まず、軍艦旗に替わる「自衛艦旗」(とは言っても、ご存じのとおり旧海軍の軍艦旗と現在の自衛艦旗は全く同じものなのですが)については、昭和30年に制定された「海上自衛隊旗章規則」の第15条で、
「(自衛艦の場合)
第15条 自衛艦は、次の各号に掲げる時間、艦尾の旗ざお(潜水艦が航海中である場合にあつてはセール上部の旗ざお)に自衛艦旗を掲揚しなければならない。・・・(以下略)」
となっています。 つまり、日本国海上自衛隊の艦であることを示す旗、即ち “艦旗” は、旧海軍とは異なり「斜桁」というものがなくなり、停泊中でも航海中でも基本的には艦尾旗竿にしか掲揚しません。
“基本的には”というのは旗竿や後甲板が整備のために使えない(立ち入れない)場合などには当然メインマストなど適宜のところに掲揚できるからです。
で、その次の規定が面白いんです。
「(武力行使等の場合)
第15条の2 法第76条第1項の規定により出動を命ぜられた自衛艦が、武力を行使する場合には、自衛艦旗をメインマストに掲揚 するのを例とする。
2 前項の規定は、自衛艦が戦闘訓練を行なう場合に準用する。」
“例とする”というのは、特段の支障や事情が無い限りそうしなさい、という法規独特の言い回しです。
それでもまあ、これは何ですか、という文言です。 一体 “武力行使をする場合” とはどういう状況の時で、それは何時から何時までか、などは全く示されておりません。
第2項の戦闘訓練を行う場合でも、これは戦闘訓練中は常時なのでしょうか? それとも訓練中の “武力行使をする時だけ” なのでしょうか?
実は、この「旗章規則」というのは 「防衛庁訓令」 という法令の種類です。 つまり、海上幕僚長ではなく、防衛庁長官が自ら定めたものです。 と言うことは、軍のことなど全く判らない、紙の上でしか知らない防衛官僚なる小役人の手になるものということです。
で、結局はこの「旗章規則」、訳の判らないところが沢山ありますので、海上自衛隊は昭和45年に「海上自衛隊旗章細則」という達と、「海上自衛隊旗章規則の解釈及び運用方針について」という通達を出して、なんとか現場の海上自衛官達が迷わないようにしたのです。
その後者の通達の中に、次のような規定があります。
「10 第15条の2第2項関係
「戦闘訓練を行なう場合」には、合戦準備の下命があつたときからを含むものとする。」
と言うことで、海上自衛隊では「教練合戦準備」が下令されている間は(戦闘中か否かを問わず)常に自衛艦旗はメインマストに掲揚されていることになります。 そして、当然この考えから、実動の場合でも「合戦準備」をしている間は常にメインマストということになります。
即ち、海上自衛隊には「戦闘旗」という概念は無い ことになります。
ではこれをお読みいただいている皆さんに質問です。 旗章規則第15条の2でメインマストに掲げられる自衛艦旗は、通常は艦尾旗竿に掲揚するものを移す(揚げ替える)のでしょうか? それとも旧海軍の戦闘旗のようにもう一つ別の自衛艦旗を掲揚するのでしょうか?
さて、どちらでしょう? 考えてみて下さい。
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戦闘旗について (1) :
戦闘旗について (3) :
成程、海上自衛隊には 「戦闘旗」という概念はない! 勉強になります。
技術的には、多分・メインマストに掲揚時に 即艦尾の旗は降下されますので、 『もう一つ 別の』では ないでしょうか!
30年以上前に なりますが、艦隊勤務でした。
ノーマークのぺいぺいでしたが。 m( )m
>技術的には
はい、艦尾旗竿を降ろすのとメインマストに揚げる、又はその逆は同時ですので、“物理的” には2枚ないとこのようなことは不可能です。
ただ、ここで言います 「もう一つの別の」 とは、自衛艦旗を艦尾旗竿とメインマストの両方に掲揚しているのか、という意味ですね。
>30年以上前になりますが
当時は艦艇勤務にまだ古き良き時代の名残がありましたね。 艦長、隊司令以上は皆海兵出でしたし、上級海曹にも生き残りがかなりいました。 懐かしい思い出です。
>間は(戦闘中か否かを問わず)常に自衛艦旗はメ
>インマストに掲揚。
どうもよく判りませんので、具体的に質問します。
リムパック等の演習時は「教練合戦準備」が下令されるのですか? 演習時にメインマストに掲揚されている写真があったら貴ページに掲載していただけないでしょうか。
武力行使をする時にメインマストに自衛艦旗を掲揚するのはどういう意味があるのですか?
1.乗組員の士気を鼓舞する?
三笠時代なら判りますが、現在の戦闘は、防御区画や司令塔に退避していて、上甲板に誰もいないのでは。
2.敵に、武力行使をするぞということ態々示すのですか?
日清戦争の豊島沖海戦、日露の仁川沖海戦時、済遠やコレーツに遭遇したとき、浪速や浅間は合戦準備状態ですがメインマストに軍艦旗を掲揚してたんでしょうか?
>軍のことなど全く判らない、紙の上でしか知らな
>い防衛官僚なる小役人の手
同感です。メインマストの議論は全く無意味。こんな法律は現代戦には全く無意味。馬鹿馬鹿しいのに呆れています。
艦長「発砲用意」
砲術長「メインマストに自衛艦旗が未掲揚です」
伝令「敵魚雷艦首に命中」
信号兵「マスト掲揚完了」
艦長「打てえ」
航海長「左舷に30度傾斜」
砲術長「傾斜のため発砲できません」
>演習時にメインマストに掲揚されている写真があったら
月刊誌の 「世界の艦船」 や 「丸」 などをご覧いただくのが一番よろしいかと。
>武力行使をする時にメインマストに自衛艦旗を掲揚するのはどういう意味
「戦闘旗」 の意味も含めて、まず Wikipedia などでお調べいただくのがよろしいかと。
>浪速や浅間は合戦準備状態ですがメインマストに軍艦旗を
豊島沖海戦及び仁川沖海戦についてはその戦闘詳報などが 「アジ歴」 で公開されており、その中で戦闘旗についても記述されておりますので、それらに当たってご確認下さい。
なお、これは私が直接お答えしなければならないでしょう。
>リムパック等の演習時は 「教練合戦準備」 が下令される
戦闘訓練の場合には予め (と言うより最近は訓練で出港した場合には常に) 「教練合戦準備」 が下令されますが、実弾発射を伴う訓練がある時は 「教練合戦準備要具収め、合戦準備」 が下令されます。 そして実弾発射を伴う訓練が終わり次第、また 「教練合戦準備」 に戻します。 これはそれぞれで実施事項や緩和事項などが異なるからです。
また、戦闘旗の掲揚と武器の発射の可否とは別の話ですので、マンガチックのお話しも含めて、誤解なきようお願いします。
まぁ、これを見る機会はレアでしょうが。
実際にあったのは、2015年の海の日に、熊本港で「とね」「おおたか」がやってます。
桟橋で一般公開中国だったんですが、観覧者に雨雲の接近を報せる為に、OPS-14などを回すため、艦飾の揚旗線が張れないので、艦尾旗竿と、マストとの両方に自衛艦旗を掲げる略艦飾です。
で、「出港準備 用具収め。合戦準備」の号令で艦尾旗竿からマストに艦旗は移動するのですが、同時ではなく、掲揚替え相手先に完全に掲揚されてから降ろす方を下ろします。だって、無国籍表示の武装船は、国際法上その瞬間は海賊船ですから。
>「満艦飾」があるのは、「略艦飾」があるからなんですよ(笑)。
>艦尾旗竿と、マストとの両方に自衛艦旗を掲げる略艦飾です。
それを 「艦飾」 というんですよ。 「海上自衛隊旗章規則」 でキチンと定められていますね(笑)。
そして “普通に” やってますが?
本文にありますように、海自には“戦闘旗”という概念がありません。
合戦準備で艦尾旗竿からメインマストに“揚げ替え、部署復旧でマストから艦尾旗竿に揚げ替えます。 これはあくまでも“艦旗”で“戦闘旗”ではありませんから、常に掲げている自衛艦旗は満艦飾又は艦飾以外では1つです。
ただ、最近の日米共同訓練などでは特大のものをマスト揚旗線に掲げている姿が写真などでも見られますが、これは単にパフォーマンスとしての“飾り”で、法規上の意味はありませんね。