2021年09月21日

海上自衛隊の古い史料 −15


海上自衛隊の古い史料から、“かつては、こんなものもあったよ” という15回目です。

今回は 「射撃指揮法」 についてです。

砲術・艦砲射撃についてお話をするときに、この 「射撃指揮法」 というのはよく耳にされると思います。

では、旧海軍においても現在の海上自衛隊においても 「射撃指揮法」 という独立した一つの教範類などがあるのか、というと、これはありません。

何故かというと、砲戦・艦砲射撃というのは、その艦、艦型によってハードウェアが異なることはもちろんですが、ソフトウェアたる砲戦指揮官の艦長、そして射撃指揮官である砲術長の技量・経験などは様々ですし、ましてやこれを補佐する射撃関係員の技量・経験はそれこそ様々で、当然ながら艦における1つのチームとしてのレベルはその時その時で異なります。

したがって、艦長や砲術長はその時の状況に応じた艦の 「準則」 や 「戦策」 を作り、現状においてどの様な砲戦、射撃を行うのかを定めてこれの周知徹底を図り、かつそれに基づく教育訓練を実施していくかなければなりません。

そしてこれは人が交代したり、教育・訓練などの成果により射撃チームとしての状況や練度が変わってくると、それに応じて書き直していくことになります。

つまり射撃指揮法について海軍全体に共通する “これだ” という一つのものがあるわけではないのです。

とは言っても、砲術学校の高等科や専修科学生などのような、これから射撃指揮官への道を進もうかという者に対して何も教えないという訳にはいきませんので、その射撃指揮法のあり方や考慮すべき事項などの一般的な基礎を教えることが必要になってきます。

これもあって、旧海軍では射撃理論、弾道学や誤差学、射法などを纏めた 「射撃学」 あるいは 「射撃学理」 の中の1項目として、この射撃指揮法の基礎的な概要を教えることとしていました。

例えば、砲術の大家の一人であり 「武蔵」 艦長として戦死された 猪口敏平中将が、若かりし頃の砲術学校の専攻科学生の時の課題研究成果を 『射撃学』 全4編として纏め、その中の一つに 『第二編 射撃指揮法』 がありました。

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これはその後 海軍砲術学校の採用するところとなり、順次改訂が加えられつつ同校の高等科学生用の 『射撃学理参考書』 の中で教えられていくこととなりました。

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この 「射撃指揮法」 の考え方は戦後の警備隊・海上自衛隊になっても同じでしたが、私の手許にあるのは 昭和44年に第1術科学校砲術科が作成した 『射撃指揮法 (幹部学生用)』 が最も古いものであり、それ以前のものについては判りません。

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そして、私達が中級射撃課程学生で習ったときのSG (スタディ・ガイド) は 昭和56年の 『射撃指揮法』 です。

Shagekishikihou_SG_S56_cover_s.jpg


この2つのSGは、先にご紹介した海上自衛隊の 『艦砲射撃教範』 や 『艦砲操法教範』 などに基づき、艦艇の砲雷長や砲術長に就いた時にどのような射撃指揮をすれば良いのか、そしてそのための射撃関係員の教育訓練をどのように行っていけば良いのかの基礎を簡潔に説明するものでした。

( もちろんSGはいわゆる教科書ではなく、講義を聞きながらこれに自分で色々と書き込んでいく類のものです。)

その後の現在に至るまで、この射撃指揮法についてどの様に教えているのかは、残念ながら手許に資料がありませんので不詳ですし、また私がそれをお話しする立場にはありませんので。

それにしても、この昭和44年と56年のSGもまだ残されているのかどうか ・・・・


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posted by 桜と錨 at 19:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 海上自衛隊の古い史料
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