2024年08月21日

「世界の艦船」 9月号増刊


海人社さんの 「世界の艦船」 最新刊 (通巻第1026号) の9月号増刊(増刊第221集) 「傑作軍艦アーカイブ 19」 は 『英戦艦 「ネルソン」級 』 です。

SoW_No1026_cover_s.jpg

とはいっても、いつもの 「傑作軍艦アーカイブ」 シリーズとはちょっと趣が異なり、「世界の艦船」 誌の昭和37〜38年 (1962〜63年) に14回に分けて連載された故福井静夫氏の手になる 『英国戦艦ネルソン型に関する一考察』 の論文の全文を復刻 したものがメインになります。

このため表紙・裏表紙と折り込み図面を除いても232ページという厚いものとなっています。

いつも通りモデルキットの紹介と作例が掲載されていますが、「ネルソン」 と 「ロドニー」 の写真ページが68ページ、故福井氏の論文が101ページとなっており、この両者だけでも優に1冊が構成できる内容です。

これに、白石光氏による 『ネルソン級戦艦アラカルト』 という両艦の戦歴や迷彩などの4項目が掲載されております。

私はいつもの兵装の項ではなく、故福井氏の論文についての次の1稿を担当させていただきました。

「 軍艦研究における位置付けと今日の 「ネルソン」 級に関する評価 」

当然と言えば当然であり、「世界の艦船」 誌にかつて連載された記事に対してですので、故福井氏自身についての論評は控えざるを得ず、主として純粋に 「ネルソン」 級についての一つの論文に対する内容となっております。

当該論文は著述された年代を考慮すれば当時として故福井氏が入手し得た情報に基づいて纏められたものではありますが、お読み頂いてお判りいただけるように、全体としては “一考察” というよりは入手し得た文献などの “要約” となっています。

特に元造船家として造兵部門についてはあまり得意ではなかったとされるだけに、兵装についての詳細は記述されておらず、他の日米英の戦艦との比較に終始しており、主砲と射撃指揮装置やレーダーとの関係、副砲、k高角砲・機銃、魚雷などの実際の能力については殆ど触れられておりません。

とはいっても、本増刊号は 「ネルソン」 級について邦文のものとしてはいまだにこれを超えるものは他にはありませんので、収録された写真集とカラー版の当時の公式図と併せ、入手されておいて決して損の無いものと言えるでしょう。

posted by 桜と錨 at 22:43| Comment(4) | TrackBack(0) | 海軍のこと
この記事へのコメント
お疲れ様でございます。
お忙しい中恐縮ですが質問させていただきます。
研究者が学術雑誌に論文を投稿する際には、同じ分野の専門家から査読を受ける必要があります。
特にネイチャーなど一流のジャーナルでは非常に厳しい条件を達成しなければ発表できません。
もちろん様々な問題点もありますが、少なくとも多少は信頼性や信憑性を高め、真実である可能性を高めるものだと思います。
素人質問で恐縮なのですが、こういったジャーナルにおいて情報の正確性や信頼性というものはどのように担保されているのでしょうか?
ご教授頂ければ幸いです。
Posted by 初めまして at 2024年08月26日 23:20

どちらのどなたか存じ上げませんが ・・・・ お訊ねの件は刊行誌の編集・編纂方針に関することですので、それぞれの編集部にお聞きいただくのが宜しいかと。
Posted by 桜と錨 at 2024年08月27日 12:08
桜と錨さん こん**は

早速この本を購入し、読ませていただいています。写真も雑誌とは思えぬほどキレイで楽しんでいます。

ところで、少し疑問があります。それは80頁上段の写真と102頁下段の艦橋塔の写真ですが、航海艦橋下の出っ張り(?)が左右逆だと思えるのです。本来なら正面から見て右にあるのではないでしょうか。
もしかして写真の裏焼き?どう思われますか。
Posted by キャプ専クック at 2024年08月27日 18:04
キャプ専クックさん、レス遅くなりましたが

写真ページは私は関与していませんが、編集部さんは基本的には元史料はプリント版で、ネガはお持ちではないようですね。したがって、
>左右逆だと思えるの
元々の写真が左右逆だったのかもしれません。「ネルソン」と「ロドネー」の写真を比べてもそのように見えますね。ただし「ネルソン」級はと就役以降その時々の使用実績が取り入れられたりして頻繁にかなり手が入っており、一時期艤装方法が入れ替わったのかもしれませんが、残念ながら艦橋構造物の変遷の細部は判りません。
Posted by 桜と錨 at 2024年09月30日 13:41
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