2019年07月30日

呉鎮守府の司令部壕


『世界の艦船』9月号に掲載された拙稿 『呉鎮守府開設130周年』 記事の補遺2つ目で、最近になって観光の目玉の一つとして一般公開もされるようになった 呉鎮守府の司令部壕 です。


ここは一般的には呉鎮守府の “司令部地下壕”“地下作戦室” などと言われていますが、昭和20年4月撮影の米軍偵察写真及び昭和22年の米軍による航空写真をご覧いただいてお判りのように、ここは鎮守府庁舎下の 地下に掘られた防空壕ではなく、地上に構築された いわゆる “掩体壕” なのです。

そして完成後にカモフラージュとして上部に薄く盛り土がなされ、樹木なども植えられたようですが、この時の状況はハッキリしません。

OP-Shelter_S19_01_mod_s.JPG
( 1945年4月撮影の米軍呉地区航空偵察写真より加工 )

OP-Shelter_S22_01_mod_s.jpg
( 1947年の米軍航空写真より加工 )

この作戦室用の掩体壕が、上の米軍写真に見るように、遅くとも昭和20年4月には作られていたことは確かですが、正確にはいつ建設されたのかはハッキリしておりません。 そして、この司令部壕が終戦までにどの程度機能し、使用されたのかも不詳です。

ただし、新鎮守府庁舎の地階 (庁舎外ではなく庁舎内) からここへ通じる通路も設けられていることからも、鎮守府の作戦室用であったことは間違いありません。

もちろん “作戦室用” とは言っても、単なる一つの広い作戦室ではなく、それに付属する通信室や幕僚部などの作業室、機材室や電源室などが併設された、いわゆる 「司令部壕」 であることは言うまでもありません。


そして終戦後に米軍が進駐した時、鎮守府庁舎地区には第10軍団の呉基地隊が置かれましたが、その時のこの司令部壕の状況については不詳です。

次いで昭和21年に英連邦軍 (正式には英連邦占領軍 (BCOF、British Commonwealth Occupation Force) ) が米軍と交代した時、この司令部壕には英連邦軍の 「司令部通信隊司令部」 に加え、「英連邦軍司令部信号事務所」 と呉〜メルボルン間の無線通信の 「呉ドーバー交換局」 が置かれたとされています。

後者は同年5月に江田島に移転し、代わって 「アンザック交換局」 が置かれましたが、このため呉と江田島間には25本の海底通信ケーブルが新たに敷設され、その交換業務はこの司令部壕で行われました。

この時点で、「信号事務所」 ではメルボルンや日本各地との間に無線通信系とテレタイプ系の併せて24チャンネルを所掌していたとされています。


そして同年12月には英連邦軍用の有線電話回線の運用のためにこの壕内に 「広島通信局工務部呉出張所」 が置かれたのを切っ掛けに、これが22年10月には 「呉電気工事局第1電話交換所」、24年 「呉特別電話局」 となっています。

OP-Shelter_S23_01_s.jpg
( 昭和23年撮影とされる元鎮守府司令部壕 )

昭和31年に英連邦軍が撤退し、翌32年には日本に返還されて海上自衛隊呉地方総監部が移転してきましたが、その時のこの司令部壕内の物理的な状況については不詳です。

ただし、以後最近に至るまで海上自衛隊ではこの司令部壕は主として総監部などの不用品の倉庫となっておりましたので、壕内部は英連邦軍撤退時に機材等を撤去した状態のままであったと考えられます。

OP-Shelter_H12_s.jpg
( 平成12年管理人撮影の元鎮守府司令部壕 )

OP-Shelter_H29_01_s.jpg
( 平成29年管理人撮影の元鎮守府司令部壕内部の状況 )

最近の部外者による本司令部壕の調査結果として、

前回調査の概要 : 以前発掘調査された地下壕は,旧地下作戦室だと思われていたが,調査を進める中で,電話交換室であることが判明。

などとするものがありますが、当該司令部壕は、呉鎮守府作戦室用としては長くともせいぜい半年〜1年間であったのに対して、その後の英連邦軍による10年間にわたる電話交換所等としての使用で、かつ改修工事も何度か行われていることから、昭和32年から現在に至るまでほぼ放置状態のままの海自倉庫としてどちら側の使用の跡が残っていたのかは、言わずもがなのことでしょう。

もし本当に当該司令部壕が “作戦室用” ではなく、“鎮守府としての電話交換室用” であったとするなら、是非ともその根拠を知りたいところです。

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前 : 「 初代呉鎮守府庁舎 」

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posted by 桜と錨 at 12:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 海軍のこと
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