海上自衛隊の古い史料から、“かつては、こんなものもあったよ” という9回目です。
射撃理論や射撃指揮法などに入る前に、その前提となる 「弾道学」 についてどの様に教えてきたのかをお話しします。
この 「弾道学」 については、旧海軍においても、専門的なことになると特定の砲のデータは秘密事項ですが、そのための一般理論についての筒内、筒外弾道、そして終末弾道については学者・研究者による学問的なものとして進んできましたので、これを採り上げて1つの部門とすることは基本的にはありませんでした。
(旧海軍及び海上自衛隊における 「筒内」 「筒外」 などの 「筒」 の字は、正式には 「月」 偏に 「唐 」の字ですが、常用漢字にありませんし一般的なフォントにもありませんので、「筒」の字で代用しております。)
これもあって、海軍兵学校においては極く基本的・基礎的な内容を 「弾道学」 として教え、このための教科書も一連の砲術教科書の分冊の中で 「射撃誤差学」 などの他の項目と共に合わせて作成されていました。

( 大正10年の砲術教科書の例 )
そして砲術学校などにおいては、その特定の砲熕武器についてのデータに基づく部分を含めてその詳細を 『弾道学参考書』 として纏め、主として学生の自学自習によることを前提として教えてきました。
例えば、次のようなものです。


戦後の警備隊及び海上自衛隊になっても、「弾道学」 についての専門的なことは、一般の学問としての方が進んだものがありますので、米海軍において教えられている程度の簡単な基礎的事項に限定する方向で進みました。
私が知り得た限りでは、昭和28年に横須賀地方総監部が取り纏めた 『筒外弾道学』 が最初のもので、これは昭和29年以降の海上自衛隊術科学校でも使われたようです。

おそらくこの時には 「筒内弾道学」 も作られたと考えられますが、これは見つかりませんでした。 私が見逃したのかもしれませんが、もしかすると既に無かったのかも。
そして、私達が第1術科学校の幹部中級課程 (射撃) 学生の時は、『弾道学講義資料』 と言うのが作られており、これは例によって質の悪い藁半紙に表紙以外は手書きガリ版刷りのものでした (^_^;

もちろん中級射撃学生用とはいっても、それほど専門的なものではなく、したがって秘密事項のデータなども何も書かれていない “普通文書” のものでした。
その後、水上艦艇要員の幹部中級課程は砲術や水雷などの専門的な課程ではなく、共通の 「用兵」 課程、いわゆる “何でも屋” が主流になりましたので、この幹部課程用の 「弾道理論」 の内容は、更に平易なレベルのものとなっています。

したがって、現在の海上自衛隊においては、「弾道理論」 を専門的に教えることはまず無くなったといえるでしょう。
これもあって、この昭和28年の 『筒外弾道学』 はもちろん、私達が学生の時に習ったSG (スタディ・ガイド) の一つとしての 『弾道学講義資料』 さえ、今では残されているのかどうか ・・・・
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