敵潜掃討

 そして第1項に沢山兵力を配分すれば、第3項が1隻となることが多かった。 しかしこの例のように、第3項に2隻を配すれば、敵潜は制圧されてしまって、船団を追及することもできず、したがって極端に言えば、別の敵潜さえなければ、第1項には少しの護衛艦で済むという結果になる。

 ただし理屈はこうであっても、現実に被害を受けると、船団部隊指揮官ですら勢い自身の周りの護衛艦を増しやすく、現場に1隻の護衛艦を残しやすいが、これは厳禁であってこのような派遣で逆に制された例は少なくない。

 先に 「恥ずかしき幸運」 で記述したように、「敵は待ち構えている」 という点を忘れてはならない。 この点第8班指揮官の兵力の区分は全く思いやりのある、兵理にかなったものであると思った。

 次に「朝顔」が翌日午前探知攻撃した敵潜は、油を大量に出し、それがパッ!と途絶えて、あと探知もできず油も出ないことから考え、敵潜は用意していた欺瞞用の重油を放出したのではないかと思われた。

 水深が幾ら深くても本当に出血させていたら、油が完全に途絶えることはないはずである。 この戦法は当時として敵ながら有力な工夫だと思った。

 私は「撃沈不確実」と報告したと記憶している。 そして、2月のときのような敵のポヤ助が少なくなり、このような強者が色々新しい戦法、兵器でくるのに、この旧二等が果たしてどこまで対抗してゆけるかと心細く感じた。

 敵の新戦法は、例えその実際の効果がまだ十分でなくとも、我が方の自信を強く脅迫する精神的な効果があった。

 したがって戦争期間が長引けば長引くほど、次々に新戦法、新兵器を繰り出して、敵を脅迫し続けることが大事であり、この場合慎重を期することなく、直ちに第一線にて試用してみるという拙速の方が貴ばれるように思われた。
(続く)

この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/27127869
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック