2020年07月03日

イージス・システム と 電源


先にイージス艦の定検、年検についてお話ししましたが、これに関連してイージス・システムの電源について少し。

ご存じの通り、「こんごう」 型イージス艦には推進用に LM2500 系のガスタービン・エンジン4基 (25,000PSx4) を装備しておりますが、これとは別に、アリソン IM400 系のガスタービン発電機3基 (2,500KWx3) を搭載しています。

Kirishima_eng_01_s.jpg

( この発電用については、「あたご」 型、「まや」 型と次第に電力所要が増えておりますので、それに応じたものとされていますが、今回は取り敢えずこれらについては省略します。)

この3基の発電機は、航海中の戦闘状態でも2基で全所要電力を賄えるようになっており、残りの1基は故障などに備えた予備・待機です。

これもご存じの通り、艦艇での電力は、基本的に120V系と440V系の2つで構成されています。 前者は艦内照明を始めとする艦内の一般用で、後者は装備・武器で使用します。

そしてこの440V系ですが、イージス・システムの作動・運用のためには極めて安定した質の高い電源が要求されます。

このため、港での停泊時には、120V系は陸上電源を引き入れて使用することができますが、この440V系の陸上電源では質が劣るためにイージス・システムでは使えません。

ここで大きな問題があります。

イージス・システムは一旦停止しますと、巨大かつ複雑な System of Systems ですので、その再起動の際にシステムの安定と作動確認のために約48時間を必要とします。

更にジャイロの AN/WSN-5 も止めますと、これの起動・安定のために更に長時間(最大24時間)を要することになります。

このため、イージス艦は 「稼動艦」 に指定されている間は、入港中でもイージス・システムを止めず、最低でも直ちに全力発揮可能な 「スタンバイ」 モードを維持するとともに、毎日全システムを作動させての DSOT (Daily System Operability Test) を行います。

で、このためにイージス艦は入港中でも最低限1基の発電用ガスタービンを動かす必要が出てくるのです。

( 当然ながらこのために入港中でもかなりの燃料を消費しますので、この必要性について国会答弁でも採り上げられたことがあります。)

したがって、イージス艦は航海中であれ入港中であれ、「稼動艦」 に指定されている間はいつでも直ちにイージス・システムの作動が可能です。 もちろんミサイルの実弾は搭載していますので “やろうと思えば” 発射可能です。

ただし、入港中も含め、陸岸近くではテレビや携帯電話、通信機器などに対する干渉防止のために、法律上 SPY-1 レーダーはハイパワーは使用できず、ローパワーで、しかも上方にしか発信できませんが (^_^;


とは言っても、イージス・システムを構成する各機器も、そしてガスタービン発電機も定期的に点検・整備をする必要があります。

このために艦を 「非稼動艦」 に定めての定検や年検において、これらも実施するのです。

しかしながら、この期間の全てにおいてイージス・システムが非可動になるわけではありませんし、またそれぞれの構成機器の点検・整備・調整において必要に応じて作動させる必要があります。

基本的には、先にお話しした入渠時を中心にして、発電機も含めて各機器を非可動としますが、それはどのような点検・整備・調整を行うのかや、造船所・担当企業のスケジュールなどによって異なってきます。

例えば、同じ時期に他艦も造船所に入っていれば、入渠時期をずらす等の必要性も出てきます。

posted by 桜と錨 at 20:36| Comment(2) | TrackBack(0) | 現代戦のこと
この記事へのコメント
西日本豪雨で排水ポンプ場が2m水没した時、自衛艦の電気系統はどうなっているのか質問させていただきました。さすが完ぺきでした。
4月中旬爆弾低気圧が四国沖を通過、3日前からこれは来るなとポンプ場の周囲と水門の草刈りを済ませ万全の体制をとりました。
ところが排水ポンプは、農林省の補助金で農業用という仕組みのため、電力契約が5月〜10月31日。
河川の水量が増え内水氾濫の恐れがあり早朝5:00動力用電源が通電してないと役所に連絡。
宿直も担当者も非常時の手順を周知してなく、電気が使えずに川と内水の差を見ながら水門を開閉しました。
今日も熊本では洪水の中、さらにダムが緊急放流したそうですが、天気予報を見ていたら3日前には事前放流する必要があると感じるはずです。
年間雨量の多い九州にしてはお粗末な対応です。
(当地では新成羽川ダムが緊急放流すれば洪水の水位が1.5m以上上昇し深刻な事態になります)
Posted by killy at 2020年07月04日 12:10
killy さん、こん**は。

お役所というのはその名の通りのお役人の世界ですからねえ (^_^;


イージス艦、そしてそのイージス・システムの能力は大変に高いものであることは申し上げるまでもありませんが、そのイージス・システムではシステム全体を 「ORTS」 (Operational Readiness Test System) と呼ばれるサブシステムにって数百のテストポイントを常に監視し、どこかに故障・不具合があれば自動的に切り替えるものもありますし、また当該機器のカード・レベルまで診断することができます。

これだけでもすばらしいのですが、例えば各コンピューター及びその周辺機器などについては、その故障・不具合や作動の不安定さをチェックして、最も安定した作動を確保するような多彩かつ何重もの措置手段が組み込まれております。

残念ながら具体的な詳細はお話しできませんが、最低限、その瞬間までに実施中のオペレーションが中断しないように、かつその時のデータを保存・維持するように作られています。

そして、殆どのものは自動的になされますので、中にはオペーレーターがコンソール上で全く気がつかないうちに切り替わってしまうものもあります。

これなどは、全く驚嘆に値するもので、さすがは対空戦・TMDについては世界最高の性能を有すると豪語し得るものと言えるでしょう。


Posted by 桜と錨 at 2020年07月04日 19:26
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